略式起訴とは?手続きの手順やメリット・デメリットを専門家がわかりやすく解説

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略式起訴は、正式な裁判を開かず、書類のみで審理を行う手続きのことです。
この起訴方法は、通常の裁判と比べて手続きが迅速に進むという大きなメリットがあります。
本記事では、略式起訴の仕組みやメリット・デメリット、手続きの流れについて詳しく解説します。
略式裁判とは
略式裁判とは、略式裁判手続をとることに被疑者が同意していること、簡易裁判所に管轄があること、比較的軽微な事件であること等の条件を満たす場合に、正式な裁判手続(公判手続)を経ずに、裁判官が書面のみで判断を下す裁判をいいます。
刑事裁判といえば、公開の法廷で裁判官と検察官と弁護士と被告人が出席して、尋問等を行って判決が下されるものがイメージされがちです。
このようなイメージの刑事裁判は公判手続といい、略式裁判は公判とは別の手続きとなります。
略式裁判では、非公開の場で、検察官も弁護士も被告人も出席せず、尋問といったことも行われず、裁判官が書面のみで審理して判断します(その判断を略式命令といいます)。
本ページでは、このような刑事裁判のイメージとは異なる略式裁判について解説していきます。
起訴の種類について
検察官は、捜査が終了すると、その被疑者について起訴するか不起訴にするかを決定します。
起訴する場合は、公判請求、略式命令請求、即決裁判請求といった3種類の手続きから選択することになります。
公判請求
刑事裁判と聞いて、多くの方がイメージする手続きが公判請求です。
公開の裁判所で傍聴人もいる中、裁判官、検察官、弁護士、被告人が出席して行われます。
検察官が証拠を提出するのはもちろん、被告人(弁護士)も証拠を提出したり証人尋問を行うこともあるため、複数日にまたがって手続きが進むこともあります。
公判請求の対象となる事件に制限はなく、全ての事件が公判請求の対象となります。
略式命令請求
略式裁判とは、簡易裁判所に管轄のある事件であり、100万円以下の罰金または科料に相当する軽微な事件において、被疑者が同意した場合に用いられる手続きです。
令和5年度の犯罪白書によると、令和4年に検察庁が処分を決定した総人数は74万5066人であり、そのうち略式起訴となったのは15万8531人で全体の約21.3%を占めます。一方で、公判請求となったのは6万9066人で全体の約9.3%にとどまります。
略式命令を行った割合
令和5年度の犯罪白書によると、令和4年に検察庁が処分を決定した総人数は74万5066人でした。
そのうち、略式起訴となったのは15万8531人で、全体の約21.3%を占めています。
他方で、公判請求された人数は6万9066人で全体の9.3%にとどまり、略式起訴が公判請求事件の約2.3倍に達していることがわかります。
| 参考:令和5年版犯罪白書(法務省) https://www.moj.go.jp/housouken/housouken03_00127.html |
即決裁判請求
即決裁判とは、罰金刑や執行猶予付きの拘禁刑が見込まれる比較的軽微な類型の事件において、事件が明白であり争いがなくかつ証拠調べが迅速に終了することが見込まれる場合に、被疑者の同意を得て行われる手続きです。
即決裁判では、被告人は冒頭手続きにおいて自身が有罪であることを認めることとなります。
そのため、事実関係について争うことはできません。
即決裁判においては、原則として判決は即日言い渡されることになります。
略式起訴と公判手続の違い
通常の起訴と略式手続きの違いは以下の4つです。
| 項目 | 通常の起訴 | 略式起訴 |
|---|---|---|
| 裁判所の審理方法 | 公開の法廷で正式な裁判が行われます。 被告人は出廷し、裁判に参加することになります。 |
被告人の出席は不要で、裁判所は検察官から提出された証拠等に基づいて判断します。 裁判は行わず、書面審理のみで行われます。 |
| 証拠等の提出 | 検察側だけではなく、被告人や弁護人も証拠等の提出を行ったり、自らの主張をすることができます。 | 撮影される者がアルコールを飲んでいたり、眠気に襲われている等の意識がはっきりしていない状態で撮影する行為 |
| 適用条件 | 対象となる事件に限定はありません。 | 被告人が罪を認め、罰金や科料が科される場合に限り、略式起訴が適用されます。 |
| 手続きの早さ | 通常の公判手続きを行うため、裁判が長期間にわたることが多いです。 | 手続きが簡略化され、迅速に処理されるため、通常は短期間で結審することができます。 |
略式裁判のメリット
略式裁判のメリットとしては大きく3つあります。
- 裁判所に行く必要がない
- 誰かに裁判を傍聴されることがない
- 裁判を早く終えられる
それぞれ解説していきます。
裁判所に行く必要がない
公判、即決裁判いずれの手続きにおいても、被告人は裁判所に出頭することが義務付けられています。
裁判が開かれるのは平日の昼間(おおよそ10時~17時)のため、在宅事件の場合は、人によってはお仕事等を休んで出頭することが必要となります。
また、公判の場合は審理が複数回にわたることもあり、複数回裁判所に出頭することになります。
一方で、略式裁判では裁判官は検察官が提出した書面のみで判断するため、被告人が裁判所に出頭する必要はありません。
裁判官の判断(略式命令)も、在宅事件の場合は基本的には自宅まで郵送されてきます。
誰かに裁判を傍聴されることがない
公判、即決裁判いずれの手続きにおいても、基本的に手続きは公開の法廷で行われます。
そのため、基本的に裁判手続きは誰でも傍聴することができます。
裁判を傍聴することを日課にしている方や、高校・大学等の授業の一環で裁判傍聴を行っていることもあります。
たとえ見知らぬ第三者であっても、自身の刑事裁判を見られるということは、精神的にも辛いという方も多いです。
一方で、略式裁判では、裁判官が非公開の場で書面のみで判断するため、自身が刑事裁判を受けている姿を第三者に見られるということはありません。
裁判を早く終えられる
公判請求の場合は、検察官が起訴してから最初の期日(※期日とは裁判が行わる日を指す法律用語です)まで1~2か月程度かかります。
最初の期日でそのまま判決が下されることもありますが、多くの場合、判決は次の期日に行われます。
そして、最初の期日から判決の期日までも2週間から1か月程度あいてしまうことが多いです。
そのため、起訴から判決まで相当程度の期間がかかってしまいます。
一方で、略式裁判では、起訴から略式命令がでるまで約2週間から1か月程度であり、公判請求に比べると、迅速に終了します。
略式命令のデメリット
略式裁判のデメリットとしては大きく3つあります。
- 直接裁判官に伝えられない
- 軽微な犯罪しか略式裁判ができない
- 略式不相当になる場合もある
それぞれ解説していきます。
直接裁判官に伝えられない
公判、即決裁判においては、手続き内で被告人質問の場があります。
そのため、手続きの中で裁判官の前で直接自分の意見や考え、反省していることや被害者への謝罪を伝えることができます。
しかしながら、略式裁判においては、裁判官が判断の参考とするものは検察官が提出する書面のみとなります。
そのため、例えば主張が食い違っている被害者の供述調書について、被告人自身の意見を直接裁判官に伝えることはできません。
被告人自身の考えや意見を直接裁判官に伝えたい場合は、略式裁判に同意しないということも考えられます。
軽微な犯罪しか略式裁判ができない
略式裁判は、簡易裁判所の管轄の事件で100万円以下の罰金または科料に相当する事件のみが対象となります。
そのため、罰金刑が定められていない犯罪、例えば不同意わいせつ罪や殺人罪といった事件においては、略式裁判が選ばれることはありません。
罰金刑と拘禁刑の両方が定められている犯罪、例えば窃盗罪においては、略式裁判が選ばれる可能性もあります。
もっとも、検察官が拘禁刑を科すのが相当と考える場合には略式裁判が選ばれることはありません。
犯罪類型によっては、そもそも略式裁判が選ばれる余地がない可能性があります。
略式不相当になる可能性もある
略式裁判においても、最終的な判断を下すのは、公判や即決裁判と同様に裁判官となります。
多くの場合は、検察官が略式起訴をした場合、裁判官はそのまま略式命令を下すこととなります。
しかしながら、裁判官が本件は略式手続きではなく、公判手続きをとるべきであると考えた場合は「略式不相当」と判断することがあります。
略式不相当と判断された場合は、事件は公判手続きを経ることとなります。
略式不相当となるケースは極めて少ないと見込まれていますが、略式不相当となり、公判手続きに移行する可能性があることも覚えておく必要があります。
略式起訴をするための条件
前記の通り、略式起訴には迅速に手続きが進むという点でメリットがあるものです。
他方で、簡易な手続きで済むという点にはデメリットもあります。
そのため、刑事訴訟法には略式手続きを行うための条件として、以下のようなものが定められています(刑事訴訟法461条、461条の2)。
条件①被疑者の同意があること
略式手続きでは、被疑者及び弁護人から弁解等ができず、有罪が確定してしまいます。
そのため、略式起訴に同意するという事は弁解等の機会を放棄することになるため、被疑者の同意がなければ適用することはできません。
条件②100万円以下の罰金または科料に相当する事件であること
拘禁刑や死刑に相当するような重大犯罪には略式起訴を行うことができず、正式な裁判手続きが必要となります。
略式起訴が適用できるのは、罰金額が100万円以下の事件に限られます。
条件③簡易裁判所の管轄する事件であること
罰金や過料に相当するような他の犯罪に比して比較的軽微な犯罪は、地方裁判所ではなく、簡易裁判所の管轄となります。
そのため、略式起訴適用の対象は簡易裁判所の管轄となる軽微な犯罪に限られます。
略式起訴の手続きの流れ
略式の起訴の流れは以下の通りです。
🔹 捜査の開始
(警察・検察による捜査)
↓
🔹 検察の判断
(証拠をもとに起訴の可否を決定)
↓
🔹 略式起訴の申請
(被疑者の同意を得て簡略な手続きで進行)
↓
🔹 裁判所の判断
(書面審理で罰金・科料を決定)
↓
🔹 処分の確定
(罰金納付で手続き終了)
刑事事件では、警察や検察官による捜査後、検察官が起訴するか不起訴にするかを決定します。
検察官が略式起訴を決定した場合、検察官は被疑者に概要を説明し、同意書に署名を求めます。
その同意書に署名をすると、検察官は事件を簡易裁判所に起訴し、裁判官は書類審査で罰金額を決定し、略式命令を出します。
その後、罰金を納付すれば手続きは完了となります。
略式起訴の不服がある場合の対処法
略式起訴に不服がある場合には、略式命令の告知を受け取った日から14日以内であれば、裁判所に対して、正式な裁判を行うよう求めることができます(刑事訴訟法465条)。
略式起訴にまつわる用語
略式起訴に関連する重要な用語について解説します。
起訴や略式手続き、略式命令、罰金刑、科料など、略式起訴の仕組みを理解するうえで欠かせない用語を、簡単にですが、わかりやすく説明します。
「起訴」
「起訴」とは、検察官が犯罪を犯した疑いがある人物につき、裁判所に対して、正式な裁判を行って判決を下すよう求めることを言います。
これは、捜査の結果検察官が、被疑者が犯罪を犯した証拠が十分にあると判断した場合に行われるものです。
起訴されると、裁判を受けることになり、罪の有無及び刑罰について裁判で決定されることになります。
「略式手続」
略式手続きとは、略式起訴において行われる手続き一般のことを指します。
略式起訴そのものという意味で使用されることもあります。
「略式命令」
裁判所が被告人に対して、罰金額及びその支払いについて命じるものになります。
通常の起訴手続きでいう判決に相当するものです。
「罰金刑」
罰金刑は、その名の通り、金銭的な罰を科す刑罰です。
犯罪の種類や状況に応じて、法律で定められた額の範囲で科せられます。
前記の通り、100万円以下の罰金に相当するものであれば、略式起訴の対象となります。
「科料」
科料とは、金銭的な罰金の一種です。
科料は1000円から1万円の間と、金額が比較的小さいため、拘禁刑や罰金よりも軽い処罰とされていますが、違反者には反省を促す意図が込められています。
よくある質問
略式起訴に関しては、「略式起訴で前科がつくのか」「罰金を支払えない場合はどうなるのか」といった疑問を持つ方が多くいます。
本記事では、これらの質問について分かりやすく解説します。
略式起訴で前科がつくのか?
前科は有罪判決が確定した際につくものです。
そして、略式命令が確定した場合には、確定判決と同様の効力が生じます(刑事訴訟法470条)。
したがって、略式起訴は前科が付いてしまうものとなります。
罰金を払えない場合の対処法は?
略式命令により支払うことが命じられた罰金額が支払えない場合は、「労役場留置」という手続きがとられることになります。
労役場留置とは、日当5000円で計算され、罰金に相当する金額の分労役場という施設で強制的に働かされることをいいます。
まとめ
略式起訴は、簡略化された手続きで迅速に解決できる反面、証拠提出や反論ができないデメリットもあります。
他方でデメリットもあり、前科がつくことになります。
もしご自身のケースで、略式起訴に同意したほうがいいのか、争った方が良いのかを迷った際は、早期に弁護士に相談し、適切な対応を検討することをおすすめします。
- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
- プロフィール
- 岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務










