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更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

離婚したいと思った際にやるべきこととは?離婚前に必要な準備や期間を徹底解説

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記事目次

当初は永遠の愛を誓った夫婦でも関係性に亀裂が入ると「離婚」の二文字が頭に浮かびます。

さて、離婚を考えた際にどのようなことをするべきでしょうか。今回は必要な準備や期間について解説します。

「離婚したい」と事前準備なしに切り出すのはNG!その理由とは

離婚する場合、離婚条件を配偶者との間で合意する必要があります。夫婦の間に子どもがいる場合は親権について取り決める必要がありますし、養育費婚姻費用財産分与なども取り決める必要があります。

離婚では、取り決めるべき事柄が多いですし、離婚後の生活設計についても十分に考えておく必要があります。

「離婚したい」と決意した際に準備すべきこと①離婚後の生活設計

「離婚したい」と決意した際、まず取り組むべきは離婚後の生活設計です。経済的に自立できるかを確認し、収入・支出のバランスを見直す必要があります。住居の確保、就職や転職の可能性、子どもの生活環境や教育費も含めた生活費のシミュレーションを行いましょう。また、公的支援制度(児童扶養手当・生活保護など)の利用も検討します。離婚後に安定した生活を送るためには、現実的で具体的な計画を立てておくことが重要です。

離婚で転居する際に必要なお金

離婚で転居を伴う場合、多くの初期費用が発生します。主な出費は、敷金・礼金・仲介手数料・前家賃などで、一般的に家賃の4〜6か月分が必要です。さらに、引っ越し費用、家具・家電の購入費なども考慮する必要があります。子どもがいる場合は、学校の転校に伴う費用も発生します。予期せぬ支出にも対応できるよう、余裕を持った資金計画が重要です。離婚前にしっかりと貯蓄し、見積もりを立てておくことが安心につながります。

「離婚したい」と決意した際に準備すべきこと②離婚理由を整理

相手が離婚することに同意しているのであれば無関係ですが、同意していない場合は法定離婚事由がなければ裁判で離婚が認められません。したがって、相手が離婚に同意しない可能性を考慮し、法定離婚事由を満たす事情があるかどうか確認しておく必要があります。

・配偶者に不貞な行為があったとき

・配偶者から悪意で遺棄されたとき

・配偶者の生死が三年以上明らかでないとき

・配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき

 →2024年の民法改正により、削除されました。

・その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき

法定離婚事由がない場合の対処法

法定離婚事由がない場合でも、離婚は可能です。ただし裁判では認められにくいため、まずは協議離婚を目指すのが現実的です。相手に冷静に話し合いの場を求め、離婚の意思や理由、今後の生活設計を丁寧に説明することが重要です。離婚後の条件(財産分与・養育費・親権など)を具体的に提示することで、相手の合意を得やすくなります。また、話し合いが難航する場合は、家庭裁判所での調停を検討しましょう。感情的にならず、法的知識を備えた準備が円満離婚への鍵となります。

さらに、明確な法定離婚事由がない場合は、長期間の別居をする必要があります。これにより、実質的な婚姻関係が破綻している状態をつくり、離婚に有利な状況にもっていくことになります。この場合は、離婚するまで長期戦の様相を呈することになるでしょう。

「離婚したい」と決意した際に準備すべきこと③離婚条件のリストアップ

離婚を決意したら、財産分与・慰謝料・養育費・親権・面会交流など、離婚後の生活に関わる条件を具体的にリストアップし、優先順位を整理しておくことが重要です。

慰謝料

離婚を決意した際、慰謝料の請求を検討する場合は、早い段階でその根拠と証拠を整理しておくことが重要です。不貞行為やDV、モラハラなど、法的に慰謝料が認められる理由があるかを確認し、メール・写真・診断書・録音などの証拠を収集します。また、被害の程度や婚姻期間、精神的苦痛の度合いによって慰謝料の金額が変わるため、具体的な状況を整理しておくことが交渉の際に有利となります。不安があれば弁護士に相談するのがよいでしょう。

財産分与

財産分与を有利に進めるには、婚姻期間中に築いた共有財産を正確に把握・記録しておくことが重要です。対象となるのは預貯金、不動産、車、有価証券、退職金、保険などです。それぞれの名義、現在の評価額、取得時期を明確にし、通帳コピーや契約書などの証拠を収集します。また、借金などの負債も共有か個人かを確認し整理しておきます。相手が財産を隠す可能性もあるため、早い段階で情報を集めることが大切です。

婚姻費用

婚姻費用については別居後に婚姻費用の請求をしてから離婚するまで受け取ることができます。婚姻費用(生活費)の請求を有利に進めるためには、相手の収入を示す給与明細や源泉徴収票も収集し、適正な分担額を算定できるよう備えます。婚姻費用は裁判所が算定表に基づいて金額が決まります。これはお互いの年収により金額が決まりますので、別居前から相手の収入に関する資料を収集しておく必要があります。

年金分割

年金分割は、夫婦が結婚している間に納めた年金について、離婚するときにお互いに公平に分ける手続です。年金分割の手続は離婚の後でもすることはできますが、相手が応じてくれるとは限りません。また、年金分割の請求は、離婚の日の翌日から2年という期間の制限があります。まずは、年金分割のための情報通知書を取得しましょう。

親権

親権を有利に進めるためには、子どもの生活環境や福祉を最優先に考えた準備が必要です。具体的には、日常の養育状況(食事・学校・習い事・健康管理など)を記録し、自身が子どもの主要な養育者であることを示せる証拠を集めます。子どもの意思や生活の安定性、居住環境の安全性も整理しましょう。また、相手との協力関係や面会交流の実績も記録し、円満な育児環境を作る姿勢を示すことが重要です。これらは家庭裁判所での親権判断に影響します。

養育費

養育費も婚姻費用と同様に夫婦の年収がわかると裁判所の算定表により金額が決まります。婚姻費用と同様に、相手の年収が分かる資料を収集しておきましょう。

面会交流

必ず離婚時に取り決めておく必要はありませんが、親権をより確実に獲得するためには、相手の配偶者が子と会う機会(面会交流)を設けることに合意しておくと有利でしょう。

「離婚したい」と決意した際に準備すべきこと④離婚原因の証拠を用意

不貞 ・手と第三者の関係を示す証拠(メール、SNSのやり取り、写真、録音など)

・宿泊履歴や会っていた日付、場所の特定

DVやモラハラ ・暴力や精神的虐待の具体的内容(言動、頻度)

・医師の診断書、写真、録音、メモ、日記などの証拠

「離婚したい」と決意した際に準備すべきこと⑤精神的な自立

離婚を決意した際、精神的な自立は非常に重要な準備の一つです。離婚には大きな不安やストレスが伴い、感情的な揺れも避けられません。周囲の意見に流されず、自分の意思をしっかり持つことが求められます。そのためには、信頼できる友人や家族、カウンセラー、弁護士などのサポートを得て、冷静に状況を見極められる精神状態を整えることが大切です。また、将来に向けた前向きなビジョンを描くことで、自信を持って離婚後の人生に踏み出す力となります。

離婚の準備にかかる期間の目安

離婚の準備に要する期間は一概にはいえませんが、法定離婚事由がなく、相当期間の別居をすることで婚姻関係が破綻している状態をつくるためには数年スパンの期間が必要です。すでに法定離婚事由がある場合には、離婚条件次第で短い期間で離婚することも可能でしょう。

離婚にかかる費用

離婚の手続にかかる費用を見ていきましょう。どのような方法で離婚を進めるかによって、必要となる費用の内容や金額は大きく変わります。

話し合いで離婚する場合

夫婦の間で離婚の意思や条件について話し合い、合意ができた場合には、離婚届を役所に提出することで離婚が成立します。

離婚届の提出そのものに手数料などの費用はかかりません。

もっとも、夫婦で取り決めた離婚条件を公正証書として残したい場合には、公証役場での手数料が必要になります。

手数料は内容により異なりますが、一般的に数千円から数万円程度です。さらに、離婚協議書の作成を弁護士などの専門家に依頼する場合は、別途その依頼費用が発生します。

調停や裁判で離婚する場合

(1)調停を申し立てる場合

 離婚調停を申し立てる場合、最低でも以下の費用がかかります。

項目 費用 備考
申立手数料(収入印紙代) 1,200円 ※1つの調停毎の金額
戸籍謄本取得費用 450円 市役所やコンビニで取得
郵便切手代 1,000~1,500円程度 金額は裁判所によって異なります

※1つの調停につき1,200円がかかります。例えば、離婚調停に合わせて、婚姻費用分担調停も申し立てた場合には、2,400円(1,200円+1,200円)となります。

(2)離婚裁判を起こす場合

 離婚裁判を起こす場合、最低でも以下の費用がかかります。

項目 費用 備考
訴訟手数料(収入印紙代)

離婚のみを求める場合

13,000円 基本の手数料
訴訟手数料(収入印紙代)

離婚と合わせて財産分与や養育費等のその他の事項を求める場合

基本の手数料に各1,200円を加算 例)離婚、財産分与、子2人の養育費を請求

13,000円+1,200円(財産分与)+1,200×子2人=16,600円

離婚と合わせて慰謝料を請求する場合 基本の手数料13,000円と慰謝料請求の手数料(印紙代)を比べて多額の方に財産分与などの手数料を加算 例)離婚、財産分与、子2人の養育費と、慰謝料300万円を請求

慰謝料300万円の手数料(印紙代)は2万円で、離婚のみを求める13,000円よりも多額なので、2万円+1,200円(財産分与)+1,200円×子2人=23,600円

戸籍謄本取得費用 450円 市役所やコンビニで取得
郵便切手代 5,000~6,000円程度 金額は裁判所によって異なります

 

両方のケースでかかる費用(200文字)

話し合いで離婚する場合でも、調停や裁判で離婚する場合でも、どちらであっても弁護士に依頼すれば弁護士費用が必要となります。

調停や裁判となれば弁護士に依頼することを検討する方も多くいると思いますが、話し合いにおいても、夫婦間で離婚意思や離婚条件がまとまらない場合には、弁護士に交渉を依頼することが得策です。

弁護士に依頼する場合には弁護士費用が必要となりますが、弁護士費用は法律事務所ごとに異なります。

離婚における弁護士費用としては、協議離婚(話し合い)の場合は30万~80万円程度、調停離婚では40万~100万円程度、裁判離婚では60万~120万円程度が相場とされています。

また、それに加えて、成功報酬金として、慰謝料や財産分与で得られた金額の10~20%が加算されることが多いです。

離婚したいと思った時にしてはいけないこと

離婚を考えたとき、感情のままに行動するのは禁物です。

たとえば、別居を一方的に始めて生活費を全く渡さなかったりすることは、後の協議で不利に働くことがあります。

また、配偶者の人格を否定するような言動や、過度に子どもを味方につけようとする行為も、家庭内の信頼関係を壊すばかりか、裁判での印象も悪化させかねません。

さらに、新たな交際を始めることは「有責配偶者」と見なされ、離婚請求が認められなくなるリスクもあります。冷静な対応と準備が重要です。

「離婚したい」と切り出すタイミングがいつがいい?

「離婚したい」と切り出すタイミングは、離婚後の生活設計や必要な準備が整ったうえで、冷静に話し合いができる状況を見極めて選ぶことが重要です。感情的になっている最中や、相手が仕事や体調などで不安定なときに伝えると、話し合いがこじれやすく、適切な合意形成が困難になる恐れがあります。

まずは経済的な基盤や住居、子どもの生活環境などをある程度整え、証拠や資料など必要な情報も整理しておきましょう。そして、相手が冷静に話を受け入れやすい時間帯や場所を選ぶこともポイントです。例えば休日の午前中や、子どもが不在の時間など、落ち着いて会話できる環境を整えるとよいでしょう。

また、離婚を一方的に突きつけるのではなく、まずは「話し合いたい」という姿勢を見せ、相手の反応や考えを確認しながら丁寧に進めることが、スムーズな協議や今後の関係維持にもつながります。準備とタイミングを見極めることが、納得のいく離婚への第一歩となるでしょう。

離婚の準備は少しずつ進めていきましょう

離婚は大きな人生の決断であり、感情だけで一気に進めると後悔することもあります。そのため、離婚の準備は焦らず、少しずつ進めていくことが大切です。経済的な自立、子どもの生活設計、財産や証拠の整理、精神的な自立など、多くの要素を計画的に整えていくことで、冷静な判断が可能になります。小さな一歩でも着実に準備を積み重ねることで、自分にとって納得のいく離婚を実現できるでしょう。不安なときは専門家への相談も有効です。

離婚に関するよくある質問

離婚に関するよくある質問をリストアップしました。

① 離婚にはどんな方法がありますか?

離婚には主に「協議離婚」「調停離婚」「審判離婚」「裁判離婚」の4種類があります。多くは夫婦間の話し合いによる協議離婚で成立しますが、合意できない場合は調停や裁判に進みます。

② 財産分与の対象になるものは何ですか?

婚姻期間中に夫婦で築いた財産が対象で、預貯金・不動産・保険・車・退職金などが含まれます。名義に関わらず、実質的に共有と見なされるものが分与の対象です。

③ 親権はどのように決まりますか?

親権は子どもの利益を最優先に考え、養育実績・生活環境・経済状況・子どもの意思などを総合的に判断して決められます。基本的に離婚後はどちらか一方が単独親権者になります。

④ 離婚前に別居しても問題ありませんか?

別居は法的に問題ありません。むしろ、生活費(婚姻費用)の請求や、精神的安定のために別居するケースも多くあります。ただし、子どもがいる場合は慎重な判断が必要です。

⑤ 離婚後に名字はどうなりますか?

結婚で姓を変えた人は、離婚後に原則として旧姓に戻ります。ただし、離婚から3か月以内に届出をすれば、婚姻中の姓をそのまま使うことも可能です。戸籍の変更にも注意が必要です。

⑥離婚したほうがいい配偶者の特徴は何ですか?

離婚したほうがいい配偶者の特徴は一概には言えませんが、以下のような特徴がある場合、離婚を検討すべき重大なサインである可能性があります。

・暴力(DV)やモラハラがある場合

・不貞行為(浮気・不倫)を繰り返す

・子育てや家庭に無関心

・ギャンブルや浪費等、生活能力や責任感が著しく欠如している

・上記のような事項について、改善の意思が全く見られない

⑦本当に離婚したい人が取るべき行動はなんですか(150文字)

準備なしで「離婚したい」と相手に切り出すのではなく、離婚原因についての証拠の収集や別居に向けた生活設計の検討など、冷静に準備を進めることが最も重要です。

⑧離婚したい場合まず何をするべきですか?

離婚には多くの検討すべき事項があり、重点的に考えなければならない点は人それぞれ異なります。

対応を誤らないためにも、まずは弁護士などの専門家に早めに相談することをおすすめします。

まとめ

離婚を決意したら、生活設計、証拠や財産の整理、親権や年金分割など多岐にわたる準備が必要です。

感情に流されず、冷静に進めることが円満な離婚への第一歩となります。離婚は法的知識と戦略が鍵を握ります。

少しでも不安がある方は、早めに弁護士へ相談し、確実な準備を整えることが必要です。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士として、男女問題などの一般民事事件や刑事事件を解決してきました。「ForClient」の理念を基に、個人の依頼者に対して、親身かつ迅速な法的サポートを提供しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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