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投稿日: 更新日: 弁護士 宮地 政和

自己破産の必要書類と書式の入手方法・記載時の注意点も解説

自己破産の必要書類と書式の入手方法・記載時の注意点も解説
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「自己破産の手続をするためには、膨大な量の書類を用意する必要があると聞いたけれど、具体的にどのような書類が必要なのだろうか」
「自己破産の手続に必要な書類のフォーマットはどこで入手できるのだろうか」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、自己破産の手続に必要な書類とフォーマットの入手方法、自己破産の書類を記載する際の注意点などについて解説します。

自己破産とは

自己破産とは、破産法に則って、裁判所に返済不能であることを申立て、債務を免責してもらう手続です。申立てを受けた裁判所は、債務者の財産や家計状況等を調査した上で、返済不能であることを認めた場合、債権者に財産を分配して債務を免責します。
自己破産には、全ての債務が免責されるという大きなメリットがある一方、持ち家や自家用車などの財産を手放す必要があるというデメリットもあります。
自己破産の目的、利用するための条件、メリットやデメリットなど、基本的な内容についてはこちらの記事にまとめましたので、詳しく知りたい方は参考にしていただければと思います。

自己破産に必要な基本書類と書式の入手方法

自己破産手続では、裁判所が債務者の総資産や家計状況等を正確に把握するために、多くの書類の提出が求められます。まずは、全ての申立人が提出する必要のある書類と書式の入手方法について説明します。

1.破産手続開始の申立書

破産手続開始の申立ては,最高裁判所規則で定める事項を記載した書面を用いて行う必要があります(破産法第20条1項)。各地方裁判所は、最高裁判所規則で定める事項を網羅した破産手続開始の申立書を用意しています。破産手続開始の申立書の書式は、地方裁判所によって若干異なるため、現住所を管轄する裁判所の窓口や公式サイトから入手しましょう。
破産手続開始の申立書を裁判所に提出する際は、手数料として1,500円の収入印紙を貼る必要があります。収入印紙は、郵便局やコンビニなどで購入できます。

2.陳述書

陳述書は、破産手続開始の申立てに至った事情について詳しく記載する書類です。破産手続開始の申立書と同様に、現住所を管轄する裁判所の窓口や公式サイトから入手できます。
陳述書には、以下の内容を可能な限り正確かつ具体的に記載します。

  • 生活の状況:職業・収入・家族の状況(同居・別居)・住居の状況等
  • 経歴等:最終学歴・職歴・結婚歴
  • 以前の生活状況
  • 債権者との状況:債権者との話し合いの有無・差押の有無等
  • 債務の発生原因・増加の事情
  • 借入等をした際の事情
  • 返済等に関する状況
  • 現在までの破産・免責手続について
  • 関連事件継続の有無
  • 今後の見通し

債務の発生原因・増加の事情については、債務の返済が困難になった理由やその時期など、できる限り具体的に記載して下さい。例えば、「2020年3月頃、収入が減り、借金の返済が困難になった」とだけ記載するのではなく、「2020年3月下旬、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、勤務していた飲食店のシフトを大幅に減らされて月収が半分以下になったため、毎月の家賃を支払うだけで精一杯になり、クレジットカードのリボ払いが困難になった」などと、債務の返済が困難になった理由や時期を可能な限り詳しく記載することが大切です。

3.債権者一覧表

債権者一覧表は、全ての借入先を記入する一覧表です。債権者一覧表の記入用紙も、現住所を管轄する裁判所の窓口や公式サイトから入手できます。
債権者一覧表には、以下の内容を可能な限り正確に記載します。

  • 債権者名
  • 借入時期
  • 現在の借入残高
  • 使途・原因等

債権者一覧表には、必ず全ての借入先を記入して下さい。クレジットカード会社や銀行だけではなく、家族や友人からの借金についても記載する必要があります。
家族や友人など一部の債権者には迷惑をかけたくない等の理由から、債権者一覧表に特定の借入のみ記載しないなど、債権者一覧表の内容に虚偽がある場合、免責が許可されない免責不許可事由に該当する可能性があるため注意が必要です(破産法第252条1項7号)。

免責不許可事由について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしていただければと思います。

4.資産目録

資産目録は、申立人が所有している資産を記入する書類です。資産目録の記入用紙も、現住所を管轄する裁判所の窓口や公式サイトから入手できます。
資産目録には、以下の内容を可能な限り正確に記載します。

  • 不動産:土地家屋の有無・購入価格や担保権者の氏名・会社名等
  • 現金、預貯金
  • 貸付金等
  • 自動車・オートバイ
  • 生命保険・損害保険の保険契約
  • その他の20万円以上の財産
  • 過去2年間の価値のある財産の処分
  • 過去2年間の退職金・保険金等の支払い
  • 過去2年間の財産分与
  • 過去2年間の遺産相続

資産目録には、記入した資産に関する証明書の添付が必要です。例えば、自動車・オートバイを所有していれば車検証の写しを用意しましょう。資産を証明する各書類については後述します。

5.家計全体の状況に関する書類

家計全体の収入に関する科目(給与・生活保護・年金等)、支出(住宅費・食費・医療費・教育費等)の金額、それを証明する書類名を記載する書類です。記入した全ての科目を証明する書類を添付する必要があります。
記入用紙は、現住所を管轄する裁判所の窓口や公式サイトから入手できます。

6.住民票の写し

個人が破産手続開始の申立てを行う際には、本籍地が記載された住民票の写しが必要となります(破産規則第14条3項)。住民票の写しは、住所地の市区町村の窓口で申請することができます。手数料は、1通300円です。申請の際は、運転免許証等の本人確認書類を提示する必要があるので、必ず持参して下さい。

収入を証明するために必要な書類

会社等に勤務して給料の支払いを受けていた方、自営業で収入を得ていた方は、収入について証明する書類の提出が必要となります。具体的にどのような書類が必要となるか説明します。

1.給与明細書および源泉徴収票等

給与収入を得ている場合、最新の給与明細書の写し(2か月分)および前年度(または前々年)の源泉徴収票の写しが必要となります。

  • 給与明細書:雇用契約における労働対価の金額・その内訳が項目別に記載された書類
  • 源泉徴収票:年間の給料や所得税の総額が記載された書類

給与明細書、源泉徴収票ともに、勤務先の人事担当部門に申請すれば取得できます。また、勤務先に退職金制度があり、勤続年数が一定期間を超えている場合、退職金の見込額証明書の提出を求められることがあります。退職金の見込額証明書の提出が必要となる条件は裁判所によって異なるため、申立てをする裁判所に確認の上、提出が必要な場合は、給与明細書と源泉徴収票の交付申請をする際に、併せて申請するとよいでしょう。

2.離職票・退職金支給証明書

以前勤務していた会社を退職した場合、その事実を証明する書類が必要となります。以前の勤務先の人事担当部門に連絡して、雇用保険被保険者離職票と退職金支払額証明書を発行してもらいましょう。

3.確定申告書の控え等

自営業者の場合は、直前2年間の確定申告書の控えを提出する必要があります。また、会社代表者の場合は、会社の過去2事業年度分の確定申告書と決算報告書の写しの提出を求められます。

申立人の状況に関する必要書類

生活保護を受給している、現在、病気を患っていて治療中である等の事情がある方は、その事情について証明する書類が必要となります。具体的にどのような場合に、どのような書類が必要となるか説明します。

1.生活保護受給者の場合

生活保護を受給している場合、生活保護受給証明書の提出が求められます。生活保護受給証明書は、生活保護を受給している事実について市町村が証明する公的な書類です。現住所の市区町村の担当窓口で申請することができ、手数料はかかりません。

2.病気により仕事ができない場合

現在、病気を患っているため仕事ができない状態である場合、医師が作成した診断書の提出を求められます。通院中の医療機関の担当医に相談して、診断書を作成してもらいましょう。
また、薬を服用している場合、お薬手帳も用意しておくとよいでしょう。お薬手帳は、処方された薬の名称や服用履歴などを記録する手帳で、全国の調剤薬局などで無料で配布しています。

3.預金通帳等その他の必要書類

その他、資産や申立人の現在までの状況について証明する必要がある場合、以下の書類の提出を求められることがあります。

①資産に関する書類

  • 現金・預貯金:現在使用している最新の預貯金通帳の写し
  • 自動車・オートバイ:車検証の写し
  • 生命保険・損害保険の保険契約:保険会社作成の証書または解約返戻金の証明書

②その他の状況に関する書類

  • 過去に借金の返済等で調停・和解が成立した場合:調停調書または和解調書の写し
  • 差押・仮差押等を受けた場合:裁判所からきた決定書等の写し

自宅や不動産に関する必要書類

自己破産の手続では、所有する不動産も原則として処分して現金化し、債権者へ分配されることになります。そのため、自宅や所有している不動産に関する書類も裁判所に提出する必要があります。具体的にどのような書類が必要となるか説明します。

1.賃貸住宅に住んでいる場合

申立人が現在、賃貸住宅に住んでいる場合、現在住んでいる家が自己所有ではないことを証明する書類が必要です。借家や賃貸アパートに住んでいる場合は、賃貸借契約書の写しを提出することになります。賃貸借契約書を紛失した場合、物件を管理している業者等に問い合わせると、賃貸借契約書のコピーを入手することが可能です。
また、不動産を所有していない場合は、所有していないことを証明するために、現住所の市区町村の担当窓口で、無資産証明書を発行してもらう必要があります。無資産証明書の発行にかかる手数料は300円です。

2.自宅や土地等の不動産を所有している場合

申立人が自宅や土地などの不動産を所有している場合、または家族所有の建物等に居住している場合は、登記簿謄本および固定資産評価証明書を提出する必要があります。
登記簿謄本(登記事項証明書)は法務局で取得できます。窓口または郵送で申請が可能で、1通600円の手数料が必要です。オンライン請求を利用すると、窓口交付が1通480円、送付が1通500円となります。
固定資産評価証明書は、現住所の市区町村で取得できます。1通300円の手数料がかかります。交付申請の際は、運転免許証等の本人確認書類を提示する必要があるので、必ず持参して下さい。なお、被担保債権(担保の対象になった土地・建物等)がある場合、現在残高の証明書を金融機関に請求して取得して下さい。

自己破産の書類を記載する際の注意点

自己破産の書類を記載する際には、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。特に注意が必要な点について説明します。

1.書類の内容に虚偽がないこと

自己破産の書類を記載する際は、書類の内容に虚偽がないようにしっかり確認することが重要です。
自己破産をする場合、自宅や自家用車を含めたほとんどの財産を処分する必要があります。自家用車等の財産を手放したくないという理由から、自分が所有する財産の一部を隠そうとして、資産目録に記載しないというケースは珍しくありませんが、詐欺破産罪が成立する可能性があるため注意が必要です。
詐欺破産罪は、破産者が自身の財産を隠匿した場合等に成立する犯罪です(破産法第265条1項)。詐欺破産罪が成立すると、免責を受けられないだけではなく、10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又はそれらの併科を科される可能性があります。

2.補正には迅速に対応すること

破産手続開始の申立書等の書類を裁判所に提出した後、裁判所から、追加で書類を提出するよう求められることがあります。これを補正といいます。補正は1回だけではなく、複数回行われることもありますが、できる限り速やかに対応することが大切です。補正の依頼を無視した場合、破産手続開始の申立てが却下される可能性もあるため、注意して下さい。

まとめ

今回は、自己破産の手続に必要な書類とフォーマットの入手方法、自己破産の書類を記載する際の注意点などについて解説しました。

自己破産の手続に必要な書類は非常に多く、全ての書類を不備なく用意することは決して簡単なことではありません。必要な書類の書き方等に不明な点がある場合、適当に記載するのではなく、債務整理に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

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執筆者 弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会 登録番号48945
人生で弁護士に相談するような機会は少なく、精神的にも相当な負担を抱えておられる状況だと思います。そういった方々が少しでも早期に負担を軽くできるよう、ご相談者様の立場に立って丁寧にサポートさせていただきます。
得意分野
企業法務・コンプライアンス関連、クレジットやリース取引、特定商取引に関するトラブルなど
プロフィール
岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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