DVで逮捕される場合の罪状は?逮捕後の流れや弁護士に相談するメリットを紹介
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DVで逮捕されるきっかけとは?
110番通報を受けてかけつけた警察官に逮捕される(現行犯逮捕)場合や、被害者からの相談や被害届の提出を受けて警察官が捜査を開始し、任意同行を求められて事情を聞かれた後に逮捕される場合などがあります。
110番通報
被害者やその家族が110番をし、通報を受けてかけつけた警察官がDVが行われている現場を確認した場合や、DV行為自体は終わっているけれども加害者が被害者に暴行を加えたことや傷害を負わせたことが明らかな場合はその場で逮捕されます。
告訴、被害届の提出
DVを受けた被害者が、警察に被害届や告訴状を提出することによって捜査が開始される場合があります。
医師が作成した診断書など、客観的な証拠があると捜査が開始される可能性が高くなります。
「被害届」とは、被害が発生したことを警察に届け出る書面です。
被害届の提出には、刑事事件として扱って加害者の処罰を求める意思表示までは含まれないため、被害届の提出を受けても捜査を開始するかどうかの判断は捜査機関が行います。
かつては、「民事不介入の原則」といって、家庭内のトラブルに警察が介入することに消極的だった時代がありました。
しかし、近年、DVがエスカレートし重大な結果を生ずる刑事事件が複数発生したことを受け、捜査機関の対応は変わってきました。
現在では、相談を受けた警察の側から被害届の提出を促す場合もあります。
被害届が提出されなくても、必要性が認められ捜査が開始され逮捕されることもあります。
「告訴」とは、被害者やその代理人が、警察などの捜査機関に対して被害の事実を申告して加害者の刑事処罰を求める意思表示をすることをいいます。
告訴状の提出を受けた捜査機関は、検察官に対し書類を送付し、後に起訴をしたかどうかの結論を通知する義務が生じるため、必ず捜査が開始されます。
離婚相談に関連した告訴
弁護士に離婚問題を相談した際に、DVの告訴を検討する場合があります。
配偶者から暴力を受けた事実は離婚事由となる可能性があり、かつ、離婚の際に支払われる慰謝料を増額させる事由にもなり得るからです。
医師が作成した診断書などの証拠をそろえた上で、弁護士が依頼者の代理人として告訴状を提出することもできます。告訴状が受理されると必ず捜査が開始されます。
DVは何罪に問われるのか?
DVで逮捕される場合に適用される罪名としては、主に、暴行罪、傷害罪、脅迫罪、器物損壊罪、不同意性交等罪などが考えられます。
被害者が死亡してしまった場合には、傷害致死罪や殺人罪の疑いで逮捕されます。
傷害罪(刑法204条)
身体に暴行を加え、その結果身体の状態が通常でなくなると傷害罪が成立することになります。
例えば、打撲、切り傷、骨折、出血、意識障害などの結果が生じた状態を「傷害」といいます。
しかし、このように物理的に身体を傷つけた場合に限定されず、PTSD(心的外傷後ストレス障害)なども傷害に当たると判断される場合があります。
傷は時間の経過とともに癒えるのが通常ですので、傷害の原因がDVである場合は早期に病院へ行き傷害の程度を認定する診断書を作成してもらうと良いと思います。
傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。
暴行罪(刑法208条)
暴行罪は、殴る、蹴るなどの行為をしたけれども「人を傷害するに至らなかったとき」に成立します。
「傷害するに至らなかった」とは、切り傷や骨折など、外観上の結果が生じる(怪我をさせる)程度にまでは至らなかったという意味です。
また、被害者の身体に実際に触れたりぶつかったりしていなくても、包丁を突きつける行為や、椅子を投げつける行為が暴行と認定された事案もあります。
暴行罪の法定刑は、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料です。
傷害致死罪(刑法205条)、殺人罪(刑法199条)
被害者が死亡してしまった場合、傷害致死罪や殺人罪に問われることになります。
殺すつもりなく攻撃した結果、被害者が死亡してしまった場合は傷害致死罪が成立します。
傷害致死罪の法定刑は、3年以上の有期懲役です。殺す意思を持っていた場合や、相手が死んでも構わないと思っていた場合には殺人罪(刑法199条)が成立します。
殺人罪の法定刑は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役です。
脅迫罪(刑法222条)
相手や相手の親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加えると告知して人を脅迫した場合は、脅迫罪に問われます。
具体的には「殺すぞ。」「殴られたいのか。」などと配偶者に対して言ったりメールを送ったりした場合、脅迫罪にあたります。
脅迫罪の法定刑は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金です。
器物損壊罪(刑法261条)
他人の物(「物」には生き物であるペットも含まれます)をわざと損壊したり傷害した場合、器物損壊罪にあたります。
器物損壊罪は親告罪(264条)なので、被害者からの告訴がなければ刑事事件として捜査されることはありません。
器物損壊罪の法定刑は、3年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料です。
器物損壊罪の詳細については、こちらのサイトをご覧ください。
不同意性交等罪(刑法177条)、不同意わいせつ罪(刑法176条)
相手の同意なく性交をした場合は不同意性交等罪、相手の同意なくわいせつな行為をした場合は不同意わいせつ罪にあたります。
なお、両罪とも「婚姻関係の有無にかかわらず」と規定されていますので、婚姻関係にあることを理由に刑事訴追されなかったり刑が減軽されることはありません。
不同意性交等罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑、不同意わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の拘禁刑です。
DV防止法違反
「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」(DV防止法)に基づき裁判所から発せられた保護命令に違反した場合、保護命令違反の罪で2年以下の懲役又は200万円以下の罰金に処せられます(DV防止法29条)。
DV防止法については、男女共同参画局(内閣府)のホームページをご参照ください。
参考サイト:配偶者からの暴力被害者支援情報|男女共同参画局 |
DVで逮捕された場合の流れ
DVで逮捕されたとしても、「傷害罪」や「暴行罪」などの具体的な刑法犯罪として捜査が開始され逮捕されているため、警察や検察、裁判所での対応は他の犯罪と同じです。
逮捕されると、警察署の中にある留置場に入れられます。
逮捕から48時間、警察からの取り調べを受けることになります。
48時間取り調べた結果、さらに身柄を拘束して取り調べを続ける必要があると警察が判断した場合は、検察に送致されます。
送致されると、被疑者(事件で犯人だと疑われている人を「被疑者」と呼びます)は警察車両に乗せられて検察庁に行き検察官と面談を行います。
検察官は、被疑者との面談や警察から渡された捜査資料から、さらに10日間の勾留が必要か否かを判断し、必要だと判断した場合は裁判官に対して勾留請求がされます。
逮捕から、勾留請求までは72時間以内に行わなければならないと法律で決められています。
ここまで3日間身柄を拘束されており、勾留されることが決まると、警察署の留置場でさらに10日間過ごすことになります。
この10日間の間に警察官や検察官からの取り調べを受けることになり、勾留期間は検察官が請求することによって最大で10日間延長することができます。
勾留期間はどのくらい?
勾留請求が認められると、勾留請求の時から10日間被疑者の身柄を拘束した状態で捜査が継続されます。
そして、この勾留期間は最大で10日間延長をすることができます。
よって、最大で20日間拘束されることになります。
また、起訴されることが決定した後や裁判で判決が出るまでの間勾留が継続されることとなりますが、起訴されることが決定した後は、保釈の請求をし認められた場合、保釈金を納めることによって身柄が解放されます。
勾留期間についての詳細は、こちらをご参照ください。
DVで逮捕されたら弁護士に相談を!メリットを4つ紹介
DVは近しい間柄で起こる犯罪であるため、早期釈放や刑事罰の減軽を目指すためにどのようなことを実施してそれをアピールすれば良いか、弁護士の専門知識を用いることによって事件の成り行きが大きく変わる可能性があります。
刑事事件の被疑者として逮捕されると刻々と長期間にわたり身体拘束をされる可能性が高くなってしまうので早い段階で弁護士に相談すると良いと思います。
メリット①刑事事件として取り上げられることの防止が期待できる
逮捕される前であっても弁護士が介入するメリットがあります。
早い段階で弁護士に依頼し、謝罪や今後の対応についてきちんと話合いをする場を設ける等の対応をすることによって警察の介入を防ぐことが期待できます。
刑事事件として捜査が開始されると、逮捕や長期間にわたる勾留をされる危険性が高まり、起訴されて裁判で有罪になると前科がつくことになります。
また、逮捕・勾留されることによって長期間仕事を休むことになり、これによって会社をクビになる可能性も高まります。
メリット②早期の釈放を期待できる
被害者にあたる配偶者やパートナーと示談をすることによって早期釈放が期待できます。
弁護士は、被害届を取り下げる旨の条項、加害者を許す旨の条項など、必要な文言を含む示談書を作成できるように交渉を行います。
すでに刑事告訴されている場合は、告訴取消書の作成をしていただけるように交渉します。
基本的に公訴の提起がされた後は取り消すことができませんので、素早く対応する必要があります。
また、釈放後すぐに同居を再開することが難しい場合などは、必要に応じて別居措置を講ずる等の対応をすることもできます。
メリット③不起訴処分の獲得を期待できる
被害者と示談が成立した事実は、不起訴処分(刑事裁判をしないとの判断)の獲得に有利に働きます。
不起訴処分になると前科がつきません。
また、被害者(配偶者やパートナー)もここまで事案が大きく扱われると想像していなかった、というケースもあります。
逮捕・勾留されることにより仕事を失うリスクや、前科がついてしまう可能性が生じたことによって、被害者の生活に悪影響が及ぶことも多いと考えられます。
このような場合、被害者も起訴(刑事裁判をして処罰を求めること)まで望んでいないことが少なくありません。
弁護士は、被害者と加害者双方の言い分を聞いた上で、検察官に対して不起訴処分とすることが妥当であると主張することになります。
メリット④刑を軽くすることを期待できる
逮捕・勾留を経て起訴されてしまった場合でも、適切な弁護活動を行うことにより罰金刑や執行猶予付き判決など比較的軽い刑になることを期待できます。
また、被害者の怪我の程度にもよりますが、初犯であれば執行猶予付きの判決を得られる可能性もあります。
DVは繰り返されることが多い犯罪の一つといえます。
暴力行為をやめたいと考えているのに止められないと苦しむ方のための加害者更生プログラムに参加するなど、繰り返し暴力を振るうことを防止するための努力をすることは、裁判上も刑を軽くする方向に働く事情として考慮されることになります。
よくあるご質問
ここでは、DVを原因として逮捕されてしまった場合によくいただく質問にお答えします。
離婚率が高くなる?DVで逮捕される影響は?
離婚したいと考えた場合、両者が離婚に同意すれば離婚に向けて具体的な話を進めることができます。
しかし、一方が離婚に同意しない場合は、離婚したい側がまず調停(裁判所での話し合い手続き)を申し立て、調停でも離婚が成立しなかった場合は訴訟を提起して離婚するとの判決を得ることが必要になります。
離婚の訴えを提起する(離婚するための裁判を起こす)ためには、民法に書かれた離婚事由を備える必要があります。
DVがあることを理由として離婚の裁判を提起する場合は「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)に該当すると主張し、それを証明する証拠を裁判所に提出することになります。
被害者となった配偶者の側から離婚を求められ、話し合いや調停で離婚が決まらず裁判になった場合、被害者側は、DVがあった事実をもって「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当すると主張してきます。
DVで逮捕されたという事実はDVが行われた証拠となり、これによって裁判において離婚が認められる可能性が高くなるといえます。
要注意!DV防止法の保護命令とは?
DV防止法(正式名称は「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律」)において「暴力」とは、配偶者からの身体に対する暴力や、これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動のことを指すと定義されています。
「配偶者」には、法律的な婚姻関係にある者、婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者(DV防止法1条3項)、及び生活の本拠を共にする交際関係にある者(DV防止法28条の2)、またこれらの関係が終わった場合も含まれます。これに対して、一時的な同棲関係はDV防止法の対象外となります。
なお、保護の対象となる「配偶者」は、性別を問いません。
DV防止法は、「配偶者からの暴力を受けた者」を被害者と定義し、保護の対象としています(DV防止法1条2項)。
保護命令の内容は、以下のとおりです(DV防止法10条)。
被害者からの申し立てにより、裁判所から①接近禁止命令、②退去命令が発令されます。③から⑤は①に付随する命令です。
- 接近禁止命令(DV防止法10条1項)
- 退去命令(DV防止法10条の2)
- 電話・電子メール等の禁止命令(DV防止法10条2項)
- 子どもに対する接近禁止命令(DV防止法10条3項)
- 被害者の親族等に対する接近禁止命令(DV防止法10条4項)
これらの命令に違反する行為をした場合、DV防止法違反として罰せられることになります。
保護命令について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
参考サイト:配偶者からの暴力被害者支援情報|男女共同参画局 |
DVで初犯の場合は?前科はつくの?
逮捕・勾留された後、検察が裁判所に対して刑事事件として裁判をするように求める処分を「起訴」といいます。
刑事裁判が行われ有罪判決になると、前科がつきます。
日本の刑事裁判で有罪となる確率は99%を超えるため、起訴されないこと(不起訴処分となること)が重要になります。
DVが原因で逮捕されてしまった場合、まずは勾留されないように、勾留されてしまった場合には起訴されないように早急に対策を講ずる必要があります。
逮捕から勾留されるまで3日間、勾留は最長で20日間なので、それぞれこの短い制限時間内に、次の段階に進んでしまわないように示談書を作成する、再犯を防止する措置を講じその報告を行うなど有効な弁護活動を行うことが必要となります。
現状のDVの検挙率は?
配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律は、被害者からの申立てを受けて裁判所が加害者に対して発した被害者の身辺へのつきまといをすることなどを禁止する保護命令に違反する行為(保護命令違反行為)等に対して罰則を設けています。
DVで検挙される場合、この保護命令違反行為によるものと、刑法の罪に規定されている行為によるものが大半を占めます。
令和5年の犯罪白書によると、配偶者からの暴力事案等の検挙件数は、上記保護命令違反が46件、その他の法令(刑法等)によるものが8,535件でした。
配偶者暴力防止法に係る保護命令違反の検挙件数は、27年以降減少傾向にありますが、他法令による検挙件数8,535件は平成22年と比較すると約3.6倍になっています。
このうち、もっとも多いのが暴行罪5,096件、その次に多いのが傷害罪の2,519件であり、殺人罪は116件でした。
配偶者からの暴力事案等に関する相談等件数(令和4年)は、84,496件であり、被害者の性別の内訳を見ると、男性が22,714件(26.9%)、女性が61,782件(73.1%)でした。
参考サイト:男女共同参画白書 令和3年版|男女共同参画局 |
まとめ
DVで逮捕された場合、何の行動も起こさなければ逮捕後最長23日間身柄を拘束され、起訴されてしまう可能性があり、起訴されると99%を超える確率で前科がついてしまいます。
また、最大23日間にわたる身柄拘束をされたことによって仕事を失ってしまう可能性も高くなります。
そのような事態を避けるために、できるだけ早く弁護士に相談することが望ましいと思います。
- 得意分野
- 一般民事、刑事事件
- プロフィール
- 東京理科大学理学部 卒業
野村證券株式会社
成蹊大学法科大学院 修了