略式起訴とは?手続きの手順やメリット・デメリットを専門家がわかりやすく解説

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記事目次
略式起訴は、正式な裁判を開かず、書類のみで審理を行う手続きのことです。
この起訴方法は、通常の裁判と比べて手続きが迅速に進むという大きなメリットがあります。
本記事では、略式起訴の仕組みやメリット・デメリット、手続きの流れについて詳しく解説します。
通常の起訴との違いとは
略式起訴は、正式な裁判を行わず、書面審理のみで罰金や科料を科す手続きです。
検察官の提出する書類を基に裁判所が罰金額を決定し、迅速に処理されます。
略式起訴のメリットとデメリットを比較
通常の起訴と略式手続きの違いは以下の4つです。
項目 | 通常の起訴 | 略式起訴 |
---|---|---|
裁判所の審理方法 | 公開の法廷で正式な裁判が行われます。 被告人は出廷し、裁判に参加することになります。 |
被告人の出席は不要で、裁判所は検察官から提出された証拠等に基づいて判断します。 裁判は行わず、書面審理のみで行われます。 |
証拠等の提出 | 検察側だけではなく、被告人や弁護人も証拠等の提出を行ったり、自らの主張をすることができます。 | 撮影される者がアルコールを飲んでいたり、眠気に襲われている等の意識がはっきりしていない状態で撮影する行為 |
適用条件 | 対象となる事件に限定はありません。 | 被告人が罪を認め、罰金や科料が科される場合に限り、略式起訴が適用されます。 |
手続きの早さ | 通常の公判手続きを行うため、裁判が長期間にわたることが多いです。 | 手続きが簡略化され、迅速に処理されるため、通常は短期間で結審することができます。 |
略式命令を行った割合
令和5年度の犯罪白書によると、令和4年に検察庁が処分を決定した総人数は74万5066人でした。
そのうち、略式起訴となったのは15万8531人で、全体の約21.3%を占めています。
他方で、公判請求された人数は6万9066人で全体の9.3%にとどまり、略式起訴が公判請求事件の約2.3倍に達していることがわかります。
参考:令和5年版犯罪白書(法務省) https://www.moj.go.jp/housouken/housouken03_00127.html |
略式起訴をするための条件
前記の通り、略式起訴には迅速に手続きが進むという点でメリットがあるものです。
他方で、簡易な手続きで済むという点にはデメリットもあります。
そのため、刑事訴訟法には略式手続きを行うための条件として、以下のようなものが定められています(刑事訴訟法461条、461条の2)。
条件①被疑者の同意があること
略式手続きでは、被疑者及び弁護人から弁解等ができず、有罪が確定してしまいます。
そのため、略式起訴に同意するという事は弁解等の機会を放棄することになるため、被疑者の同意がなければ適用することはできません。
条件②100万円以下の罰金または科料に相当する事件であること
拘禁刑や死刑に相当するような重大犯罪には略式起訴を行うことができず、正式な裁判手続きが必要となります。
略式起訴が適用できるのは、罰金額が100万円以下の事件に限られます。
条件③簡易裁判所の管轄する事件であること
罰金や過料に相当するような他の犯罪に比して比較的軽微な犯罪は、地方裁判所ではなく、簡易裁判所の管轄となります。
そのため、略式起訴適用の対象は簡易裁判所の管轄となる軽微な犯罪に限られます。
略式起訴の手続きの手順
略式の起訴の流れは以下の通りです。
🔹 捜査の開始
(警察・検察による捜査)
↓
🔹 検察の判断
(証拠をもとに起訴の可否を決定)
↓
🔹 略式起訴の申請
(被疑者の同意を得て簡略な手続きで進行)
↓
🔹 裁判所の判断
(書面審理で罰金・科料を決定)
↓
🔹 処分の確定
(罰金納付で手続き終了)
刑事事件では、警察や検察官による捜査後、検察官が起訴するか不起訴にするかを決定します。
検察官が略式起訴を決定した場合、検察官は被疑者に概要を説明し、同意書に署名を求めます。
その同意書に署名をすると、検察官は事件を簡易裁判所に起訴し、裁判官は書類審査で罰金額を決定し、略式命令を出します。
その後、罰金を納付すれば手続きは完了となります。
略式起訴の不服がある場合の対処法
略式起訴に不服がある場合には、略式命令の告知を受け取った日から14日以内であれば、裁判所に対して、正式な裁判を行うよう求めることができます(刑事訴訟法465条)。
略式起訴にまつわる用語
略式起訴に関連する重要な用語について解説します。
起訴や略式手続き、略式命令、罰金刑、科料など、略式起訴の仕組みを理解するうえで欠かせない用語を、簡単にですが、わかりやすく説明します。
「起訴」
「起訴」とは、検察官が犯罪を犯した疑いがある人物につき、裁判所に対して、正式な裁判を行って判決を下すよう求めることを言います。
これは、捜査の結果検察官が、被疑者が犯罪を犯した証拠が十分にあると判断した場合に行われるものです。
起訴されると、裁判を受けることになり、罪の有無及び刑罰について裁判で決定されることになります。
「略式手続」
略式手続きとは、略式起訴において行われる手続き一般のことを指します。
略式起訴そのものという意味で使用されることもあります。
「略式命令」
裁判所が被告人に対して、罰金額及びその支払いについて命じるものになります。
通常の起訴手続きでいう判決に相当するものです。
「罰金刑」
罰金刑は、その名の通り、金銭的な罰を科す刑罰です。
犯罪の種類や状況に応じて、法律で定められた額の範囲で科せられます。
前記の通り、100万円以下の罰金に相当するものであれば、略式起訴の対象となります。
「科料」
科料とは、金銭的な罰金の一種です。
科料は1000円から1万円の間と、金額が比較的小さいため、拘禁刑や罰金よりも軽い処罰とされていますが、違反者には反省を促す意図が込められています。
よくある質問
略式起訴に関しては、「略式起訴で前科がつくのか」「罰金を支払えない場合はどうなるのか」といった疑問を持つ方が多くいます。
本記事では、これらの質問について分かりやすく解説します。
略式起訴で前科がつくのか?
前科は有罪判決が確定した際につくものです。
そして、略式命令が確定した場合には、確定判決と同様の効力が生じます(刑事訴訟法470条)。
したがって、略式起訴は前科が付いてしまうものとなります。
罰金を払えない場合の対処法は?
略式命令により支払うことが命じられた罰金額が支払えない場合は、「労役場留置」という手続きがとられることになります。
労役場留置とは、日当5000円で計算され、罰金に相当する金額の分労役場という施設で強制的に働かされることをいいます。
まとめ
略式起訴は、簡略化された手続きで迅速に解決できる反面、証拠提出や反論ができないデメリットもあります。
他方でデメリットもあり、前科がつくことになります。
もしご自身のケースで、略式起訴に同意したほうがいいのか、争った方が良いのかを迷った際は、早期に弁護士に相談し、適切な対応を検討することをおすすめします。
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- 契約法務 、 人事・労務問題 、 紛争解決 、 債権回収 、 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
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- 國學院大学法学部法律学科 卒業 中央大学法科大学院 修了 弁護士登録 東京スタートアップ法律事務所入所