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投稿日: 更新日: 弁護士 瀧澤 花梨

借金滞納が長期化するリスク・一括請求や差押えを回避する方法は?

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決められた期日に借金を返済できず、借金滞納が長期化すると様々なリスクが発生します。返済日を1日でも遅れると、遅延損害金が発生し、債権者から督促の電話や通知が来ます。債権者とは、ここではお金を貸した人のことをいます。債権者からの督促に対応せず放置していると信用情報機関に事故情報として登録され、さらには一括請求や訴訟提起、財産差押えなど法的手続へと進んでしまいます。法的手続(特に財産差押さえ)へ移行してしまうと対処が難しくなるため、できる限り早い段階で弁護士に相談するなど、問題解決に向けて動く必要があります。
今回は、借金滞納によって発生する問題、借金滞納が長期化するリスク、近い将来滞納する可能性が高いケースの紹介、一括請求や差押えを回避する方法や手続の流れなどについて詳しく解説します。

借金滞納によって発生する問題点

1.期限の利益の喪失とは

「期限の利益」とは、決められた期日まで返済をしなくてもよいという債務者の利益のことです。決められた返済期日までの期間は、債権者が返済を迫ったとしても債務履行が猶予され、債務者は返済をする必要はありません。例えば、3月1日に100万円の融資を受け、6月30日を返済期限と決めた契約をした場合、6月30日までは債権者より返還請求されたとしても、決められた期日が到来していないため返済を断ることができるのです。
民法第136条第1項に以下のように定められています。

“1.期限は、債務者の利益のために定めたものと推定する。”(民法第136条第1項)

ただし、この期限の利益を債務者が受けることができるのは契約内容を遵守しているときです。債務者が契約に違反して返済をしない場合(契約不履行)、期限の利益は失われ、債権者は債務者に期日が到来していなくても残りの借金を全額返済するように請求することができます。このように、期限の利益を受けることのできる債務猶予期間に、契約不履行により期限の利益が失われることを「期限の利益の喪失」といいます

2.期限の利益が喪失するケース

カードローンや金融機関から借入れをする時に交わす契約(金銭消費貸借契約)では、期限の利益の喪失について規定されていることがほとんどです。期限の利益の喪失については、民法第137条で以下のように定められています。

“次に掲げる場合には、債務者は、期限の利益を主張することができない。
(1)債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
(2)債務者が担保を滅失させ、損傷させ、又は減少させたとき。
(3)債務者が担保を供する義務を負う場合において、これを供しないとき。”

(民法第137条)

上記(2)について補足説明をすると、物的担保(抵当権が設定されている建物)や人的担保(保証人)が滅失・減少したときということです。
民法に規定されている期限の利益喪失についての項目は上記3つですが、実際の金銭消費貸借契約では、債権者が債権回収の機会を著しく失うことのないように、民法に規定されている条項をより拡充した期限の利益喪失事由を定めています。債務者の経済状況の悪化や、破産手続き以外の民事再生の申立があったとき、担保物や保証人について契約当時と比較して変化があったのにもかかわらず連絡のない場合などに、期限の利益を喪失しているとして債務の(一括)請求ができるように定めているケースがほとんどです。

滞納期間の長期化によるリスク

借金の返済日に支払うことができなかった場合、遅延損害金が発生します。約束した期日までに借金を返さないことへのペナルティのようなものです。多忙や返済日を忘れていた等の理由による1日の遅延であっても、遅延損害金は返済日の翌日から発生しますので、決められた期日に入金がないことは大きな問題です。また、債権者からの督促もあります。
さらに、数日程度の遅延ではなく、その後も入金をすることなく滞納期間が長期化した場合には、発生するリスクもより大きくなります。以下に、リスクについて説明します。

1.遅延損害金の発生

借金の返済期日に支払いができない(口座から引き落としができなかった)場合、遅延損害金が発生します。すなわち、本来支払わないといけない金額に遅延損害金を付加して支払わないといけないのです。
遅延損害金は、残金、遅延損害金利率、延滞日数により算出されます。一般的に、遅延損害金は、返済期日の翌日から発生します。
遅延損害金利率は、債権者ごとに異なりますが、通常の貸付利息よりも高い利率になるのが通常です。
なお、利率の上限を定める利息制限法において、遅延損害金の上限利率について、規定している利息の1.46倍を超える遅延損害金は無効になると定められています(利息制限法第4条1項)。

ここで、利息と遅延損害金利率の各上限について、利息制限法の規定を以下に記載しておきます。

借入総額 利息 遅延損害金
10万円未満 20% 29.2%
10万以上から100万円未満 18% 26.28%
100万円以上 15% 21.9%

ただし、消費者金融など、金銭貸借を業として行っている事業者の場合は、この利息制限法4条1項の遅延損害金の上限である1.46倍が適用されません。消費者金融等の金融業者は、利息制限法7条1項で定められている20%までとなっています。

“第四条第一項の規定にかかわらず、営業的金銭消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が年二割を超えるときは、その超過部分について、無効とする。“
(利息制限法7条1項)

2.電話やハガキによる督促

約束どおりに借金の返済をしなければ、数日後に債権者から電話やハガキなどで支払いができていない旨の通知があります。通知を受けた後、支払い日を決めて債権者に約束し、遅延日数分の遅延損害金を加えて支払うなど、通知の内容に従って履行すれば法的手段を取られることはほぼないでしょう。その後は、再度約束通り支払いを継続していけばいいのです。
しかし、債権者からの電話に出ない場合や、ハガキの通知を見ずに対処しない場合は、勤務先や自宅の固定電話、実家に連絡がある可能性があります。決められた期日に入金できておらず、連絡も取れないとなると、債権者として回収不能のおそれがあるため、当然のことです。借入申し込みの際、緊急連絡先として親族の連絡先(主には配偶者や両親のことが多いです)の申告を求められることがありますので、申告した親族の連絡先に連絡がいくことになります。
勤務先等へ電話がかかってくるときは、債権者の会社名ではなく個人名を伝えることが多いようですが、携帯ではなく会社等へ何度も電話がかかってくると、家族や職場の同僚に怪しまれる可能性があるため注意が必要です。

3.振り込み用紙など書面による督促

電話やハガキによる督促にも対応しなかった場合、また対応したうえで支払いの約束をしたにもかかわらずその通りに支払わなかった場合は、自宅に債権者から督促状が届くことが一般的です。
督促状には

  • 入金確認ができていない
  • 未払いになっている借入額・利息
  • 遅延損害金

などが記されており、指定した連絡先へ連絡するよう求められている場合や、振り込み用紙が同封されている場合などもあります。遅延損害金の金利は、債権者によって異なりますが、一般的には年率14%~20%程度です。
支払期日から数週間程度たった時点での債権者からの督促状は、裁判所を介していないケースがほとんどのため、給料や預金を差し押さえられることはほぼありません。ただし、自宅に督促状が届くと家族に借金滞納していることを知られる可能性があります。

4.自宅への取り立て

支払い期日より1ヶ月以上経過し、電話や書面での督促にも応じず滞納を続けた場合、債権者が自宅に訪問する可能性があります。会社名を名乗らなくても、見知らぬ人が訪ねてくると、家族に借金のことを内緒にしている場合は不審に思われてしまうでしょう。
自宅以外の場所へ訪問することは、貸金業法21条1項3号により、余程の理由がない限り禁止されています。そのため、勤務先の事務所などへ訪問することは正当な理由がない限り認められませんが、全く連絡もつかず入金もない状態が長期間続くと、安否確認のために訪問が行われる可能性はありますので注意しましょう。

“貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たって、人を威迫し、又は次に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動をしてはならない。
三 正当な理由がないのに、債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること。“
(貸金業法21条1項柱書、貸金業法21条1項3項)

5.信用情報機関への登録

借金滞納の状態が2〜3ヶ月ほど続くと、債権者は信用情報機関へ滞納情報を通知し、信用情報機関は、個人信用情報に延滞情報(事故情報ともいいます。)を登録します。延滞情報が登録されている状況を「ブラックに載っている」「ブラック状態」といいます。よく「ブラックリスト」という言葉を聞きますが、ブラックリストというリストは存在しません。延滞情報が載ると、遅延を解消してもなお5年間、場合によっては10年間ほど、新規の借り入れが難しくなります。2〜3か月の借金延滞により、5〜10年もの間、ご自身の信用情報に大きな影響が及ぶのです。
銀行や消費者金融などでは、クレジットカード作成や新規融資の審査時に、申込者の個人信用情報を確認して融資の可否を判断します。また、既存の利用者が追加で融資を受ける際やクレジットカードの更新時、その他与信管理の際にも信用情報を問い合わせ、利用継続の可否を判断します。延滞情報などの事故情報が登録されていると、クレジットカードや銀行などのローンを申請しても、返済能力に問題があり信用がないとみなされ、審査に落とされる可能性が高いです。
現在、日本には下記3機関が信用情報機関として設置されており、加盟している金融機関や消費者金融等が情報を提供し、必要に応じて閲覧しています。

日本信用情報機構
(JICC)
消費者金融や信販会社、銀行など幅広い金融業者が加盟している信用情報機関
シーアイシー
(CIC)
主に消費者金や信販会社が加盟している信用情報機関
全国銀行個人信用情報センター
(KSC)
銀行が加盟している信用情報機関

借金返済の遅延や滞納、債務整理などの手続をすると、事故情報として一定期間登録されます。
これらの情報は、金銭貸借や返済状況等が記録されている個人信用情報のため、各機関で厳重に管理されています。
また、ご自身の情報であれば、各信用情報機関に定められた方法によって、確認することができます。

6.借金残額の一括請求

債権者から電話や督促状が届いても、対応することなく滞納を続けていると、期限の利益を喪失したとして、借入金残金・未払い利息・遅延損害金を合わせた全額を一括で支払うように内容証明郵便(*)で請求されます。記載されている内容等を日本郵便株式会社に証明してもらうことにより、借金の返済を請求をしたという証拠を確実に残すために利用されます。

*内容証明郵便とは
一般書留物の内容文書を日本郵便株式会社が証明するサービスで、

  • 郵送書類の発送日時
  • 差出人
  • 受取人
  • 文書の内容

などを決められた書式で作成し、差出人(債権者)が作成した謄本により日本郵便株式会社が証明をする制度です。
内容証明郵便が証明するのはあくまで内容文書であり、内容文書に書かれていることが真実であることや、法的に正しいということまでを証明するものではありません。
内容証明郵便の主な効力は以下の通りです。

①確定日付を取得でき、債務不履行について主張できる
債務不履行責任を追及するには、相手方に対し履行の催告をすることが必要です。いつどのような内容で催告を行い、いつ相手方に届いたのかということを証明するため、内容証明を利用する方が確実でしょう。
②時効の完成を遅らせることができる
消滅時効が成立する前であっても、催告をすれば、時効の完成を防ぐことができます(民法153条参照)。
そして、催告をしたことを証明するために、内容証明を利用する方が確実といえます。
③法的手段での証明になる
上記と重複しますが、どのような内容の文書がいつ到着したのかについて公的に証明されるため、後々裁判になったときに証拠となります。

7.裁判所からの差押え

借金滞納について電話や内容証明郵便などで督促されているにも関わらず、未払いのまま何も対応もしない場合、債権者は、裁判所に訴えます。その後、裁判所から、支払督促(仮執行宣言付支払督促)または訴状が特別送達という特殊な郵便で、送られます。支払督促や訴状の書類を受領した後も、定められた期限内に何らの対応も反論もしなかった場合、裁判所は、基本的に債権者の言い分を認め、一括でお金を支払いなさいという内容の判決を出します。その後、債権者は、判決をもとに、債権や不動産、給与などの財産を強制執行により差し押さえることができます。
給与が差し押さえられると、所得税・住民税等の税金、年金・健康保険料などの社会保険料を差し引いた、手取り金額の4分の1までが差し押さえの対象とされていますが、手取り給与の4分の3が33万円以上の場合、超過金額は全て差し押さえられてしまいます。

近い将来滞納する可能性が高いケース

1.複数の貸金業者から借り入れがある

借金返済のために新たな借金をし、複数の貸金業者から借入れのある状態を「多重債務」といいます。多重債務の状態であると信用情報機関への登録状況などから新規の借入れが難しくなり、借金滞納となるケースが多いようです。

2.年収3分の1を超える借り入れがある

貸金業者は新規借入れ申込みがあると、申込人の信用状況を審査します。通常は、貸金業者は、信用情報機関に記載されている、借入状況や遅延の有無、債務整理手続の有無などの情報で判断するほか、貸付金額合計が年収の3分の1以内であるかも確認します。
現在は債務者の年収に応じて貸付額を制限する「総量規制」があり、年収の3分の1を超えた貸付を貸金業者(消費者金融)はできないためです。2006年の貸金業制度改正(2010年に完全施行)以前、複数の貸金業者から借り入れをして返済困難となった債務者の多くが自己破産するなど、多重債務が深刻な社会問題となっていました。そのため、貸金業者側が無秩序に貸付を行なうことを防ぐために総量規制が制定されました。
そのため、借入総額が年収の3分の1以上ある場合、毎月の支払いの費用が足りないために新たな借り入れをしようしても総量規定により、貸金業者(消費者金融)から借入れることができず、借金滞納となる可能性も考えられます。

3.利用限度額の上限近くまで借り入れをしている

前項の通り、総量規制により年収の3分の1を超えて貸金業者から借り入れをすることはできませんが、この規定はあくまで貸金業者を対象とした融資総額の上限について決められており、上限である年収の3分の1までは必ず借りることができるという訳ではありません。貸金業者ごとに、融資をする際の審査基準を設けているため、年収の3分の1に達していないため借入れができるだろうと思っていたのに実際はできなかったという事態もありえます。
また、貸金業者以外の銀行のカードローンや住宅ローンなどは総量規制の適用外ですので借り入れることは可能です。しかし、借入れが増えると翌月からさらに月々の返済が増えることになります。返済計画をきちんとたてて、返済が困難になるほどの借入れをすることはやめましょう。

一括請求・差押えを回避する方法

前述した通り、借金の滞納期間が長くなるほど発生するリスクやダメージは大きくなるので、ご自身で対処することが困難になります。そのため、一括払い請求や差押えをされる前のなるべく早い段階で、弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。弁護士へ手続を依頼すると、以下のようなメリットがあります。

  • 債権者からの督促がストップする
  • 一括払い請求や差押えを回避できる可能性が高くなる
  • 債権者への対応や和解交渉、裁判所への提出書類の作成、利息の計算などをしてもらえる
  • 各々の手続を選択することのメリット・デメリットを説明してもらい手続を選択できる
  • 返済額の減額や利息の一部カットや免除など、債権者と取り決めることで無理なく完済できる
  • 専門的な知識が必要なことを全て依頼できるため平和な日常を取り戻すことができる

まとめ

今回は、借金滞納によって発生する問題、借金滞納が長期化するリスク、一括請求や差押えを回避する方法や手続の流れなどについて解説しました。

毎月の借金返済は1日でも支払いが遅れると遅延損害金が発生し、さらに滞納が続くと債権者からの督促、一括払い請求、差押えへと段階的に進んでいきます。できる限り早い段階で弁護士に早めの相談をすることにより、一括請求や差し押さえなど最悪の事態を防ぐことができます。また、ご自身にとって最適な手続を提案してもらうことにより、借金に関する悩みが軽減され、どのように生活を立て直していくと良いか、道筋が見えてきます。

私達、東京スタートアップ法律事務所は、借金問題を解決して経済的に更生し、自分らしい生活を送るための基盤を作りたいという方を全力でサポートさせていただきたいと考えております。秘密厳守はもちろんのこと、弁護士費用の分割払い等にも柔軟に対応しておりますので、安心してお気軽にご相談いただければと思います。

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執筆者 弁護士瀧澤 花梨 東京弁護士会 登録番号53660
約5年の間、一般民事を担当。その経験の中で、弁護士に対する敷居の高さを感じ、抱えているトラブル以前に、弁護士に相談することに大きな緊張や不安を抱えている人が少なくないということを学ぶ。この経験から、相談者にとって親しみやすく、どんなことでも安心して話しせる弁護士を目指す。
得意分野
一般民事
プロフィール
名古屋大学法学部法律政治学科 卒業 名古屋大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内法律事務所 勤務 東京スタートアップ法律事務所 入所

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