事情聴取(取調べ)とは何か?気を付けることや流れ、平均時間、対応の注意点を解説
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記事目次
警察から「事情を聞きたいから警察に来てほしい」と連絡があったら、驚いてしまうのは当然のことです。
警察署に取調べに行くのは抵抗があるから、自宅に来てほしいと考える方もいらっしゃいます。
そこで、今回は警察から事情聴取に呼ばれた場合の対処法や、自宅で取調べを受ける方法を解説します。
事情聴取とは?取調べとの違いや聞かれること、所要時間を解説
まずは、事情聴取で聞かれることの内容や、事情聴取にかかる平均的な所要時間を説明します。
事情聴取とは何か?
事情聴取とは、警察や検察等の捜査機関が事件について関係者から事情を聞き、事実を確認することを言います。
任意で行われる事情聴取と、逮捕・勾留された段階で強制的に行われる事情聴取があり、警察から「事件について話が聞きたい」と呼び出されるケースは、前者にあたります。
事情聴取と取調べの違いとは?
事情聴取と似たような文脈で使われる「取調べ」という言葉があります。
実はこの二つに決定的な違いはありません。
どちらも、警察官や検察官に事情を聞かれることをいいます。
ちなみに、正式名称は「取調べ」です。
警察官や検察官の犯罪捜査等の手続を規定している「刑事訴訟法」では事情聴取という言葉は使われず「取調べ」で統一されています。
取調べの内容
取調べでは、警察官や検察官が、事件の被疑者や参考人に対して事件の捜査に必要な事項を質問します。
取調べの対象
事件の犯人ではないかと疑われていて捜査の対象となっている人のことを被疑者といいます。
参考人とは、被疑者とは言えないまでも犯人として疑っている人、もしくは事件の関係者です。
事件の関係者だけでなく、事件に関する専門家にも参考人として話を聞くことがあります。
取調べで聞かれること
取調べでは、以下のような質問を受けることが多いでしょう。
- 事件が起きた時の状況やご自身の行動
- 事件前後の行動
- 被害者との関係性
他にも、生い立ち、職歴、家族関係、趣味など事件に関係ないことについて質問される場合もあります。これは取調べを受ける方にリラックスしてもらうことを目的としていることもありますが、事件との接点を探るために質問している可能性もあるでしょう。
取調べで話した内容は供述調書としてまとめられます。
取調室はどんなところ?
取調室は、被疑者や事件の関係者についての取調べを行うための部屋であり、通常、取調室には机や椅子、録音機器等が設置されています。
また、取調室での取調べは、一般的に1~2名の警察官等が行うことになります。
取調べの所要時間は?
取調べは1回につきおよそ1時間半から2時間といわれています。
では、実態はどうなっているのでしょうか。
警察庁が発表している取調べに関する調査結果を確認してみます。
こちらの調査は平成23年2月1日から2月18日まで1ヶ月間に、検察庁の「終局処分」が行われた「身柄事件」の被疑者に対する取調べの日数や時間、回数を調べたものです。
終局処分とは、勾留が満了するまでに起訴するかどうかを判断することを指します。
身柄事件とは、被疑者の身柄が拘束されている事件のことです。
要するに、この調査は身柄事件の被疑者の取調べの所要時間等を調べたものなので、参考人として呼び出された場合や、在宅事件で呼び出された場合は含まれません。
まず、被疑者に対する取調べのデータを確認してみましょう。
ここでは、事件の程度によって差が分かるように、「一般事件」と「捜査本部事件」で分類されています。
一般事件とは、凶悪犯、知能犯、窃盗犯、その他刑法犯、特別法犯です。
捜査本部事件とは、殺人事件、強盗殺人事件、傷害致死等の捜査本部が立ち上げられた事件です。
一般事件 | 捜査本部事件 | |
---|---|---|
平均取調べ日数 | 5.7日 | 17.6日 |
平均取調べ時間 | 15時間15分 | 65時間31分 |
1日の平均取調べ回数 | 1.8回 | 2.3回 |
1日の平均取調べ時間 | 2時間41分 | 3時間43分 |
一般事件も捜査本部事件も1日に平均すると2回は取調べが行われており、その合計が一般事件で2時間41分、捜査本部事件で3時間43分です。
1回の取調べの平均時間はそれぞれ1時間31分と1時間36分でした。
一般事件の取調べ日数や時間が意外と短いと感じた方も多いのではないでしょうか。
実は、ドラマや映画で描写されているような、長時間にわたる取調べが行われることはほとんどないのです。
1回の取調べは平均すると約1時間30分前後で終わると考えてよいでしょう。
取調べの際の警察官の態度は?
取調べの際、警察官から怒鳴られたり机を叩かれたりするのではというイメージを持たれている方もいらっしゃると思いますが、通常そういったことはありません。
警察官がこのような暴力的な対応をとったことで取調べの対象者が畏怖して本当のことを話せなかったり、やっていないことをやったと自白したりしてしまうおそれもあるため、こうした対応で取調べを行うことは禁止されています。
さらに、そうした取調べの結果作成された供述調書については内容の信用性がないと判断され、証拠としての価値がなくなる可能性もあります。
警察官としてもそのことを熟知しているため、少なくとも現代社会においてはこうした取調べを行うことはほとんどないと思います。
どんな場合に警察から事情聴取に呼ばれる?
警察に事情聴取されるのは、被疑者として話を聞きたい場合と、参考人として話を聞きたい場合の2パターンです。
被疑者として話を聞きたい場合
犯罪を犯した疑いがかけられている被疑者として呼び出された場合は、罪を犯しているかどうかや犯行の状況・反抗の動機などが聴取されます。
参考人として話を聞きたい場合
事件の関係者や専門家が参考人として呼び出された場合は、事件について知っていることや事件にまつわる専門知識などが聴取されます。
ただし、被疑者扱いではないものの、事件の犯人の可能性が高いと判断されて、参考人として呼び出される場合もあります。
被疑者
事件の犯人であると疑いをかけられて捜査対象となっている人
参考人
事件の犯人の疑いがある人
事件の関係者
事件に関する専門家
警察からの事情聴取は拒否できる?
警察から事情聴取に呼ばれた際、あくまでも任意に捜査に協力するよう要請されているだけの状態ではあるため、これを拒否するか否かも自由であることが原則です。
ただし、例えば犯罪の嫌疑をかけられている状態で警察からの任意の事情聴取を拒否した場合、警察としては任意に話を聞くことは不可能と判断し、その結果、裁判所に逮捕令状を請求した上で逮捕されるリスクが高くなってしまいます。
逮捕されてしまうと外部との連絡も取れない状態で一定期間身柄が拘束されてしまう可能性が高いため、警察からの事情聴取については徒に拒否せずに捜査に協力した方が望ましいところです。
警察からの呼び出しに応じて出頭した場合、警察から取調べを受けた上で、場合によってはその取調べで話した内容について供述調書が作成されることもあります。
警察での事情聴取の流れ
警察での事情聴取がどのように進むかについて、各立場別にご説明します。
被疑者として事情聴取されるケース
被疑者として事情聴取されるケースでは、被疑事実に関する認否や犯行の動機、経緯、否認する場合はその理由やアリバイ等を聴取されます。
事情聴取についても、言いたくないことを言う必要はないので、言いたくないことについては「言いたくない」、「弁護士に相談してから答えたい」といった対応をすることも自由です。
そして、一通り事情聴取が終わった後、事情聴取で話した内容を書面(供述調書)にすることになります。
その内容については読み聞かせされ、内容に間違いない場合には署名押印を求められることとなります。
この署名押印は拒否することもできるため、話した内容と異なる事項が記載されているような場合等には署名押印を拒否するようにして下さい。
参考人として事情聴取されるケース
基本的な流れは被疑者の場合と同様です。
被疑者とまでは言えないものの、犯罪に関与した可能性がある人物として事情聴取を受ける場合は、被疑者として呼ばれる際とほぼ同様のことを聞かれる可能性が高いと思われます。
また、事件の目撃者や被害者として事情聴取を受けた場合は、事情聴取の際に作成された供述調書が刑事裁判の証拠として利用される可能性があり、場合によっては裁判で証人として証言するように求められる可能性もあります。
重要参考人として事情聴取されるケース
重要参考人として事情聴取されるケースについては、参考人よりは犯罪に関与した疑いが強かったり、有力な目撃情報をもっていたりすることで警察としては事情聴取の必要性が高いと考えている状況ではありますが、基本的には参考人として事情聴取されるケースと同様です。
事情聴取後の流れ
では、事情聴取後はどのような流れで手続が進むのでしょうか。
被疑者として事情聴取を受けた場合と、参考人として事情聴取を受けた場合について解説します。
被疑者として事情聴取を受けた場合
事件の被疑者として事情聴取を受けた後は、「被疑者として逮捕される」、「逮捕はされないが、被疑者として書類送検される」、「嫌疑が晴れて罪に問われない」の3つのパターンが想定されます。
逮捕されるのは、証拠隠滅や逃亡のおそれがあると判断された場合です。
書類送検とは事件が警察官から検察官に送致されることをいいます。
逮捕されなくても書類送検されれば、刑事事件の手続は進んでいるということです。
逮捕されても書類送検されても、検察官が起訴するかどうかを判断します。
日本では、検察官が「高い確率で有罪にできる」と見込んだ事件が起訴されるため、起訴率そのものは高くありません。
しかし、いったん起訴されて刑事裁判が開かれた場合には、有罪率が99%を超えており、無罪判決が言い渡されることは非常にまれです。
参考人として事情聴取を受けた場合
参考人として事情聴取を受けた後は、「事件の被疑者になる」場合と、「事件の証人として取り扱われる」の2つのパターンが想定されます。
当初は参考人として話を聞いていたものの、取調べや捜査が進むことで被疑者になることは珍しくありません。
事件の目撃者や関係者として取調べを受けた場合、刑事裁判で証人として証言するように要請されることもあります。
事情聴取に呼ばれた際に気をつけること
不利な状況に陥らないために、事情聴取では以下の点に注意する必要があります。
任意の場合、呼び出しを拒否し続けない
警察から任意で呼び出しを受けた場合は拒否してもかまいません。
しかし、任意だからといって拒否し続けない方がよいでしょう。何度も呼び出しに応じないと、証拠隠滅のおそれがあるなどと疑われて、逮捕される可能性があります。そのため、任意であっても、警察の呼び出しには応じた方がよいでしょう。
不安な場合は、警察に出頭する前に弁護士に相談することをおすすめします。取り調べでの受け答えについて事前に弁護士と打ち合わせをしておけば、不安が取り除かれるでしょう。
また、場合によっては弁護士が警察に同行することも可能です。取調室への同行はできませんが、弁護士が同行することにより、不当な扱いを受ける心配がなくなるでしょう。
事情聴取の内容は証拠になる
取調べで供述した内容は供述調書として書き起こされ、起訴された場合には証拠として提出されます。判決に影響するおそれもあるため、自分が話した内容と少しでも異なる部分があった場合、指摘して修正してもらうことが大切です。
また、万一、警察に供述を誘導された場合、乱暴な取調べによって事実とは異なる供述を強制された場合は、供述調書への署名と押印を拒否して下さい。供述調書は一度署名、押印をしてしまうと、その内容を覆すことは非常に困難です。事実と異なる内容で供述調書が作成された場合は、断固として署名や押印に応じないようにしましょう。
事情聴取によって勾留期間が延長される
逮捕後に勾留される場合、勾留期間は、検察官が勾留請求をしてから10日間と法律で決まっています。
この間に取調べ等が行われて事件の捜査が進んでいくことになりますが、10日間では捜査が終わらない場合、更に最大10日間勾留期間が延長されることがあります。
特に、被疑者が犯行を否認している場合や共犯者がいる場合等事案が複雑で取調べ等捜査に一定の時間を要する場合には勾留が延長されやすい傾向にあります。
また残念ながら、共犯者もおらず、犯行についても素直に認めているようなケースであっても勾留の延長が比較的簡単に認められてしまうことも実務上は多いため、そうしたケースでは、勾留延長等せずに早期の釈放を認めるよう弁護士から検察官や裁判官に要求していく必要があります。
不利な状況に陥らないためには弁護士に相談を
不利な状況に追い込まれないためには、警察から呼び出しを受けたら、速やかに刑事事件に精通した弁護士に相談することをおすすめします。
前述した通り、取調べで供述した内容は供述調書にまとめられて裁判の証拠となります。内容によっては、今後の処分の行方が左右されるため、非常に重要なものといえるでしょう。
事実と異なる内容の供述調書を作成されて、不利な状況に陥らないようにするためにも、弁護士の指導を仰ぎながら取調べを受けることが大切です。取調べ期間中であっても、弁護士とは面会できます。取調べの状況について詳しく報告すれば、警察の思惑を分析して具体的なアドバイスをもらうことが可能です。また、万一不当な取調べを受けた場合は、警察や検察に抗議して、是正するよう求めてもらえるでしょう。
不利な状況に追い込まれないためにも、警察から呼び出しを受けたらできるだけ速やかに弁護士へ相談することをおすすめします。
自宅で事情聴取を受けることは可能?
取調べは、例外的に自宅で受けることもできます。
取調べは必ず警察署で行わなければならない訳ではありませんが、基本的には警察署において行われます。
平日は仕事が休めない、どうしても外せない用事がある、など警察署に赴くことができない場合は、週末に自宅で取調べを受けることを申し出るのも一案でしょう。
警察から、取調べの要請がきたときに、警察署に赴くことが難しいこと、自宅に来てほしいことなどを明確に伝えましょう。
ただし、原則的には取調べは警察署において行われますので、自宅での取調べは例外である点に注意が必要です。
また、忙しいからなどの理由で取調べ自体を拒否することは注意が必要です。
法律上は、取調べに応じるか応じないかは任意で、取調べ要請を断ることができます。
ただし、取調べに応じないと、「証拠隠滅」や「逃亡」のおそれがあると判断されて逮捕状が請求される可能性があります。
逮捕状が発付されたら逮捕されてしまいますので、警察官に被疑者として取調べに呼ばれた場合は、なるべく応じた方が賢明です。
事情聴取に関するよくある質問
①事情聴取には必ず応じないといけないのでしょうか?
事情聴取に応じるか否かは原則として自由なので、必ず応じないといけないものではありません。
もっとも、事情聴取に応じない場合、警察としては、話を聞くためには逮捕する必要があると判断し、結果的に身柄が拘束されてしまうリスクがあるので、基本的には応じた方が良いです。
②事情聴取では何でも正直に話さないとだめでしょうか?
いいえ。事情聴取では、言いたくないことは言う必要はありませんし、終始黙秘していても構いません。他方で、捜査に非協力的な態度を貫徹すると身柄が拘束されてしまうリスクが高くなるため、何をどの程度話すべきか等、事前に弁護士に相談して整理しておいた方が良いです。
③事情聴取に行った際に逮捕されることもあるのでしょうか?
はい、あり得ます。逮捕については、犯罪を行ったその場で逮捕されるケースや警察が自宅等に逮捕状を持ってきて逮捕されるケースが多いのですが、任意の取調べ後に逮捕されるというケースもあります。
そのため、取調べ後に逮捕される場合も想定して、事前に弁護士に相談や依頼をしておくと良いでしょう。
④事情聴取の日程はどのように決まりますか?
警察等が事情聴取を行う場合、警察等から電話がかかってきますので、その電話の際に日程を調整して決めることになります。
なお、日程調整の際、仕事の都合等も考慮はしてくれるものの、基本的には事情聴取の方を優先して日程を決めるよう求められることが多いです。
⑤事情聴取後、どれくらいの期間で処分が決まりますか?
身柄が拘束されていない場合、最終的な処分を決めるまでの期間については法律で決められていないため、捜査側次第ということになります。
そのため、1~2か月程度で決まることもあれば、それ以上に時間がかかることもあります。
少なくとも、事情聴取後、数日で処分が決まるということはほとんどないと思いますので、ある程度時間がかかることを想定しておいた方が良いと思います。
まとめ
突然警察に取調べのために警察署に来るようにと言われると驚いてしまいますが、怖いからと言って無視をしたり、取調べを拒否したりすることは得策ではありません。
特に、なんらかの犯罪に関わっている場合は、取調べを拒否することなく日程を調整して、取調べに応じましょう。
どうしても警察に行くことが難しい場合は、自宅での取調べも提案してみましょう。
事情聴取(取調べ)において供述した内容は供述調書に記載されて、起訴するかどうかを判断する際や刑事裁判で重要な証拠となります。
事情聴取でどうしたらよいかわからない、何を話すべきか判断ができないという方は、一度弁護士にご相談ください。
刑事事件の実績が豊富な弁護士であれば、「今何をすべきなのか」を的確に判断してアドバイスをしたり、その後の弁護士活動の依頼を引き受けることが可能です。
私達、東京スタートアップ法律事務所は、警察から事情聴取に呼ばれたなど、刑事事件に関する問題を抱えているご本人やご家族の気持ちに寄り添い、ご本人の大切な未来を守るために全力でサポートさせていただきたいと考えております。
検察官や捜査機関の考え方を熟知している刑事事件に強いプロ集団が、ご相談者様の状況やご意向を丁寧にお伺いした上で的確な弁護戦略を立て、迅速に対応致します。
秘密厳守はもちろんのこと、分割払い等にも柔軟に対応しておりますので、安心してご相談いただければと思います。
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- 岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務