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投稿日: 更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

暴行罪の時効は3年 – 刑事・民事の時効について弁護士が解説

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過去に相手に暴行を加えてしまった事があり、もしかしたら今になって逮捕されてしまうかもしれないと、怖くなってしまう方もいるのではないでしょうか。

暴行罪には時効があり、一定の期間が経過すると、暴行した事に対する責任を追及する事ができなくなります。

この記事では、暴行罪の時効や時効が中断される事情、相手を暴行してしまった場合の対処法について、わかりやすく解説していきます。

暴行罪とは

暴行罪とは、他人に暴行を加えた場合に成立する犯罪のことです。

刑法では、暴行罪について次のように規定されています。

第208条
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

法律上「暴行」とは、「人の身体に対する不法な有形力の行使」のことをいいます。

過去の裁判例では、次のような行為が暴行罪にいう「暴行」と認められています。

  • 殴りつける
  • 蹴り飛ばす
  • 衣服や胸ぐらをつかむ
  • 相手を押し倒す
  • 驚かす目的で、数歩手前を狙って石を投げつける
  • 唾液を吐きつける
  • 液体や砂、塩などを投げつける
  • 熱や光、電気などの刺激を与える
  • 耳元で大声で怒鳴りつける

一方、次のような行為は、暴行罪にいう「暴行」と認められない可能性が高いです。

【暴行とはいえない行為】
・人を侮辱する言葉を投げかける
・呼び止めるために肩をたたく
・他人の所有物を壊す

実際に「暴行」といえるかどうかは、暴行の態様や当時の状況等を総合的に考慮して判断されることになります。

暴行罪と傷害罪の違い

暴行罪は、「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」に成立する犯罪です。つまり、暴行を加えた結果、相手に傷害を与えてしまった場合には、暴行罪ではなく傷害罪が成立することになります。

傷害罪にいう「傷害」とは、「人の生理的機能に障害を与えること」を指します。

たとえば、ナイフで切り付けて相手にけがを負わせたり、精神的な攻撃を与えてPTSDなどを発症させるような行為であれば、暴行罪ではなく、傷害罪として処罰されることになります。

暴行罪の刑罰はどれくらい?

暴行罪の刑罰は、次のうちいずれかです。

暴行罪の4種類の刑罰
  • 2年以下の懲役
  • 30万円以下の罰金
  • 拘留(1日以上、30日未満)
  • 科料(1,000円以上、10,000円未満)

ただし、実務上は拘留や科料といった刑罰はほとんど適用されず、懲役もしくは罰金刑になるケースがほとんどです。

暴行罪は民事上の責任に問われることも

相手に対して暴行をしてしまった場合、刑事上の責任だけでなく、それとは別に民事上の責任を負うケースがあります。

刑事上の責任とは、刑法に規定する暴行罪に該当することで、懲役や罰金などの刑罰を科せられる責任です。一方、民事上の責任とは、民法に規定する「不法行為」に該当するため、加害者が被害者に対して、暴行による身体的・精神的な損害を賠償する責任のことをいいます。

刑罰を受けたからといって民事上の責任がなくなるわけではなく、たとえば罰金刑になり、検察庁に罰金を納付したうえで、さらに被害者に対して損害賠償を支払わなくてはならないこともあり得るのです。

暴行罪の2種類の時効とは

暴行した罪に対して責任を問う場合、一定の期間が経過するとその責任を問うことができなくなる「時効」が存在します。

この時効には、「刑事上の時効」と「民事上の時効」の2種類があり、それぞれ期間が異なります。

刑事上の時効

刑事上の時効は、暴行をおこなってから3年で時効になります。

公訴時効とも呼ばれるこの刑事上の時効期間が経過すると、懲役刑や罰金刑などの刑法上の責任を問う裁判を、提起することができなくなります。

そのため、警察に逮捕されて身柄を拘束されることもなくなり、前科がつくこともなくなります。

民事上の時効

民事の時効は、被害者が暴行による損害と加害者の両方を知った時から5年、もしくは暴行から20年です。

民事上の時効期間が経過すると、被害者から損害賠償を請求されるなどの民事上の責任を問うことができなくなります。

そのため、喧嘩などで暴行を働いてしまった場合、5年経過すれば、刑事上も民事上も責任を問うことができなくなります。

暴行罪の時効の停止とは?

暴行罪の時効期間の進行は、一定の事由が生じた場合にはその進行が停止し、時効が完成しなくなります。

刑事上の時効の停止事由

【刑事上の時効が中断する3つの事由】

① 公訴を提起する(起訴)
② 犯人が国外にいる場合
③ 犯人が逃亡していることで有効に起訴状の謄本の送達ができなかった場合

警察に逮捕されただけでは時効は停止しませんが、警察に逮捕され起訴されると、その時点で時効の進行が停止します。そのため、裁判中に時効が完成することはありません。

また、犯人が国外逃亡している場合や、国内で逃げ回っていて、裁判所からの書面が有効に届けられない場合にも、時効は完成しません。

一度停止された時効は、停止する原因が消滅すると、その時点からあらためて時効の進行を開始します。たとえば、国外逃亡で時効が停止している場合には、帰国後に再度、中断していた時点から時効の進行が開始します。

民事上の時効の停止事由

民事上の責任については、国外逃亡しているからといって時効が停止することはありません。

民事上の時効の完成が一定期間猶予される事項としては、次のようなものが挙げられます。

時効の完成が一定期間猶予される事由

  • 裁判上の請求
  • 支払督促
  • 和解および調停の申立て
  • 破産手続参加、再生手続参加または更生手続参加
  • 強制執行
  • 担保権の実行、担保権の実行としての競売
  • 財産開示手続または第三者からの情報取得手続き
  • 仮差押え、仮処分
  • 催告
  • 協議を行う旨の合意
  • 債務者による債務の承認
  • 天災その他避けることのできない事変

これらは、民法で規定されている時効の完成が一定期間猶予される事由です。

具体的なケースで時効の完成が猶予されるかは、専門的な法律判断が必要になるため、法律のプロである弁護士に相談することをおすすめします。

暴行の罪を犯した場合の対処法

暴行の罪を犯してしまった場合のおすすめの対処法は次の通りです。

暴行の罪を犯してしまった場合の3つの対処法
  • 自首する
  • 被害者と早い段階で示談する
  • 弁護士に対応を依頼する

以下、それぞれ詳しく解説していきます。

なお、まだ逮捕されていないからといって、時効が成立するまで何もしないで待っていることは基本的におすすめできません。

軽微な暴行で、被害者も暴行についてとくに被害届を出していないような場合は別にしても、多くの場合、捜査機関は刑事上の時効が経過しないように捜査を進め、起訴することになるからです。また、数年経過したあとでも、被害者が弁護士に相談し、時効が成立する前に損害賠償請求を起こしてくるケースも少なくありません。

それぞれの事情で対応すべきことは変わりますが、弁護士の指示もなく、何もしないで時効が成立するのを待つという対応はしない方が無難です。

自首する

他人に暴行を加えてしまったら、警察に逮捕される前に自首することをおすすめします。

一口に暴行といっても、その暴行の原因はさまざまです。酔った勢いで通行人と喧嘩をしてしまった場合やお店の人とちょっとしたことで口論になり、相手を突き飛ばしてしまったなど、本来自分が悪くないケースでも、暴行罪として起訴されてしまう可能性がないとはいえません。

どのようなケースでも、犯人が自ら警察署に出頭して罪を申告することで不起訴処分になったり、起訴されたとしても刑罰が軽くなる可能性があります。

もし、自分1人で警察にいくことに抵抗があるのであれば、弁護士に一緒についてきてもらう方法でも良いでしょう。

ただし、自首が成立するのは「犯罪が捜査機関に発覚する前」に限られます。すでに被害者から被害届が出され、警察による捜査が開始されていたら、そのタイミングで警察に出頭しても、自首による減刑の恩恵は受けることができません。

ただし、罪を犯してしまったことに心から反省し、被害者と示談交渉が進んでいるのであれば、不起訴処分になる可能性が高いといえるでしょう。

被害者と早い段階で示談する

相手に暴行を加えてしまった場合、警察による事件の捜査が進む前に、できる限り早い段階で被害者との示談交渉をまとめることが重要です。

被害者と示談が成立し、被害届を取り下げてもらったり、嘆願書を出してもらうことで、不起訴処分になる可能性が高くなります。暴行の態様が悪質な場合は別にしても、被害者が刑罰を与えないことに納得しているのであれば、警察もそれ以上捜査を進めないケースが多いです。

示談交渉は、被害者との話し合いによっておこなうため、どのような条件で示談するかは、当事者同士の話し合いによって決定します。暴行の示談金の相場は、けがの治療費を含めて10万円から100万円程度になりますので、交渉する際の参考にしてみてください。

弁護士に対応を依頼する

暴行事件で前科をつけないための1番重要なポイントは、警察による捜査が進む前に、被害者との示談を成立させることです。

被害者との示談がまとまれば、逮捕されることを回避できたり、逮捕されてもすぐに釈放してもらえることにより、日常生活への影響を最小限に抑える事ができます。

暴行事件の示談交渉は、事件の性質上、当事者同士の話し合いでは交渉がスムーズにいかないケースが多く、交渉に時間がかかればかかるほど、警察に逮捕され、起訴されてしまう確率が高くなります。

そのため、被害者との交渉は、刑事事件に精通した弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士は交渉の専門家であり、穏便に話をまとめるノウハウを熟知しています。法律を駆使して相手と交渉するだけでなく、被害者の立場に立って真摯に謝罪をすることで、被害者との交渉をスピーディーに進める事ができます。示談金についても、「先生がそこまで丁寧に謝罪してくれるのであれば、示談金はいらないです」と、すんなり応じてくれることも少なくありません。

まとめ

暴行罪の時効は、刑事と民事でその年数が異なります。

刑事上の時効(公訴時効) 暴行をおこなった時から3年
民事上の時効 以下のいずれか
・被害者が暴行による損害と加害者の両方を知った時から5年
・暴行の時から20年

また、時効期間が経過していたとしても、一定の事由がある場合には時効の進行が停止し、その間に起訴されてしまったり、損害賠償請求をされてしまうおそれがあります。

他人に暴行を加えてしまった時に、前科をつけず、日常生活に影響を及ぼさないようにするためには、できる限り早く被害者と示談する事が重要です。

当事者同士で交渉がまとまらず、もたもたしている間に起訴されてしまうと、有罪判決を受け、前科がついてしまうおそれがあります。

被害者との交渉を迅速に進め、不起訴処分を獲得するためにも、暴行事件の対応は弁護士に相談することをおすすめします。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。
「ForClient」を理念として自らも多くの顧客の信頼を得ると共に、2018年の事務所開設以降、2023年までに全国12支店へと展開中。
得意分野
ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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