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更新日: 弁護士 宮地 政和

セックスレスによる不倫は多い?原因やリスク、対処方法を徹底解説

セックスレスによる不倫は多い?原因やリスク、対処方法を徹底解説
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近年、夫婦間の「セックスレス」が原因で、関係が冷え込み、ときには不倫に発展してしまうケースが増えています。

セックスレスの背景には、仕事や育児による疲労、心理的なすれ違い、身体的な問題など様々な要因が存在します。

こうした状況が長期化すると、夫婦の絆が損なわれ、外に愛情を求めてしまう人も出てきます。

本記事では、弁護士の視点からセックスレスの定義や原因、不倫との関係性、そして不倫を未然に防ぐためにできる対策や、万が一疑いが生じた場合の適切な対応について、分かりやすく解説していきます。

セックスレスとは?

セックスレスとは、一般社団法人日本性科学会の定義によれば
病気など特別な事情がないにもかかわらず、カップルの合意した性交等の性的接触が1か月以上なく、その後も長期にわたることが予想される状態」を指しますが、一般社会において確定した定義が存在するものではありません。

この定義によると、性的接触の単なる一時的な減少ではなく、それが継続的になることで、夫婦関係に心理的・感情的な距離が生じやすくなる点が問題とされています。

なお、ここでいう性的接触には、性交のみならずキスやペッティングも含みます。

セックスレスの割合

以下の調査は、現在のパートナーについてに限らず、セックス経験のある任意の男女に対して
「この1年間のおよそのセックス回数について教えてください」という質問に対する回答をグラフにまとめたものです。

上述のセックスレスの定義から、当該調査におけるセックスレスを性交渉が月1回もないものと定義すると、以下グラフでは、セックスレスの者は「年数回」及び「1年以上なし」に該当します。

まず年代が上がるにつれてセックスレスの割合が顕著に増加する傾向がみられます。

男性

    20代で33.6%だが、30代では51.1%、40代では57.8%、50代では69.3%、60代では79.0%に達する。

女性

    • 50代までは増加傾向で、20代で33.6%、30代で49.5%、40代で64.4%、50代では79.5%、と増加する。

 

    60代では78.0%と50代女性よりは下がる(とはいっても、60代女性の「1年以上なし」の割合は50代女性以下よりも高い)。

男女で比べると、30代までのセックスレスの割合は男性の方が高いが、それ以降は60代を除いて女性の方が高いです。

全体的には女性の方がセックスレス割合が高く、性別差は中高年層程大きく、特に「1年以上なし」については顕著です。

このことから、加齢による性欲低下や健康問題に加え、長期的関係における心理的要因も影響していると考えられます。

セックスレスの主な原因

セックスレスの背景には、夫婦それぞれに異なる事情や心理が存在します。
本項目では、夫側と妻側の視点から主な原因を整理し、その特徴や夫婦関係への影響について解説します。

妻側の原因

妻側のセックスレスの原因には、出産や育児による身体的・精神的負担、ホルモンバランスの変化、夫への愛情や信頼感の低下、家事や仕事の疲労、性生活への不満や価値観の不一致等が挙げられます。

夫側の原因

夫側のセックスレスの原因には、仕事の多忙やストレス、加齢による性欲や生殖機能の低下、夫婦関係の不和、妻への性的魅力の減退、性生活への不満や価値観の不一致等が挙げられます。

セックスレスを理由に不倫することは許される?

日本の法律において、セックスレスを理由に不倫(配偶者以外との肉体関係を持つこと)をすることが、明示的に禁止されているわけではありません。

しかし、民法上夫婦の一方は他方に対して貞操義務(配偶者以外とは肉体関係を持たない義務)を負っていますし、不倫は民法上「不貞な行為」として離婚の原因として規定されています。

配偶者が不貞行為を行った場合、不貞行為をされた側は、精神的苦痛を受けたことを理由に不法行為に基づく慰謝料を請求できるほか、離婚請求をすることができます。

他方で、日本の法律上、不貞行為をした者を刑法上罰する規定はなく、あくまで民法上は金銭的解決又は夫婦関係の解消によります。

そして、セックスレスそのものは違法でも不貞行為を許すものではありません。
つまり、セックスレスがあるからといってそれだけで不貞行為をしても慰謝料請求権が発生しないだとか離婚原因にならないだとかに繋がるわけではないということです。

しかしながら、後述するように、セックスレスが夫婦関係の破綻として認められるならば、不貞行為をしても慰謝料請求が発生しないなどの意味を持つこともあります。

また、セックスレスがそれ自体又は他の原因と合わさり婚姻関係を継続し難い重大な事由として認められるのならば、離婚事由となり得ます。

まとめると、セックスレスを理由に不倫をした場合、法的には不法行為となって慰謝料の支払義務を生じさせたり離婚請求の根拠となったりします。

刑事罰はありませんが、民事上の責任は免れません。パートナーに対して性生活上の不満があっても、まずは夫婦間で話し合い、解決を図ることが重要であり、不倫に逃げるべきではありません。

不倫をした場合、慰謝料や離婚といった形の解決が図られることがありますが、その前提には、不貞をされた側に対して精神的被害を負わせているということを理解しておくべきでしょう。

夫婦関係破綻の抗弁とは?

夫婦関係の破綻の抗弁とは、配偶者の不貞相手がもう一方の配偶者から慰謝料請求をされた際に、
「その時点で夫婦関係はすでに破綻していたので、不貞行為によって損害は発生しない」と主張する法律上の反論のことをいいます。

日本の民法では、夫婦双方には「貞操義務」、つまり配偶者以外と性的関係を持たない義務があります。

通常、不倫はこの義務に反しているので、不倫によって精神的被害を受けた配偶者は慰謝料を請求できます。

ただし、この慰謝料請求の根拠には、平穏な夫婦関係というものがあり、最高裁判例では、不倫の時点で既に夫婦関係が実質的に破綻している場合、平穏な夫婦関係が存在せず、不倫によって配偶者の権利や法益が侵害されたとはいえないので、慰謝料請求は認められないとされています。

破綻の判断には、「長期の別居」や「離婚の意思が明確」、「事実上の夫婦生活が存在しない」等の事情が必要です。

単なる不仲や日常の喧嘩程度では認められません。

また、「破綻している」と主張する側に証明責任があるため、客観的な証拠(別居期間、第三者の証言等)が重要となります。
注意点として、破綻の抗弁を主張すると感情的な対立が激化し、紛争が長期化しやすい面も指摘されています。

そのため、協議や主張の際は、弁護士など専門家の助言を受け冷静に行うことが望ましいでしょう。

不倫を理由にセックスレスになった場合は慰謝料を請求できる?

不倫が原因でセックスレスとなった場合でも、慰謝料請求の可否はセックスレスの有無によらず、不倫という不法行為自体によって認められます。

ただし、不倫によって配偶者が精神的苦痛を受けたうえ、さらにセックスレスという形で夫婦間の親密な関係が失われた場合には、夫婦関係の破壊がより深刻である、つまり配偶者の精神的被害が甚大と評価されます。

このように精神的損害が通常より大きいと認められる場合、裁判所は慰謝料額を通常より増額する判断をすることがあります。

セックスレスによるリスク【拒んでいる側】

セックスレスによるリスクについて、セックスを拒んでいる側にとってのリスクを中心に解説していきます。

以下、離婚事由に該当する可能性、慰謝料を請求される可能性に分けて説明していきます。

離婚事由に該当する可能性

民法770条1項5号は、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」がある場合には離婚請求ができると定めています。

そして、セックスレスが長期間続いていたり、性交が不能であることを婚姻時には知らなかったりして、夫婦間の愛情や信頼関係が失われ、婚姻生活の回復が困難な場合には、この「重大な事由」に該当し得ます。

ただし、病気や性交渉ができないやむを得ない事情がある場合は直ちにはこの離婚事由とはならないとされています。

つまり、セックスレスの期間や夫婦関係全体の状況等が総合的に判断されます。

慰謝料を請求される可能性

セックスレスによって慰謝料請求が認められるかは、その態様や期間、理由等によって判断されます。

夫婦間でも配偶者の権利利益侵害があれば慰謝料請求は可能です。

最高裁判例でも、正当な理由なく長期間性交渉を拒否し続けた行為が、夫婦の婚姻関係を破綻させたことについて、相手方に精神的苦痛を与えるとして慰謝料請求を認めた例があります。

ただし、病気や妊娠、心身の不調等によって性交渉ができないといった正当な理由がある場合は、直ちに不法行為とは認められません。

セックスレスによるリスク【拒まれている側】

セックスを拒まれている側にとって、セックスレスは心身の両面で大きなリスクを伴います。

まず心理的には、配偶者から拒否され続けることで「愛されていないのでは」、「魅力がないのでは」という劣等感や孤独感が強まり、
自己肯定感の低下や抑うつ状態を招くことがあります。これが長期化すると、夫婦間の信頼関係や情緒的な繋がりが薄れ、会話やスキンシップも減少し、関係修復が難しくなります。

また、性的欲求が満たされない状態が続くと、夫婦双方不倫や風俗利用等外部での性的満足を求める行動に至る危険性もあります。

これは道徳的な問題のみならず不貞慰謝料請求や離婚といった法的な問題にも発展する恐れがあります。

身体面では、性的接触が減ることでオキシトシンやセロトニンといった幸福感や絆を強めるホルモン分泌が低下し、ストレスや不眠の悪化、生活の質低下に繋がる場合があります。

このように、セックスレスは単に性生活の不満にとどまらず、精神的苦痛、夫婦関係の破綻、健康の悪化等複合的なリスクを伴うため、早期の対話や解決の努力が重要です。

セックスレスによる不倫を防ぐ方法

積極的なコミュニケーション

セックスレスによる不倫を防ぐためには、まず夫婦間の積極的なコミュニケーションが不可欠です。

性生活に関する不満や要望は、恥ずかしさや遠慮から口にしにくいものですが、沈黙のままでは誤解や不信感が蓄積します。

性生活の頻度や方法、タイミング、雰囲気作り等について率直に話し合うことで、相手の考えや感情を理解でき、すれ違いを減らすことができます。

また、性生活以外でも感謝の言葉やスキンシップを日常的に意識することが大切です。

会話や触れ合いの積み重ねは心理的距離を縮め、自然と性的関係の再構築にもつながります。

相手を責めるのではなく、「私はこう感じている」という自分の気持ちを主語にした伝え方を心掛けると、相手も反抗的にならず受け止めやすくなります。

専門家への相談

夫婦間での話し合いが難しい場合は、夫婦カウンセラーや臨床心理士等の専門家への相談が有効です。

第三者の視点から問題を整理し、感情的対立を避けながら解決策を導くことができます。健康上の原因が疑われる場合は、泌尿器科や婦人科の受診も選択肢です。

不倫が疑われる場合の弁護士への相談・依頼

セックスレスが長期化し、不倫の兆候が見られる場合は、早期に弁護士へ相談することが重要です。

弁護士は、不倫の証拠収集方法や法的手段、慰謝料請求の可否・相場について具体的に助言できます。また、感情的な対応を避けつつ、将来の離婚や婚姻継続を見据えた戦略を立てることが可能です。

不倫の証拠は、メール・SNSのやり取り、ホテルへの出入り写真等、交渉や裁判で効果的な客観的証拠として収集する必要があり、弁護士の助言があれば証拠不十分による請求失敗を防げます。加えて、弁護士への早期の相談は、精神的負担の軽減にも繋がります。

まとめ

以上、弁護士の視点から、セックスレスの定義や原因、不倫との関係性、そして不倫を未然に防ぐためにできる対策や、万が一疑いが生じた場合の適切な対応について、解説していきました。

セックスレスは第一次的には夫婦間の問題ですが、これは社会的な問題としても現れます。

弁護士の関与があれば、セックスレスによる問題を解決したり、問題の発生を未然に防止したりすることができるかもしれません。

また、弁護士と話すことで、問題解決の流れも分かり精神的な負担も和らぐ可能性があります。ぜひ、弊所弁護士を頼ってみてください。

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執筆者 弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会 登録番号48945
弁護士登録後、都内の法律事務所に所属し、主にマレーシアやインドネシアの日系企業をサポート。その後、大手信販会社や金融機関で信販・クレジットカード・リース業務に関する法務やコンプライアンス、プロジェクトファイナンスなどの経験を積む。これらの経験を活かし、個人の法的問題に対し、専門的かつ丁寧に対応しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
プロフィール
岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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