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投稿日: 更新日: 弁護士 砂原 惣太郎

法テラスの利用で自己破産費用は抑えられる・注意点やデメリットも解説

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※東京スタートアップ法律事務所は、法テラスを利用してのお手続きに対応しておりません。予めご了承ください。

 

経済的に困窮している、生活保護受給中などの理由から、弁護士に自己破産手続を依頼することを躊躇されている方も少なくないかと思います。

そのような方が利用できる救済制度が、法テラスの民事扶助制度です。

利用には審査がありますが、民事扶助制度を利用すれば、弁護士費用等の立て替えが受けられる上、立替金の償還も原則分割払いとなるため、弁護士費用の経済的負担が軽減できます。

今回は、自己破産手続で法テラスの民事扶助制度を利用する際のメリットや利用条件、デメリットや注意点などについて解説します。

法テラスを利用した自己破産手続とは

自己破産手続を検討中の方のなかには、弁護士に支払う費用が工面できないのならば、法テラスの利用がおすすめ、という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

国(法務省管轄)の機関である法テラスでは、経済的に困窮している方に向けて弁護士費用等の立替制度などを用意しており、法テラスを利用して自己破産手続を行えば弁護士費用等を安価に抑えることも可能です。

そこで、自己破産を検討する時に役立つ、法テラスの制度について説明します。

1.法テラスとは

法テラス(正式名称:日本司法支援センター)は、国によって設立された準独立行政法人で、知識の有無や経済力等にかかわらず全ての方が法的トラブルを解決できるよう、国民に対して広く情報の提供や支援を行う機関です。

2021年現在、全国50箇所に法テラスの地方事務所、37箇所の地域事務所があり、生活圏内に法律事務所がないという方にも心強い味方となるでしょう。

2.自己破産でも民事法律扶助制度の利用が可能

自己破産費用の捻出に苦慮している方が使える制度が、法テラスの民事扶助制度です。

民事扶助制度は経済困窮者の方を対象とした制度で、無料の法律相談(一般法律相談援助)や、弁護士や司法書士に支払う費用等の立替(代理援助・書類作成援助)が受けられます。

利用するためには収入要件や、勝訴の可能性が見込めるか否か、利用目的が制度の趣旨に合致しているか等の条件がありますが、自己破産を含む債務整理の手続にも民事扶助制度は利用可能です。

3.法テラスを利用した自己破産の弁護士費用の目安

民事扶助制度を利用した場合の弁護士費用は、以下のように申込者の借入件数によって異なります。

  • 借入先が1~10社 実費23,000円、着手金132,000円
  • 借入先が11~20社 実費23,000円、着手金154,000円
  • 借入先が21社以上 実費23,000円、着手金187,000円

一般的に自己破産手続を弁護士に依頼した場合の費用は、着資手金と成功報酬を合わせて30万〜50万円が相場とされています。

比較すると民事扶助制度の利用で弁護士費用が抑えられることがわかるでしょう。

自己破産手続で法テラスを利用できる条件

前述した通り、民事扶助制度の利用には条件があります。

条件を満たしているか否かについては提出書類を元に、法テラスの地方事務所にて審査が行われ、問題がなければ弁護士費用等の立て替えが受けられます。

具体的な利用条件について説明します。

1.収入や財産が一定基準以下である

民事扶助制度の利用には、以下のように世帯人数に応じた収入の基準が定められています。

  • 単身者:手取り月収が18万2,000円以下(生活保護一級地の場合は20万200円以下)
  • 2人世帯:手取り月収が25万1,000円以下(生活保護一級地の場合は27万6,100円以下)
  • 3人世帯:手取り月収が27万2,000円以下(生活保護一級地の場合は29万9,200円以下)
  • 4人世帯:手取り月収が29万9,200円以下(生活保護一級地の場合は32万8,900円以下)

世帯人数が4人を超える場合は、同居家族が1人増えるごとに30,000円(生活保護一級地については33,000円)を加えて基準値を算出します。

なお、配偶者がいる場合は、夫婦の収入を合算した上で、上記の基準を下回っているか確認しください。

配偶者以外の同居家族の収入も、家計維持に貢献している割合に応じて申込者の収入に加えます。

また、預貯金や有価証券、不動産などの資産の総額も審査の対象であり、収入同様に以下の基準が定められています。

  • 単身者:180万円以下
  • 2人世帯:250万円以下
  • 3人世帯:270万円以下
  • 世帯人数が4人以上:300万円以下

こちらも配偶者名義の資産も含めて基準を下回る必要があるため、注意が必要です。

2.審査に必要な書類が用意できる

民事扶助制度の審査を受けるためには、給与明細や源泉徴収票、課税(非課税)証明書などの収入を証明する書類の提出が必要です。

そのほか、本籍、筆頭者、続柄、世帯全員の記載がされた住民票(マイナンバーは不要)と、債務をまとめた一覧表などの添付書類を資力申告書に添付して法テラスに提出します。資力申告書の書式は法テラスのサイトで公開されています。

資力申告書には、申込者だけではなく配偶者の資産状況も記入する必要があります。

なお、生活保護受給中の方は資力申告書を提出する必要がありません。

3.破産者が個人である

法テラスは個人が抱えた法的トラブルの解決の支援を目的とした機関です。

法人は民事扶助制度の対象外であり、会社が破産手続をする際にかかる費用の立替を法テラスに求めることはできません。

なお、個人であっても在留資格を持たず不法滞在をしている外国人、日本国内に住所を有しない者は法テラスのサービスを利用することができません。

法テラスを利用した自己破産のメリット

弁護士費用を抑えられる以外にも、自己破産手続時に法テラスを利用するメリットはあります。具体的なメリットについてご説明します。

1.無料の法律相談が受けられる

正式に弁護士に依頼するか悩んでいる段階であっても、法テラスが契約している弁護士や司法書士による無料の法律相談が受けられます。

1回につき30分までと時間が定められていますが、同一の問題で3回まで相談可能なので、聞きたいことをまとめておけば余裕を持って質問できるでしょう。

無料法律相談も民事扶助制度の一環となるため、利用するためには前述した収入要件などを満たす必要があります。

2.弁護士の紹介が受けられる

無料法律相談を受けた後、問題解決に法律の専門家の助力が必要だと判断された場合は、法テラスから弁護士等の紹介を受けられます。

なお、紹介を受けられるのは法テラスと契約している司法書士や弁護士に限られますので、相談者からの方で「この先生にお願いしたい」などの要望がある場合は、法テラスと契約している法律専門家である必要があります。

3.弁護士費用の分割での償還(返済)が可能

立て替えてもらった弁護士費用等は、分割で法テラスに償還することとなります。

原則として3年以内の償還(返済)が求められ、自己破産事件の場合は毎月5,000〜1万円ずつ返済するのが一般的です。

生活再建中であっても負担なく払える金額で返済が可能という点は、法テラスを利用する大きなメリットの1つといえるでしょう。

4.生活保護受給者は費用の返済を免除される

民事扶助制度の申込時および事件終結時においても生活保護受給中である場合、免責についての決定が下されて自己破産手続が完了するまでの間、立て替えを受けている弁護士費用等の返済は猶予されます。

また、自己破産後も生活保護受給者である場合は、立て替えを受けた費用は償還免除となり、返済の義務がなくなるのです。

なお、生活保護受給者は民事扶助制度の審査にあたり、資力証明書の代わりとして生活保護受給証明書の提出が必要です。

法テラスを利用した自己破産のデメリット・注意点

主に費用面や返済面での恩恵が受けられる一方、法テラスを利用した自己破産にはデメリットや注意点も存在します。

法テラスを利用した後に後悔しないよう、デメリットや注意点についてもしっかり把握しておきましょう。

1.受任通知発送までの期間が長くなる可能性がある

法テラスを利用して自己破産手続を行う場合、事前に利用開始の可否を決める審査が必要となるため、直接弁護士に依頼した場合よりも受任通知が発送されるまで長い時間を要する可能性があります。

通常の自己破産手続よりも概ね2週間から1か月程度時間がかかる可能性があると考えておくとよいでしょう。

弁護士等による受任通知を受け取った債権者は、貸金業法21条1項9号に則って以降の取り立てを禁じられます。

そのため、受任通知が送られた後は取り立ても一旦停止となりますが、法テラスの審査が終了するまで受任通知を出してもらえない場合、その間は返済を続ける必要があります。

2.予納金と管財費用は援助の対象外

自己破産申立時には、1万円程度の官報公告費用を管轄の地方裁判所へ予納金として支払う必要があります。

また、申立時に20万円以上の財産を所持していた際には、破産手続が管財事件、もしくは少額管財事件として扱われる可能性があり、この場合には管財人に支払う報酬(引継ぎ予納金)が別途必要となります。

予納金も管財事件にかかる費用も原則として法テラスの援助の対象外であり、生活保護受給者等を除いて立て替えは受けられませんので、ご自身でご用意頂く可能性があることに注意が必要といえます

3.依頼する弁護士を選べない可能性がある

電話やメール、地方事務所に出向くなどして法テラスに直接、援助申請した場合には、法テラスから紹介を受けた弁護士や司法書士と契約することになります。

紹介された弁護士や司法書士と良好な信頼関係を築ければ問題ないのですが、相性が良くない場合もあるかもしれません。

なお、自分で弁護士を選んで、法テラスの民事扶助制度を利用したいという場合には、持ち込み方式という方法を利用することができます。

持ち込み方式が可能なのは法テラスと契約している弁護士や司法書士に依頼した場合のみとなりますが、依頼前に話をする機会が作れるため、こちらの方法を利用する方が多い傾向にあります。

法テラスを利用した自己破産手続の流れ

民事扶助制度を利用して行う自己破産手続には、直に法テラスへ連絡をして援助を申請する方法と、法テラスと契約している専門家を自分で探して依頼する「持ち込み方式」の2種類があります。

それぞれの流れを説明します。

1.無料相談から法テラスを利用する流れ

直に法テラスへ連絡をして民事扶助制度を利用する際の流れは、以下のとおりです。

  • 最寄りの法テラス地方事務所、もしくは法テラスのサポートダイヤルに連絡して無料法律相談を申し込む
  • 法テラスと契約している弁護士等の法律相談を受ける
  • 必要な書類を提出して、法テラスの地方事務所で審査を受ける
  • 法テラスが弁護士等に費用を立て替えて支払う

2.自分で直接弁護士に依頼する「持ち込み方式」の流れ

持ち込み方式を利用したい場合は、まず気になる法律事務所の公式サイトなどを見て「法テラス利用可」「法テラス対応可能」といった文言があるか確認してみましょう。

公式サイトがない場合は、電話で法テラスの利用が可能か尋ねてみることをおすすめします。

法テラスの利用が可能であることが確認できたら、民事扶助制度を利用したい旨を伝えて法律事務所に直接相談し、相談後、弁護士が受任可能な案件として了解し、正式に依頼をした後、援助の申請を行います。

法テラスを利用した自己破産が向いている方

法テラスを利用した自己破産が特に向いている方について説明します。

生活保護を受給している方
生活保護受給者の場合、弁護士費用等だけではなく、予納金(官報公告費)の支払いについても立て替えてもらえます。また、管財事件として扱われた場合の管財人への報酬についても、20万円を限度として援助の対象となります。(民事扶助業務運営細則第14条の5) 。
また、自己破産手続終了時に生活保護受給中であれば、法テラスで立て替えを受けた費用の返済は免除されるため、極めて少ない負担で自己破産手続を行うことができます。

自己破産時の法テラス利用に関するよくある疑問と回答

無収入であっても法テラスの援助は受けられるのか、法テラスの審査に落ちた場合にはどうすればよいのか等、民事扶助制度の利用に対して疑問や不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。

ここでは、自己破産手続と法テラスに関してよくご質問いただく事項について回答します。

1.無職や専業主婦でも民事法律扶助制度を利用できる?

専業主婦の方や無職(無収入)の方でも民事扶助制度は利用できます。

ただし、申請者だけではなく配偶者の収入や資産も法テラスの基準を下回っていなければ援助は受けられません。

そのため、ご結婚されている場合、配偶者の収入が法テラスの基準を超えていると、民事扶助制度は利用できません。

また、ご結婚されていなくても、同居しているご両親の収入が多い場合などには法テラスの援助対象外となる可能性があるので、注意しましょう。

2.法テラスへの返済はいつから始まる?

立て替えを受けた弁護士費用等については、法テラスの援助が決定した2か月後から返済を開始します。

返済方法は銀行口座からの引き落としとなり、残高不足等で引き落とせなかった場合は請求書が送られてきます。

3.立て替えてもらった費用を返済しないとどうなる?

法テラスに立て替えてもらった費用が返済(償還)できず、督促を受けても滞納を続けていると、法テラスから何らかの法的措置をとられる可能性もあるでしょう。

返済(償還)が厳しい場合は、返済の目処が立たなくなった時点ですぐに法テラスに連絡し、返済の猶予や返済金額の変更等のリスケジュールをお願いするとよいでしょう。

自己破産手続終了後に経済状況が苦しくなった場合は、生活保護受給者以外でも、立て替えを受けた費用の返還が例外的に免除されることもあるようです。

4.法テラスの審査に落ちることはある?

自己破産手続で民事扶助制度の利用を希望する場合、法テラスが定める収入および資産に関する基準を上回っていれば、審査に落ちる可能性も否めません。

援助の申請前に条件を満たしているか、添付書類は正しいものを用意可能かを事前にしっかり確認しましょう。

まとめ

今回は、自己破産手続時に法テラスを利用するメリットとデメリット、民事扶助制度の手続の流れや条件等について解説しました。

費用面で恩恵を受けられる一方、法テラスを利用した自己破産手続には注意すべき点も存在します。

また、収入や資産の条件をクリアしないと利用できないため、配偶者や同居家族に収入がある場合は利用できない可能性もあります。

法テラスが利用できない場合は、費用面の相談に丁寧に応じてくれる法律事務所を選ぶという方法もあります。

私達、東京スタートアップ法律事務所は、借金問題を解決して自分らしい生活を送るための基盤を作りたいという方を全力でサポートさせていただきたいと考えております。

秘密厳守はもちろんのこと、分割払い等にも柔軟に対応しておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。

 

※東京スタートアップ法律事務所は、法テラスを利用してのお手続きに対応しておりません。予めご了承ください。

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執筆者 弁護士砂原 惣太郎 大阪弁護士会 登録番号46236
個人や法人の債務整理・交通事故・相続・男女問題・債権回収・労働等の民事事件、中小企業法務を中心に業務を行う。相談者にとって身近で親しみやすい法律家となれるよう、意識して日々問題解決に取り組んでいる。
得意分野
中小企業法務、債務整理、一般民事など
プロフィール
東京都出身 上智大学法学部 卒業 上智大学法科大学院 修了 弁護士登録 複数の弁護士法人勤務 東京スタートアップ法律事務所 入所
書籍・論文
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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