離婚理由・原因とは?法的に認められ理由、伝える際の注意点を徹底解説

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記事目次
「結婚は簡単、離婚は難しい」と言われることがあります。
子どものこと、お金のことなど、離婚の条件として決めなければいけないことがたくさんあります。さらには離婚の進め方、協議にするか調停にするかなども考えなければなりません。
ただ、離婚の条件や離婚の方法を決める段階に入るには、そもそも離婚が認められることが前提です。
ここでは、離婚を考える上で最初に考える必要があるもの、つまりどういった場合に離婚が認められるか、離婚理由(離婚原因)について説明していきます。
離婚理由・原因が何が一番多い?
まず、離婚原因としてどのようなものが多いのでしょうか。毎年裁判所が、全国の家庭裁判所の統計を発表しています。令和5年司法統計年報「3 家事編」第19表によれば、以下のようにまとめられます(申立人の言う動機のうち主なもの3つをカウント。%は小数点第2位を四捨五入。「その他」「不詳」は除く)。
順位 | 夫 | 妻 |
1 | 性格が合わない(59.9%) | 性格が合わない(38.0%) |
2 | 精神的に虐待する(21.4%) | 生活費を渡さない(29.0%) |
3 | 異性関係(12.0%) | 精神的に虐待する(26.1%) |
4 | 浪費する(11.5%) | 暴力を振るう(18.5%) |
5 | 家族親族と折り合いが悪い(11.0%) | 異性関係(12.9%) |
6 | 性的不調和(10.5%) | 浪費する(8.5%) |
7 | 同居に応じない(8.8%) | 性的不調和(6.3%) |
8 | 暴力を振るう(8.7%) | 家庭を捨てて省みない(6.0%) |
9 | 生活費を渡さない(4.9%) | 酒を飲み過ぎる(5.7%) |
10 | 家庭を捨てて省みない(4.7%) | 家族親族と折り合いが悪い(5.6%) |
これは家庭裁判所に係属した事件の統計で、裁判所を通さない協議離婚は含まれていません。協議離婚が全体の約9割を占めていることを考えると、上記の表は傾向を完全に捉えているわけではないですが、大まかな傾向は分かります。夫婦共に性格の不一致が多く、夫は家族親族との折り合いを挙げることが妻の倍になっています。妻は夫と比べて生活費や暴力の問題を挙げていることが多くなっています。
理由によっては離婚できない場合もある?
夫婦双方が離婚に同意すれば、離婚原因がなくても離婚できます。他方で、どちらかが離婚を望まない場合、最終的には裁判所が離婚を認めるかどうかを決めることになります。
実務上、裁判所は民法770条1項に挙げられている事由(後で詳しく説明します)をみつつ、最後は様々な事情を総合的に考慮して判断しています(770条2項参照)。離婚したくない人を強制的に離婚させてしまうわけですから、相応な理由が必要なのです。
したがって、例えば不仲の程度が大きくはなく別居期間も短いといった場合など、離婚したい理由によっては離婚できないときもあります。
離婚が認められる法定離婚自由とは?
先ほど述べたとおり、民法上離婚が認められ得る事由がいくつか定められています(770条1項)。これらを法定離婚事由と呼んでいます。
それぞれ説明していきます。
不貞行為
法定離婚事由として最初に掲げられているのは、「配偶者に不貞な行為があったとき」です(770条1項1号)。
「不貞行為」というのはなかなか定義が難しいですが、要は肉体関係があった場合と理解いただくとよいでしょう。
逆に言えば、肉体関係までは行っていないケース、例えばキスをしたりハグをしたりといったケースでは、不貞行為ではないということになります。
ただ、もちろん、配偶者がキスやハグをしていたら、夫婦としてもうやっていけないとお考えになることもあるでしょう。そういった場合は、後に説明しますが、その他の事情とあいまって離婚原因になることもあります。
もう少し接触が少ないケース、例えば異性と食事に行っていたケースなどでは、肉体関係と比べると差がありますから、単独では離婚原因になりにくくなります。キスやハグよりは、その他の事情としてより破綻を推測させるような強い事情が必要になることが多いです。
悪意の遺棄
次に法定離婚事由として掲げられているのは、「配偶者から悪意で遺棄されたとき」です(770条1項2号)。
「悪意」、つまりは正当な理由がないのに、同居をしなかったり生活費を支払わなかったりする場合がこれに当たります。
典型的なケースとしては、家を出て浮気相手の家に住むケースです。逆に、DVやモラハラから逃げる行為は、通常悪意の遺棄には当たりません。
同居を続けていても生活費を渡さないようなケースも、悪意の遺棄に当たる場合があります。
3年以上の生死不明
「配偶者の生死が三年以上明らかでないとき」も、法定離婚事由です(770条1項3号)。
「生死が不明」な場合ですので、生きてはいるがどこにいるか分からないケースは、生死不明には当たりません。先に述べた悪意の遺棄や、後に述べる「継続し難い重大な事由」の一事情として主張することになります。
実務上、生死不明を主張するケースは少ないですが、他の離婚原因とは裁判上の手続が少し異なることには注意が必要です。離婚の場合、まとまらないと分かっていても先に調停を行うのが原則ですが、生死不明であればいきなり訴訟をすることが一般です。
強度の精神病
「配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき」も、法定離婚事由とされています(770条1項4号)。
夫婦は助け合う必要がありますから、一方が病気になったとしてもすぐに見捨てることはできないはずです。したがって、強度の精神病の解釈についても、実務上簡単には認められていない印象です。
「強度の精神病」のうち典型的なものは統合失調症です。認知症は単独の離婚原因としては認められないことがあります。
「回復の見込み」についても、一般的な「完治不能」より狭く、その世話によって夫婦生活がままならなくなるといった要素も加味されることが多い。
婚姻を継続し難い重大な事由
ここまでみてきて、みなさんは気付くかもしれません。
離婚原因第1位の「性格が合わない」(性格の不一致)がどの離婚原因にも当てはまらないことにです。また、DVやモラハラ、親族との不和といったよくありそうなものも、しっくりと当てはまりません。
実務上、こういった様々な事情については、総合的に考慮して「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」といえるかどうかで判断しています(民法770条1項5号)。上位にあった離婚原因からいくつかご説明します。
・性格が合わない(性格の不一致)
離婚原因で最も多かった「性格の不一致」も、一事情として考慮されます。ただ、どの夫婦にも多かれ少なかれ性格の不一致はあるわけで、生活の不一致だけを主張していくことは相手が離婚に同意している場合などに限られそうです。逆に相手が離婚に反対している場合は、性格の不一致だけでなく、精神的虐待(モラハラ)なども一緒に主張することが多いです。
・精神的虐待、暴力
精神的虐待(モラハラ)や暴力(DV)も、婚姻を継続し難い重大な事由の一事情です。男性からの暴力だけでなく、女性からの暴力の相談を受けることもあります。
最近ではモラハラに関するご相談が増えています。モラハラについては注意点も多いですので、後ほど詳しく説明します。
・生活費を渡さない、浪費
お金を渡さないのも、近年「経済的DV」と呼ばれ、離婚原因の一事情として主張されます。経済的DVまで行っているケースでは、他にも問題が生じていることが多く、正確の不一致や別居などと一緒に主張されることが多いです。
・親族との不仲
親族との不仲もよく主張されてきましたが、近年はご相談の中では減ってきた印象です。親族関係が若い世代を中心に希薄になっていて、夫婦間でも親族との不仲が気になりにくくなったということだろうと思います。ただ、親族との不仲が問題になる場合は親権なども複合的に問題になることが多く、根が深いことが多いです。
・性的不調和
長年性交渉がない、逆に性交渉を強制されるといったご相談は多いです。性格の不一致などと一緒に主張することが多いです。
離婚理由によっては慰謝料を請求することも可能
以上のとおり、離婚原因は多様なものがあります。どれも、配偶者に対して「やっていけない」と思わせるような事情であり、さらに「辛い」と思わせるような場合もあります。
この「辛い」というのを法的に評価するのが慰謝料で、離婚の理由や程度によっては、離婚原因に留まらず、慰謝料の根拠にもなります。
例えば、不貞関係、DVなどは、特に慰謝料の対象になりやすいといえます。
逆に、性格の不一致などは、慰謝料の対象までにはならないことが多いです。
難しいのがモラハラで、後ほど詳しく説明します。
離婚理由を伝える際の注意点
離婚をするには、配偶者に離婚したい、離婚理由があると伝える必要が出てきます。ただ、いくつか注意点があります。
・立ち会うのは当事者のみで良いか
感情的になる、時には暴力を振るわれるおそれがあるなどの理由で、当事者のみの話合いでは危険あるいは不適切な場合があります。
親族(親や兄弟など)に立ち会ってもらうことも多いですが、弁護士を通じて伝えることで、窓口を弁護士にでき、その後のやりとりから解放されることにも繋がります。
・伝え方はどうするか
面と向かってにするのか、手紙にするのかなどは、さらにこじれるリスクがあり、いつも気を遣うところです。配偶者のキャラクターをよく考え、方法を検討していきます。
・子どもがいる場が良いか
子どもを夫婦の紛争に巻き込むのは、親権者として不適切と評価されかねず、子どもの前で離婚を切り出すのは避けた方が良い場合が多いです。
子供に離婚を説明する際の注意点
それでは、子どもの前で離婚を切り出すべきではないとしたら、子どもにどう離婚を説明すれば良いでしょうか。
まず頭に入れなければならないのは、離婚はあくまで夫婦の問題であるということです。ところが子どもは、(特に小さければ小さいほど)お父さんお母さんの不仲は自分のせいだ、自分がうまく振る舞えば仲が良くなる、と考えてしまいがちです。子どもに責任がなく、離婚になっても子どもに対する愛情は変わらないことを、はっきりと伝えた方が良いでしょう。
その上で、子どもにとってみればお父さんはあくまでお父さんであり、お母さんはお母さんです。配偶者の話をするときについ感情的になり悪口を言ってしまいがちですが、子どもの生育に悪影響を与えかねません。配偶者のことは話すとしたら、あくまで事実を伝え、悪口は言わない方が良いでしょう。ちなみに、親権者の指定を考える際にも、子どもに配偶者の悪口を言っていないことが評価されます。
離婚理由に関するよくある質問
以上、離婚の理由について説明してきました。大まかなことはご理解できたと思います。
これからさらに、法律相談の中でよく質問されるものについて、お答えしていきたいと思います。
Q1. 離婚の理由がはっきりせず、強いて言えば性格の不一致だけなのですが、離婚できますか?
離婚は双方の合意があればできますので、まずは粘り強く離婚に向けて話し合います。合意ができれば、性格の不一致だけでも離婚できます。
相手がどうしても離婚したくない場合は、その他の事情(精神的虐待、性的不調和など)がないかを再度検討してみます。場合によっては協議や調停を通じて、離婚条件を譲歩すること(財産分与の取り分を少なくするなど)で、離婚に同意してもらうことも考えられます。
離婚がどうしても難しい場合は、一度別居し、双方相手を客観的に見つめる機会を作ってみることもあります。
Q2. 配偶者から厳しいことを毎日言われているのですが、モラハラですか?
モラハラという明確な法律上の定義はありません。「これはモラハラかも」とお考えになる必要はあまりなく、「これは耐えられない」と思われる言動が離婚原因になります。
したがいまして、モラハラかどうかはあまりお気になさらず、これは無理だと思ったことを中心に、何をされたか、言われたかを記録に留めていただければと思います。
離婚を多く扱う弁護士は、モラハラといった表現はあまり多用せず、その具体的な事実を大切にします。
何をされたかは日々の生活で混ざってしまいますから、日記に書いておくなどすると良いでしょう。
Q3. モラハラで慰謝料まで取れますか?
これもよくあるご質問ですが、「慰謝料までは取れないことが多い」とお考えください。
裁判所は、全般的に慰謝料を厳しく判断する傾向にあります。不貞慰謝料に関する最高裁判所の判断が出されてからは、さらに厳しくなっている印象です。
モラハラは、当事者の苦痛の大きさに比べて、行為を立証するのが難しかったり、損害(心の傷など)を立証するのが難しかったりして、なかなか裁判所が正面から慰謝料の対象と認めてくれません(不貞などその他の事情と併せて考慮して金額を決めたと記載される程度)。
また、調停では、そもそも合意がなければ取れませんので、慰謝料は財産分与に少し上乗せするなどの調整材料として使われることも多いです。
以上のとおり、モラハラに対する裁判所の見方は厳しいものがありますが、裁判所に丹念に伝え、離婚原因の一事情だけでなく親権や和解金の上乗せに繋げていくことは重要です。
Q4. どのくらい別居すれば離婚できますか?
非常に難しい質問です。最終的にはケースバイケースとなりますが、目安としては以下のようになるでしょう。
・離婚に合意している場合、不貞やDVなどの強い離婚原因がある場合
別居期間がいらない、あるいはほとんどいらない類型です。実は多くの相談事例で、別居期間は1年未満です。
離婚に合意してくれることが見込まれる場合には、婚姻費用の兼ね合いもあって別居後すぐに離婚調停を申し立てることがあります。
DVにより警察の指示で別居した場合、シェルターに入った場合なども、直ちに離婚調停(場合によっては離婚訴訟)を申し立てることを検討します。
・性格の不一致など、離婚原因としては弱い場合
3年くらい、長めに5年くらいは様子をみることが多いです。離婚の原因は何か、その程度はどうか、婚姻期間は長いか、子どもはいるか、小さい子はいるか、双方の収入はどうかなど、様々な事情を考慮して決まっていきますので、この幅より短くなったり長くなったりします。
また、裁判官によって家族観や夫婦観が異なり、他の法分野よりも裁判官の個性が出やすい場面であるともいえます。
上記期間はあくまで目安とお考えいただければと思います。
・こちらに原因がある場合
5年以上かかることも多く、時に10年以上かかる場合があります。有責の度合いや子どもの有無などによって増減します。
・近年は短縮傾向
近年は、夫婦が破たんしているという事実を重視し、比較的早く離婚を認める判断もみられるようになってきました。
したがって、別居期間が短い場合であっても、諦めず離婚原因などを具体的に立証していく試みを行うことも増えてきました。
Q5. 離婚の話合いと別居はどちらを先にすればよいでしょうか?
相手の性格や状況次第です。
一般に、別居前に話し合うことが多いと思いますが、相手が感情的になりそうなとき、暴力を振るいそうなときは、先に別居することもあるでしょう。
また、離婚を切り出すことで財産を隠されるといった不安もあります。相手の財産状況(預貯金であればどの金融機関にあるか、生命保険であればどの保険会社と契約しているかなど)をある程度把握してから離婚を切り出すことも重要です。
なお、急に別居する場合には無用な混乱を防ぐため、置き手紙を用意しておくことも考えられます。
Q6. こちらに離婚の原因がある場合でも、離婚できますか?
離婚の合意ができれば離婚できますが、相手が離婚に応じない場合は、原則として離婚できません。ただし、別居が長期間になり、お子さんが大きくなり、相手を過度に追い詰めないなどの条件が揃うと、離婚が認められる場合が出てきます。
同居期間は、先に述べたとおり5年では短いことが多く、場合によっては10年以上必要な場合もあります。
実務的には、離婚条件を大きく譲歩する、解決金を上乗せするなどして離婚に応じてもらうようにすることが多いです。
まとめ
以上のとおり、離婚原因について、法定離婚事由を中心に説明してきました。
最終的には様々な事情を総合的に考慮しますし、離婚条件を譲歩することで離婚の合意を得ようとすることもありますから、単純に離婚事由に当てはめていくだけではうまく行かないことが多いです。
東京スタートアップ法律事務所は離婚事件を数多く取り扱っていますので、お気軽にご相談いただければと思います。
- 得意分野
- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設