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更新日: 弁護士 山口 友視香

私人逮捕とは?認められるケース・認められないケースを専門家がわかりやすく解説

私人逮捕とは?認められるケース・認められないケースを専門家がわかりやすく解説
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もし、あなたが、犯罪行為を目撃したら、どのような行動をとりますか。

近年、「私人逮捕系」と呼ばれるYouTuberが注目を集めたということがありました。

それと同時に、私人逮捕にかかる問題も話題になりました。

では、私人逮捕にはどのような問題があるのでしょうか。

以下、私人逮捕についてご説明いたします。

私人逮捕とは何か

私人逮捕とは、警察や検察官等の捜査機関に属さない人、いわゆる私人が行う逮捕のことを言います。

私人逮捕が認められる条件

私人逮捕は、いかなる場合にも認められるというわけではありません。

つまり、私人逮捕が認められるためには条件があります。

【逮捕の種類】

そもそも、「逮捕」には、「通常逮捕」、「現行犯逮捕」、「緊急逮捕」の3種類があります。

「通常逮捕」(刑事訴訟法199条)

逮捕状に基づいて行われる逮捕のことをいいます。

「現行犯逮捕」(刑事訴訟法213条)

現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を逮捕することをいいます。

「緊急逮捕」(刑事訴訟法210条)

急速を要し、逮捕状を求めることができないときに行われる逮捕をいいます。

上記のうち、通常逮捕と緊急逮捕は警察官や検察官等のみに認められている逮捕となりますので、私人が行うことができるのは、「現行犯逮捕」のみということになります。

現行犯人の条件

上記のとおり、私人が現行犯人を逮捕することが認められる場合がありますが、ここでいう現行犯人の条件についてご説明いたします。

刑事訴訟法212条は、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を現行犯人とする(1項)」、「①~④のいずれかにあたる者が、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。(2項)」旨定めています。

  • 「現行犯人:現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を現行犯人とする」
    これは、犯罪があったこと及びその人が犯人であることが明白であることを指すと理解されています。
  • 「準現行犯人:①~④のいずれかにあたる者が、罪を行い終わってから間がないと明らかに認められるときは、これを現行犯人とみなす。」
    これは、
    ①「あの人は泥棒です!」等と呼ばれ追いかけられている者や、②被害品や明らかに犯罪に使用したと思われる凶器を所持している者、③身体や被服に犯罪の顕著な証跡がある者(血がついている等)、④声をかけられて逃げ出した者が、犯罪を行い終わって間もない状況だと明らかに認められるときは、現行犯人とみなされるということです。

軽微犯罪は私人逮捕が限定される

軽微な犯罪の場合は、私人逮捕が認められる条件が限定されています。

つまり、軽微な犯罪(30万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間2万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪)については、以下のいずれかの条件を満たした場合に、現行犯逮捕が認められます(刑事訴訟法217条)。

  • 犯人の住居または氏名が明らかではない場合
  • 犯人が逃亡するおそれがある場合

また、軽微な犯罪とは、侮辱罪や過失傷害罪などがあてはまります。

私人逮捕が認められる3つのケース

私人逮捕が認められる具体的なケースを説明いたします。

1. 万引き犯について

日常生活において目撃する可能性の高い犯罪の1つとして、万引きが挙げられます。

万引きについては、犯人が商品をバッグ等にいれた時点で窃盗罪が成立します。

そのため、バッグ等に商品を入れた時点であったり、万引きをした後に店舗から出たばかりの時点で取り押さえれば、私人逮捕として認められる可能性があります。

2. 暴行について

また、日常生活において、酔っ払い同士のけんかもよくみる光景ではないでしょうか。

その中で、犯人が相手方を殴ったという場合、暴行罪や傷害罪が成立します。

そのため、殴っている時点であったり、殴った後にその場から立ち去ろうとしている人を取り押さえれば、私人逮捕として認められる可能性があります。

3. 痴漢について

そして、駅などにおいて、「その人痴漢です!誰か捕まえて!」と言われながら追いかけられている人を見かけることがあるかも知れません。

ここで、その追いかけられている人を取り押さえれば、準現行犯人の私人逮捕として認められる可能性があります。

もっとも、いずれのケースであっても、「万引き犯だから」、「暴行犯だから」、「痴漢だから」私人逮捕が許されるというわけではなく、状況によって許されない可能性があることを頭にいれておきましょう。

私人逮捕が認められない4つのケース

1. 指名手配犯について

「この顔を見たことがある!」と指名手配されている人を町中で見かけるということがあったとしましょう。

この場合、「警察が捕まえることができなくて、指名手配をされているような人だから、すぐに捕まえなくちゃ!」という気持ちになるかも知れません。

しかし、指名手配犯は現行犯人ではなく準現行犯人でもありませんので、私人逮捕が認められる条件を満たしません。

そのため、指名手配犯と出くわした場合は、警察に通報するにとどめましょう。

2. 客引きについて

夜の街で、客引き行為を見かけることがあるかも知れません。

客引き行為については、軽犯罪法違反等にあたる可能性があります。

しかし、客引き行為自体は、軽微な犯罪といえるため、犯人の住居もしくは氏名が明らかではない場合、または犯人が逃亡するおそれがある場合でなければ、私人逮捕が認められる条件を満たしません。

3. 怪しい挙動をする人について

何かしらのドラッグを使用しているのではと疑わざるを得ない挙動をしている人がいた場合、私人逮捕ができるのでしょうか。

この場合、あくまで疑いであって、現行犯人や準現行犯人でないのであれば私人逮捕は認められません。

そのため、その人を放置することができない状況なのであれば、警察に通報しましょう。

4. 逮捕の必要性がない場合について

そもそも、逮捕には、逮捕をする必要性(逃亡のおそれや罪証を隠滅するおそれ)が求められます。

現行犯逮捕にあたって、逮捕の必要性が認められるケースは多いでしょうが、YouTuberによる動画目的の私人逮捕においては、逮捕の必要性が認められないケースもあるかと思います。

私人逮捕後に行き過ぎた対応をすると罪に問われる可能性も

私人逮捕をした後の行動もポイントです。

つまり、私人逮捕後は、直ちに警察官や検察官等に犯人を引き渡す必要があります。

これを怠ると、むしろ私人逮捕をした人が逮捕監禁罪などの罪に問われる可能性があります。

また、私人逮捕をした後、犯人が逃走を図ろうとするということも想定されます。

このとき、私人逮捕をした人が、犯人に対して暴行を加え制止させる場合があるかも知れませんが、状況や内容によっては、私人逮捕をした人が暴行罪や傷害罪に問われる可能性もあります。

よくある質問

また、私人逮捕において、よくある質問をご紹介いたします。

私人が他人に手錠をかけても良いのか?

逮捕と言えば、手錠というイメージがあると思います。

そもそも、私人が手錠を持ち歩いているという状況はあまり想定できませんが、私人が現行犯人を逮捕する際、手錠をかけても良いのでしょうか。

これは、社会通念上必要かつ相当と認められる限度内であれば許されるという回答となります。

つまり、私人であっても、警察等であっても、現行犯逮捕のため手錠をかけることが必ず許されるというわけではなく、逃走を防ぐために手錠をかける必要性かつ相当性があるかという点がポイントとなります。

私人逮捕が誤認だった場合、逮捕した本人は責任を問われる?

えん罪という言葉もあるとおり、私人逮捕が誤認だったというケースもあるでしょう。

このような場合、逮捕した本人は責任を問われるでしょうか。

逮捕によって、逮捕された人は身柄拘束を受け、仕事を休んだり、家族を失ったり、様々な不利益を被る可能性があります。

そのため、その逮捕が誤認であったとすると、逮捕された人は、逮捕をした私人に対して責任追及を考えるでしょう。

責任追及としては、刑事上(逮捕監禁罪)や民事上(不法行為)の手段が考えられますが、現行犯人であることを信じたことについて相当な理由があるというのであれば、その責任追及が認められる可能性は低いと思料します。

裏を返せば、現行犯人であることを信じたことについて相当な理由がなかったとされれば、逮捕をした人は何らかの責任追及がされる可能性があります。

動画撮影のためのパフォーマンスとして安易に逮捕をするとなれば、責任追及される可能性はあがると言えるでしょう。

私人逮捕で犯人を捕まえたら報酬が貰える?

適法な私人逮捕は感謝される行為であるため、報酬がもらえるのではと期待する人もいるでしょう。

しかし、私人逮捕による報酬について定めがあるわけではありませんので、報酬は期待しない方が良さそうです。

時折、逮捕をした私人について感謝状を授与するニュースを見かけますが、良くて感謝状をもらえる程度です。

私人逮捕をしたことで、逆に逮捕されてしまった場合の対処法

私人逮捕をしたことで逆に逮捕をされてしまったというニュースを見たことがある人もいるでしょう。

このような場合、速やかに弁護士に相談するべきです。

弁護士は、あなたのために釈放や減刑のための行動をとったり、アドバイスをしてくれます。

初動が非常に大切ですので、早期に弁護士に相談することが重要です。

私人逮捕されてしまった場合の対処法

逆に、私人逮捕をされてしまった側だとしても、速やかに弁護士に相談するべきです。

早期の弁護士の介入により、あなたにとって少しでも良い結果に繋がる可能性があがります。

被疑事実が真実であろうと、えん罪であろうと、私人逮捕が不適切であるという場合もあり得るので、早期に弁護士に相談することが重要です。

まとめ

「私人逮捕をする」というのは感謝されるべき行為かも知れません。

しかし、私人逮捕の状況や内容によっては、あなた自身が責任を追及される可能性があります。

そのため、私人逮捕にあたっては、私人逮捕が認められる条件等をきちんと把握する必要があると言えるでしょう。

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執筆者 弁護士山口 友視香 京都弁護士会 登録番号65256
人に寄り添うことは、弁護士にとって、とても重要なことであると思っています。 なぜなら、依頼者の方に寄り添うことにより、依頼者の方を知ることができ、依頼者の方のための最善の解決策を導くことができると考えるからです。 思ってもいないところに解決の一手がある可能性もあるので、何でも気軽にお話しいただければと思います。
得意分野
契約法務 、 人事・労務問題 、 紛争解決 、 債権回収 、 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
プロフィール
近畿大学法学部 首席卒業 近畿大学法科大学院 首席修了 弁護士登録 東京スタートアップ法律事務所入所

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