暴行罪の初犯で拘禁刑になりやすいケースは?何年の拘禁刑?罰金刑の場合の相場も解説

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記事目次
「ついカッとなって相手を突き飛ばしてしまった」。
「ほんの些細なトラブルだったのに、警察沙汰になってしまった」「まさか自分が前科持ちになるなんて信じられない」。
当事務所には、このような不安を抱えて相談に来られる方が後を絶ちません。
このままでは、初犯であっても刑務所(拘禁刑)に行かなければならないのでしょうか?
2025年(令和7年)より、従来の懲役と禁錮は「拘禁刑」に一本化されました。
本記事では、暴行罪の初犯で実刑になる可能性や、科される刑罰(年数や罰金)の相場、そして前科を回避して早期解決するための「示談」の重要性について、弁護士がわかりやすく解説します。
暴行罪とは?
暴行罪(刑法208条)とは、他人の身体に対し、傷害(怪我)に至らない程度の有形力を行使することで成立する犯罪です。
「有形力の行使」とは、実際に殴ったり蹴ったりする行為だけでなく、以下のようなケースも含まれます。
- 胸倉(むなぐら)を掴む、身体を強く押す
- 相手に向けて石を投げる(当たらなくても成立する可能性がある)
- 狭い室内で日本刀を振り回す
- 衣服を引っ張る
- 水をかける、塩をまく
もし、これらの行為によって相手が怪我をしてしまった場合(生理的機能に障害を与えた場合)は、「傷害罪」となり、より重い刑罰が科されます。
暴行罪の法定刑は、「2年以下の拘禁刑(※)若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」と定められています。
※2025年6月より、従来の「懲役刑」と「禁錮刑」は廃止・一本化され、「拘禁刑」という新しい刑罰になりました。
弁護士のワンポイントアドバイス
「えっ、これだけで暴行になるんですか?」と驚かれることが多いのが、「相手の髪を引っ張る」「耳元で大声を出す(太鼓などを連打する)」といった行為です。
直接体に触れていなくても、物理的な影響を与えれば暴行罪が成立する可能性があります。「怪我をさせていないから大丈夫」という自己判断は非常に危険です。
暴行罪で逮捕されるケース
暴行罪は、殺人や強盗などの重大犯罪に比べると軽微な犯罪と見なされることもありますが、逮捕される可能性は十分にあります。
逮捕されるパターンは、主に「現行犯逮捕」と「後日逮捕(通常逮捕)」の2種類に分けられます。
現行犯逮捕の条件について
現行犯逮捕とは、犯行を行っている最中、または犯行直後に逮捕されることです。
暴行事件の多くは、路上や酒席でのケンカ、駅でのトラブルなどで発生するため、警察官が駆けつけてその場で逮捕される、あるいは周囲の人に取り押さえられる(私人逮捕)ケースがよく見られます。
現行犯逮捕は、逮捕状が不要です。刑事訴訟法では、以下のいずれかに該当する場合、現行犯とみなされます(準現行犯)。
- 犯人として追われているとき
- 盗品や凶器などを持っているとき
- 身体や服に犯罪の顕著な証跡(返り血など)があるとき
- 誰何(すいか)されて逃走しようとするとき
特に暴行事件では、通報を受けて警察が到着した時点で、まだ興奮状態で暴れていたり、被害者がその場にいて被害を訴えたりしている状況であれば、現行犯として身柄を拘束される可能性が高まります。
後日逮捕(通常逮捕)の条件について
後日逮捕(通常逮捕)とは、裁判官が発付した逮捕状に基づいて行われる逮捕です。
その場では逮捕されなかったものの、後日、被害届が提出され、警察が捜査を行った結果、犯人が特定された場合に行われることがあります。
後日逮捕されるためには、以下の2つの要件が必要です。
- 逮捕の理由:罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があること。
- 逮捕の必要性:逃亡する恐れや、証拠隠滅(被害者を脅して証言を変えさせる、防犯カメラ映像を消そうとする等)の恐れがあること。
暴行罪の場合、住所が不明確な場合や、否認して証拠を隠そうとする素振りがある場合は、逮捕状が請求されるリスクが高まります。
暴行罪で逮捕された後の流れ
逮捕された場合、その後は非常にタイトなスケジュールで手続が進みます。
- 警察による捜査(48時間以内)
逮捕から48時間以内に、警察は事件を検察官に送致するか、釈放するかを判断します。 - 検察官による捜査(24時間以内)
送致を受けた検察官は、24時間以内に、被疑者を「勾留(こうりゅう)」請求するか、釈放するかを判断します。 - 勾留(原則10日間、最大20日間)
裁判所が勾留を認めると、最大で20日間、警察署の留置場などで身柄を拘束されます。この間、会社や学校に行くことはできません。 - 起訴・不起訴の決定
勾留期間が満了するまでに、検察官は「起訴(裁判にかける)」か「不起訴(裁判にしない)」かを決定します。
日本の刑事裁判では、起訴されると99.9%以上の確率で有罪となります。
そのため、前科を避けるためには、検察官が起訴・不起訴を判断するまでの間に、適切な弁護活動を行うことが極めて重要です。
弁護士の現場視点
特に逮捕直後の72時間は、ご家族であっても面会が制限されることがありますが、弁護士であればすぐに接見(面会)可能です。
この「最初の取調べ」で不用意な発言をしてしまうと、その後の示談交渉や処分決定に大きな不利に働くことがあります。
逮捕されたら、一刻も早く弁護士を派遣し、アドバイスを受けることが早期釈放への生命線となります。
暴行罪の初犯でも拘禁刑になる可能性が高いケース
基本的に、暴行罪の初犯であれば、いきなり刑務所に入る「実刑判決」が出ることは稀です。
多くの場合は不起訴、あるいは罰金刑(略式起訴)で済む傾向にあります。
しかし、以下のようなケースでは、初犯であっても公判請求(正式な裁判)され、拘禁刑(執行猶予付きを含む)が求刑される可能性が高まります。
①事件内容が悪質
暴行の態様が危険であったり、執拗であったりする場合です。
例えば、集団で一人の被害者を暴行した、凶器を使用した(ナイフを突きつける、バットを振り回す等)、あるいは長時間にわたって暴行を繰り返したようなケースです。
たとえ被害者が怪我をしていなくても、行為自体の危険性が高ければ、厳しい処分が下される可能性があります。
②否認している
明らかに暴行を行った証拠があるにもかかわらず、「やっていない」と嘘をついたり、反省の態度が見られなかったりする場合です。
反省していないと判断されると、再犯の恐れがあると見なされ、罰金刑などの軽い処分では済まされないと検察官や裁判官が判断する可能性があります。
③処罰感情が激しい・示談が成立していない
被害者が「絶対に許さない」「厳罰に処してほしい」と強く望んでおり、示談が成立していない場合です。
刑事処分を決定する上で、被害者の処罰感情は非常に重視されます。被害回復がなされておらず、許しも得られていない状態では、検察官も「起訴相当」と判断しやすくなり、結果として拘禁刑や正式裁判につながるリスクが高まります。
暴行罪で拘禁刑ではなく罰金刑になった場合の相場
初犯の暴行罪で起訴された場合、多くは「略式起訴」となり、罰金刑が科されます。
略式起訴とは、公開の裁判を開かずに、書面審理のみで罰金を納付して事件を終了させる手続です。
暴行罪における罰金の相場は、10万円〜30万円程度が一般的です。
金額は、暴行の悪質性、被害者の恐怖の度合い、動機などを総合的に考慮して決定されます。
注意しなければならないのは、「罰金刑も前科に含まれる」ということです。
たとえ刑務所に入らなくても、罰金刑を受ければ犯罪歴(前科)として記録に残り、特定の職業に就けなくなったり、海外渡航に制限が出たりする可能性があります。
暴行罪で拘禁刑・罰金刑を回避するには?
拘禁刑や罰金刑といった刑罰を回避し、「前科」をつけないためには、「不起訴処分」を獲得することが最重要です。
そして、不起訴を獲得するために最も効果的な手段が、被害者との「示談交渉」です。
検察官が起訴・不起訴を判断する際、「被害者との間で示談が成立しているか(被害者が処罰を望んでいないか)」は決定的な要因となります。
早期に示談が成立し、被害届や告訴が取り下げられれば、多くのケースで不起訴となります。
しかし、加害者が直接被害者に連絡を取ろうとすることは推奨できません。
恐怖を感じている被害者は、加害者からの連絡を拒絶することが多く、無理に接触しようとすると「証拠隠滅」や「脅迫」と捉えられ、かえって立場が悪くなる恐れがあるからです。
そのため、示談交渉は必ず弁護士に依頼しましょう。
弁護士であれば、捜査機関を通じて被害者の連絡先を確認(被害者の同意が必要)し、第三者として冷静かつ適切な条件で交渉を進めることができます。
示談成功のポイント
被害者の方は「加害者の顔も見たくない」「声も聞きたくない」という強い拒絶反応を示されることがほとんどです。
しかし、「弁護士となら話をしてもいい」と言っていただけるケースは多々あります。
私たち弁護士は、被害者様の心情に最大限配慮しながら、「法的な適正額」と「謝罪の意」を誠実にお伝えし、双方が納得できる解決を目指します。
よくある質問
暴行罪は拘禁刑何年?
暴行罪の法定刑における拘禁刑は「2年以下」です。
ただし、これは法律上の上限であり、初犯でいきなり2年の実刑判決が出ることは稀です。
悪質性が高い場合でも、執行猶予が付くケースが多く見られます。
暴行罪の時効は何年ですか?
暴行罪の公訴時効は3年です。
事件から3年が経過すると、検察官は起訴することができなくなります。
ただし、民事上の損害賠償請求の時効とは異なりますので注意が必要です。
相手が怪我をしていなくても罪になりますか?
はい、罪になります。
相手が怪我をしていない場合は「暴行罪」、怪我をした場合は「傷害罪」が成立します。
怪我の有無は、医師の診断書などによって判断されます。
たとえ軽い接触であっても、法的に「有形力の行使」と認められれば暴行罪です。
まとめ
暴行罪の初犯で、いきなり刑務所に収容される(実刑の拘禁刑になる)ケースは多くありません。
しかし、行為が悪質な場合や、被害者の処罰感情が強い場合には、拘禁刑が求刑されたり、罰金刑となって前科がついたりするリスクは十分にあります。
前科を回避し、事件を早期に解決するためには、一刻も早い示談成立が不可欠です。
逮捕されている場合は時間との勝負になります。「ついやってしまった」と後悔しているなら、すぐに弁護士へ相談し、被害者への謝罪と示談交渉をスタートさせてください。
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- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設









