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投稿日: 更新日: 弁護士 宮地 政和

時効援用後の信用情報は?時効援用の手順・注意すべき時効の更新も解説

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「時効の援用をした場合、信用情報が削除されるのか知りたい」
「借金の時効を完成させるためには、時効の援用をしなければいけないと聞いたけれど、時効の援用をするためには具体的にどのようなことをすればいいのか知りたい」
そのような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、時効の援用の概要、借金の消滅時効、消滅時効の進行が振り出しに戻る時効の更新、時効援用の手順と注意点、時効援用後の信用情報などについて解説します。

時効の援用と借金の消滅時効

まずは、時効の援用の概要と借金の消滅時効について説明します。

1.時効援用とは

時効の援用とは、債務者が銀行や貸金業者などの債権者に対して、時効が成立したことを伝え、借金の返済義務を放棄する意思を表示することです。
民法第145条では時効の援用について、以下のように定められています。
“時効は、当事者(消滅時効にあっては、保証人、物上保証人、第三取得者その他権利の消滅について正当な利益を有する者を含む)が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない”

つまり、借金が時効を迎えても、自動的に借金の返済義務が消滅するわけではありません。借金が時効を迎えた後、その借金の時効を援用することにより時効の効果が発生するのです。

2.借金の消滅時効はいつ?

借金の時効はいつ迎えるのでしょうか。民法が120年ぶりに改正され、2020年4月1日に施行されました。それに伴い、商法の条文にも変更が生じました。そのため、借金の消滅時効は債務の発生時期や債権者により異なります

①2020年3月31日以前に成立した商人に対する債務

まず、2020年3月31日以前に、銀行や貸金業者など商人(自己の名をもって商行為をすることを業とする者、商法第4条1項)を債権者として成立した債務の消滅時効について説明します。

改正前の同法第522条には、以下のように定められていました。
“商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する”
この条文は民法改正により削除されましたが、法改正前の2020年3月31日以前に成立した債務については引き続き適用されます。

そのため、2020年3月31日以前に商人を債権者として発生した借金の消滅時効は、債務者の最終返済日の翌日から5年、かつ「債権者が権利を行使できる時から5年行使しないとき」です。

②2020年3月31日以前に成立した商人以外に対する債務

次に、2020年3月31日以前に、信用金庫、住宅金融支援機構、個人など商人以外を債権者として成立した債務の消滅時効については、一般的な債権に関する消滅時効が適用されます。そのため、消滅時効は債務者の最終返済日の翌日から10年、かつ「債権者が権利を行使できる時から10年行使しないとき」となります (旧民法第167条)。

なお、信用金庫については、昭和63年10月18日の最高裁判所の判決にて、以下のような見解が示されています。
“信用金庫の行う業務は営利を目的とするものではないというべきであるから、信用金庫は商法上の商人には当たらないと解するのが相当である”
そのため、信用金庫は商人には該当しないと解されています。。

③2020年4月1日以降に成立した債務

2020年4月1日以降に成立した債務については、債権者が商人であるか否かに関わらず、以下の改正後の民法第166条1項・2項のうち、早く時効を迎える方が適用されます。
民法166条
債権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
1.債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間行使しないとき。
2.権利を行使することができる時から十年間行使しないとき。“
つまり、借金の消滅時効は、債務の成立時期などにより異なるものの、借金を返済せず債権者が権利を行使していない期間が5年または10年以上経ったときに迎えます。

時効の更新に要注意

「債務の消滅時効が過ぎたから、時効が完成したはず」思っていても、実は、時効の更新により、時効が完成していないケースも多いため、注意が必要です。時効の更新の定義、時効の更新が行われる具体的な事例などについて説明します。

1.時効の更新とは

時効の更新とは、消滅時効の進行が振り出しに戻ることをいいます。旧民法では、時効の中断として定められていた概念です。更新された時効は、その更新の事由が終了した後、新たに進行することになります。

2.裁判上の請求等による時効の更新

時効が成立する前に債権者が裁判上の請求を行っていた場合、時効が更新されます(民法第147条1項1号)。
債権者が裁判上の請求を行うと、裁判所から通知が届きます。裁判所からの通知は、原則として、住民票を置いている住所に特別送達で送られます。裁判所から通知を受け取ることにより、債務者は、消滅時効が更新され、時効の援用ができないことを知ることができます。ただし、住民票を移さずに引っ越しをしていた場合は、裁判所からの通知が届かず、債権者が裁判を起こしたことを知ることができないため、注意が必要です。
債務者の居場所が不明な場合、債権者は「公示送達」にて裁判を起こすことができます。その場合、本来自宅に送られる送達文書(=訴訟に関する書類)が債務者に届かないため、債務者が知らない間に時効が更新されることになります。

3.債務の承認による時効の更新

債務者が債権者に対して債務が存在することを認めることを、債務の承認といいます。時効が成立する前に、債務者が債務の承認をした場合も、時効、時効が更新されます(同第152条1項)。
債務の承認の具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 借金を滞納している債務者が債権者に対して、「支払いをもう少し待って下さい」と伝える
  • 債権者が借金を滞納している債務者に対して「今、支払える分だけでよいので支払ってください」と伝え、債務者が少額の支払いをする

上記いずれの場合も、債務者が債務の存在を認めているといえるため、債務の承認とみなされ、時効が更新されます。

時効援用の手順と注意点

時効の更新が行われず、最終返済日から起算して消滅時効を迎えた場合、時効援用の手続を行うことにより時効を完成させることが可能です。時効援用の手続の手順と注意点について説明します。

1.消滅時効を確認する方法

時効援用の手続を行う前に、確実に消滅時効を迎えているか確認することが大切です。明細書、振込用紙、口座の引き落とし日などを確認し、最終返済日を調べましょう。最終返済日が判明しない場合は、日本信用情報機構(JICC)、シー・アイ・シー(CIC)、全国銀行個人信用情報センター(KSC)などに自身の信用情報の開示を請求し、債権者との最終取引日を確認するという方法もあります。ただし、記載されている債権者との最終取引日が最終返済日とは限らないという点には、留意が必要です。

2.時効援用の手順

最終返済日から起算して借金が時効を迎えており、その時効を援用する場合は、時効援用通知書という書類を作成し、内容証明郵便で債権者に送る必要があります。

内容証明郵便とは、書面の内容・差出人・宛先・発送日・到着日を証明してくれる郵便のことです。この内容証明郵便を利用することで「そんなものは届いていない」や「そのような事項は書かれていなかった」などの問題が発生することを防ぐことができます。

なお、時効援用通知書には、以下の事項を記載する必要があります。

  • 債権を特定できる情報
  • 時効を迎えている旨
  • 時効を援用する意思がある旨
  • 債務者の氏名・差出日時・連絡先

債権を特定できる情報については、債権の種類、債権者の会社名や住所、借入日、借入金額、契約番号等の情報を全て正確に記載するのが望ましいですが、借入日や契約番号等がわからない場合でも債権を特定できる可能性は十分ありますので、わかる範囲で記載して下さい。
また、弁護士や司法書士に書類の作成を依頼する場合は、その氏名や連絡先も記載しましょう。

3.時効を援用する際の注意点

時効が更新されていたことに気づかずに時効援用通知書を送ってしまった場合、債権者に現在の連絡先や住所を知らせてしまうことなり、督促が再開する可能性が高いです。また、裁判を起こされた場合、時効は10年に伸長されます。時効期間は5年ではなくなるため、再度時効の援用をする際は注意が必要です。

なお、時効を迎える前に時効援用通知書が債権者に届いた場合は、債務の承認とみなされ、時効が更新されてしまう可能性もあるため、時効の援用を検討している場合は弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。

時効援用後の信用情報

時効の援用が成立した場合、信用情報機関に登録されている信用情報には、どのような影響を与えることになるのでしょうか。信用情報機関ごとに説明します。

1.日本信用情報機構(JICC)の場合

日本信用情報機構(JICC)は、主に消費者金融などの借入情報が登録されている信用情報機関で、貸金業法により「指定信用情報機関」に指定されています。
JICCの公式サイトに掲載されていた情報によると、時効の援用が成立した場合、時効の起算日に遡って完済として登録され、その時点で登録情報は抹消されるそうです。

2.シー・アイ・シー(CIC)の場合

シー・アイ・シー(CIC)は、主にクレジット会社などの借入情報が登録されている信用情報機関で、貸金業法と割賦販売法により「指定信用情報機関」に指定されています。
CICでは、時効が成立した場合、基本的には、終了状況に完了と記載され、保有期限(情報の掲載期限)に5年後の日付が記載され、その日付の月末までは情報が残るといわれています。ただし、JICCと同様に情報が抹消されるケースもあるようです。

3.全国銀行個人信用情報センター(KSC)の場合

全国銀行個人信用情報センター(KSC)は、全国銀行協会が運営する信用情報機関で、主に銀行等の金融機関での住宅ローンなどの借入情報が登録されています。
KSCでは、代位弁償の情報が登録され、5年間残るといわれています。代位弁償とは、保証会社などが債務者の代わりに債務を返済することをいいます。時効の援用が成立すると、金融機関のローンは通常、保証会社が代位弁済するため、KSCでは代位弁償の情報が登録されるのです。

まとめ

今回は、時効の援用の概要、借金の消滅時効、消滅時効の進行が振り出しに戻る時効の更新、時効援用の手順と注意点、時効援用後の信用情報などについて解説しました。

債務者が知らない間に時効が更新されることもあるため、時効の援用を行う際は注意が必要です。不安な場合は、事前に弁護士に相談するとよいでしょう。

私達、東京スタートアップ法律事務所は、時効の援用に関するご相談に対応しております。秘密厳守はもちろんのこと、分割払い等にも柔軟に対応しておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。

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執筆者 弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会 登録番号48945
人生で弁護士に相談するような機会は少なく、精神的にも相当な負担を抱えておられる状況だと思います。そういった方々が少しでも早期に負担を軽くできるよう、ご相談者様の立場に立って丁寧にサポートさせていただきます。
得意分野
企業法務・コンプライアンス関連、クレジットやリース取引、特定商取引に関するトラブルなど
プロフィール
岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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