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相続放棄すべきか適切な判断をするための被相続人の借金の調べ方

相続放棄すべきか適切な判断をするための被相続人の借金の調べ方
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誰しも親の遺産は欲しくても、借金は相続したくないはずです。そのため、マイナスの財産の方が多い場合は、相続放棄を検討することになるでしょう。

しかし、親の資産状況を正確に知るのは難しい場合も多いです。離れて暮らしていればなおさらでしょう。相続方法を適切に決定するためにも、財産調査をしっかりと行い、借金を全て把握するべきです。

今回は、被相続人の借金の調べ方や注意点などについて解説します。

借金の種類

借金には、さまざまな種類があります。漏れなく調査するためにも、まずは借金にはどのようなものがあるのか、その種類を把握しておきましょう。

1.銀行や消費者金融からの借金

一般的な借金の借入先として、銀行や消費者金融が挙げられます。特に、被相続人が事業を営んでいた場合は、銀行からの借り入れがあるケースは多いでしょう。
事業を営んでいなくても、住宅、自動車、教育などのローンを利用していた可能性があります。

2.クレジットカードの利用

被相続人がクレジットカードを利用していた場合、ショッピング枠だけでなく、キャッシング枠を利用した借り入れをしていた可能性もあります。キャッシング枠も必ず確認しましょう。

3.不動産の抵当権

不動産を所有していた場合、抵当権を設定されている可能性があります。抵当権とは、いわゆる担保のことです。住宅ローンの契約時に、途中で支払えなくなってしまった場合に備えて、金融機関が設定します。
抵当権付きの不動産を相続すると、結果として住宅ローンも一緒に相続することになるので注意が必要です。

4.知人からの借金

被相続人が親族や知人からお金を借りている可能性もあります。被相続人の人間関係を把握していないと発見が難しく、しばらく経過してから発覚することもあります。

5.連帯保証債務

被相続人が会社を経営していた場合や、相続人の誰かが事業を行っている場合は、被相続人が連帯保証人になっている可能性もあります。
会社の経営が順調な間は問題ありませんが、将来、経営が傾いて借金を返済できなくなれば、トラブルに発展する可能性があります。支払い請求は連帯保証人に対して行われるため、連帯保証債務を相続した相続人宛に多額の請求が来る可能性もあります。

銀行や消費者金融、カード利用による借金の調べ方

銀行や消費者金融、カード会社に対する借金は、信用情報機関に問い合わせることにより、調べることが可能です。
日本には、以下の3つの信用情報機関が存在します。

  • 株式会社日本信用情報機構(JICC)
  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
  • 全国銀行個人信用情報センター(KSC)

それぞれの信用情報機関について説明します。

1.日本信用情報機構(JICC)への開示請求

株式会社日本信用情報機構(JICC)は、金融機関や保証会社、クレジット会社、消費者金融など幅広い事業者が加盟している団体です。開示請求をすれば、被相続人のローンやクレジットなどの契約内容、返済状況などが確認できます。

被相続人の信用情報の開示請求は、法定相続人か被相続人の孫や祖父母など二親等以内の親族であれば行うことが可能です。
開示請求の方法、必要な書類、開示手数料などの詳細については、公式サイトでご確認ください。
参考URL:信用情報の確認(JICC公式サイト)

2.シー・アイ・シー(CIC)への開示請求

株式会社シー・アイ・シー(CIC)は、クレジットや消費者ローンに関わる信用情報を管理している機関です。信販会社やクレジット会社はもちろん、百貨店や保険会社携帯電話会社も加盟しており、多くの加盟店から信用情報を収集しています。
被相続人の信用情報の開示請求は、法定相続人のみに認められています。

開示請求の方法、必要な書類、開示手数料などの詳細については、公式サイトでご確認ください。
参考URL:郵送による法定相続人開示(死亡開示)の申込手続きにあたって(CIC公式サイト)

3.全国銀行個人信用情報センター(KSC)への開示請求

全国銀行個人信用情報センター(KSC)は、政府関係を含めた金融機関や信用保証協会が加盟している機関です。一般社団法人全国銀行協会が運営しています。ローンやクレジットカード等の契約内容や返済状況のほか、官報情報、貸付自粛情報などを照会できます。

法定相続人および法定相続人の法定代理人であれば、被相続人の信用情報の開示請求を行うことができます。
開示請求の方法、必要な書類、開示手数料などの詳細については、公式サイトでご確認ください。
参考URL:本人開示の手続き(全国銀行個人信用情報センター公式サイト)

4.必ず3社とも問い合わせること

上記の信用情報機関は、それぞれが独立して情報を管理しているので、必ず3つの機関に対して開示請求をしましょう。
「銀行でしか借りていないはずだから」などという理由で一つの機関だけの照会に留めようとする方もいらっしゃいますが、借金を全て把握するために、必ず全ての機関に対して開示請求を行うべきです。

5.調査にかかる時間

必要書類を提出してから報告書が届くまでに要する時間は、1週間から10日程度です。
ただし、不備があれば提出書類を全て返却されてしまい、再度全て提出しなければなりません。相続放棄をする場合には3か月という期限もあるため時間のロスは避けたいところです。提出書類にはできるだけ不備がないよう注意しましょう。

不動産抵当権の調べ方

遺産に不動産が含まれている場合は、必ず抵当権を調べましょう。抵当権が設定されていれば、債務額と不動産の時価総額を調べ、相続放棄をすべきかどうか検討します。
不動産抵当権の調べ方について説明します。

1.まずは不動産登記簿謄本を取得する

抵当権が設定されているかどうかは、不動産登記簿謄本を取得すればわかります。
登記簿謄本は法務局で取得可能です。備え付けの交付申請書に所在地や地番などの必要事項を記入し、600円分の収入印紙を貼付して窓口に提出すれば交付してもらえます。

また、インターネットや郵送での申請も可能です。忙しい方は、自宅や会社から請求できるオンライン請求を利用するとよいでしょう。オンラインでは平日の午前8時30分から午後9時まで請求できるうえ、手数料も480円とお得です。受け取りは指定した法務局の窓口か郵送か選択でき、郵送の場合は50円で送付してもらえます。

参考サイト:登記・供託オンライン申請システム

2.抵当権の設定を確認

不動産登記簿謄本を取得したら、抵当権が設定されているか確認しましょう。
抵当権が設定されている場合は、「権利部(乙区)(所有権以外の権利に関する事項)」の欄に記載されています。

3.抵当権がある場合は残額を金融機関へ問合せ

不動産登記簿謄本に「抵当権設定」と記載されていた場合、残高を調べる必要があります。
「権利部(乙区)(所有権以外の権利に関する事項)」のうち「権利者その他の事項」の欄に抵当権者の記載があるはずです。記載された金融機関に問い合わせて債務残高を確認しましょう。

また、「権利者その他の事項」の欄には債権額の記載がありますが、これは抵当権を設定した当初の金額です。そこから被相続人が弁済しているはずなので、相続時点では記載された債務額よりも減っている可能性が高いでしょう。
さらに、「抵当権設定」の記載があっても、下に設けられた欄に「抵当権抹消」という記載がある場合は、当該不動産に抵当権を設定した債務は完済され、消滅していることが通常です。

その他の借金の調べ方

知人や無登録の業者からの借り入れなど、信用情報機関に情報開示請求しても把握できない借金がある可能性もあります。
被相続人の借金を漏れなく把握するために、どこをどのように調査するべきか具体的に説明します。

1.自宅を調べる

被相続人の借金を全て把握するためには、まず被相続人の自宅をよく調べましょう。
特に以下のようなものがないか探すべきです。

  • 借用書や金銭消費貸借契約書などの契約書類
  • クレジットカード
  • ATMでの取引明細
  • 請求書や督促状、催告書
  • 車検証

これらの書類が見つかったら、信用情報機関から得た情報と照らし合わせて確認してみましょう。

2.郵便物を調べる

被相続人が亡くなった後も、被相続人宛の郵便物は届きます。
請求書や督促状、催告書などが届いていないかチェックしましょう。

3.通帳を確認する

通帳の内容もしっかり確認しましょう。
貸金業者への返済記録や入金記録などが記載されている可能性があります。

4.生前親しかった知人などに聞いてみる

被相続人の生前の人間関係が把握できている場合は、親しかった知人などに直接確認してもよいでしょう。
この際、もし被相続人が知人に借金をしていたことが発覚しても、返済の約束はしないよう注意してください。相続放棄をする場合は知人へ借金を返済する必要がなくなるため、その場で約束をすると不当な損失を被る可能性があるからです。
「調査中なので、また連絡します」などと伝えるに留め、不用意な発言はしないように注意しましょう。

借金が大幅に多い場合は相続放棄を検討すること

被相続人の財産を調査した結果、プラスの財産よりも明らかにマイナスの財産の方が多い場合は、相続放棄を検討しましょう。

1.相続放棄は3か月以内に申し立てを

相続放棄には期限があり、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てをしなくてはなりません。(民法第915条)
3か月を過ぎれば、基本的に相続放棄をできなくなってしまいます。プラスの財産よりも借金の方が大幅に多いことがわかった場合は、できるだけ早めに相続放棄の手続きをした方がよいでしょう。

2.間に合わない可能性が高いなら期間の伸長を

どうしても相続放棄の申し立てを期限までにできそうになければ、期間の伸長を申し立てられます。
ただし、伸長の申し立ても「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に行わねばなりません。期間内に相続放棄の申し立ても伸長の申し立ても行わなければ、単純承認をしたとみなされ、借金も相続しなくてはならなくなるので注意しましょう。

また、期間の伸長が裁判所に認められるためには相応の理由が必要です。「忙しくて間に合わなかった」「忘れていた」などという理由は認められません。
自分の不注意や怠慢のために相続放棄ができなかったということにならないよう、財産調査や相続放棄は可能な限り早めに着手しましょう。
自分で進めるのが難しいと感じた場合は、早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

被相続人の借金の調査に関するよくある質問と回答

最後に、被相続人の借金の調査について、よくある質問に回答します。

1.連帯保証債務額が大きくて心配な場合はどうするべきか

被相続人が連帯保証人になっていた場合の判断は非常に難しいです。
現状は問題がなかったとしても、将来のことは誰にもわかりません。プラスの財産と連帯保証債務を負い続けるリスクをよく比較、検討した上で結論を出すべきでしょう。
場合によっては、プラスの財産が多く、相続人が居住している不動産があったとしても相続放棄を選択した方がよいかもしれません。

また、保証債務は信用情報機関に照会しても見つからない場合もあります。ある日突然身に覚えのない保証債務の請求が来たら弁護士に相談しましょう。知る由もなかったことを家庭裁判所に認めてもらえれば、保証債務が発覚した時点で相続放棄ができる可能性もあります。

2.被相続人の借金の過払い金請求は可能か

過払い金請求の時効は、最後の取引日から10年、または過払い金を請求できると知ってから5年です。被相続人が借り入れ契約をしたのが2010年以前で、時効が成立していなければ請求できる可能性が高いでしょう。

ただし、過払い金の有無やその金額を知るためには、貸金業者から取引履歴を入手し、複雑な計算をしなければなりません。また、過払い金を返還してもらうためには貸金業者と交渉を行う必要があります。ご自身で対処するのは難しいので、過払い金がありそうな場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

3.相続放棄すべきか判断できない場合はどうすればよいか

財産調査をしてもプラスとマイナスの財産のどちらが多いのかわからず、相続放棄をすべきか判断できない場合、限定承認を選択するという方法があります。
限定承認とは、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を返済する相続方法です。マイナスの財産の方が多くても、その全額を相続人が弁済する必要はありません。

一方、逆にプラスの財産の方が多ければ、借金などを返済した残りを相続人が受け取れます。ただし、限定承認の手続きは少々煩雑です。債権者との交渉や官報公告手続きなど専門知識がなければ難しい手続きを多くこなさねばなりません。
相続放棄をすべきか判断できない場合、まずは遺産相続問題に精通した弁護士に相談することが望ましいでしょう。

まとめ

今回は、被相続人の借金の調べ方や注意点などについて解説しました。

意図せずして借金を相続しないためには、財産調査をしっかり行うことが大切です。信用情報機関への照会のほか、不動産がある場合は抵当権の確認、他にも自宅や郵便物、通帳のチェックなどできる限りの調査を行いましょう。
財産調査を進める中で疑問点や不明点などが発生した場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

私達、東京スタートアップ法律事務所は、遺産相続に関する問題を抱えている方々を全力でサポートさせていただきたいと考えております。数多くの相続問題を解決した実績を持つ弁護士が、ご相談者の状況やご希望などを丁寧にお伺いした上で、最適なアドバイスをさせていただいておりますので、安心してご相談・ご依頼いただければと思います。

参考文献
椎葉 基史著『身内が亡くなってからでは遅い「相続放棄」が分かる本』(ポプラ社)

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