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更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

親権は何歳まで有効?成年年齢引き下げによる影響や養育費の支払い義務を徹底解説

親権は何歳まで有効?成年年齢引き下げによる影響や養育費の支払い義務を徹底解説
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2022年4月、改正された民法が施行されました。
この改正で最も大きな変更点が『成年年齢の引き下げ』です。民法4条には、こう書いてあります。

年齢18歳をもって、成年とする。

「成年」というのは聞きなれない単語ですが、民法などに記載されている法律用語であり、
日常用語の「成人」とだいたい同じような意味と考えてよいでしょう。

法律上、1人で契約などができるようになり、親の監護から外れることを指します。
この「親の監護から外れる」というのがポイントです。成年年齢が引き下げられたということは、18歳になったら親権からも外されてしまうという意味なのでしょうか。

今回は成年年齢引き下げと親権の関係について詳しく説明します。

親権は何歳まで有効?

成年年齢引き下げと親権の関係について、順を追って深く掘り下げて説明していきます。

そもそも親権とは何かから考えていくと、成年年齢引き下げと親権がどのような関係に立つのかが分かってきます。

そもそも親権とは?

まず、親権とは何かからご説明します。

親権は『権』と書かれていますが、義務も含まれるのではないかと話題になったことがあります。

確かに民法820条は、「親権を有する者は・・・権利を有し、義務を負う。」と書かれています。
親権は、大きく分けて身上監護権財産管理権に分かれます。

身上監護権とは、子どもの世話をする権利であって、世話をする義務でもあります。
具体的には、住む場所を決める、しつけをするなどといったことです。しつけについては、虐待が問題になったことから、懲戒という文言が削除され、体罰などにわたってはいけないとされています。

財産管理権とは、子どもの財産を管理したり、財産に関する契約を代理したりする権利や義務のことです。
一番身近な財産管理は、子どものスマートフォンの契約だろうと思います。

親権は子どもが何歳になるまで有効?成年年齢引き下げによる影響とは

このように親権は法律によって定められていますが、子どもが何歳になるまで対象になるのでしょうか。

民法818条1項は、こう定めています。
成年に達しない子は、父母の親権に服する。

つまり、「成年に達しない子」=「未成年者」は、親権の対象になるということになります。先ほどの民法改正で説明したとおり、成年年齢は18歳です。
そうすると、親権は、18歳になるまでが対象ということになります。

民法改正までは、20歳が成年年齢でした。つまり、法律が変わった後は、18歳~19歳の子は未成年ではない、すなわち親権にも服さないということになりました。

これは実務上かなり大きな影響を与えていて、今までは18歳の子がいれば、調停などで「この子の親権者は父or母」と決めていました。それが18歳の子であれば親権者を決めなくてよいということになったのです。

親権消滅後の養育費について

このように、18歳の誕生日を迎えると親権は消滅することになります。
そうすると、養育費がもらえなくなってしまうのではないかという疑問が出てきます。

でも18歳はまだ大学生であることも多く、養育費がもらえないと困る場合も出てきます。

18歳以降の養育費について、次に説明します。

親権と養育費の関係性

「養育」という言葉の響きから、養う必要がある者、つまり未成年者のためのお金が養育費ではないかと考えがちです。

これは基本的にはそのとおりで、成年年齢引き下げ前は、養育費は20歳になるまで支払われるというのを原則にしていました。

ただ、養育費の本来の意味は、経済的に自立していない子に対して払われるお金という意味です。

大学生の間は自立しているとは言い難いですから、大学卒業まで養育費を支払うという取り決めがされることもありました。

こういった状況は、成年年齢が引き下げられても変わらないはずです。実務上広く参照されている裁判官などが作った司法研究という本をみても、「成年年齢引き下げ後も、養育費は原則として20歳まで。大学進学などの場合、大学卒業までとすることもある。」と明記されています。

養育費の支払い期間

以上を整理すると、養育費の支払い期間は、以下のようにまとめられます。

原則

満20歳になるまで
条項例)満20歳に達する日の属する月まで

大学進学が予想できる場合やすでに大学に進学している場合

大学卒業まで
条項例)満22歳に達した後の最初の3月まで
大学(専門学校、短大を含む。)に進学した場合には、その卒業する日の属する月まで

*大学卒業の日とすると、大学に進学しない場合に不明確な規定になってしまうため、「(大学に進学しない場合は)満20歳まで」とする条項と組み合わせることが多いです。

このほか、養育費の支払い期間は法律で定められているわけではないので、両親が自由に合意することも可能です。
例えば18歳で働きに出ることが確実な場合、18歳になるまでと合意することもあります。

他方で、いつまで支払うかが両親の間で争いになった場合、最終的には裁判所が決めます。
上記のとおり原則として20歳までですから、例えば18歳までとする意見と20歳までとする意見が対立した場合、多くは20歳までとなります。

また、20歳までとするか大学卒業までとするかで争いになった場合、裁判所は、両親の学歴(大卒かどうかなど)、収入、離婚に至るまでの協議状況(大学進学を容認していたかなど)などを総合的に考えて判断していきます。

一般論として、お子さんが小さいうちは20歳までとすることが多く、高校生になるなどして大学進学がかなり現実的になってきたら大学卒業までとすることが多いといえます。

離婚時、子どもが18歳以上の場合における親権以外の注意点

このように、お子さんが18歳以上の場合、もう成年年齢に達していますから、親権者を決める必要はありません。

ただ、養育費の支払いは決めた方がよいことになります。お子さんが18歳以上の場合の注意点について、整理してみます。

養育費の取り決め

先ほど述べたとおり、養育費は経済的な自立ができない子どもに支払われるものです。
18歳以上の場合、大きく分けて以下のどれかになるでしょう。

1.大学や専門学校に進学している場合
2.大学などに進学しようとしている場合(いわゆる浪人生)
3.大学や専門学校などに進学せず、すでに働きに出ている場合

それぞれ、どのように取り決めればよいでしょうか。

1.大学や専門学校に進学している場合

大学や専門学校を卒業するまでは経済的に自立しているとは言いにくいでしょうから、養育費は大学や専門学校を卒業するまでと取り決めることが比較的多いといえます。

もっとも、養育費を払う側の親が進学を了承していなかった場合など、そこまでの養育費を負担させることが酷な場合には、原則に戻って20歳までとなることもあります。

2.大学などに進学しようとしている場合

ひょっとしたら進学を諦めるかもしれません。そうすると、大学などを卒業するまでと決めてしまうと、卒業する日は一生やって来ず、養育費の支払義務が一生残るように読めてしまいます。

裁判例の中には、このような場合に養育費の支払い期限を限定するものもありますが、やはり取り決めの段階で明確にしておくとよいでしょう。

例えば大学などに進学したら大学卒業まで、進学しなかったら20歳まで、と場合分けをして記載することが考えられます。

3.すでに働きに出ている場合

経済的に自立しているといえますから、養育費の支払義務が発生しない、つまり養育費の取り決めをしないことが考えられます。

もっとも、働きに出ているといっても様々な場合があり、仕送りに頼って生活している場合もありますから、原則に戻って20歳まで支払うと取り決めることもあります。

戸籍と名字(戸籍を抜ける親の戸籍に入る場合)

かなり難しいのが名字の問題です。
小さい子でしたら、親権者が代理をして行う(つまりは離婚の手続の一環として行う)ので問題が顕在化することは少ないのですが、18歳を超えると、お子さんが単独で名字をどうするかを決めることができることになります。

この場合、原則として「離婚によって子どもの名字は自動的には変わらない」「離婚によって子どもの戸籍も移動しない」と考えてください。つまり、離婚があったとしても、依然として戸籍に留まる親の名字のままということになります。

逆に、戸籍を抜ける親の名字を使いたい場合(かつ戸籍はその親の戸籍に入りたい場合)はどうしたらよいでしょうか。
この場合、名字(氏)の変更を許可してもらうよう、家庭裁判所に申し立てることになります。「許可」というと裁判所が許可しないことがありそうですが、実務上ほぼ許可が認められ、多くの裁判所では即日判断まで行きます。

その後、その親の戸籍に入りたいという入籍届を役所に提出すれば、親の戸籍に入り、その親の名字を使うことができます。
ちなみに、戸籍の大原則として、同じ戸籍には違った名字は入れないというのがあります。したがって、親の戸籍に入りたいのであれば、名字を同じにしてから入るということになるのです。

戸籍と名字(どちらの親の戸籍にも入りたくない場合)

お子さんによっては、どちらの親の戸籍にも入りたくないという場合もあります。
様々な理由がありますが、お子さんが将来結婚する場合に親のごたごたを極力現在戸籍に残したくない場合などに、どちらの親の戸籍にも入りたくないということが起こり得ます。なお、以前は「本籍が遠いと戸籍の取寄せに時間がかかるから分籍して住所に近いところに本籍を置きたい」という目的もありましたが、現在は広域交付制度といって全国どこでも戸籍が取得できるようになりましたので、この目的が出てくることはかなり減りました。

どちらの親の戸籍にも入りたくない場合、子どもはすでに18歳以上、つまり成人ですので、自分一人で戸籍を動かすことができます。先に述べたとおり「離婚によって子どもの戸籍は移動しない」ため、離婚の瞬間は子どもはなお親の戸籍に留まり続けています。

この親の戸籍から抜ける手続があります。「分籍」といいます。読んで字のごとく、「戸籍を分ける」手続です。
これによって、お子さん単独の戸籍ができあがります。この場合の名字は、分籍時の名字になります。

離婚や親権、養育費の問題を弁護士に相談したほうがいい理由

離婚や親権、養育費の問題は、感情的な対立や複雑な法的手続が伴うため、専門知識を持つ弁護士に相談することが重要です。

離婚条件の交渉や親権の決定、養育費の算定は法律や判例に基づいて行われますが、一般の方には適切な基準や手続が分かりにくいものです。

弁護士は依頼者の権利や利益を最大限守るため、適切な主張や証拠収集を行い、不利な合意や見落としを防ぎます。

また、相手方との直接交渉を避けられるため、精神的負担の軽減にもつながります。結果的に、将来の生活や子どもの福祉を守るための最善策を講じることができます。

親権に関するよくある質問

質問1. 親権を決めるのに、子どもの意思はどこまで反映されるの?

法律上、15歳以上であれば裁判所は子どもの意見を聴かないといけないとされています。したがいまして、15歳以上になればほとんど子どもの意見に沿って親権者が決められます。
15歳未満の場合、子どもの年齢が上になるにつれ、その意見が尊重されるようになります。小学校高学年くらいから重視されていく印象です。

 

質問2. 18歳になったら、親権はどうなるの?

親権に服すのは、18歳に達するまでです。18歳になったら、親権に服さなくなる(消滅する)ことになります。
ただ、18歳になったからといっていきなり親の手から離れるわけではありません。

例えば高校の退学希望が出された際、親を交えて話合いをすることが必要とされることが多いです。

また、校則などで、親の同意を条件とすることも考えられます。この場合、親権者ではなく保護者などと呼ばれることになります。

質問3. 養育費の話合いがまとまらない場合、どうすればいいの?

親権が18歳までとなっても、原則として20歳まで養育費の支払義務があると説明しました。

ただ、実際には、金額が決まらなかったり、いつまで払うかが決まらなかったりします。
協議でまとまらない場合には、調停を申し立てることになります。

離婚前であれば、離婚調停の中で養育費の金額や終期を決めることになります。
離婚後であれば、養育費のことだけを決める調停、つまり養育費請求調停を申し立てます。

質問4. 大学を途中で辞めてしまった場合など、養育費はどうなるの?

取り決めの内容が年齢で決まっている場合(22歳になってから最初の3月など)には、大学を途中で辞めても養育費の支払義務が残ることになります。

ただ、大学費用を見込んで金額を決めた場合などでは、22歳の3月とするのは支払者に酷な場合もあり、再度取り決めをする必要があることもあります。

他方で、大学卒業までと決めていた場合には、辞めた時期にもよりますが、原則に戻って20歳までとされることが多いです。
一度取り決めがあるので、取り決めを変更するには再度取り決めを行うのが通常です。特に調停で決まった場合などでは、差押えの問題などが生じるおそれがあるので、紙での合意や再度の調停申立てが考えられます。

まとめ

以上、成年年齢の引き下げと親権の関係について説明してきました。
まとめると以下のようになります。

①親権は身上監護権と財産管理権からなり、権利の側面もあれば義務の側面もある。
②親権は18歳までの子どもが対象。
③ただ、養育費は20歳になるまでとされることが多い。
④18歳に達していると、名字をどうするか自分で決めることができる。名字(氏)の変更許可を申し立てたり、さらに分籍をしたりできる。

ただ、よくある質問でも答えたとおり、養育費の額などで揉めることが多く、再度調停を申し立てる必要がある場合も多いです。東京スタートアップ法律事務所は離婚や養育費に関する事件を数多く取り扱っていますので、お気軽にご相談いただければと思います。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士として、男女問題などの一般民事事件や刑事事件を解決してきました。「ForClient」の理念を基に、個人の依頼者に対して、親身かつ迅速な法的サポートを提供しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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