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更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

強要罪とは?成立要件、罰則、逮捕された場合の流れを紹介

強要罪とは?成立要件、罰則、逮捕された場合の流れを紹介
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強要罪とは、どのような場合に成立し、どのような刑罰が科せられる罪なのでしょうか。

この記事では、強要罪について、法律上の規定、具体例、実際に刑事事件となった場合の流れ、その後の対処法、よくあるご質問などについてご説明していきます。

強要罪とは何か

強要罪は、端的にいえば、被害者又はその親族への害悪を告知するか、被害者に暴行を加えて、被害者に義務のない行為を行わせる行為が強要罪に該当します。

具体的な要件については、本記事の後半で詳しくご説明します。

強要罪の罰則

強要罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑とされています。

拘禁刑は最短で30日なので、正確には30日以上3年以下の拘禁刑となります。

拘禁刑は、これまで懲役刑又は禁固刑とされていたものが法改正によって統一された刑罰であり、刑事施設に拘置され、場合によっては刑務作業に従事することとなります。

前科が影響する

強要罪に該当する行為を行って刑事裁判になった場合、上記の範囲内で具体的な刑期(と刑務作業の有無)を定めた判決が下されることになりますが、その際には犯行態様の悪質性、示談の有無等に加え、前科の有無が大きく考慮されることとなります。

特に複数回の同種の前科がある場合、刑罰は上限の3年に近い形で定められる可能性もあるため注意が必要です。

強要罪のみの場合

一般的な強要罪のみの事案では、同種前科などがない場合、執行猶予が付される可能性が高いです。

但し、強要罪に該当する行為が、派生して別の犯罪にも該当しうる場合もあるため、必ずしも執行猶予が付くとは限らないことは留意してください。

執行猶予とは、3年以下の拘禁刑に付されるもので、最長5年間刑の執行を猶予、すなわち刑事施設に入らなくてよいとする制度です。

判決では「被告人を懲役3年に処する。但し、刑の執行を5年間猶予する。」などの形で言い渡されます。

執行猶予の期間中に再度罰金刑以上の刑罰が確定しない限り、期間の経過と同時に刑の言い渡しの効力は消滅し、その罪によって刑事施設に入る必要はなくなります。

但し、執行猶予の期間中に再度罰金刑以上の刑罰が確定した場合には、両方の刑罰(執行猶予が付された刑罰と、再度の罰金刑以上の刑罰)を合算して受ける必要があること、何事もなく執行猶予期間が経過しても「前科」自体は残ることに注意が必要です。

強要罪と脅迫罪の違い

強要罪と似た罪として、脅迫罪が挙げられます。

脅迫罪は刑法222条によって「2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金」と定められており、強要罪よりも軽い刑罰となっています。

その違いは、脅迫罪が「害悪の告知」に留まる一方で、強要罪は「害悪を告知」することにより、被害者に義務のない行為を行わせるという点から生じています。

具体的には、「お前の店で暴れてやるぞ」と告げるだけなら脅迫罪、「お前の店で暴れてやるぞ、暴れられたくないなら土下座しろ」などと告げた場合には強要罪となります。

強要罪と恐喝罪の違い

強要罪と似た罪として、恐喝罪が挙げられることもあります。

恐喝罪は、暴行や脅迫を用いて、金銭等を支払わせた場合に成立し、法定刑は刑法249条によって「10年以下の拘禁刑」とされています。

強要罪において被害者に対して要求する「義務のない行為」のうち、特に内容が金銭的な要求に関するものだった場合には、恐喝罪としてより重く処罰すべきという国家の判断となっています。

強要罪に問われる可能性がある行為

日常生活において目にする、強要罪に問われ得る行為の一例として、以下の行為が挙げられます。

①飲食店等における度を超えたクレーム

商品やサービスに問題があり、それを店員に告げるだけであれば当然犯罪は成立しません。

しかし、お店で暴れたり(又はその旨を店員に告げたり)、そうされたくなければ土下座をしろなどと店員に告げる行為には強要罪が成立する可能性が生じます。

また、店長を脅して部下を異動させる行為などについても強要罪が成立する可能性があります。

②パワーハラスメント

パワーハラスメント、いわゆるパワハラについても、場合によっては強要罪に該当し得ます。

会社(上司)は部下に対して、業務上必要な行為を行うよう命じる権限がありますが、業務内容と全く関係がないのに、「左遷されたくなければ」などと害悪の告知をしたうえで、「毎日上司の送迎をしろ」などと命じて行わせる行為には強要罪が成立する可能性があります。

③アルコールハラスメント

お酒を勧めたり、それが多少強引であったりしたくらいでは強要罪は成立しない可能性が高いです。

しかし、例えば暴力団員との関係をちらつかせたうえで「飲まなければどうなるかわかっているだろうな」と申し向けたり、上司が部下に対して「断ったら明日から仕事があると思うな」などと告げたりして飲酒を強要する場合には強要罪が成立し得ます。

④その他の行為

例えば職場内で違法行為やセクハラ等の内部告発があった場合に、上司が内部告発者を探すために複数の社員に対して「名乗り出ない場合にはたとえ退職しても潰すぞ」などと告げて名乗り出させる行為なども強要罪に当たります。

強要罪が成立する要件とは

強要罪は、「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した場合」又は「親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した」場合に成立します(刑法223条1項、2項)。

①「害悪の告知」

「生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知」という要件は、「害悪の告知」などと称される場合もあります。

生命、身体、名誉、財産等を棄損する旨を告げる行為がこれに当たります。

想像しにくいかもしれませんが「自由」に対する害悪の告知は「書類にサインしなければこの部屋から出られると思うな」など、「名誉」に対する害悪の告知は「不倫の事実を職場や家族にばらされたくなければ」などの告知を指します。

②「脅迫又は暴行」

強要罪の成立には、害悪の告知に加え、「脅迫し、又は暴行を用い」る行為が必要です。

「脅迫」とは、一般的な人が畏怖するに足りる程度の害悪の告知をすることを指します。

「犬のフンを踏むようにお祈りするぞ」などと申し向ける行為は、畏怖するには足りないと考えられるため、脅迫には至っていないと評価される可能性が高いです。

「暴行」とは、身体に対する不法な有形力の行使を指します。

殴る、蹴る、髪を引っ張るなどの行為は当然暴行にあたりますが、例えば相手に塩をかける、身体の近くに向かって石を投げるなどの行為も暴行に当たります。

③「人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害」

最後は、「人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害」することが必要です。

「義務(のないこと)」という要件について、法律上の義務がないことなのか、社会通念上の義務さえないことなのかについては争いがありますが、どちらかといえば法律上の義務がなければ、社会通念上義務があることを行わせても強要罪が成立するという解釈のほうが一般的だと思います。

ただ、後者の「社会通念上の義務があることを行わせた場合には強要罪は成立しない」という解釈を採用しても、暴行罪や脅迫罪は成立するため、解釈によって結論が大きく分かれることはありません。

「権利の行使を妨害」する行為とは、例えば借金をなかったことにするよう求める行為などが挙げられます。

強要罪で逮捕された場合どうなるのか

強要罪の成立が疑われる場合、逮捕されてしまう可能性もあります。

逮捕された場合、その後どのような処遇になり、どのような手続きが進んでいくことになるのか、ご説明します。

①逮捕

逮捕とは、被疑者の身体を拘束する手続きです。

犯罪を行ったと疑うに足りる相当な理由がある場合に、その人が逃亡したり、証拠を隠滅しようとする可能性があるときに認められます。

逮捕された場合、多くは警察署の留置場と取調室を往復する形になり、最長48時間拘束され、取り調べ等を受けることになります。

②検察官送致

逮捕されてから48時間以内に、警察官は被疑者の身柄と事件の記録(取調べの結果を記載した調書など)を検察庁に送ります。

検察官は、事件の記録を確認し、追加で被疑者から事情を聴取するなどしたうえで、引き続き身体拘束が必要な事案かどうかを判断することになります。

③勾留請求・勾留質問

引き続き身体拘束が必要であると判断した場合、検察官は、被疑者の身柄を受け取ってから24時間以内かつ逮捕から通算して72時間以内に裁判所に対して勾留請求を行います。

検察官が勾留請求をした場合、裁判官は検察官が提出した事件記録の一部を確認した後、裁判所において、被疑者と面談し、身体拘束が必要かどうかを審査します。

裁判官も身体拘束が必要と判断した場合、勾留、すなわち原則として10日間(逮捕から通算して約13日間)の身体拘束が決定されます。

なお、10日経過してもなお被疑者が隠滅する可能性のある証拠の確保が間に合わない、逃亡のおそれが消滅しない等、身体拘束がなおも必要と考えられる場合、同様の手続きで勾留延長の可否について裁判所が判断することになります。

勾留延長が認められた場合、最大でさらに10日間(逮捕から通算して約23日間)の身体拘束が認められることとなります。

④終局処分

検察官は、勾留期間中に被疑者を起訴するか、不起訴にするかを判断します。

起訴する場合には、公判請求(一般的な刑事裁判)をするか、略式起訴にするかも判断します。

略式起訴は100万円以下の罰金刑(または1000円以上1万円未満の科料刑)に限り、刑事裁判手続きを省略して裁判官が罰金額を定める手続きです。

略式起訴には被疑者の同意が必要になるため、検察官が略式起訴を検討している場合には、被疑者に制度の説明等が行われることとなります。

⑤刑事裁判

公判請求(起訴)がされた場合には、勾留が続くことになります(一般的には起訴後勾留と言われます)。

起訴後勾留は原則2か月、以降必要性に応じて1か月ごとの延長がなされます。

起訴後の勾留から解放されるには、そもそも勾留の要件を満たしていないと争う方法のほか、保釈という手続きが用意されているので、弁護士を通じていずれかの方法によって身柄解放を目指すことが多いです。

⑥刑の執行

有罪判決により懲役刑が言い渡された場合には、そのまま刑事施設への収監手続きが行われることになります。

執行猶予付き判決などがなされた場合には、勾留の要件を満たさなくなるので釈放となります。

検察官が控訴と共に再度の起訴後勾留の請求を行うなどした場合には再度身柄拘束がなされる可能性もありますが、一般的にはほとんど行われない印象です。

強要罪で逮捕された場合の3つの対処方法

強要罪で逮捕されてしまった場合、速やかな身柄解放や、最終的な処分の軽減のためにどのような対処法があるのでしょうか。

①弁護士への相談

最優先は弁護士に相談することです。

逮捕されたあとに一から私選で弁護士を探すことは大変なので、心当たりのある行為を行ってしまった場合には速やかに法律事務所に相談しておきましょう。

逮捕後は、この法律事務所に連絡してほしいと言えば警察官が連絡してくれることもあります。

勾留される際にも、誰か1人身近な人に連絡を入れてもらえることもあるので、そこで親族を経由して法律事務所に連絡してもらいましょう。

②示談交渉

処分の軽減を目指す際に最も有効なのは示談を成立させることです。

口だけではなく、金銭などの負担が生ずる形で反省を示すことができること、賠償という形で被害回復が見込めることから、示談が成立した場合、軽微な事件であればほとんどが不起訴になります。

悪質性が高いと言われてしまう事案の場合でも、不起訴になるケースもありますし、少なくとも処分の軽減には最も有効な手段ですので、積極的に示談交渉を行うことが重要です。

逮捕されてしまった場合はもちろん、そうでない場合であっても、被害者が被疑者と直接話をすることは拒否することが多いので、示談交渉は弁護士を通じて行うことをお勧めします。

③逃亡のおそれがないこと、証拠を隠滅する可能性がないことを示す

上記のとおり、逮捕や勾留は逃亡のおそれがある場合又は証拠を隠滅する可能性がある場合に認められます。

そこで、自身が逃亡しないことを書面で誓約したり、家族が監督を誓約したり、事実を認めて示談交渉を行っていて証拠隠滅などを図る可能性がないことなどを法的な観点から書面にまとめて検察官又は裁判官に提出することが、逮捕勾留が継続しないようにするために重要な対処法となります。

よくある質問

①「クレームをつけると強要罪にあたりますか?」

先述のとおり、ただ店舗や会社にクレームを入れるだけでは強要罪は成立しません。

但し、店員に対して害悪の告知を行ったり、暴行を用いて土下座させたりするような場合には強要罪が成立します。

なお、その一環で客をお店から追い出したり、暴れて営業ができない状態にさせたりした場合には威力業務妨害罪などが別途成立する可能性もあります。

②「相手が義務のないことを拒否した場合でも犯罪は成立しますか?」

強要罪の未遂には処罰規定がある(刑法223条3項)ため、他のすべての要件をみたしつつ、被害者が義務のないことを行った場合には強要未遂罪が成立します。

未遂罪の場合、法律上は、法定刑の上限は変わらず、下限がその半分になるという効果、事実上は既遂罪よりも比較的軽い刑罰に留まることが多いという効果があります。

なお、相手が畏怖するに足りない程度の言葉を告げた場合には、「脅迫」の要件を欠くため、これによって犯罪が成立することはありません(内容や方法次第で侮辱罪・名誉棄損罪の成立の可能性があるに留まります)。

③「残業命令は強要罪になりますか?」

まず、適法な残業命令は合法ですので犯罪は成立しません。

次に、違法な残業をさせる行為は別途労働基準法等で規制されているので、会社がそれによって処罰される可能性はあります。

違法な残業命令が暴行又は脅迫を伴って行われた場合には、形式的には強要罪の要件をみたすと思いますが、通常は労働基準法違反と、暴行罪又は脅迫罪で処断されるという可能性が高いと思います。

④「マスク着用の強制は犯罪になりますか?」

暴行又は脅迫を用いて、マスクの着用を強制した場合には強要罪が成立します。

ただ、例えば病院等でマスクの着用をお願いされた場合には、あくまで任意のお願いに留まるため、暴行又は脅迫の要件を欠き、強要罪は成立しません。

逆に、マスク着用について揉めて暴れてしまい、営業に支障が生じるなどした場合、着用を拒否して暴れた人に威力業務妨害罪等が成立してしまう可能性もあるため、施設や店舗を利用する場合にはその管理者のお願いには従うのが無難です。

⑤「冗談のつもりで脅した場合でも犯罪は成立しますか?」 

例えば友人との間で、冗談のつもりで「ボコボコにしてやるぞ、嫌だったら謝罪しろ」などと告げた場合でも、それが一般的に相手を畏怖させるに足るものであれば犯罪は成立します。

自分がどういうつもりで言ったかよりも、一般的にどのような受け取られ方をするかに注意して発言等を行う必要があります。

⑥「子ども同士のいじめでも強要罪は成立しますか」

学校内等で行われるいじめであっても、上記の要件をみたせば強要罪は成立します。

14歳未満であれば刑事責任を負うことはありません(刑法41条)。

しかし、家庭裁判所で少年法に基づく手続きの対象となる可能性もありますし、親権者は民事上の監護責任を問われる可能性もあります。

14歳以上(原則として20歳未満)であれば、刑事責任を負う可能性まで含めて家庭裁判所での手続きの対象となります。

まとめ

以上、強要罪に関するご説明でした。

強要罪は、ちょっとしたトラブルや、感情が高ぶった際のふとした発言などによって成立しうる犯罪です。

誰もが加害者になる可能性がありますので、この記事で対処法等について確認いただければ幸いです。

実際に加害者になってしまったかもしれない、という場合には、速やかな対応が重要になりますので、まずは弁護士にご相談することをお勧めいたします。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士として、男女問題などの一般民事事件や刑事事件を解決してきました。「ForClient」の理念を基に、個人の依頼者に対して、親身かつ迅速な法的サポートを提供しています。
得意分野
ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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