個人再生の必要書類と注意点・書類が揃わない場合の対処法も解説
全国20拠点以上!安心の全国対応
初回相談0円
記事目次
「個人再生の手続にはどのような書類が必要なのか知りたい」
「住宅ローン特則を利用する場合に提出が必要な書類について理解したい」
「個人再生に必要な書類が揃わない場合はどうすればよいのか知りたい」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、個人再生の手続に必要な書類と記載事項、住宅ローン特則利用時に必要な書類などについて、提出時期や提出の目的なども含めて解説します。
個人再生とは
個人再生は、民事再生法に則って裁判所を介して行う債務整理の手続です。同法第196条に定められた住宅資金特別条項(住宅ローン特則)により、住宅ローン支払い中の自宅を維持したまま、債務を5分の1程度に圧縮することが可能です。そのため、住宅ローンの支払いが困難になったけれど、自宅を手放したくないという方に選ばれることが多い債務整理の方法です。
個人再生を利用できる条件、個人再生の種類、他の債務整理との違いなど、基本的な内容についてはこちらの記事にまとめましたので、参考にしていただければと思います。
個人再生の申立て時に提出する書類と記載事項
個人再生の手続を行うためには、現住所を管轄する地方裁判所に申立書などの書類を提出する必要があります。まずは、申立て時に提出する書類の書式を入手する方法、各書類の記載事項などについて説明します。
1.提出書類の書式を入手する方法
個人再生の申立て時に必要な書類の書式は裁判所ごとに異なるため、管轄の地方裁判所で入手して下さい。裁判所の窓口でも入手できますが、各裁判所の公式サイトなどからダウンロードすることも可能です。「東京地方裁判所 個人再生 書類」などのキーワードで検索すると、各裁判所や弁護士会のサイトが表示されるかと思います。
現住所を管轄する地方裁判所がわからない場合は、裁判所の公式サイトでご確認下さい。
2.申立書
個人再生の申立ては、民事再生規則第2条第1項に則って、申立書の提出にて行われます。申立書には管轄の裁判所で入手した書式に沿って、民事再生規則第12条第1項に定められた以下の項目を記入します。
- 申立人、再生債務者の氏名
- 申立人、再生債務者の住所
- 申立人、再生債務者の生年月日
- 申立てを行う趣旨
- 個人再生手続を開始する理由
- 再生計画案作成方針についての申立人の意見
- 個人再生の種類(小規模個人再生または給与所得者等再生)
弁護士に代理人として申立てを依頼している場合は、上記以外に代理人の氏名や住所の記入が必要です。
3.陳述書
陳述書は、申立人の現在の職業や収入、過去の職歴などの仕事に関する情報、同居する家族の有無や家庭状況などを記入する書類です。
個人再生申立てに至った原因については、借金を背負った事情や返済不能に陥った背景を含めて、可能な限り詳しく記載しましょう。
4.財産目録
財産目録は、申立人が所有している財産について申告する書類で、20万円以上の現金が手元にある場合にはその金額を記入します。また、預貯金の金額、退職金の見込額、有価証券、保険の解約返戻金のほか、自己名義の不動産や自動車などについても財産としての価値を記載する必要があります。
虚偽の記載をした場合、民事再生法第237条第2項及び第244条に則って、個人再生手続が廃止されるおそれがあるので、正確に作成しましょう。
5.債権者一覧
債権者一覧は、全ての債権者に関する情報を記載した一覧表です。具体的には以下の内容について記載します。
- 債権者の氏名や名称
- 借入をした時期
- 借入をした理由
- 債権者の住所(郵便番号を含む)、電話番号等の連絡先
また、個人再生の手続外で優先弁済を受けられる別除権付債権を持つ債権者が存在する場合は、別除権を行使しても回収が見込めない金額を、「別除権付債権の担保不足見込額」として記載します。
6.家計表
個人再生の申立て時には、直近1~3カ月分の家計表(家計簿)も提出する必要があります。家計表は、再生計画に沿った返済が可能なのか、無駄に浪費していないか等を確認するために使用されます。通常、レシートや領収書の提出までは求められませんが、できる限り、レシートなどを保管して、正確に記入するようにしましょう。
個人再生の申立て時に提出する添付書類
個人再生の申立て時には、申立書、財産目録、債権者一覧等に記載されている内容が事実に即しているか確認するため、数多くの添付書類の提出を求められます。
給与所得者等再生手続と小規模個人再生手続で添付書類の一部が異なりますので、ご自身に必要な書類を確認の上、用意しましょう。
1.住民票、戸籍謄本
住民票と戸籍謄本は申立ての直近3カ月以内の発行で、かつ世帯全員の情報が記されたものを提出する必要があります。住民票は、本籍や世帯主、続柄の記載があり、マイナンバーの記載がないものを用意して下さい。住民票と戸籍謄本はコピーではなく、区役所や市役所が発行する原本を提出します。
2.給与や退職金を証明する書類(給与所得者等再生)
給与所得者等再生手続を利用する場合は、直近2年分の源泉徴収票と、直近2カ月分の給与明細が必要です。
また、個人再生は、申立て時に所有している財産と同等以上の金額を返済に充てなければいけないという「清算価値保障原則」に基づいて行われるため、退職金をもらえる見込みがある場合には、これも借金の返済に充当する必要があります。
そのため、給与所得者等再生手続では、勤務先から退職金見込額証明書を発行してもらい、これを添付書類として提出することが求められます。勤続年数が少ない、勤務先に退職金の制度がない等の理由で退職金見込額証明書が添付できない場合は、会社の就業規則など退職金に関する規定が記載された書類を提出します。就業規則内にも退職金についての記載がない場合は、勤務先に依頼して、退職金がない旨を証明する書類を発行してもらいましょう。
退職金について勤務先に確認する際、債務整理のことは伏せておきたいという方も多いかと思います。退職金見込額証明書が必要な理由を尋ねられた場合は、住宅ローンの申請に必要、保険やライフプランの見直しに使いたいなどと答えるとよいでしょう。
また、個人再生委員から他に提出を求められた書類がある場合は、裁判所に書類の原本を提出し、個人再生委員には書類のコピーを提出してください。
3.収入額を証明する書類(小規模個人再生)
小規模個人再生手続を利用する場合には、直近2年分の確定申告書の控え(受領印や受信通知のあるもの)や、源泉徴収票などの所得を証明する書類が必要です。
また、申立て時、もしくは直近の6カ月以内に申立人が事業を営んでいた場合(個人事業主であった場合を含む)は、申立て前2期分の決算書や貸借対照表、損益計算書を提出します。
個人再生委員から他に提出を求められた書類がある場合は、給与所得者等再生手続と同様に原本とコピーを用意して、裁判所と個人再生委員にそれぞれ提出してください。
4.借用書など債務を証明する書類
債権者一覧表に記載された内容が正しいことが確認できるよう、借用書、利用明細、督促状など債務の内容を証明できる書類も添付します。債権者の名称、住所、借入額等が記載された書類を用意してください。
5.通帳の写し
申立人の収入や月々の返済額など、金銭の流れを確認するために、所有している全ての通帳の写しを提出することが求められます。
コピーをとる必要があるのは、申立て時から遡って1年もしくは2年間程度の入出金履歴であり、期間については裁判所によって異なります。
長い間、記帳していないために一括記帳となっている場合には、銀行から取引明細を発行してもらいましょう。
なお、弁護士に個人再生手続を依頼した際、受任時に通帳の写しを提出したけれど、申立てまでに時間が空いてしまい、申立て直前に再度記帳することを求められる場合があります。その際は、迅速に対応してください。
6.委任状
委任状は、弁護士や司法書士に個人再生申立の代理を依頼した際に、提出が必要となる書類です。
通常、代理人となる法律の専門家と一緒に作成するため、申立人が用意する必要はありません。
7.状況によって提出が必要なもの
上記のほか、場合によって以下のような添付書類が必要となります。
- 申立人が年金受給者の場合:年金通知書
- 申立人が賃貸住宅や社宅に居住している場合:賃貸借契約書や社宅証明証
- 申立人が車を所持している場合:車検証など
- 申立人が医療保険や生命保険に加入している場合:保険証券
- 申立人が児童手当の給付を受けている場合:児童手当の支払通知書
なお、個人再生は個人に対する手続なので、原則として、配偶者など家族の給与明細や通帳のコピーの提出などは不要とされています。ただし、申立人の通帳から配偶者の口座に多額の送金をした履歴があるなど、調査すべき事項がある場合には、配偶者名義の通帳の提出を求められることもあります。
住宅ローン特則利用時に必要な書類
民事再生法第196条に定められた住宅資金特別条項(住宅ローン特則)の条件を満たせば、同法第198条に則って住宅ローン返済中のマイホームを手放すことなく債務を圧縮することが可能です。マイホームを維持したまま債務整理ができるという点は個人再生の大きなメリットですが、この特則を利用するために提出が必要な書類もあります。
住宅ローン特則を利用するために、裁判所に提出が必要な書類について説明します。
1.住宅ローン契約書の写し
住宅ローン特則を利用する際の必要書類については民事再生規則第102条に定められており、住宅資金貸付の契約内容が記載された書面と、貸付の返済期間や返済額が記載された書面の提出が必須とされています。
これらの項目は、住宅ローン契約時に締結する金銭消費貸借契約書に記載されていることが多いため、まずは金銭消費貸借契約書の内容を確認するとよいでしょう。
2.登記事項証明書
登記事項証明書も、住宅ローン特則を利用する際に提出が必須とされている書類です。登記事項証明書は、全国各地の市役所に設置されている法務局証明サービスセンターの窓口で発行してもらえます。また、登記・供託オンライン申請システムを利用して、オンラインで交付請求することも可能です。登記・供託オンライン申請システムについて詳しく知りたい方は、公式サイトをご確認下さい。
3.債権者一覧に住宅ローン特則を利用する旨の記載が必要
住宅ローン特則を利用する場合は、個人再生申立て時に提出する債権者一覧に貸付を受けている金融機関の名称と住所、電話番号とFAX番号、現在の借入残高を記載します。また、当該借入が住宅ローンの貸付であること、住宅ローン特則を利用した再生計画案を提出する予定であることを書式に沿って記入してください。
過去に住宅ローンの滞納があり、保証会社が代位返済を行っている場合、原則として住宅ローン特則は利用できません。しかし、代位弁済から6カ月が経過していない場合に限り、住宅ローンの巻戻しという救済措置により、住宅ローン特則が使える可能性があります。(民事再生法第198条2項)。
この場合は、債権者として保証会社の名称や住所地などを記すなど、債権者一覧の書き方が変わるため、保証会社による代位返済を受けた経験がある方は、巻戻しが適用されるか否かも含めて弁護士など法律の専門家に相談するとよいでしょう。
個人再生の申立て後に必要となる書類と提出時期
個人再生では申立て時だけではなく、申立て後に提出する書類もあります。申立て後に提出が必要な書類と、提出が求められる時期について説明します。
1.再生計画案
個人再生手続が開始されると、個人再生委員との面談、債務、収入、財産等についての調査が行われ、問題がないと判断された場合、どのように借金を返済するのか、どの程度までの減額を希望するのかを記した再生計画案の提出を求められます。再生計画案は、裁判所が個人再生の可否を判断する上で重要な書類です。
再生計画案には、債務額や可処分所得から算出した最低弁済額と、原則として3年(例外として5年)以内に分割で返済する返済計画を記載し、この計画通りに返済が可能だと裁判所に認められる必要があります。
再生計画案の提出時期は裁判所によって若干異なりますが、概ね申立て後3〜4カ月以内に提出が求められます。裁判所が定めた期日内に提出しないと、個人再生手続が廃止となるので、期日内の提出が難しい場合は、必ず提出期間内に期限の伸長を申し出てください。
2.財産状況等報告書
財産状況等報告書は、個人再生の申立て後に、財産に変動があったか否かを回答するための書類です。裁判所によって多少時期は異なりますが、概ね申立て後1〜2カ月以内に提出が求められます。
財産状況等報告書の提出時に財産が増加していた場合は、財産目録作成時から増えた財産について詳細を記入します。財産に変化がない場合は「変動なし」として報告します。
3.債権認否一覧表
個人再生の手続が開始されると、債権者一覧に記載されている債権者に対して、再生手続の開始決定通知が発送されます。通知を受け取った債権者は、申立人に貸付をしている金額を裁判所に報告し、申立人はこの金額が正しいかどうか確認します。債権認否一覧表は、債権者からの連絡を待って作成するため、申立てから概ね2カ月以内に提出することになります。
4.異議書
債権認否一覧表にて認められない債権がある場合には、申立人は債権者にあらかじめ通知をした上で裁判所に異議書を提出し、異議書の写しを個人再生委員に提出します。
異議書を提出しないと、債権認否一覧表に債権の内容を認めない旨を記載しても、異議はないものとみなされるおそれがあるので、注意しましょう。
個人再生の必要書類に関するよくある質問と回答
個人再生の必要書類に関して、よくいただく質問に回答したいと思います。
1.書類が揃わない場合はどうすればいい?
個人再生の申立て時に必要とされている書類が揃わない場合、または書類に不備がある場合は、個人再生の申立てを受け付けてもらえません。しかし、数多くの書類を指定された通りに、漏れなく集めるのは難しい場合もあるでしょう。
例えば、給与所得者等再生手続の添付書類として提出が求められる源泉徴収票は、確定申告時に添付したので手元にない、紛失してしまったなどという理由から、用意できない方も少なくないでしょう。
源泉徴収票は安定した収入があることを証明する目的で提出するため、同様の内容が記載されている課税証明書を添付書類として提出することにより、裁判所が申立てを認める場合もあります。
可能であれば勤務先に源泉徴収票の再発行を依頼することが望ましいですが、それが難しい場合は、市区町村の役所で課税証明書を取得して、源泉徴収票が出せない旨の報告書とともに提出するとよいでしょう。
2.書類不備により不認可になる可能性はある?
裁判所に提出した書類に不備があることや、書類に虚偽の内容が記載されていることが発覚した場合、再生手続が途中で廃止される(打ち切られる)おそれがあるため注意が必要です。書類の書き方がわからない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に手続の代理を依頼すれば、書類の作成をサポートしてもらうことや、裁判所に提出する前に必要書類に不備がないか確認してもらうことができます。
3.書類の提出期限に間に合わない場合はどうすればいい?
個人再生では裁判所から指定された期限内に書類を用意できるか否かが、手続上重視される傾向にあります。特に再生計画案については民事再生法第191条第2号において、期限内に提出が見込めない際には裁判所は再生手続の廃止を決定すると定められているため、最初に指定された期限もしくは伸長された期限内の提出が必須です。
仕事などで忙しくて期限内に書類を用意するのが難しいという方は早めに弁護士に相談して、書類作成のサポートを受けることをおすすめします。
まとめ
今回は、個人再生の手続に必要な書類と記載事項、住宅ローン特則利用時に必要な書類などについて解説しました。
個人再生の手続に必要な書類は非常に多く、不備なく書類を揃えるのは至難の業です。弁護士に依頼したいけれど費用面が心配という方もいらっしゃるかもしれませんが、個人再生では、弁護士に依頼することにより裁判所に納める予納金が減額されるなど費用面で恩恵が受けられる場合もあるので、個人再生を検討している方は債務整理に精通した弁護士に相談することをおすすめします。
私達、東京スタートアップ法律事務所では、債務整理に精通した弁護士が、個人再生の手続をサポートしています。個人再生以外の債務整理の方法についても検討したいという方には、状況やご希望を丁寧にお伺いした上で最適な債務整理の方法をご提案させていただきます。秘密厳守はもちろんのこと、分割払い等にも柔軟に対応しておりますので、安心してご相談いただければと思います。
東京スタートアップ法律事務所は、2018年9月に設立された法律事務所です。
全国に拠点を有し、所属メンバーは20代〜40代と比較的若い年齢層によって構成されています。
従来の法律事務所の枠に収まらない自由な気風で、優秀なメンバーが責任感を持って仕事に取り組んでいます。
- 得意分野
- 不貞慰謝料、刑事事件、離婚、遺産相続、交通事故、債務整理など