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更新日: 弁護士 古俣 進也

淫行とは?罰則や逮捕されるケース、回避する方法を紹介

淫行とは?罰則や逮捕されるケース、回避する方法を紹介
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皆さん、「淫行」という言葉をテレビやインターネットなどで聞いたことがあるかと思います。

ただ、具体的にどういった行為が淫行に当たるのかどうかや、警察の捜査が進んでいる場合にはどのように対応したらいいかなど、分からないことも多いかと思います。

この記事では、そもそも淫行とは何なのか、逮捕される場合や逮捕を回避する方法などを解説いたします。

淫行とは何か

淫行とはみだらな性交ないしは性交類似行為を意味します。

最大判昭和60年10月23日刑集39巻6号413頁によると、淫行とは「広く青少年に対する性行為一般をいうものと解すべきではなく、青少年を誘惑し、威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性行為類似をいうもの」とされています。

淫行に対する罰則

淫行については、各都道府県の条例により罰則が設けられています。

例えば東京都の場合、「2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。」とされており(東京都少年の健全な育成に関する条例第24条の3、同第18条の6)、大阪府や他の都道府県も概ね同様の数字となっています。

懲役については、いわゆる刑務所へ行くことを指し(尚、改正によって拘禁刑という言葉に変更となります。)、罰金は決まるとその金額を納める必要が生じます。

青少年とは何か

各都道府県の条例において定義付けがされており、例えば東京都の場合は「18歳未満の男女(同第2条1号)」とされており、他の都道府県も概ね同様の定義となっております。

いわゆる成人年齢未満と一致する年齢です。

淫行に該当するかどうか

先の最高裁判例を踏まえると、相手が青少年であったとしても、結婚を前提とした真摯な交際に基づくのであれば、淫行には該当しません。

また、青少年同士の性行為についても、各都道府県の条例で適用しないこととされているため、淫行には該当しません。

過去に淫行に該当するとされた例としては、①被害者の好意や被告人に嫌われたくないなどという心情に付け込んで、直接ないしビデオ通話等を通じた性的行為に応じるよう言葉巧みにあおったこと(大津地裁令和5年11月16日)、②SNSを通じて知り合った未成年とホテル内で性行為を行なったこと(大阪地裁令和3年6月1日)、③デリバリーヘルスに応募してきた青少年に対して性交を行なったこと(千葉地裁令和4年10月5日)などが挙げられます。

ここで重要な点として挙げられるのは、青少年から積極的に性交を持ちかけられた場合であっても、淫行には該当しうるという点です。

結婚を前提とした真摯な交際があるのであれば別ですが、青少年保護育成条例は青少年を健全に育成するという目的で制定されているため、判断能力が未だ未熟であると考えられる青少年側から持ちかけられた場合であっても、その判断に乗じて性行為を行なってはいけないということになります。

また、青少年側が年齢を偽っていたような場合には、要件に該当しないケースもありますが、青少年の言葉だけで判断されるものではなく、それ以外の様々な要素から判断されることになりますので、注意が必要です。

淫行に課せられる罰則

前述の通り、都道府県によって厳密には異なりますが、おおよそ2年以下の懲役ないしは100万円以下の罰金が科せられます。

条例違反以外で淫行に関連する罪

条例違反としては上記の通りではありますが、性犯罪の類型である以上、それ以外の罪にも該当しうる場合が考えられます。

児童淫行罪(児童福祉法)

児童福祉法第34条第1項第6号では、「児童に淫行をさせる行為」が禁止されており、その罰則は「10年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金に処し、又はこれを併科とする。」とされています(同法第60条第1項)。

ここでいう「児童」とは、満18歳に満たない者を言いますので、条例と内容が重なることになります。

「淫行をさせる行為」とは「直接たると間接たるとを問わず児童に対して事実上の影響力を及ぼして児童が淫行をなすことを助長し、促進する行為」をいいます(最高裁昭和40年4月30日決定)。

児童との関係性を踏まえて判断されますが、学校の先生と生徒の関係などが主な例とされています。

児童買春(自動買春・児童ポルノ禁止法)

児童買春・児童ポルノ禁止法第4条では、「児童買春をした者は、5年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する」とされています。

ここでいう「児童買春」とは、児童に金品を渡し、又は渡す約束をして性交を行うことを言います。

一昔前の援助交際や、昨今のパパ活において性行為を伴う場合には、当該法律違反に該当する可能性があります。

また、この犯罪類型の派生として、児童買春の斡旋をした場合や(同法第5条第1項)、斡旋目的で勧誘した場合(同法第6条第1項)はより重く処罰を受けることになります。

不同意わいせつ罪・不同意性交等罪(刑法)

令和5年に刑法改正がなされた不同意わいせつ罪や不同意性交等罪にも該当する可能性があります(刑法第176条、同法第177条)。

これらの罪は、一定の事情下において、同意しない意思を形成し、表明し、もしくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為や性交等を行う場合に該当します。

淫行という点を踏まえると、16歳未満の者に対してわいせつ行為をした場合で、かつ13歳以上の場合において、行為者が児童の5年以上前に生まれていた場合には、上記の不同意状況の有無に関わらず成立します。

処罰としては、不同意わいせつ罪が6月以上10年以下の拘禁刑、不同意性交等罪が5年以上の有期拘禁刑です。

わいせつ事件と淫行は何が違うのか

「わいせつ行為」とは、最高裁の判例によると、「いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反するもの」を言うとされています(最高裁昭和26年5月10日)。

言葉にすると難しいですが、キスをする、胸を触る、陰部を触るなどの行為も含まれていることになります。

そうすると、前述の「淫行」の定義と比べると、「わいせつ行為」はより広く性的行為全部を指すことが分かり、その意味で淫行は性交ないしは性交類似行為に限定している分範囲が狭いことが分かります。

更に「淫行」は青少年を対象としていることに対して、わいせつ行為は青少年に限ってはいないことが分かるかと思います。

そのため、対象行為の広さと対象者に違いがあるといえます。詳しくは下記を参照ください。

 淫行で逮捕させる可能性

未成年淫行は、青少年保護育成条例違反で逮捕される可能性があります。

青少年保護育成条例においては、政府統計によると、2023年において、約25%ほどが逮捕となっています。

ただ、前述の通り、淫行は他の罪にも該当しうる行為であるため、それらを踏まえると、実に50%を超える数字で逮捕がなされています。

そして、逮捕後検察官は勾留請求をすることが多く、その大半は勾留が許可されています。

また、余罪が多いとその分逮捕される可能性は高くなり、かつ勾留請求を受ける可能性も高くなります。

逮捕の流れは後ほどご説明しますが、通常の日常生活を送ることが出来なくなってしまうのです。

淫行事件が発覚するケース

淫行に限らず、警察は様々な面で捜査を行なっています。

明らかに未成年である人と歩いているところで職務質問を受けて発覚するケースや、未成年が補導された際のスマートフォンから発覚するケース、サイバーパトロールによって発覚するケースなどがあります。

また、未成年側ではなく、親からの通報によって後日発覚して逮捕に至るケースなどもあります。

現行犯ではない限り、警察は秘密裡に捜査を進めます。

そして、各証拠が揃った時点で、その方を呼び出すか、逮捕に踏み切ります。

つまり、現行犯逮捕ではない場合には、ある程度の捜査が終了した上での逮捕であることに注意が必要です。

淫行で逮捕された際の流れ

淫行で逮捕されると、まずは48時間以内に検察官へ送致するかどうかを警察は判断します。

そして、その後24時間以内に検察官は逮捕した方を勾留するかどうか判断し、勾留を求める場合には、裁判所に勾留請求をします。

そして、裁判所に勾留が認められた場合には、10日間の勾留がなされ、その後捜査の必要性に応じて、最大10日間勾留が延長されます。

これらの間に、検察官からは弁解録取書を作成し、その際に逮捕された方の言い分の聞き取りを行います。

そして、その後裁判所へ行き、勾留質問と呼ばれる手続を経て、長期の身柄拘束に切り替わるのです。

淫行で逮捕されることのリスク

淫行で逮捕されてしまうと、日常生活において様々なリスクが生じることになります。

具体的にどのようなリスクが生じうるのか、解説していきます。

報道されてしまう

淫行によって逮捕を受けた場合には、マスコミによって報道される可能性があります。

昔はテレビなどの報道がメインで、マスコミの報道も地方の新聞など限られた地域でのみ確認ができるものでしたが、現代においてはネットニュースが主流となっており、全国的に知られてしまう可能性も高いことになります。

また、ネットニュースは様々な媒介を通じて、瞬く間に情報が拡散してしまうことは、現代の常識となっているかと思います。

実名を明かさずに報道されるケースもありますが、マスコミの対応次第では実名を公表されてしまうこともあり、そのようなことになってしまうと、ネット上に逮捕の事実が残ってしまうことにも繋がりかねません。

そして、そのことが原因で家族や親族、会社、知り合いにまで自分のしてしまった行為を知られることに繋がり、私生活においても生活しにくい環境となってしまう可能性があります。

また、ネット上の情報は長期間消えないため、場合によっては就職活動などへの影響も考えられるところです。

会社を解雇されてしまう

淫行が会社に知られてしまうと、会社によって解雇を含めた懲戒処分を受けてしまう可能性があります。

児童と直接接触する可能性がある、塾講師などであれば、業務と密接に関わる以上、懲戒事由に該当する可能性が高くなりますし、仮に児童と直接接触する可能性がない職業であったとしても、会社の信用などを著しく毀損したとして、懲戒処分を受ける可能性もあります。

当然ケースバイケースにはなりますし、懲戒処分にも減給や出勤停止、解雇など様々ありますが、どれかの処分には該当する可能性があります。

逮捕の時点で有罪が確定しているわけではありませんが、企業としてのリスクヘッジを取る可能性があるからです。

また、仮に懲戒処分を受けない場合であったとしても、職場の周囲の人たちが淫行の事実を認識してしまうと、周囲からの目線も変わることは容易に想像でき、結果として職場に居づらく、退職を余儀なくされることも想定されます。

家族からの信用を無くす

もし逮捕された方にご家族がいるのであれば、淫行をした身内という形となるため、家族としても近寄り難い存在となってしまいます。

また、性行為である以上、配偶者との関係としては不貞行為にも該当しうるものであるため、離婚などの危機になることは容易に想像されます。

また、仮に離婚とはならない場合であったとしても、配偶者にとっては自分のパートナーが性犯罪を犯したという目線で周囲から見られてしまうことも考えられ、精神的にも辛い想いをさせることにも繋がります。

また、逮捕された方に子供がいる場合には、淫行を受けた側も子供と近い年齢であるケースも多く、軽蔑の目で見られることも考えられますし、子供自身も配偶者と同様周囲から白い目で見られてしまうこともあり得るため、同じく精神的に辛い想いをさせることに繋がります。

淫行による逮捕を回避するには

勿論、淫行は犯罪なので、しないことが一番ではあります。

但し、もし仮に淫行をしてしまった場合には、逮捕を回避できる可能性のある方法があります。

自首をする

一つは自首をすることです。

法的な減刑事由としては、捜査機関が捜査を開始する前に自首をすることになるのですが、実際に捜査が開始しているかどうかは当然のことながら分かりません。

もしかしたら既に捜査は開始している可能性もありますが、それでも尚自首をしたという事実は捜査機関としても重要な情状要素として考え、逮捕には至らない可能性も高くなります。

特に逮捕は、罪証隠滅のおそれ(証拠を破棄してしまうのではないか)や逃亡のおそれ(逃げてしまうのではないか)がある場合が要件とされている中で、自ら犯罪事実を告白したという行動は、これらがないという方向に働くからです。

示談をする

淫行は当然のことながら未成年が被害者となっている類型です。

そのため、捜査機関が逮捕をするか否かを判断する上では、被害者の意見も重要となってきます。

そのため、被害者との間で示談をして、許しをもらうことはかなり重要な要素となります。

示談の方法は様々ではありますが、大部分は示談金を支払い、示談書を作成することになります。

示談金自体は事案に応じて30万円~数百万円など様々考えられますが、誠心誠意謝罪をした上で許しを求めることになります。

また注意点として、実際に示談をする相手は、被害者が未成年である以上、その親権者となります。

弁護士に相談

上記の二つは確かに逮捕を回避する上で取るべき二つの手段となります。

しかし事案が軽微である場合には自首をするまで必要がないケースもあれば、示談をしようにもうまくいかないケースもあります。

そのような場合にはすぐに弁護士に相談を検討してください。

弁護士であれば、過去のケースから大まかな見通しをもって的確なアドバイスも可能であり、勿論代理人としてあなたの代わりに被害者と示談交渉をすることも可能となります。

示談交渉においても、適正な金額の提示をして交渉を行うだけでなく、実際の示談書の作成においても、示談としてそしてのちの紛争防止のために必要十分な内容を盛り込むことが出来ます。

よくある質問

次に、淫行において、よくあるご質問について回答致します。

真剣交際でも逮捕されますか。

ここでいう真剣交際の中に「結婚」が前提となっている場合には、処罰の対象ではありません。

但し、実際に真剣交際と言えるかどうかについては、あなたの言い分だけではなく、相手の言い分や周囲の言い分などを総合して判断されるものとなります。

18歳未満であることを知らなかった場合でも罪になりますか。

18歳未満であることを知らない場合には、罪になりません。

しかし、前述の通り、未必の故意という考え方があるため、18歳であるかもしれないと思うだけの状況であれば、逮捕される可能性もあり得ます。

そして、その判断には、知り合った経緯や会話内容、当日の服装など様々な事情を総合して考えなければならないため、実際に当たるかどうかは、弁護士への相談をおすすめします。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は淫行について解説しました。

もし今回の記事を読んで、自分の行為が淫行に当たるかもしれない、実際に警察から捜査を受けている、逮捕されている等ある場合には、どれだけ早期に対応できるかによって状況は大きく変わることになり、特に弁護士に頼む場合には早いに越したことはありません。

もし、ご不安な点がありましたら、ぜひ東京スタートアップ法律事務所までご相談下さい。

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執筆者 弁護士古俣 進也 神奈川県弁護士会所属 登録番号61276
私が心掛けていることは、どれだけ相談に来られた方のお話を聞けるのか、ということに尽きると思っております。 皆さまの想い、気持ちを自分の言葉でいいので、私にぶつけて下さい。 私がひとまず全部受け止め、その上で法律的解決へ一緒に目指していきましょう。
得意分野
交通事故、刑事事件、企業法務 等
プロフィール
北海道出身
北海道大学法学部卒業
北海道大学法科大学院修了

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