浮気・不倫の慰謝料相場はいくら?請求できる条件・方法、高額になるケースを解説

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記事目次
「浮気に対する慰謝料っていくらぐらいになるの?」
「相場よりも高額な慰謝料を請求できるの?」
浮気による慰謝料請求は、普段の生活で気軽に触れることのない何十万〜何百万という金額を、相手に請求する・請求されるという状況になります。
そのため、いくらの慰謝料が正しい金額なのかわからない人がほとんどです。
浮気や不倫による慰謝料の相場は、50〜300万円に収まります。
これはあくまでも目安であり、浮気の慰謝料は個別の状況を判断して金額が変動するため、一概にすべてのケースが相場に収まるわけではありません。
そこで、この記事では慰謝料が高くなるケースと低くなるケースを、実際の39の判例と合わせて徹底解説していきます。
- 一般的な浮気の慰謝料相場
- 慰謝料が相場より高くなるケース
- 慰謝料が相場より低くなるケース
- 39の判例でみるケース別の慰謝料相場
- 慰謝料請求に強い弁護士の選び方
何も知らずに慰謝料請求をしていると、「本来受け取れる額よりも安い慰謝料を請求してしまった」や「支払わずに済んだ、高額な慰謝料を支払ってしまった」という状況になる可能性があります。
この記事を参考にして、あなたのケースにあてはまる本当の慰謝料の金額を知って、損をせずに慰謝料問題を解決するために役立ててください。
不倫の慰謝料請求とは?
不倫の慰謝料請求は、不貞行為をしたことを根拠に認められます。
不貞行為とは、既婚者が貞操義務に違反して、配偶者以外の人との間で性的関係を結ぶことです。
ここでは、不貞相手の合意があったか否かを問いません。期間も、一時的であったか継続的であったかを問いません。
慰謝料の請求は誰にできる?
不倫の慰謝料請求は、配偶者、不貞行為の相手方、あるいはその双方に請求することができます。
どちらかだけに請求することも、両方に請求することも可能です。
ただし注意点として、たとえば慰謝料金額が100万円と認定される場合において、両方に対してそれぞれ100万円ずつを請求することはできません。
二重に請求し、二重取りして回収することはできません。
一般的な浮気・不倫による慰謝料の相場は約50〜300万円

参考:中里和伸著,『判例による不貞慰謝料請求の実務』, LABO, 2020年, P10 を元に作成
浮気や不倫に対する慰謝料は、「いくらの慰謝料を請求すべき」という明確な定めは設けられていません。
浮気に対する慰謝料相場は、一般的にはで50〜300万円が目安です。
実際のところは、個別の状況を客観的に判断したうえで、以下のように相場目安が変わります。
| 離婚・別居しない場合 | 50〜100万円 |
|---|---|
| 別居する場合 | 100〜150万円 |
| 離婚する場合 | 100〜300万円 |
浮気に対する慰謝料は、あくまでも浮気が原因で受けた、精神的苦痛に対する補償です。
そのため、たとえ配偶者に浮気されても離婚や別居しない場合は、精神的苦痛の度合いは軽いと判断されてしまい、慰謝料額が安くなってしまいます。
慰謝料の金額は、当事者同士の主張だけではなく、以下の過去事例と算定要素を客観的に判断した上でうえで決められているのです。
- 婚姻期間の長さ
- 子どもの有無
- 不貞行為に及んだ期間・回数・頻度
- 不貞行為発覚後の態度
- 精神的苦痛の度合い
- 請求する側の経済的自立能力の程度
- 請求される側の収入や資産などの支払い能力
- 請求される側の社会的地位
婚姻期間の長さはもちろんですが、精神的苦痛の度合いは個別の状況によってさまざまです。
例えば、不貞行為の期間・回数・頻度が同じだとしても、以下のようにさまざまなケースがあると考えられます。
- 子どもを出産したばかりにもかかわらず、一方が家事や子育てを1人でしていた
- 子どもはすでに成人しており、家庭内での会話も少なかった
- 子どもはおらず、それぞれ自由に好きなことをしていた
- すでに夫婦間でのコミュニケーションは少なくなっていた
上記のように、同じ不貞行為の期間・回数・頻度だとしても直接判断しなければ金額が算定できません。
慰謝料相場はあくまでも一般的な目安であり、個別のケースを客観的に判断すると慰謝料が相場よりも高くなる可能性もあるのです。
不貞行為の慰謝料金額を決める要素とは?
不貞行為による慰謝料金額は、主に以下の要素によって事案ごとに個別に判断されます。
- 不貞行為があったことによって夫婦が離婚や別居に至ってしまったか、若しくは同居して夫婦関係を継続するか否か
- 夫婦が結婚していた期間の長さ
- 未成年の子供の存在とその人数
- 交際していた期間や肉体関係を持った頻度と回数
- 不貞相手が既婚者であると知っていたか否か、知らなかったとしてもその点について過失があったか否か
- その他、不貞行為の悪質性の程度
婚姻期間の長さはもちろんですが、精神的苦痛の度合いは個別の状況によってさまざまです。
例えば、不貞行為の期間・回数・頻度が同じだとしても、以下のようにさまざまなケースがあると考えられます。
- 子どもを出産したばかりにもかかわらず、一方が家事や子育てを1人でしていた
- 子どもはすでに成人しており、家庭内での会話も少なかった
- 子どもはおらず、それぞれ自由に好きなことをしていた
- すでに夫婦間でのコミュニケーションは少なくなっていた
上記のように、同じ不貞行為の期間・回数・頻度だとしても直接判断しなければ金額が算定できません。
慰謝料相場はあくまでも一般的な目安であり、個別のケースを客観的に判断すると慰謝料が相場よりも高くなる可能性もあるのです。
不倫の慰謝料を請求する条件
不倫の慰謝料を請求するには、いくつかの条件が揃う必要があります。今回はそれらの条件と具体的内容をご紹介します。
不貞行為(肉体関係)があった
不倫の慰謝料を請求してこれが認められるための条件には、まずは不貞行為があったことが必要となります。
このような慰謝料が認められる不貞行為について、基本的には単なる二人きりの食事や親密なLINEのやり取りだけでは足りず、肉体関係が存在したことが前提となります。
裁判例では、金額の差はありますが、継続的な肉体関係だけでなく、一度の肉体関係があった場合でも不法行為として慰謝料請求の対象になり得るとされています。
そのため、デートやキスなどの行動だけでは足りず、明確な不貞行為があることが条件だと言えます。
不貞行為を裏付ける証拠が揃っている
また、不倫の慰謝料請求が認められるためには、不貞行為の存在を裏付ける証拠が必要です。
代表的なものとしては、不倫相手と二人でホテルへ出入りする写真、SNSやメールのやり取り、探偵の調査報告書などが挙げられます。
よくあるものとして浮気した当事者本人の自白がありますが、その自白だけでは後で自白した本人がその内容を覆すリスクがあるため、客観的な証拠を確保することが重要でしょう。
またこの証拠の有無によって、請求が認められるかどうかが大きく左右されるため、不倫の慰謝料を請求することを考えている場合には、できるだけ早い段階で証拠を集めておくべきでしょう。
慰謝料請求が可能な期間内である
さらに不倫の慰謝料請求にはその請求が可能な期間の制限として「消滅時効」があります。
この不倫の慰謝料の場合、不倫関係や不貞行為を知った時から3年以内に請求しなければならないとされており、この期間を過ぎると原則として慰謝料を請求することができなくなります。
また、不貞行為があった日から20年が経過すると、不貞行為を知っていたかどうかに関わらず請求権が消滅します。
また現実には時間が経てば経つほど、その時間の経過とともに証拠も散り散りとなり収集することが困難になるため、早めに慰謝料の請求を見据えて行動を起こすことが望ましいといえます。
不倫が原因で夫婦関係が破綻している
慰謝料が認められる条件として、不倫が夫婦関係に実際に悪影響を及ぼし、夫婦関係を悪化させたことが挙げられます。
不倫があったとしても、不倫以前に夫婦関係が既に破綻していた状態での不倫については、不倫によって新たな精神的苦痛が生じたとはいえないため、慰謝料の発生が認められない場合があります。
例えば、不倫の前から長期間の別居が続いている場合などが挙げられます。そのため不倫が原因となって夫婦が離婚したり夫婦の不和が生じていることが慰謝料請求の条件になります。
既婚者であることを認識している
また不倫相手に対して不倫の慰謝料を請求する場合には、その不倫相手が自分の夫や妻のことを既婚者であることを知りながら関係を持っていたことが条件として必要となります。
第三者である不倫相手であっても、既婚者であることを知りつつ不倫関係をもった場合には、その不倫相手に対しても慰謝料請求が可能です。
しかし反対に、不倫相手は実は自分の夫や妻が既婚者であることを知らず、また通常であれば知り得なかったようなケースでは、不倫相手に責任を問うことはできないといえます。
例えば、既婚者であることを隠して交際が続けられていたようなケースでは、不倫相手は慰謝料を払う責任を負わないことになるでしょう。
不倫の証拠の集め方
不倫をした配偶者や不倫相手に対して慰謝料を請求するためには、不貞行為があったことの証拠が必要になります。
社会一般的に見て不貞行為をしているだろうと推測できるかどうかによって判断されるケースが多く、親しげなメッセージのやりとりや食事をしている写真だけでは不十分とされる可能性が高いです。
不倫の証拠の集め方については以下の記事で詳しく解説しておりますので、ぜひご一読ください。
不倫・浮気の慰謝料は誰に対して請求可能か
このように不倫・浮気の慰謝料は、自分の夫や妻(配偶者)だけでなく、その不倫相手やその双方に対して請求する余地があります。
慰謝料請求を配偶者のみに行う場合
まずは、不倫の慰謝料を支払う責任を、自分と婚姻関係にある配偶者にのみ追及するケースが考えられます。
そもそも夫婦関係の信頼を裏切った自分の配偶者に主に責任があると考えられるような場合や、不倫相手の素性までは把握できない場合などが挙げられます。
また、離婚して配偶者との関係を清算することに重きを置いている場合にも、この方法が取られることが考えられるでしょう。
慰謝料請求を不倫相手のみに行う場合
次に、不倫の慰謝料を支払う責任を、不倫相手にのみ追求するケースが考えられます。
例えば、自分の配偶者との関係はこれからも継続・再構築する予定である場合や、子どものため家庭内でのトラブルを最小限に抑えたい場合には、このように不倫相手のみに慰謝料請求を行う方法が考えられます。
第三者である不倫相手であっても、既婚者であることを認識しながら不倫関係を持っていた場合には、不倫相手もその責任を負うことになります。
ただし、不倫相手に対して慰謝料を請求した結果、不倫相手側から知らなかった事実や夫婦関係に影響を及ぼすような事実が告げられる事態も想定されるため注意が必要です。
配偶者と不倫相手の双方に慰謝料を請求するケース
そして、不倫の慰謝料を支払う責任を、配偶者と不倫相手の双方に追求する方法も考えられます。
不倫そのものは一人でできるものではなく、自分の配偶者と不倫相手の両者が共同して行ったものであるため、両名による共同不法行為として双方に責任を問うことが可能だと言えます。
ただしその慰謝料を「二重取り」することは基本的に認められません。そのため仮に双方に慰謝料を請求する場合には、その請求金額を二人に分けて負担させる形で請求することになります。
浮気・不倫の慰謝料請求の流れ
不貞慰謝料を請求する場合の流れは、①直接交渉する方法、②内容証明郵便等の書面で請求する方法、③裁判所に調停を申し立てる方法、④裁判所に訴訟を提起する方法があります。
これらの方法はご自身で行うことも可能ですが、不貞慰謝料問題に精通した弁護士に相談することをおすすめします。
相手方が不貞を認めなかったり、慰謝料金額で揉めた場合にアドバイスが受けられるだけでなく、配偶者や不貞相手との交渉、訴訟手続を任せることも可能です。
以下、慰謝料請求の流れについて詳細にご説明します。
慰謝料請求を話し合いで解決する
まずは慰謝料請求を話し合いで解決することが考えられます。
当事者同士で話し合いによる解決を目指して協議を行い、発覚している不倫の事実関係やその責任の所在を確認した上で、慰謝料の額を取り決めてその慰謝料に関して合意を交わすことになります。
この際、口約束だけでは内容が覆ることも考えられるため、必ずその決めた内容を書面に残し、当事者双方が署名押印することが重要だということができるでしょう。
このような合意書があれば、後々の支払いに関する争いを防ぐ効果があります。
ただし、当事者同士ではどうしても感情的になりやすく当事者だけでは話し合いによる解決が困難なケースも多いため、代理人弁護士を通じて交渉を進めることが有効でしょう。
離婚調停や慰謝料請求調停を申し立てる
次に当事者同士での話し合いで解決できない場合には、家庭裁判所に「離婚調停」または「慰謝料請求調停」を申し立てる方法も考えられます。
調停では、調停委員が間に入り、公平な立場から意見を整理して合意を形成していくことを目指して調停を重ねることになります。
調停は非公開で進められるためプライバシーも守られるだけでなく、お互いの感情的な衝突を避けながら解決できることが特徴であると言えます。
ただし、相手が調停に出席しない場合や、当事者が相手方の求めに応じず調停委員の提案も受け入れられない場合には、調停は不成立となり終了することになります。
慰謝料請求を訴訟で行う
当事者同士での話し合いや調停でも解決できない場合には、相手に対して訴訟を提起する方法が考えられます。
訴訟の中では不貞行為の証拠の有無や不貞行為による夫婦関係への影響などについて審理され、裁判官が慰謝料について判断を下すことになります。
訴訟は解決までに1年以上かかることもあり、時間や費用の負担が大きいですが、最終的には強制力のある判決が得られる点が利点だと考えられます。
離婚の際に慰謝料の他に話し合うべき内容
離婚の際に決めるべき条件について、不倫の慰謝料のこと以外にも複数の条件を取り決める必要があります。
財産分与
まずは財産分与のことが挙げられます。
夫婦が婚姻生活中にお互いに協力して築いた財産は、離婚時に財産分与として公平に分ける必要があります。
例えば預貯金や不動産、車、退職金などが対象となり、基本的にはその各財産の名義に関わらずいずれも共有財産として扱われます。
年金分割
また年金分割が挙げられます。
夫婦の一方が厚生年金に加入していた場合、離婚にあたって年金分割を請求できる制度となります。
婚姻期間中の保険料納付記録を分割することで、将来の年金受給額を調整することが可能となります。
特に専業主婦(夫)の場合は老後の生活資金に直結するため、早めに確認すべき内容でしょう。
親権・養育費
夫婦の間に子どもがいる場合には、親権者をどうするか、養育費をいくら支払うかを話し合う必要があります。
養育費は子どもが未成熟な状態にある以上受け取る権利があり、その金額については夫婦双方の収入金額等の要素をもとに定めることになります。
子どもの将来を見据えた取り決めが重要でしょう。
面会交流
親権を持たない親でも、子どもと定期的に面会交流する権利があります。
その面会の頻度や方法を具体的に取り決めることで、たとえ離婚した後であっても子どもが安定して成長できるよう配慮を図ることになります。
可能な限り夫婦の間での感情的な対立を避け、子どもの利益を最優先に検討することが大切です。
浮気・不倫の慰謝料請求で弁護士に依頼するメリット
このような浮気・不倫の慰謝料の請求については、弁護士に依頼することで、的確な証拠収集や法的主張を行うことができる点がメリットだと言えます。
早期に交渉段階から代理人として対応してもらえるため、相手との直接の衝突を避けながら、適正な金額の慰謝料を引き出すことが期待できるでしょう。
また、もし調停や訴訟に発展した場合でも、専門的知識を持つ弁護士が引き続き代理人として手続を進めてくれるため、安心して解決まで任せることができるでしょう。
不倫による慰謝料が相場より高くなる11のケース

浮気や不倫(不貞行為)による慰謝料が、相場より高額になるケースとして11のケースを解説します。
お急ぎの方は、上記の表より記事内のリンク先をご覧いただけます。
今回は、実際に裁判で慰謝料増額が認められた判例も合わせて、具体的に解説していきます。
不倫発覚後も不貞関係が継続している
配偶者と浮気相手の不貞関係が、浮気発覚後も継続している場合は、慰謝料が増額する理由になります。
1回だけの不貞行為と継続的な不貞関係では、浮気をされた配偶者が受ける精神的苦痛の度合いは違うのです。
不貞関係の継続は、以下のように分けて判断されています。
| 単なる継続 | 配偶者から「浮気をやめてほしい」などの要求はなく、単純に現在も関係が継続している状態 |
|---|---|
| 交際を止める要求を無視しての継続 | 配偶者から「浮気をやめてほしい」と要求されたにもかかわらず、無視して現在も関係を継続している状態 |
| 交際を止めると約束したのに継続 | 配偶者に対して「浮気をやめる」と約束したにもかからわらず、約束を無視して関係を継続している状態 |
配偶者に浮気をやめるよう要求されて無視をしたり、嘘をついて関係を継続していると、その行為自体が悪質性があると判断されてしまうのです。
実際に、不貞関係の継続が理由で慰謝料増額が認められた判例を紹介します。
不貞行為は半年以上にわたり、発覚後も浮気相手と同居をし関係を継続していたとして、配偶者と浮気相手の両者に対して慰謝料220万円が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成29年4月11日(第一法規判例データベース)
夫の不貞行為が発覚後、妻からの再三の関係清算要求に応じず、不貞関係をさらに1年以上継続した。妻子の存在を把握し、要求があったにも関わらず関係継続した行為が悪質として、浮気相手に対して慰謝料330万円が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成30年4月12日(ウエストロー・ジャパン)
夫婦共通の知人との不貞関係が発覚し、弁護士同席のもと「不貞関係の断絶」を約束した。そのわずか4日後に、再び電話でやり取りをはじめて不貞関係が継続されていた。このことから、妻に対する裏切り行為と不貞関係にある2人の依存関係が悪質と判断せれ、浮気相手に対して242万円の慰謝料請求が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成30年2月20日(ウエストロー・ジャパン)
婚姻期間が長い

参考:中里和伸著,『判例による不貞慰謝料請求の実務』, LABO, 2020年, P180 を元に作成
夫婦の婚姻期間が長い場合も、慰謝料の増額が認められます。
上記のグラフは、実際に不貞行為による慰謝料が裁判で認められた判例から抜粋してグラフ化したものです。
グラフを見てみると、慰謝料請求をしている人の婚姻期間もさまざまだとわかります。
一概に「婚姻期間◯年以上であれば、慰謝料〇〇万円増額」という目安はありません。
あくまでも判断基準として、以下の婚姻期間の区切りで慰謝料が高額になる可能性があると覚えておきましょう。
- 婚姻期間1年未満
- 婚姻期間1年〜5年
- 婚姻期間5年〜10年
- 婚姻期間10年以上
5年刻みに婚姻期間が長くなるほど、慰謝料が高額になる傾向があります。
ただし、結婚したばかりの夫婦の方が、不貞行為による精神的苦痛の度合いは重いと判断されるケースもあるので注意しましょう。
婚姻期間が変わるだけで、慰謝料の請求額に数十万円〜100万円以上の金額差が出る場合もあるのです。
実際に、裁判で婚姻期間が長いことで慰謝料増額が認められた判例を紹介します。
婚姻期間20年間で、夫が不貞行為をはたらいた。不貞関係がはじまるまでは、多少の行き違いがあったとしても決定的な夫婦関係破綻は認められなかった。そのため、不貞行為が長年の婚姻期間に大きな影響を与えたとして、浮気相手に対して308万円の慰謝料請求が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成28年7月13日(第一法規判例データベース)
約10ヶ月にわたる妻の不貞行為に対して、婚姻期間が10年を超えていることを考慮したうえで、慰謝料220万円が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成29年8月29日(第一法規判例データベース)
不貞関係の期間が長い
配偶者と浮気相手が不貞関係だった期間が長い場合は、慰謝料が高額になる可能性があります。
なぜなら、期間や頻度が増えるほど、与えられる精神的苦痛の度合いは重くなっていくと判断できるからです。
目安としては、以下のように金額が変動します。
| 離婚するか | 不貞関係の期間 | ||
|---|---|---|---|
| 数ヶ月 | 数ヶ月〜1年 | 1年以上 | |
| する | 100〜最大200万円 | 100〜最大250万円 | 150〜最大500万円 |
| しない | 30〜最大200万円 | 50〜最大200万円 | |
出典:浮気慰謝料の計算方法と算定例を紹介|金額を決める判断軸は?
このように、不貞関係が継続していた期間も慰謝料の金額を左右しています。
下記のグラフは、「判例による不貞慰謝料請求の実務(中里和伸著)」で解説されている判例を集計した、不貞期間の集計結果です。

参考:中里和伸著,『判例による不貞慰謝料請求の実務』, LABO, 2020年, P175 を元に作成
上記のグラフをみると、1年未満の不貞期間が最も多く、5年以上の期間になると件数が減っていることがわかります。
実際の判例は、以下のとおりです。
37年間の婚姻関係にあった夫婦だが、不貞関係がはじまった段階で夫が自宅に戻らなくなり別居に至った。その後9年間にわたり不貞関係は継続され、夫が死亡したのちに長期にわたる不貞関係に対して慰謝料250万円が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成28年2月26日(ウエストロー・ジャパン)
約3年4ヶ月にわたり不貞関係をもった。配偶者と浮気相手の気持ちが離れたことで、一時的に1年弱は関係を持っていなかった。しかし、その後復縁し不貞関係が再スタートした。そのため、中断を挟んだものの約3年4ヶ月と長期にわたり不貞関係にあったとして、慰謝料220万円が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成28年2月1日(ウエストロー・ジャパン)
不貞行為の頻度が多い
不貞行為に及んでいる頻度が多い場合も、精神的苦痛の度合いが重いとされるので、慰謝料が増額される可能性があります。
たとえば、仮に不貞期間が1年間だった場合で考えてみましょう。
- 毎月1回の不貞行為を続けていた
- 毎週1回以上の頻度で不貞行為を続けていた
この2つのケースでは、年間で考えると50回以上の不貞行為に及んだケースの方が頻度が多く、配偶者に与えた精神的苦痛は重大だと判断できるのです。
長期間の不貞関係であれば、必然と不貞行為の頻度も多いと予想できるため、期間の長さと比例して慰謝料が増額される可能性があります。
不貞関係である期間が短い場合でも、不貞行為の頻度が極端に多いことが理由となり、慰謝料額が相場よりも高くなったケースもあるのです。
実際に、不貞行為の頻度で慰謝料が増額した判例を紹介します。
不貞関係であると証明されてから2ヶ月の間に、14回の不貞行為に及んでおり、さらにその後も関係を継続している。その頻度の多さが、配偶者に重大な精神的苦痛を与えたとして、W不倫をしていた浮気相手に対して220万円の慰謝料が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成29年2月20日(ウエストロー・ジャパン)
5ヶ月間という比較的短い不貞期間ではあったが、約50回以上の不貞行為に及んでいた。浮気相手の方から積極的に妻に対して働きかけていたこともあり、慰謝料198万円が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成27年1月30日(TKC法律情報データベース)
夫婦間に幼い子供がいる
夫婦間に幼い子供がいる場合は、不貞行為が原因で離婚や別居することで子どもの1人で育てなければいけない可能性が非常に高いため、慰謝料も高額になる場合がほとんどです。
対象となる子どもは未成年の場合が多く、その年齢が幼いほど将来的な養育期間が長くなるため、慰謝料額を左右する要素となります。
実際に、子ども年齢が慰謝料増額の理由となった判例は、以下のとおりです。
夫婦の間には2歳の娘がいたことを、慰謝料増額の理由として認めている。幼い子どもがいるにもかかわらず、浮気相手とも子どもを作ることを考えており、避妊をしなかったことから悪質だと判断されて慰謝料275万となった。
出典:東京地裁|判決日平成29年10月26日(ウエストロー・ジャパン)
婚姻期間10年で、11歳と9歳の子どもがいるにもかかわらず、3年間不貞関係にあった浮気相手と子どもをつくった。夫婦間の子どもが幼く、精神的苦痛の度合いも大きいと判断されたため、配偶者に200万円・浮気相手に200万円の合計400万円の慰謝料が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成28年6月21日(ウエストロー・ジャパン)
不貞行為開始時の夫婦関係が破綻していない
不貞行為に及んだ当時の夫婦関係が破綻していなかった場合は、不貞関係が原因で夫婦関係が破綻したと判断できるため、慰謝料が高額になります。
夫婦関係が破綻していたかどうかの判断は、法的に証明するのが難しいのも実情です。
そのため、以下のように「客観的にみて、関係が破綻しているかどうか」が基準となります。
| 破綻していた |
|
|---|---|
| 破綻していない |
|
たとえ、当事者が「夫婦関係は不貞行為前から破綻していた」と主張したとしても、客観的にみて破綻するほどの状況ではないと判断されるケースもあります。
夫婦関係が破綻していないと判断された場合、不貞行為が直接的な原因となり夫婦関係が悪化してしまったため、精神的負担の責任があるのです。
妻が出産したばかりのタイミングで不貞関係がはじまっており、不貞関係以前は夫婦関係は円満だったと判断される。不貞関係によって、夫婦関係は大きく影響を受けたとされ慰謝料は176万円となった。
出典:東京地裁|判決日平成28年3月22日(ウエストロー・ジャパン)
妻が双子を出産した直後に、夫の不貞行為が発覚した。これにより、夫婦関係は破綻しているとはいえないと判断された。不貞行為が夫婦関係が破綻する大きなきっかけとなったとして慰謝料220万円が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成28年6月30日(ウエストロー・ジャパン)
重大な精神的苦痛を与えられた
浮気や不倫による慰謝料の金額は、被害者が受けた精神的苦痛の度合いによって、大きく請求額が変動します。
精神的苦痛は、被害者本人しか感じることができないため証拠がなければ主張が難しいのが現状です。
実際に、裁判では以下のようなケースにおいて、被害者が重大な精神的苦痛を受けていたと証明されています。
- 配偶者と浮気相手の間に子どもが産まれた
- 離婚する前に配偶者が家を出ていき、浮気相手と同居をはじめた
- 浮気相手との旅行に子どもを連れていっていた
- 精神疾患を患い通院を余儀なくされた
上記のケースはあくまでも一例です。
どのような要因から重大な精神的苦痛を与えられるかは、人それぞれで違います。
そのため、精神的苦痛の度合いを主張するためには、その苦痛の度合いを客観的に判断するために必要な証拠が必要なのです。
逆をいえば、証拠がなければ証拠の有力性は低くなってしまうので注意しましょう。
精神的苦痛を証明するために利用できる証拠については、「浮気 慰謝料」で解説しているので参考にしてみてください。
夫婦間にはすでに成人している子どもが3人おり、婚姻生活は25年であった。不貞関係がきっかけで別居に至り、夫が浮気相手との間に3人の子どもが産まれていた。仙台地裁では浮気をした夫に対して150万円の慰謝料が認められたが、控訴審によって200万円まで増額された。
出典:仙台地裁|判決日平成29年3月13日(TKC法律情報データベース)
勤務している会社の代表取締役と不貞関係になった妻が、子どもを連れて浮気相手と旅行・外泊を繰り返していた。仕事と偽っていたものの、その回数は20回以上にわたった。子どもを同伴させて不貞行為に及んだことで、夫が受けた精神的苦痛は大きいとして慰謝料が200万円に増額となった。
出典:東京地裁|判決日平成29年3月22日(第一法規判例データベース)
不貞期間は半年間と比較的短く、浮気をした夫は離婚後に浮気相手と再婚を考えている。妻は、夫の不貞行為によって極度のストレスから不眠症と抗うつ状態であると診断を受けた。短い不貞期間ではあるが、妻の受けた精神的苦痛に対して、相場を超える慰謝料240万円が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成29年4月25日(ウエストロー・ジャパン)
約27年間の間、婚姻関係を継続していく中で、並行して15年にわたり不貞関係を持っていた。妻に無断で協議離婚を届出て離婚届を提出したうえで、浮気相手と婚姻届を提出した。浮気相手と夫との間には、6人の子どもがいた。夫は無断離婚後も妻に対して約50万円の生活費を毎月渡していたため、妻は無断離婚も不貞行為にも気づかなかった。
悪質な不貞関係による、精神的苦痛の度合いは大きいとして慰謝料500万円が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成27年3月24日(TKC法律情報データベース)
浮気相手に対して高額な経済支援をしていた
浮気相手に対して高額な経済支援を行っていた場合も、本来であれば夫婦間の生活費等として充てられるものであると判断される場合もあります。
すでに浮気相手に対して支払った金銭の返還が認められるケースは少ないのですが、慰謝料を増額できる可能性があるのです。
実際には、以下のような判例があります。
夫が死亡するまでの9年間にわたり不貞関係を続けていた。不貞関係の期間中に、浮気相手は夫から1,000万円の送金を受け取っていることが、夫死亡後の浮気相手に対する慰謝料250万円への増額理由となっている。
出典:東京地裁|判決日平成28年2月26日(第一法規判例データベース)
不貞行為の場所・内容が悪質である
配偶者と浮気相手の不貞行為が行われた場所や内容が悪質である場合も、慰謝料増額の理由となったケースがあります。
例えば、以下のようなケースです。
- 夫婦の自宅で繰り返し不貞行為に及んでいる
- 子どもが同じ家にいるにもかかわらず不貞行為に及んでいる
- 離婚前に、配偶者の実家を訪ねて浮気相手と不貞行為に及んだ
- 妊娠する前提で不貞行為に及んでいた
夫婦だからこそ守られるべき権利を、悪意を持って損害を与えようとしていると判断できる場合は、慰謝料が相場よりも高くなるのです。
悪質な行為は、個別のケースによって違いますが、参考までに実際の判例を把握しておきましょう。
夫が単身赴任中に、5歳の子どもが家にいるにもかかわらず妻が浮気相手と自宅で不貞行為に及んだ。精神的苦痛を負った夫は、妻に対しては慰謝料請求しないが、浮気相手に対してその悪質な不貞行為を行ったとして慰謝料250万円が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成29年8月10日(ウエストロー・ジャパン)
約5ヶ月間にわたり、妻と浮気相手が不貞関係にあった。夫婦間には2歳の子どもがいたにもかかわらず「浮気相手の子どもを妊娠するつもりだった」と証言しており、避妊具等は一切使用していなかった。慰謝料は浮気相手に対して275万円の請求が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成29年10月26日(ウエストロー・ジャパン)
不倫相手の行動が悪質である
浮気相手に対する慰謝料請求の場合、浮気相手の行動が悪質であると判断されると慰謝料が増額される可能性があります。
- 相手の妻(夫)に対する配慮が極端に欠けている
- 不貞行為の事実を否定し続けた
- 相手の妻(夫)に対して強迫行為を行った
- 離婚するように仕向けた
- 既婚者だとわかりながら、浮気相手から不貞行為を持ちかけた
浮気相手のこれらの不貞行為以外の行動は、非常に悪質であり、被害者に重大な精神的苦痛を与えていたと判断できるのです。
実際に、以下のような判例で慰謝料増額が認められています。
夫が会社の同僚と不貞関係になる。浮気相手が同一町内にわざと引っ越してきたことを知り、妻は「子供に危害を加えられるかもしれない」と不安を感じていた。浮気相手に対して、不貞関係は4ヶ月と短いが、120万円の慰謝料が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成29年9月27日(第一法規判例データベース)
妻と浮気相手は同じ会社に勤めており、お互いが既婚者であることは知っていた。浮気相手は、夫がいると分かりながら好意を伝えて積極的に関係をもった。実際に不貞行為に及んだ回数は3回と少なかったが、浮気相手が積極的に不貞関係を継続していたことから、慰謝料175万円が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成29年2月27日(第一法規判例データベース)
謝罪の意思がみえない
不貞行為に対する慰謝料を請求されたにもかかわらず、配偶者や浮気相手が謝罪しない場合・慰謝料請求を無視する場合は、慰謝料が相場よりも高額になります。
- 不貞行為について謝罪しない
- 不貞行為の事実に対して虚偽の主張をする
- 不貞行為の慰謝料請求への回答・答弁書の提出をしない
浮気をされた被害者に対して、事実を認めて謝罪しないのはもちろんですが、裁判への出廷無視も慰謝料増額の理由となるのです。
実際に、配偶者や浮気相手の謝罪がないことが理由で増額された判例を紹介します。
妻の浮気相手である男性に対して慰謝料請求を内容証明郵便で送付した。しかし、浮気相手は内容証明郵便を無視しただけでなく、裁判の際に必要な答弁書も提出しなかった。そのため、慰謝料請求されている内容について、すべて「自白」しているとみなされ慰謝料330万円になった。
出典:東京地裁|判決日平成27年1月9日(TKC法律情報データベース)
2年間の不貞関係の末に、浮気された配偶者が浮気相手に対して慰謝料を請求した。しかし、浮気相手が出頭することはなく、書面の提出も一切行わなかった。そのため、すべての内容について「自白」したと判断されて、慰謝料300万円が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成29年9月11日(第一法規判例データベース)
浮気による慰謝料が相場より低くなるケース9つ

浮気による慰謝料は、個別の状況によっては相場よりも減額される場合があります。
慰謝料が減額される主なケースは、以下の9つです。
浮気した相手に対する慰謝料請求ですが、状況を客観的に判断したことで請求した金額よりも大幅に減額される可能性があります。
事前に、慰謝料が減額される可能性について理解しておくことで「請求した慰謝料が減額された」や「本来支払うべきの金額より多く慰謝料を支払ってしまった」というケースを回避できるでしょう。
実際の判例と合わせて、どのようなケースで減額されるのか解説していきます。
離婚・別居しない
不貞行為の結果、離婚や別居せずに同居生活を継続する場合は、慰謝料が相場のなかでも安い金額に収まる場合がほとんどです。
記事冒頭で解説しているように、離婚や別居しない場合は以下のように慰謝料相場も変動します。
| 離婚・別居しない場合 | 50〜100万円 |
|---|---|
| 別居する場合 | 100〜150万円 |
| 離婚する場合 | 100〜300万円 |
同居生活を継続するということは、浮気をされた配偶者が将来大きな金銭的負担や、精神的苦痛を感じる可能性が低いと判断されます。
「辛い思いを感じながらも、関係修復を心がけている」という方もいることでしょう。
しかし客観的には、不貞行為が直接的に夫婦関係に大きな損害を与えなかったと判断されるのです。
実際に離婚や別居しないことで、慰謝料が減額された判例には以下のようなものがあります。
既婚者だと知りながら2度の不貞行為をおこなった。相手が離婚しないことに逆上して「離婚しないなら保育園や妻の勤務先へ連絡する」や「自殺してやる」と強迫した。浮気相手の行動は悪質であるが、夫婦は一度別居した後に、同居を再開したことから慰謝料は80万円となった。
出典:東京地裁|判決日平成29年11月28日(ウエストロー・ジャパン)
妻が働いていたキャバクラに客として訪れた浮気相手と出会い、複数回不貞行為に及んだが、夫婦関係は破綻しなかった。不貞行為発覚後も、夫婦は同居を続けていたとして慰謝料は75万円とされた。
出典:東京地裁|判決日平成29年11月29日(第一法規判例データベース)
婚姻期間が短い
慰謝料が高くなるケースの「2-2.婚姻期間が長かった」で解説したように、婚姻期間の長さが慰謝料の金額に大きく影響しています。
そのため、婚姻期間が短い場合は慰謝料の減額の対象となる可能性があるのです。
- 婚姻期間1年未満
- 婚姻期間1年〜5年
婚姻期間が1年未満の場合は、ほとんどの場合で減額されます。場合によっては、婚姻期間が5年未満を慰謝料減額理由として認められた判例もあるのです。
内縁関係が成立してから5ヶ月、内縁関係の2人が同居を始めてから3ヶ月と比較的短い期間で不貞行為が発覚した。内縁関係の2人が同居するために購入した家に、パートナーではなく浮気相手を連れ込み2ヶ月間暮らしており、行為は悪質であった。しかし、内縁関係から短期間で夫婦関係は破綻したため、ダメージは少ないとして736万円の請求に対して、100万円の慰謝料減額が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成30年1月26日(ウエストロー・ジャパン)
婚姻期間3年の間、約1年半にわたり不貞行為を複数回行っていた。不貞行為の結果、別居を経て離婚に至っているが、婚姻期間が短いことで300万円請求された慰謝料が50万円に減額された。
出典:東京地裁|判決日平成28年9月16日(ウエストロー・ジャパン)
夫婦間に幼い子供がいない
夫婦間に子どもがいない・幼い子どもがいない場合は、浮気された配偶者が受ける精神的負担が重度ではないと判断されるため、慰謝料減額の可能性があります。
具体的には、以下のケースに当てはまるかどうかが重要です。
- 夫婦間に子どもがいない
- 夫婦間での実子がいない(連れ子はいる)
- 子どもは全員成人している
実際に、これらの要素が認められ慰謝料が減額された判例を紹介します。
婚姻生活21年で、不貞行為は週一の頻度で行われており、夫婦関係は不貞行為が原因で悪化していた。しかし、子どもの年齢が21歳と18歳と成長していることも踏まえて、876万円の慰謝料請求に対して170万円に減額された。
出典:東京地裁|判決日平成28年6月30日(ウエストロー・ジャパン)
不貞行為の期間が短い
浮気相手と不貞関係を続けていた期間が短い場合は、悪質な行為をしていない限りは慰謝料が減額される可能性があります。
実際の判例データをみてみると、不貞行為の期間が1年未満であれば「不貞行為に及んだ期間は比較的短い」を判断されているのです。
ただし不貞行為の期間が短くても、不貞行為の内容や行動が悪質な場合は、逆に慰謝料を増額される可能性もあります。
約1週間の不貞関係に対して、妻が夫に対して300万円の慰謝料を請求した。しかし、実際に不貞関係でいた期間は1週間と比較的短いため、半額の慰謝料150万円まで減額された。
出典:東京地裁|判決日平成29年1月11日(ウエストロー・ジャパン)
約4ヶ月の不貞関係に対して、浮気をされた夫が、妻と浮気相手の両者に対して連帯して550万円を請求した。しかし、実際のところは離婚協議を始めたタイミングで不貞行為に及んでおり、その期間の短さが考慮された。550万円の請求に対して、2人に連帯して88万円の慰謝料に減額された。
出典:東京地裁|判決日平成30年3月29日(TKC法律情報データベース)
不貞行為の回数が少ない
不貞行為に及んだと証明できた回数が少ない場合も、慰謝料が減額されるケースにあてはまります。
たとえば1回しか肉体関係を持っていない場合は、浮気をした配偶者と浮気相手が、不貞関係を継続しようとしていたという判断は難しいのです。
浮気や不倫による慰謝料は、あくまでも「不貞行為によって受けた精神的苦痛に対して支払われる損害賠償金」なので、不貞行為がなければ請求できません。
不貞行為の回数を証明できない場合は、慰謝料が減額されてしまう場合がほとんどなので、請求する側・請求される側のどちらも証拠の重要性について理解しておく必要があります。
不貞行為についてより具体的に把握しておきたい方は、「不貞行為とは」で具体的に解説しているので参考にしてみてください。
夫が昔の知人と1回だけ不貞行為に及んだ。そのことが浮気調査で発覚し、妻が浮気相手に対して約554万円の慰謝料を請求したが、不貞行為が1回限りで継続していないことから、慰謝料は110万円まで減額された。
出典:東京地裁|判決日平成29年4月27日(ウエストロー・ジャパン)
単身赴任中の夫が、約1年にわたり不貞行為を行っていた。しかし、実際の不貞行為を確認できたのは1回のみであったため、慰謝料は請求された400万円から90万円まで減額された。
出典:東京地裁|判決日平成30年1月29日(ウエストロー・ジャパン)
不貞行為をした時期が20年以上前
不貞行為をした時期と不貞慰謝料を請求する時期とが離れている場合、不貞行為を許容、黙認していたと判断されてしまう可能性が考えられます。
この場合、被害者側となる配偶者が承諾をしていたと判断されてしまい、不法行為責任が認められないか、認められてもかなり低額での慰謝料が認容されるにとどまる、という可能性があります。
また、不貞行為が発覚した時点で不貞関係の解消を求めていなかった場合には、配偶者に対して無関心であったとして、やはり慰謝料金額が減額される可能性があります。
ほかにも、すでに不貞行為から相当期間が経っている場合、慰謝料請求権自体が時効によって消滅しているおそれもあります。
不貞相手も判明したという時点から3年以上、または不貞行為があった時点から20年以上経過している場合には、減額どころかそもそも請求できない、ということにもなりえます。
不倫相手が積極的に不貞行為を持ちかけていない
浮気相手に慰謝料を請求する場合は、相手が積極的に不貞行為に及んでいたかどうかも重要です。
浮気相手に積極的に不貞行為に及ぶ・不貞関係を維持しようとするなどの意図が見受けられない場合は、慰謝料が減額される可能性があります。

上記の図のように、不貞関係に至るまでに、配偶者と浮気相手のどちらに主導性があったのかで、慰謝料の金額が変動するのです。
実際に、以下のケースでは、減額が認められた判例があります。
- 婚活アプリで出会ったので既婚者だと知らなかった
- 共通の知人がいなかったため既婚者だと知らずに関係を持った
- 数回の不貞行為の後、浮気相手から連絡を絶った
- 浮気相手は、不貞行為を強要されていた
- 離婚したと言われたので信じて関係を継続していた
上記のような故意・過失の判断は、主張を裏付けるための証拠が必要です。
浮気相手が意図せず不貞関係に至っていたと証明できる証拠がある場合は、たとえ慰謝料を相場通り請求しても減額になるかもしれません。
逆に、有力な証拠がないかぎりは、故意・過失の有無を判断するのが難しいといえるのです。
浮気をした夫から「夫婦関係は破綻している」と言われ、浮気相手はその言葉を信じて関係を継続していた。関係の始まりは、既婚者である夫から持ちかけられている。夫が浮気相手を騙して関係を継続していたとして、浮気相手の責任は低いと認められた。300万円の慰謝料を請求されたが、最終的には150万円への減額が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成28年9月30日(ウエストロー・ジャパン)
既婚者のいる夫と婚活サイトで出会い、肉体関係を持つようになる。既婚者であることを告白された後も、夫側からの積極的な働きかけがあり不貞関係を継続した。最終的には妻から浮気相手に対して300万円を請求されたが、130万円まで減額された。
出典:東京地裁|判決日平成29年1月23日(RKC法律情報データベース)
不倫の当事者一方からすでに金銭を受け取っている
浮気や不倫に対する慰謝料は、その損害をもたらした当事者2人に対して連帯責任があるとされています。
そのため、請求された慰謝料額に対して、当事者のどちらかがすでに金銭を被害者に支払っている場合は、慰謝料が減額されるのです。

たとえば、すでに配偶者からの慰謝料を受け取っているにもかかわらず、浮気相手に対して高額な慰謝料は請求できない可能性が高いのです。
- 配偶者もしくは浮気相手がすでに慰謝料を支払っている場合
- 配偶者が婚姻費用を支払っている場合
- 配偶者が生活費を渡しており、被害者が受け取っている場合
などの場合は、慰謝料が減額される可能性があるのです。
実際には、以下のようなケースが該当します。
約半月の間に行われた不貞行為が、夫婦の離婚後に発覚した。浮気相手の男性は、すでに夫に対して200万円の慰謝料を支払済であったことから、妻への慰謝料請求は差額の50万円となった。
出典:東京地裁|判決日平成29年3月24日(第一法規判例データベース)
約2年にわたり不貞関係が続けられており、妻が浮気相手に対して700万円の慰謝料を請求した。しかし、妻は不貞行為発覚後も浮気をした夫から毎月35万円の生活費(家賃含む)を受け取っている。
すでに金銭を受け取っていることから、浮気相手に対する慰謝料も減額されると判断された。
請求されていた700万円の慰謝料に対して、最終的に150万円が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成29年7月10日(ウエストロー・ジャパン)
誠心誠意の謝罪を伝えられている
浮気をした配偶者や浮気相手が、被害者に対して誠心誠意の謝罪を伝えていると認められる場合は、慰謝料の金額が減額される可能性があります。
精神的苦痛を与えたことに対する謝罪の意思の有無は、慰謝料の金額を算定するのに重要な要素です。
「謝罪の意思がみえない」でも解説したように、謝罪の意思がみえない場合は慰謝料が増額してしまう可能性があります。
実際の判例でも、浮気相手や配偶者が誠心誠意の謝罪をしたことで、以下のように慰謝料額が減額されているケースがあるのです。
勤務先の飲み会で既婚者の女性と不貞行為を持ってしまった。その後、相手が自ら不貞行為の事実を認めて謝罪をしてきた。220万円の慰謝料を請求されたが「50万円なら払える」と交渉がはじまった。不貞行為の回数の少なさと、当事者が誠心誠意が謝罪してきたことで、相場を下回る44万円の慰謝料が認められた。
出典:東京地裁|判決日平成30年3月1日(TKC法律情報データベース)
約7年間にわたり既婚者の女性と不貞関係にあった。不貞関係がバレた際に、被害者に対して「不貞関係を清算する」と謝罪の意思を伝えてある。
最初は浮気相手に対して600万円が請求されていたが、謝罪を考慮したうえで、慰謝料150万円が認められている。
出典:東京地裁|判決日平成29年1月27日(TKC法律情報データベース)
不倫の慰謝料にまつわるよくある質問
ここからは慰謝料について弁護士との相談の中でよく聞かれる質問をご紹介しますので、ご参考になさってください。
不倫の慰謝料を配偶者と不倫相手の双方に請求することはできますか?
はい、配偶者と不倫相手の双方に請求することが可能です。
しかし、二人に請求したからといって、受け取る金額が倍になるわけではありません。
不倫の慰謝料は、不倫をした二人の連帯責任という考え方をするため、不倫相手だけに請求をした場合と、二人に請求した場合で、認められる慰謝料総額は変わりません。
また、二人に請求する場合、誰に何割請求するのかは請求側の裁量によって決められます。
証拠が少なくても慰謝料を請求することはできますか?
証拠が1つでも、それが肉体関係を証明する決定的なものであったり、本人たちが関係を認めている場合は、慰謝料を請求することが可能です。
逆に、証拠の数が多くても、不倫関係を証明するのに不十分な証拠ばかりでは、請求が難しい場合もあります。
証拠の有効性は一概には言えず判断が難しいので、弁護士への相談をおすすめします。
不倫の慰謝料を請求する際のNG行為はありますか?
不倫が発覚した際に、不倫相手や配偶者に怒りの感情を持つことはごく自然なことですが、感情に任せた行動はリスクを伴います。
- 不倫相手や配偶者に自白を強要する
- 不倫相手の会社や家族に不倫の事実を伝える
- SNSなどを使って不倫の事実を広める
などはそれぞれ脅迫罪や名誉棄損等にあたる場合がありますので、注意しましょう。
まとめ
この記事では、実際の判例と共に浮気に対する慰謝料の相場について解説してきました。
浮気による慰謝料の相場は、一般的に50〜300万円ですが、具体的な金額は個別のケースによって増減します。
▼慰謝料が増額になるケース
- 不貞関係が継続している
- 婚姻期間が長かった
- 不貞関係の期間が長かった
- 不貞行為の頻度が多い
- 夫婦間に幼い子どもがいる
- 不貞行為開始時の夫婦関係が破綻していなかった
- 重大な精神的苦痛を受けた
- 浮気相手に対して高額な経済支援をしていた
- 不貞行為の場所・内容が悪質である
- 浮気相手の行動が悪質だった
- 謝罪の意志がみえない
▼慰謝料が減額になるケース
- 離婚・別居しない
- 婚姻期間が短い
- 夫婦間に幼い子どもがいない
- 不貞行為の期間が短い
- 不貞行為の回数が少ない
- 浮気相手に積極的な意図が認められない
- 浮気の当事者一方からすでに金銭を受け取っている
- 誠心誠意の謝罪を伝えている
浮気による慰謝料は、個別のケースを客観的に判断したうえで、慰謝料額が増額・減額していきます。
慰謝料の増額・減額の判断基準は、あくまでも一例であり、当事者だけでは適正な金額を導き出せないのが現状です。
慰謝料についての知識がなければ、慰謝料請求において損をしてしまう可能性があります。
少しでも金銭面で損をしてしまうリスクを回避するためには、専門知識と経験でサポートしてくれる弁護士の活用を検討してみましょう。
- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設










