電車で盗撮行為をするとどうなる?刑罰や事例、逮捕後の流れを紹介

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電車内での盗撮行為は近年増加傾向にあります。
本記事では、盗撮の定義、逮捕後の刑事手続き、量刑を左右する要素、そして、万が一盗撮の疑いをかけられた場合の対処法などについて解説します。
電車での盗撮行為は犯罪なのか
電車での盗撮行為は犯罪です。
防犯カメラやスマートフォンの普及により、証拠が残りやすくなっていることもあり、盗撮行為の摘発は年々強化されています。
特に、電車内の盗撮行為は現行犯逮捕されるケースも多く存在し、盗撮行為の態様次第では、懲役刑が科される可能性もあります。
盗撮とは何か
盗撮とは、一般的に、同意なく人の姿や身体の一部、下着などを撮影する行為を指します。
従来は、各都道府県の迷惑防止条例によって規制されていましたが、令和5年に性的姿態等撮影罪が制定され、より明確に盗撮が犯罪として定義されるようになりました。
このことにより、全国で一貫した取り締まりが可能となり、盗撮行為に対する抑止力が強化されることが期待されています。
撮影罪にあたる行為
性的姿態等撮影罪(略称:撮影罪、以下撮影罪とします。)については、「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(略称:性的姿態撮影等処罰法)」に規定されており、主に、正当な理由なく、ひそかに性的姿態等を撮影した場合に撮影罪に該当します(同法第2条1項)。
性的姿態等とは、人の性的な部位、又は、人が身に着けている下着、わいせつな行為又は性交中の人の姿態のことを指します。
また、同意できない状態の者の性的姿態等を撮影すること(同法第2条2項)や、相手を誤信させて性的姿態等を撮影すること(同法第2条第3項)、16歳未満の者の性的姿態等を撮影すること(相手が13歳以上16歳未満の場合は、相手との年齢差が5歳以上の場合に限る)(同法第2条4項)も撮影罪に該当する行為です。
迷惑防止条例違反とは何か
迷惑防止条例とは、迷惑行為を防止するために各都道府県が定めている条例であって、主に、盗撮行為やストーカー行為、痴漢行為などを対象としています。
この条例の具体的な内容は地域ごとに異なりますが、東京都では、盗撮について次のように定めています。
「第5条1項 何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。
第2号 次のいずれかに掲げる場所又は乗物における人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。
イ 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所
ロ 公共の場所、公共の乗物、学校、事務所、タクシーその他不特定又は多数の者が利用し、又は出入りする場所又は乗物(イに該当するものを除く。)
第3号 前2号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、卑わいな言動をすること。 」
つまり、人の下着や身体を撮影したり、撮影する目的でカメラ等を向けたり、設置したりすることが条例によって禁止されており、これに違反した場合には、条例違反として刑罰が科されます。
また、第5条1項2号に該当しない撮影行為でも、同項3号の「卑わいな言動」に該当すると判断される可能性があります。
撮影罪の刑罰
撮影罪の刑罰は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金と定められています。
迷惑防止条例違反の刑罰
刑罰についても都道府県により多少異なりますが、東京都の例でみると、通常の盗撮行為の場合は【1年以下の懲役または100万円以下の罰金】、常習犯や悪質な行為の場合には【2年以下の懲役または100万円以下の罰金】と定められています。
盗撮行為の事例5選
盗撮事件は、場所や状況を問わず様々な形で発生しています。
以下に、実際に発生した事例を5つ紹介します。
事例1:駅エスカレーターでの盗撮
職場から帰宅途中のAが、駅のエスカレーターで、前を歩く女性のスカート内をスマートフォンで盗撮した事例です。
Aは、エスカレーターで背後から近づき、スマートフォンをスカートの下に差し入れる形で盗撮していました。
被害者は盗撮に気づいていませんでしたが、周囲にいた人がAの不審な行動に気づき、駅員に通報しました。
駅員がAを確保し、駆けつけた警察官に引き渡したことで逮捕に至りました。
Aは容疑を認め、反省の態度を示しました。弁護士を通じて被害者との示談交渉を行い、示談が成立したことで被害届が取り下げられました。
検察は、Aが深く反省していること、示談が成立していること、前科がないことなどを考慮し、不起訴処分としました。
事例2:商業施設での盗撮
商業施設内で発生した盗撮未遂の事例です。
Bは、短いスカートを履いた女性をターゲットにし、足の間に自身の足を入れ込むなど、不自然な行動を取りながらスマートフォンで盗撮を試みました。
被害者は、Bの不審な行動に気づき、周囲に助けを求めました。駆けつけた警備員がBを確保し、警察に通報したことで逮捕に至りました。
Bは容疑を認め、反省の態度を示しました。
弁護士を通じて被害者との示談交渉を行い、早期に示談が成立したことで、被害届は取り下げられました。
検察は、Bが深く反省していること、示談が成立していること、未遂事件であることなどを考慮し、不起訴処分としました。
事例3:病院内での盗撮
医師であるCが、勤務する病院の職員用女子トイレに小型カメラを設置し、盗撮を試みた事例です。
被害者が小型カメラを発見し、病院側に報告したことで事件が発覚し、小型カメラには複数の女性職員の映像が記録されていたため、以前から同様の行為を繰り返していたことが判明しました。
病院側は警察に通報し、Cは建造物侵入罪と盗撮の疑いで逮捕されました。Cは容疑を認め、深く反省している旨を供述しました。
しかし、示談交渉は難航し、病院側は、病院の信用を大きく傷つけたとして、厳罰を求めました。
裁判所は、Cの行為が悪質であること、病院側が厳罰を求めていることなどを考慮し、執行猶予のつかない実刑判決を言い渡しました。
事例4:塾講師による盗撮
塾講師であるDが、複数の女子生徒を盗撮し、その映像をSNSに公開していた事例です。
Dは、授業中や休憩時間などに、スマートフォンや小型カメラを使って盗撮を繰り返していました。
被害者の数は10人以上にのぼり、映像はSNSを通じて不特定多数の人に拡散されていました。
被害者の保護者が映像を発見し、警察に通報したことで発覚しました。
Dは、児童ポルノ禁止法違反と児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕されました。
裁判所は、Dの行為が悪質であること、被害者の人数が多いこと、映像が拡散されていることなどを考慮し、実刑判決を言い渡しました。
事例5:書店での盗撮
Eが書店内で10代女性のスカート内を盗撮した事例です。Eは、書籍を立ち読みしている女性に近づき、スマートフォンをスカートの下に差し入れる形で盗撮していました。
被害者は盗撮に気づいていませんでしたが、警備員がEの不審な行動を目撃し、その場で確保しました。
警備員は、被害者に事情を説明し、警察に通報しました。駆けつけた警察官がEを逮捕し、スマートフォンを押収しました。
Eは容疑を認め、反省の態度を示しました。弁護士を通じて被害者との示談交渉を行い、示談が成立したことで、被害届が取り下げられました。
検察は、男が深く反省していること、示談が成立していること、前科がないことなどを考慮し、不起訴処分としました。
電車内での盗撮で逮捕されるケース
これまでみてきたように、電車内での盗撮行為は、撮影罪や迷惑防止条例違反に該当する行為ですので、逮捕される可能性があります。
電車内での盗撮行為により逮捕されるケースには、次のようなものがあります。
現行犯逮捕
電車は公共交通機関として多くの人が利用していますので、盗撮を行った場合には、それを周囲の方に目撃されている可能性があります。
現に犯罪を行っていることがわかった場合には、警察でなくとも逮捕することができますので、目撃者や、場合によっては被害者本人に直接逮捕される可能性もあります。
また、目撃者等が駅の職員に申告し、警察を呼ばれて逮捕に至るというケースも多いです。
通常逮捕
警察が逮捕状を持って自宅等に来るというような、逮捕状のあるケースを通常逮捕といいます。
例えば、被害者の申告により、防犯カメラ等から犯人を割り出し、後日犯人が特定されたという場合には、こちらの方法で逮捕される可能性があります。
また、別件でスマートフォンを調べられた際に、盗撮した写真等の存在が発覚し、逮捕に至るという場合もあり得ます。
電車の盗撮で逮捕されないケース
犯罪行為があった場合でも、必ず逮捕されるというわけではありません。
逮捕を免れ、通常通り自宅で生活をし、会社や学校等へ通いながら、必要に応じて取り調べに出頭して捜査を進めるという在宅捜査の方法となる場合もあります。
次のような場合には、在宅捜査となる可能性が高まります。
自首をした場合
自首とは、犯罪が発覚する前に、自ら警察などの捜査機関に申し出る行為を指します。
逮捕には、逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれが必要とされていますので、自首をして、これらの行動に出る意思がないと伝えることで、逮捕を免れる可能性があります。
もっとも、自首をしたとしても、やはり逃亡や証拠隠滅のおそれが存在する場合もあるため、自首をすれば必ず逮捕を免れるというものではありません。
自首のメリットは、逮捕を免れる可能性がある点以外にも、刑の減軽が期待できる点や、捜査機関に対する誠意が評価され、不起訴処分や執行猶予の可能性が高まる点、示談交渉がしやすくなる可能性がある点です。
初犯であり、反省の意志が明確な場合や、示談の成立に向け、誠意を示したい場合には、自主が効果的です。
犯行が発覚していない段階で、自主を検討すると良いでしょう。
示談をした場合
示談とは、加害者と被害者が話し合い、損害賠償や謝罪を通じて和解する行為です。
示談をすることで、真摯に事件と向き合っていると示すことができ、また、処分が軽くなる傾向がありますので、逃亡や証拠隠滅のおそれが低いと評価され、逮捕を免れる可能性があります。
示談のメリットは、逮捕を免れる可能性がある点以外にも、不起訴処分の可能性が高まる点(特に初犯や軽度な事案の場合)や、被害者の精神的負担を軽減し、早期解決に役立つ点、執行猶予獲得や刑の軽減につながる点です。
事件後、早期に謝罪して誠意を見せた場合や、深く反省していることが伝わった場合は、示談が成立しやすくなります。
ただし、被害者の連絡先等がわからなければ示談交渉自体ができない可能性がある点や、示談が成立しても、悪質性が高い場合等には逮捕起訴される可能性がある点に注意が必要です。
逮捕された場合は示談は意味がないのか
盗撮事件で逮捕された後でも、示談は不起訴処分の可能性を高め、刑の軽減や社会的評価の回復に繋がる重要な手段です。
示談成立のタイミングは、起訴前が最も効果的ですが、起訴後や裁判中でも、示談が成立すれば刑の軽減に繋がります。
示談交渉は、弁護士を通じて行うのが望ましく、誠意ある謝罪と適切な損害賠償の提示が成功の鍵となります。
被害者の処罰感情が強い場合や悪質な事件、再犯の場合は示談が難航する可能性があります。
そんな場合でも、弁護士が粘り強く交渉することで、示談成立の可能性を高めることができます。
示談成立後は、検察官に被害届の取り下げや処罰感情の緩和を伝え、不起訴処分や執行猶予を目指します。
これにより、前科を回避できる可能性が高まります。
電車内での盗撮で逮捕された場合の流れ
電車内で盗撮行為を行った場合、逮捕後は以下のような流れで捜査や処分が進みます。
各段階において適切な対応を行うことが、不起訴処分や刑の軽減に繋がる重要なポイントです。
警察による取り調べ
逮捕後は警察署での取り調べが行われ、主に以下の点が確認されます。
- 犯行の動機や目的
- 撮影データの有無(スマートフォンやカメラの中身の確認)
- 被害者や目撃者の証言
- 過去の前科・前歴の有無
取り調べの結果、警察は逮捕から48時間以内に事件を検察へ送致するかを判断します。
身元が判明し、逃亡や証拠隠滅のおそれがない場合は、この段階で釈放される可能性があります。
検察による取り調べ
検察官は、警察からの送致後24時間以内に、次の判断を行います。
- 釈放(証拠不十分な場合や、身元が安定している等の逃亡の可能性が低い場合)
- 勾留請求(引き続き身柄拘束が必要な場合)
勾留が認められた場合は、最大20日間の拘束が続きます。
起訴
検察官は、以下の条件を考慮して「起訴」または「不起訴」を判断します。
- 証拠の有無
- 示談の成立状況
- 被害者の処罰感情
- 反省の度合い
不起訴処分となるのは、証拠不十分な場合の他、初犯の場合や、示談が成立して被害者の処罰感情が和らいだ場合、反省の意思が十分に示されている場合等です。
釈放されることのないまま起訴された場合には、保釈が認められない限り、判決まで身体拘束が続くことになります。
裁判(起訴された場合)
起訴された場合、略式裁判もしくは公判(正式裁判)の2種類うち、いずれかが行われることになります。
略式裁判は、比較的軽度の事案において選択され、罰金刑が科されるケースが多いです。
それに対し、悪質な事案や常習性がある場合には、公判(正式裁判)を選択されることになります。
この場合には、懲役刑や執行猶予となる可能性があります。
電車内での盗撮の判決を左右するもの
電車内での盗撮事件では、次の要素が判決に大きく影響します。
- 犯行態様の悪質性
- 被害者の処罰感情
- 常習性の有無
- 反省の態度
犯行態様の悪質性
盗撮事件において、犯行態様の悪質性は、判決に大きな影響を与えます。
悪質性が高いと判断されるのは、例えば、以下のようなケースです。
- 常習性:複数回にわたる犯行や、余罪の存在
- 執拗性:被害者の羞恥心を著しく害するような行為、例えば、特定の部位を執拗に狙う、あるいは、待ち伏せするなど計画性が見られる
- 卑劣性:盗撮した映像をSNS等で拡散するなど、二次的な被害を生じさせる
これらの要素があると、裁判官は被告人の刑事責任を重く判断し、実刑判決や高額な罰金刑を科す可能性が高まります。また、悪質なケースでは、示談が成立しても執行猶予が付かない場合もあります。
一方で、初犯で、偶発的な犯行であり、被害者との示談が成立しているなど、悪質性が低いと判断される場合には、執行猶予付きの判決や罰金刑となる可能性が高まります。
被害者の処罰感情
盗撮事件において、被害者の処罰感情は判決に大きな影響を与えます。
被害者が厳罰を望む場合、裁判官は被告人の刑事責任を重く判断し、実刑判決や高額な罰金刑を科す可能性が高まります。
被害者の処罰感情が重視されるのは、以下のようなケースです。
- 被害者が精神的苦痛を強く感じている場合
- 被害者が示談を拒否している場合
- 被害者が厳罰を求める嘆願書を提出している場合
これらの要素があると、裁判官は、より厳しい判決を下す傾向があります。
一方で、被害者が寛大な処置を望む場合や、示談が成立している場合には、執行猶予付きの判決や罰金刑となる可能性が高まります。
常習性の有無
盗撮事件において、常習性は判決に非常に重い影響を与えます。
常習性が認められると、裁判官は被告人の規範意識の欠如と再犯の可能性を強く懸念し、実刑判決や長期の懲役刑を科す可能性が高まります。
一般的には、以下のような場合に常習性が認められ、厳しい判決が下される傾向にあります。
- 複数回にわたって犯行を繰り返している場合
- 過去に盗撮事件での逮捕歴がある場合
- 盗撮画像を複数所持している等、高頻度での撮影がうかがわれる場合
これらの要素は裁判官の判断に大きく影響します。
そのため、常習性が認められる場合には、被告人が反省の態度を示していたとしても、被害者との示談が成立していたとしても、執行猶予が付かない可能性もあります。
反省の態度
盗撮事件において、被告人の反省の態度は、判決に大きな影響を与えます。
被告人が自身の過ちを深く認識し、再び同様の行為に及ばないと決意していることを裁判官に示すことができれば、更生の可能性を評価されることがあります。
具体的には、以下のような方法で、反省の態度を示すことができます。
- 被害者への謝罪と示談の成立
- 再犯防止のための具体的な取り組み(専門機関への通院、カウンセリングなど)
- 贖罪寄付やボランティア活動への参加
- 反省の言葉や手紙
一方で、反省の態度が見られない場合や、言い訳に終始する場合には、裁判官は被告人の更生を期待できないと判断し、より厳しい判決を下す可能性が高まります。
よくある質問
盗撮行為に関して、よくある質問について回答します。
誤って盗撮の疑いをかけられた場合、どう対応すべきか
盗撮の事実がない場合は、次の行動が重要です。
- 冷静に無実を主張する(感情的になると不利に見られることがあります)
- スマートフォンやカメラのデータ確認に応じる
- 弁護士を通じて無実を証明する(誤解の解消に役立ちます)
示談金の相場
盗撮事件の示談金は、一般的に、10万円から50万円です。ただし、示談金は個別の事案ごとに様々であり、被害者が強く処罰を求める場合はさらに高額になることがあります。
示談金の算定の際に考慮される要素には次のようなものがあります。
・ 盗撮の状況(電車内、トイレ内など)
・ 被害者の精神的苦痛の度合い
・ 動画の拡散の有無
盗撮で逮捕されたら弁護士は必要か
はい、早期に弁護士へ相談することが非常に重要です。
弁護士に依頼することで、以下のようなメリットがあります。
- 取り調べへの対応についてアドバイスを受けられる
- 示談交渉を弁護士が代行することで、被害者の感情に配慮した対応ができる
- 早期釈放や不起訴処分に向けた対策が可能になる
まとめ
電車内での盗撮は、性的姿態等撮影罪や迷惑防止条例に違反する犯罪です。
逮捕後の刑事手続きや量刑は、犯行態様の悪質性、被害者の処罰感情、常習性、反省の態度によって左右されます。
万が一、盗撮の疑いをかけられた場合は、冷静な対応と早期の行動が重要ですので、早めに弁護士に相談し、適切な対応を取りましょう。
- 得意分野
- 男女問題、相続、刑事事件
- プロフィール
- 大阪市立大学法学部 卒業
大阪大学高等司法研究科 修了