私的整理とは?法的整理との違いやメリット・デメリットを解説
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記事目次
「私的整理と法的整理の違いについて理解したい」「私的整理には、どのようなメリット・デメリットがあるのか知りたい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。債務整理には様々な種類がありますが、大きく分けると私的整理と法的整理に大別されます。
今回は、私的整理の概要、私的整理と法的整理との違い、私的整理のメリットとデメリット、私的整理を成功させるためのポイントと注意点などについて解説します。
私的整理とは
私的整理とは、破産法や民事再生法などの法律に基づいた手続を用いることなく、債務の返済が困難になった債務者が、債権者との交渉により行う債務整理のことです。交渉の内容は、債務者の状況や希望などにより異なりますが、支払能力に応じた分割払いなどの返済方法の変更や将来発生する利息分の減額などについて協議するケースが多いです。
債権者が任意で債務者との和解に応じることにより解決を図る方法なので、任意整理と呼ばれることもあります。
私的整理と法的整理の比較
私的整理は、一般的に法的整理以外の債務整理を包括した概念として用いられますが、私的整理と法的整理にはどのような違いがあるのでしょうか。法的整理の概要、準則型私的整理の概要、私的整理と法的整理との違いについて説明します。
1.法的整理とは
法的整理は、私的整理と反対の概念で、法律に基づいた手続を用いて行う債務整理全般をいいます。法律に定められた規定に従う必要があるため、利用できる要件が厳しく、必要な提出書類も多いです。法的整理は、清算型と再建型という2つの種類に分類されます。
①清算型
清算型の法的整理は、債務者の財産を換価処分(現金化)して、処分によって得た金銭を債権者に対して公平に分配する手続です。清算型の手続には以下の2つの種類があります。
- 破産手続:破産法に基づく手続で、個人から法人まで広く利用することが可能
- 特別清算手続:会社法に基づく手続きで、株式会社のみ利用することが可能
②再建型
再建型の法的整理は、債務者の財産を維持しながら、債務の負担軽減などにより、債務者の経済的な再建を図る手続です。再建型の手続には以下の2つの種類があります。
- 民事再生:民事再生法に基づく手続で、個人から法人まで広く利用することが可能
(個人の場合、個人再生という簡易化された手続を利用することが可能) - 会社更生:会社法に基づく手続きで、株式会社のみ利用することが可能
2.準則型私的整理とは
準則型私的整理とは、一定のルールに基づいて実施される私的整理のことをいい、法人が対象となります。準則型私的整理では、手続の公正性や公平性を確保するために、制度化されたルールに基づいて手続が進められます。準則型私的整理に対して、従来の私的整理は純粋私的整理と呼ばれることもあります。
準則型私的整理として、主に以下のような制度があります。
- 私的整理に関するガイドライン
- 事業再生ADR
- 整理回収機構による企業再生スキーム
- 中小企業再生支援協議会による再生支援事業
- 地域経済活性化支援機構による再生支援手続
どの制度が適しているかは、企業の規模や状況などによって異なりますので、準則型私的整理を検討したい場合は、債務整理や企業法務に精通した弁護士に相談するとよいでしょう。
3.私的整理と法的整理の違い
法的整理と私的整理との最も大きな違いは、法的整理が法的な強制力を持つ手続であるのに対して、私的整理は法的な強制力を持たない手続であるという点です。また、法的整理は裁判所を介して行われるのに対し、私的整理は裁判所を介さずに当事者間の交渉により行われるものなので、債権者が交渉に応じない場合は、債務整理を行うことができません。
その他の違いについては、私的整理のメリットとデメリットを交えて、説明したいと思います。
私的整理のメリット
私的整理は法的整理と比較して、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的なメリットについて説明します。
1.柔軟な解決を図ることが可能
法的整理と違い、私的整理には法律で定められたルールが存在しません。裁判所の関与を受けずに、当事者間の協議により進めることができるため、債務者の状況や抱えている問題などに応じて、柔軟な再建計画を立案することが可能です。例えば、連帯保証人に迷惑をかけたくない場合、連帯保証人が付いている債務を私的整理の対象から外すことにより、連帯保証人に請求されることを回避することもできます。
2.手続にかかる時間と費用を抑えられる
法的整理の手続を行うためには、裁判所に予納金を納める必要がありますが、私的整理の場合は裁判所に納める予納金は不要なので、その分、費用を抑えることができます。また、法的整理では、裁判所に提出する必要のある書類が多く、書類を収集・作成するのに多くの時間を費やす必要がありますが、法的整理では必要な書類が比較的少ないため、書類の準備のために余計な時間を費やさなくて済みます。
また、裁判所を介さずに当事者間のみで手続を進めることができるため、当事者間の話し合いによりスムーズに合意に至れば、迅速な解決が実現します。
3.第三者に知られる可能性が低い
法的整理と違い、私的整理では、債務者と債権者が非公開で協議を行うため、外部に情報が洩れにくく、第三者に知られる可能性が低いです。法人の場合、融資先の金融機関のみと協議を行う場合も多いです。その場合、交渉相手である金融機関以外に、私的整理の手続を始めたことを知られる可能性はほとんどありません。
法人が債務整理の手続を始めたことを第三者に知られると、取引先や顧客からの信用を失い、大きなダメージを受けるリスクがあります。破産や民事再生などの法的整理は、全ての債権者が対象となるため、取引先に対して未払いの売掛金などがある場合、取引先に法的整理の手続をしたことを知られてしまうのです。
個人の場合、自己破産を選択すると同居家族の収入を証明する書類の提出が必要なため、同居家族に知られずに進めることは難しいですが、私的整理を選択すると同居家族の収入を申告する必要もなく、裁判所から通知が届くこともありません。
私的整理のデメリット
私的整理にはメリットだけではなくデメリットもあります。具体的にどのようなデメリットがあるのか説明します。
1.返済能力が低い場合は利用できない可能性もある
私的整理を行うことにより、月々の返済額を減額することはできますが、自己破産のように債務を免責してもらうことはできません。そのため、条件の変更によって元本を完済できるだけの支払能力がないと利用できないという点には注意が必要です。
2.債権者が応じてくれない可能性がある
前述した通り、私的整理には法的な強制力がありません。そのため、交渉に応じない債権者に対して、交渉への合意を強制することはできません。
一般的に、都市銀行、銀行系の消費者金融、大手の消費者金融などは、私的整理に応じる傾向があるといわれていますが、私的整理には一切応じないという方針を貫いている金融機関も存在します。
3.期待通りの結果を得られない可能性もある
多くの場合、私的整理で減額が見込めるのは利息と遅延損害金のみであるため、「債務整理を行ったのに、期待していたほど借金が減らなかった」という声も少なくありません。特に利息が少なく、良心的な条件で貸付を受けている債務については、私的整理の恩恵はそれほど見込めない可能性が高いです。
将来利息しか減額できないケースや、中には将来利息すら減額できないケースもあるため、注意が必要です。
私的整理を成功させるためのポイントと注意点
私的整理を成功させるためには、どのようなことが必要なのでしょうか。また、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。私的整理を成功させるためのポイントと注意点について説明します。
1.実現可能な返済計画を立てること
私的整理を成功させるために最も大切なことは、無理なく実現できる返済計画を立てることです。私的整理では、一般的には3年間、特別の事情などがある場合は5年間で完済する返済計画を立てることが多いです。返済期間は短いほど、債権者から合意を得やすくなりますが、途中で支払いが滞るようなことがないよう、無理のない計画にすることが大切です。3年という長い間には、収入が変動する可能性があるという点も考慮し、毎月確実に返済を見込める金額を検討しましょう。
途中で返済が難しくなった場合は再度交渉して条件を決め直すことも可能ですが、和解後の返済額の変更は難しく、不利な立場に陥る可能性もあります。
2.債務整理に精通した弁護士に相談すること
弁護士や司法書士などの法律の専門資格を持っていなくても、任意整理を行うことは可能です。そのため、債務者本人が一人で任意整理の交渉を行うことも可能ですが、専門家に依頼せずに一人で交渉を行った場合、債権者が和解に応じない可能性もあります。
また、交渉の経験を豊富に持つ弁護士に依頼することにより、より有利な条件で和解を成立させられる可能性が高まります。
まとめ
今回は、私的整理の概要、私的整理と法的整理との違い、私的整理のメリットとデメリット、私的整理を成功させるためのポイントと注意点などについて解説しました。
裁判所を介さない私的整理は、柔軟な解決を図ることが可能な債務整理の方法ですが、有利な条件で債権者との和解を成立させるためには債務整理に精通した弁護士の力を借りることが望ましいでしょう。
私達、東京スタートアップ法律事務所は、借金をリセットして自分らしい生活を送るための基盤作りを全力でサポートさせていただきたいと考えております。多くの方々の借金問題を解決した実績を持つ弁護士が、相談された方の状況やご希望を丁寧にお伺いした上で、私的整理後の収支等も踏まえながら無理のない返済計画を立案し、債権者との交渉に臨みますので、安心してお任せ下さい。また、他の債務整理の方法についても検討したいという場合は、ご希望に応じて最適な債務整理の方法をご提案させていただきます。秘密厳守はもちろんのこと、分割払い等にも対応しておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。
「ForClient」を理念として自らも多くの顧客の信頼を得ると共に、2018年の事務所開設以降、2023年までに全国12支店へと展開中。
- 得意分野
- ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設