浮気の慰謝料請求のために裁判を起こす方法は?流れや費用を紹介

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記事目次
配偶者の浮気が発覚し、慰謝料を請求したいと考えたとき、「裁判」という言葉が頭をよぎる方は少なくないでしょう。
しかし、実際に裁判を起こすとなると、どのような手続で進むのか、費用はいくらかかるのか、そしてどのような結果が待っているのか、不安なことばかりかもしれません。
この記事では、浮気の慰謝料請求に関する裁判(不倫裁判)について、手続の流れや費用の目安、メリット・デメリットまで、法律の専門家が分かりやすく解説します。
裁判に勝つためのポイントや、裁判以外の解決方法にも触れていきますので、ご自身の状況に合った最善の選択をするための一助となれば幸いです。
配偶者に浮気された時に行う不倫裁判とは
厳密には不倫裁判という言葉は法律用語ではありませんが、不倫裁判という言葉が使われる場合、配偶者やその浮気相手の「不貞行為(ふていこうい)」によって受けた精神的苦痛に対する慰謝料を請求する裁判を指すことが一般的でしょう。
不貞行為とは、法律上、既婚者が配偶者以外の異性と自らの意思で肉体関係を持つことをいいます。
これは、不法行為(出典:e-Gov法令検索「民法」第709条)に基づく損害賠償請求であり、刑事事件ではなく民事事件として扱われます。したがって、裁判で慰謝料の支払いが命じられたとしても、相手に前科がつくことはありません。
離婚裁判とは
不倫裁判としばしば混同されるものに「離婚裁判」があります。
離婚裁判は、夫婦の一方が離婚を望んでいるにもかかわらず、話し合い(協議)や家庭裁判所での調停でも合意に至らない場合に、離婚そのものを求めて行う裁判です。
不倫が原因で離婚を決意した場合、配偶者との関係では、離婚の可否や親権、財産分与などと一緒に慰謝料を請求する「離婚裁判」を提起し、不倫相手には不貞慰謝料を請求する「不倫裁判」を提起することが多いでしょう。
一方で、離婚はせずに浮気相手にのみ慰謝料を請求したい場合などは、「不倫裁判」を単独で提起することになります。
不倫裁判はどこが管轄している?
不倫裁判(損害賠償請求訴訟)は、請求する慰謝料の金額によって管轄の裁判所が異なります。
- 請求額が140万円以下の場合:簡易裁判所
- 請求額が140万円を超える場合:地方裁判所
不貞慰謝料請求額は140万円を超えるケースが多いため、多くの場合は地方裁判所が管轄となります。
裁判をする場所
不貞行為は民法上の不法行為ですから、不法行為に関する訴訟の土地管轄についての定めに従うことになります。
原則として、訴えられた側(被告)の住所地を管轄する裁判所で開かれます。例えば、あなたが東京都在住で、訴える浮気相手が大阪府に住んでいる場合、原則として大阪の裁判所で手続が進むことになります。
ただし、不法行為に関する訴訟では、不法行為があった場所(浮気が行われた場所)を管轄する裁判所にも申立てが可能です。
また、損害賠償請求訴訟は財産上の訴えですから、義務履行地にも土地管轄があり、これは特別な約束がない限り慰謝料を請求する側(原告)の住所地となります。
不倫訴訟を行う際の流れ
不倫慰謝料請求訴訟は、一般的に「訴訟の提起」から始まり、「判決」または「和解」によって終結することが多いです。
相手が判決に不服を申し立てれば、さらに高等裁判所、さらに不服を申し立てれば最高裁判所で審理が続くこともあります。
以下で、具体的な流れを見ていきましょう。
1.訴訟の提起(提訴)
まず、訴える側(原告)が「訴状」を作成し、証拠書類とともに管轄の裁判所に提出します。訴状が受理されると、裁判所から訴えられた側(被告)へ訴状の副本や第1回口頭弁論期日呼出状などが送達されます。
2.第1回口頭弁論
被告は、訴状の内容に対して反論や認否を記載した「答弁書」を提出します。裁判期日では、原告が訴状の内容を、被告が答弁書の内容をそれぞれ陳述します。ただし、初回の期日は被告側が答弁書を提出していれば欠席することも多く、その場合は5〜10分程度で終了します。
3.続行期日(弁論準備手続)
第2回目以降の期日は、非公開の準備室で、双方の主張や証拠を整理する「弁論準備手続」として行われることがほとんどです。第一回の期日も、口頭弁論ではなく、弁論準備手続となることが多いです。約1ヶ月に1回のペースで期日が開かれ、お互いの主張(準備書面)や証拠の提出を繰り返します。
4.証人尋問・当事者尋問
主張と証拠の整理が終わると、裁判官の前で、訴訟の当事者(原告・被告)や証人に直接質問をする「尋問」の手続が行われます。尋問は、判決の行方を左右する非常に重要なプロセスです。
5.和解の勧告
期日の進行に応じて、裁判官がこれまでの審理内容を踏まえた心証(判決の見通し)を示しながら、判決ではなく話し合いによる解決(和解)を勧めてくることが多くあります。双方が和解案に合意すれば、その内容を記した「和解調書」が作成され、訴訟は終了します。尋問に至る前に和解で終結する場合も多いです。
6.判決
和解が成立しない場合は、裁判官が最終的な判断である「判決」を言い渡します。判決書が当事者に送達されてから2週間以内に、どちらからも不服申立て(控訴)がなければ、判決が確定します。
7.控訴
第一審の判決に不服がある場合、判決書の送達日から2週間以内に高等裁判所へ「控訴」することができます。
8.判決の確定と強制執行
判決が確定したにもかかわらず、相手が慰謝料を支払わない場合、判決書に基づいて相手の給与や預金などの財産を差し押さえる「強制執行」の申立てができます。
不倫訴訟にかかる費用
不倫訴訟には、主に「裁判所に納める費用」と「弁護士費用」の2種類がかかります。
弁護士に依頼せず本人で訴訟を行うことも可能ですが、専門的な知識が必要なため、弁護士に依頼するのが一般的です。
以下はあくまで一般的な目安です。具体的な事案によって金額は変動します。
費用の種類 | 金額の目安(慰謝料300万円を請求する場合) | 概要 |
裁判所に納める費用 | ||
収入印紙代 | 20,000円 | 訴状に貼付する印紙代。請求額に応じて変動。 |
郵便切手代(予納郵券) | 約6,000円 | 書類の送達などに使われる切手代。裁判所によって異なる。 |
弁護士費用 | ||
相談料 | 0円~1万円/時間 | 法律相談にかかる費用。無料相談を実施している事務所も多い。 |
着手金 | 20万円~40万円程度 | 弁護士に依頼した段階で支払う費用。結果にかかわらず返金されない。 |
報酬金 | 経済的利益(回収できた金額)の10%~20%程度 | 慰謝料を獲得できた場合に、その金額に応じて支払う成功報酬。 |
日当・実費 | 実費 | 弁護士が裁判所へ出廷するための交通費や、遠方の場合の日当など。 |
訴えられる側の費用
訴えられた側(被告)も、弁護士に依頼すれば当然費用がかかります。費用の体系は訴える側と大きくは変わりませんが、報酬金は「相手の請求額をどれだけ減額できたか」を基準に計算されることが一般的です。
費用の種類 | 金額の目安(300万円を請求された場合) |
相談料 | 0円~1万円/時間 |
着手金 | 20万円~40万円程度 |
報酬金 | 経済的利益(減額できた金額)の10%~20%程度 |
不倫訴訟を行うメリット
慰謝料請求の方法は、当事者同士の交渉や調停など様々です。その中で、あえて裁判という手続を選ぶことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。
不倫をされた側と、してしまった側、それぞれの立場から解説します。
不倫された側のメリット
- 慰謝料を獲得できる可能性が高い:相手が交渉に応じない場合でも、裁判所の判決によって法的な支払義務を発生させることができます。支払われない場合は、強制執行も可能です。
- 適正な金額の慰謝料が認められる:過去の判例や証拠に基づき、裁判官が客観的な立場で適正な慰謝料額を判断してくれます。相手から不当に低い金額を提示されている場合に有効です。
- 相手にプレッシャーを与えられる:「裁判を起こされた」という事実が、相手に精神的なプレッシャーを与え、話し合いによる解決(和解)に応じやすくなることがあります。また、裁判官から現実的な見立てを伝えられることも、和解に応じやすくなる要因になります。
不倫した側のメリット
- 法外な請求を退けられる:感情的になった相手から、相場を大幅に超える法外な慰謝料を請求されている場合、裁判で適正な金額に落ち着かせることができます。
- 支払義務の有無をはっきりさせられる:そもそも不貞行為の事実がない、あるいは相手の夫婦関係が既に破綻していた場合など、支払義務がないことを法的に確定させられる可能性があります。
- 専門家(弁護士)を代理人に立てられる:弁護士に依頼すれば、精神的な負担が大きい相手との直接のやり取りをすべて任せることができます。弁護士は、訴訟に至る前の、交渉段階からでも代理人とすることができます。自分で対応をする必要がなくなるという点は、大きなメリットといえます。
不倫訴訟を行うデメリット
一方で、不倫訴訟には時間や費用、精神的な負担といったデメリットも存在します。
メリットとデメリットを十分に比較検討することが重要です。
不倫された側のデメリット
- 時間と手間がかかる:訴訟の提起から判決まで、短くても半年、複雑な事案では1年以上に及ぶことも珍しくありません。その間、何度も裁判所に足を運んだり、書面を作成したりする必要があります。
- 精神的な負担が大きい:裁判の場で、浮気の詳細な状況を主張・立証しなければなりません。相手方から反論される中で、つらい記憶と向き合い続けることは、大きな精神的苦痛を伴います。
- 必ずしも高額な慰謝料が認められるとは限らない:裁判は証拠に基づいて判断されるため、十分な証拠がなければ、慰謝料が認められなかったり、想定より低い金額になったりするリスクがあります。
- プライバシーの問題:裁判は原則として公開の法廷で行われます。誰でも傍聴できるため、プライベートな情報が他人に知られる可能性がゼロではありません。(ただし、弁論準備手続は非公開で行われることが多いです)
- 人間関係の悪化:裁判を通じて対立が先鋭化し、配偶者や浮気相手との関係が完全に断絶してしまう可能性があります。特に、浮気をした配偶者との関係修復を望んでいる場合には、慎重な判断が必要です。
不倫した側のデメリット
- 費用がかかる:弁護士費用や、判決で支払いを命じられた慰謝料、遅延損害金など、多額の費用負担が発生します。
- 社会的な信用を失うリスク:訴訟の事実が職場や家族に知られてしまう可能性があります。特に、職場内不倫などの場合は、懲戒処分の対象となるリスクも考えられます。
- 時間的・精神的な負担:裁判に対応するために仕事を休む必要が出たり、訴えられているというストレスに長期間さらされたりします。
- 公開の法廷で尋問される:証人尋問・当事者尋問の期日では、公開の法廷で不貞行為の詳細について質問されることになり、精神的なダメージを受ける可能性があります。
- 財産を差し押さえられる可能性がある:判決で慰謝料の支払いが確定したにもかかわらず支払いを怠ると、給与や預貯金といった財産を強制的に差し押さえられるリスクがあります。
不倫訴訟を行う場合に知っておきたいこと
不倫訴訟に踏み切る前には、いくつか知っておくべき重要なポイントがあります。
これらを理解しておくことで、裁判を有利に進め、望む結果を得られる可能性が高まります。
裁判に勝つには「証拠」がすべて
不貞行為の慰謝料請求裁判では、客観的な証拠によって不貞行為の事実を証明できるかが最も重要です。
裁判官は当事者の話だけを鵜呑みにすることはなく、あくまでも証拠に基づいて事実を認定します。
不貞行為を立証できる証拠としては、以下のようなものが挙げられます。
- ラブホテルに出入りする写真や動画
- 肉体関係があったことを認める会話の録音データやメッセージ
- ホテルの領収書やクレジットカードの利用明細
- GPSの移動履歴 など
慰謝料請求やモラハラで離婚する場合の慰謝料の相場・証拠の集め方でも解説されている通り、どのようなケースでも証拠の収集は極めて重要です。
慰謝料請求には「時効」がある
不貞行為についての慰謝料請求権には、法律で定められた「消滅時効」が存在します。
この期間を過ぎてしまうと、たとえ不貞行為の事実があったとしても、慰謝料を請求する権利が失われてしまいます。
不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効期間は以下の通りです。(出典:e-Gov法令検索「民法」第724条)
- 不貞行為の事実と浮気相手を知った時から3年間
- 不貞行為があった時から20年間
通常は「知った時から3年」が適用されるケースがほとんどです。時効が迫っている場合は、裁判を起こすなどの法的措置を取ることで時効の完成を阻止できます。
離婚しなくても慰謝料請求は可能
慰謝料請求は、必ずしも離婚とセットで行う必要はありません。離婚せずに夫婦関係を再構築する場合でも、精神的苦痛を受けたことに対する慰謝料を、浮気をした配偶者やその浮気相手に請求することが可能です。ただし、後述するように、離婚した場合に比べて慰謝料の金額は低くなる傾向にあります。
不倫慰謝料の相場をケース別に紹介
不倫の慰謝料額は、法律で一律に決まっているわけではありません。婚姻期間、不貞行為の態様、子どもの有無など、様々な事情を考慮して、最終的に裁判官が判断します。
しかし、過去の判例からある程度の相場は存在します。
ケース | 慰謝料の相場 | 概要 |
不貞行為が原因で離婚した場合 | 100万円~300万円 | 夫婦関係が破綻したという精神的苦痛が非常に大きいと判断され、高額になる傾向がある。 |
離婚はしないが別居に至った等夫婦関係が悪化した場合 | 50万円~150万円 | 不貞行為によって夫婦仲に亀裂が入ったが、離婚には至らなかったケース。 |
離婚せず、夫婦関係への影響が軽微な場合 | 50万円未満~100万円 | 不貞行為後、比較的すぐに夫婦関係が修復されたようなケース。 |
上記の金額はあくまで目安です。例えば、不貞行為の期間が非常に長い、相手が妊娠・出産した、などの悪質なケースでは、相場を上回る慰謝料が認められることもあります。
裁判をせずに交渉で解決する3つのメリット
ここまで裁判について解説してきましたが、不倫の慰謝料請求は、必ずしも裁判で解決しなければならないわけではありません。
むしろ、最初は当事者間の話し合い(交渉)から始めるのが一般的です。
裁判を避けて交渉で解決することには、大きなメリットがあります。
1. 早期解決と費用の抑制
裁判は解決までに1年以上かかることもありますが、交渉で収まるようなケースであれば、数か月で解決できる場合も少なくなく、時間的・精神的な負担を大幅に軽減できます。また、裁判所に納める費用がかからず、弁護士費用も裁判に移行するより安く抑えられる可能性があります。協議離婚とは何?調停離婚との違い、手続き、弁護士依頼にかかる費用目安を徹底解説の記事でも触れられているように、裁判外の手続は迅速かつ経済的です。
2. プライバシーの保護
交渉は、当事者(またはその代理人弁護士)間での完全な非公開の話し合いです。裁判のように不特定多数の人にプライベートな問題を知られる心配がなく、ご自身の名誉や社会的な信用を守ることができます。
3. 柔軟な解決が可能
交渉では、慰謝料の金額や支払方法だけでなく、裁判では命じることができないような柔軟な条件を取り決めることも可能です。例えば、「今後一切接触しない」という接触禁止条項や、「口外しない」という守秘義務条項などを盛り込んだ示談書を交わすことができます。
まとめ
不倫の慰謝料請求における裁判は、相手が話し合いに応じない場合に慰謝料を獲得するための強力な法的手段です。
しかし、その一方で、多大な時間、費用、そして精神的な負担を伴うことを覚悟しなければなりません。
裁判を有利に進めるためには、何よりも客観的な証拠が不可欠です。そして、慰謝料請求には時効があることも忘れてはなりません。
多くの場合、まずは裁判ではなく交渉による解決を目指すことが、双方にとってメリットの大きい選択肢となります。
どの手続を選択すべきか、ご自身のケースではいくら慰謝料を請求できそうか、一人で悩まずに、まずは法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。
- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設