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更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

離婚前に別居するメリット・デメリットと別居する際の注意点を解説

離婚前に別居するメリット・デメリットと別居する際の注意点を解説
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離婚を考え出したとき、一刻も早く別居したい!と思う方も多いのではないでしょうか。

しかし、何の準備もせずに別居してしまうと、その後、配偶者と離婚の話合いをするにしても、困ったことになってしまうかもしれません。

できる限りスムーズに離婚の話合いを進めるためにも、離婚前に別居することのメリット・デメリットや、いざ別居すると決めたときに気を付けるべきことをご説明します。

離婚前に別居する意味と重要性

離婚前に別居する意味は、大きく分けて2つあります。

1つ目は、裁判所で離婚が認められるための大切な要素となるということです。

夫婦で離婚について同意ができない場合、離婚するためには民法上の離婚事由が必要となります。そして、別居の事実は、夫婦関係が破綻していて、法定の離婚事由に該当すると裁判所が判断するのに大切な要素となるのです。

2つ目は、財産分与の基準時となるということです。

財産分与とは、婚姻期間中に夫婦で協力して築き上げた財産を分け合うことです。したがって、別居後に各自が得た財産というのは、夫婦で協力して得たものではないということから、基本的に財産分与の対象外となるのです。

 

別居が離婚の有効な証拠になるケース

民法770条で定められている離婚事由は5つあり、不貞行為などは誰からも分かり易いのですが、そのうちの1つに「その他婚姻を継続し難い重大な事由」というものがあります。読んでも分かる通り、抽象的でどういった場合に該当するのか分かりにくいのではないでしょうか。この条項は、他の4つの事由には該当しないけれども離婚したいときに、幅広く該当する余地がある、いわば、離婚を認めてもらうための最後の砦となっています。

では、具体的にどういったときに「婚姻を継続し難い重大な事由」があるといえるのかというと、夫婦関係の破綻がカギとなります。民法上、夫婦には同居義務があるとされており、また、一般的にも、単身赴任などを除き円満な夫婦は同居していることが多いです。したがって、別居する特別な事情がないにもかかわらず別居をしているという事実は、夫婦関係が破綻していると裁判所が判断するための重要な要素となるのです。

精神的・身体的な安全を確保するための別居

上でも述べた通り、離婚前の別居は、夫婦間で離婚に同意できない場合に、裁判所において離婚を認めてもらうための重要な要素となりますが、離婚するための必須の条件というわけではありません。

しかし、離婚前に積極的に別居すべき場合もあります。それは、配偶者からDVやモラハラを受けている場合です。配偶者からDVやモラハラを受けている場合、同居しながら冷静に離婚の話合いをするのは非常に困難な可能性が高いといえます。最悪の場合、自分(と時には子ども)の生命・身体に危険が及ぶ可能性もあります。別居することによって、身の安全を確保できるとともに、自分自身の考えを冷静に整理することもできますし、自分のタイミングで離婚の話合いを切り出すこともできます。したがって、身体的にも精神的にも離婚の話合いをするのにより良い環境を整えるために、離婚前に別居をすべきであるといえます。

 

冷却期間としての別居は関係修復にも役立つ

離婚前に別居したからといって、離婚に直結するわけではありません。

まず、別居することによって自分自身の考えを整理することができます。また、それだけでなく、相手にも夫婦関係を見つめ直してもらう機会になり得ます。日常生活から配偶者がいなくなることによって、普段の生活で相手が担ってくれていた役割を再認識することができ、その大変さ、大切さを身をもって理解することにも繋がります。

このように、別居することが夫婦の関係を修復することに役立つこともあるのです。

別居と離婚の法的な違い

別居と離婚は、法的に全く異なります。

別居の場合は、

 ・婚姻関係は継続している

 ・夫婦間の扶養義務があるため、婚姻費用分担義務がある

状態となります。

一方、離婚した場合は、

 ・婚姻関係が終了する

 ・夫婦間の扶養義務は消滅する(ただし子の扶養義務は残る)

こととなりますので、基本的に離婚後の生活費を請求することはできません。(子どもの養育費は別です。)

「別居」とはどのような状態を指すのか?

別居とは、夫婦の共同生活の実態がない状態、夫婦が別々の拠点で生活をすることをいいます。(ここでいう「別居」は、単身赴任や、子どもの進学のための別居など、夫婦間で合意できている場合の別居は含まれません。)つまり、基本的に一緒の家で生活している場合は別居にはなりません。

しかし、「うちは家庭内別居状態で・・」などということを聞くことは意外と多いです。 

では、家庭内別居とは一体どういう状態かというと、同じ拠点で夫婦が各自で別々に生活していて共同生活を行っていない状態のことです。つまり、住所が一緒なだけで、別居しているのと変わらない状態を家庭内別居といいます。ただし、「家庭内別居状態である」と裁判所で認められるのは意外と難しく、自宅内で配偶者と口を利かない、一緒に食事をしない、寝室は別などだけでは、家庭内別居とは認められない可能性が高いです。

 

別居期間が離婚裁判に与える影響

別居の事実は、夫婦関係が破綻していると判断されるための重要な要素となることは、上で述べた通りです。実際にどの程度別居が続けば夫婦関係が破綻していると考えられるのかというのは、個別の事情によって変わりますので一概に目安というものは示し難いのが実情ですが、あえて示すとすると、5年前後は必要なケースが多いといえます。

もっとも、裁判所は、ただ単に別居が継続していることだけで夫婦関係の破綻を判断するものではありません。婚姻期間がどのくらいで別居期間がどのくらいなのか、未成熟子がいるのであれば、離婚した後に子が健やかに成長していく環境を整えることができるか、離婚を求めている側に不貞行為などの有責事由はないか、などといったさまざまな事情を考慮して判断されますので、別居をするにしても、家族と真摯に向き合うことが重要です。

別居中でも続く夫婦の法的権利と義務

民法752条では「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定められています。婚姻関係は継続しているため、別居したからといって同居義務、扶養義務がなくなるわけではありません。また、夫婦はお互いに配偶者以外と肉体関係を持たない、つまり、貞操義務も負っており、これも別居したからといってなくなるわけではありません。

このように、夫婦である以上お互いに扶養義務を負っているため、逆に言えば、収入が少ない方の配偶者は、相手に対し婚姻費用(生活費)を支払うよう請求することができます。

別居するメリット

別居することのメリットとしては、以下のようなことが挙げられます。

・お互いに夫婦関係を見つめ直す機会になる

・同居のストレスから解放される

・固い離婚の意思を相手に伝えられる

・離婚したい側にとっては、別居を継続していくことで、夫婦関係が破綻していると裁判所に認められやすくなり、離婚訴訟で離婚できる可能性が上がる

・DVやモラハラなどから逃れられ、安全を確保できる

精神的ストレスからの解放

DVやモラハラを受けているわけではなくとも、夫婦仲が良くない状態で同居を続けていると、どうしてもお互いに精神的ストレスが積み重なってしまいます。そして、夫婦喧嘩を繰り返したり、夫婦間のコミュニケーションが明らかに不足しているような場合、知らず知らずのうちに、子どもにも精神的ストレスをかけてしまっていることもあります。

このように、夫婦仲が良くないものの直ぐに離婚を決断するのは難しい、しかし、このまま一緒に生活していくことも難しい、といった場合、一度別居してみることが、二人とも冷静になってこれまでの生活を見つめ直し、関係を修復するために歩み寄ることに繋がるかもしれません。

冷静な判断ができる環境の確保

離婚の話を相手にしようと思うと、なぜ自分が離婚したいと思っているのか、相手の何に不満があるのか、といったことを冷静に伝えることができるか、話せたとしても反論されて結局丸め込まれてしまわないだろうか、などと不安になる方も多いのではないでしょうか。

そういった不安があるときには、別居という手段を取って物理的に距離をおくことによって、自分の考えを整理し、時には手紙に自分の気持ちを書いて送ることによって、一時の感情で離婚を切り出しているのではないことを相手に伝えることもできるでしょう。また、一人で自分の気持ちと向き合う時間も持てますので、冷静な判断をするための環境を確保できるともいえます。

財産分与や親権問題の準備期間になる

別居期間を離婚後の生活を整える準備期間にしましょう。

まず、離婚後の住居の確保です。緊急性がある場合を除き、家を飛び出してホテル暮らしをするのは賢明ではありません。子どもも一緒の場合は特に、突然環境が変わってしまうことになりますので、出来る限り子どもも安心できるような場所を探しておくべきでしょう。

また、例えば専業主婦(夫)の方やパートとして働いている方は、職探しも行っておくべきです。婚姻費用を請求できたとしても、相手が直ぐに支払ってくれるとも限りませんし、離婚後は自身の収入で生活することとなりますので、安定した収入を得られるようにしておくべきです。子どもがいるときも、問題なく子どもの養育できると主張し、親権を確保することにも繋がります。

また、別居前に夫婦の共有財産に関する資料を確認しておくことによって、財産分与のときにどのような財産があったか分からない、といった事態を防ぐことができます。

 

離婚調停や裁判で有利な証拠になりうる

夫婦間で離婚に合意できない場合は、離婚調停を申立てることとなります。離婚調停では、調停委員会が間に入り、双方の考えを冷静に伝え、色々な解決策を提案したり、時に相手を説得してくれることもあります。調停委員会は、別居の事実も踏まえて仲裁してくれるので、明確に夫婦関係が破綻しているとはいえなさそうであっても、別居に至った理由等を聞き、その内容に正当性があれば、相手を説得してくれることもあるかもしれません。

そして、離婚調停が不成立で終わってしまった場合は、離婚したい側は最終的には離婚訴訟を起こすこととなります。その際には、法定の離婚事由があるかどうかが、請求が認められるかの分かれ目となるので、「婚姻を継続し難い重大な事由」があると主張する場合には、別居が継続しているという事実が、夫婦関係破綻を示す事情の一つとして主張してできることとなります。

別居するデメリット

別居することには、以下のようなデメリットもあります。

・相手と話し合うこともせず勝手に別居に踏み切った場合、法定の離婚事由の一つである「悪意の遺棄」に該当する可能性がある

・子どもを置いて出て行くときは、親権争いで不利になる可能性がある

・相手が婚姻費用を直ぐに支払ってくれず、経済的に苦しくなる可能性がある

・共有財産の確認をしておかないと、財産分与のときにどのような財産があったか分からなくなり、財産を隠されてしまう可能性がある

・相手の有責行為(不貞行為など)の証拠を集めるのが難しくなる

・修復が難しくなる可能性がある

経済的負担が増加するリスク

別居することになると経済的負担は増えます。家を借りる場合には、敷金・礼金や最低限の家具家電を揃える費用など、初期費用も大きな負担となります。別居でかかる費用は、相手が全額支払ってくれるわけではありません。婚姻費用分担義務があるものの、相手が任意に支払ってくれない場合は、夫婦双方の収入、子の年齢、人数などを考慮し、裁判所が公表している婚姻費用算定表を基準に決めることとなります。したがって、負担を少しでも減らすため、実家に頼れるのであれば頼ることや、初期費用のかからないマンスリーマンションを借りることなどを検討するのも良いでしょう。

では、支払義務のある配偶者は、どのくらい支払うこととなるのかというと、夫婦によって大きく異なりますが、統計上、調停において婚姻費用を支払うこととなった事件では、6万円~15万円を支払うこととなったものが全体の6割を占めています(参照:「令和5年度司法統計年報」)。

「悪意の遺棄」と判断されるケース

夫婦には、同居義務、協力義務、扶助義務があります(民法752条)。したがって、正当な理由なく、これらの義務を履行しない場合には、「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)という法定離婚事由の1つに該当してしまう可能性があります。「悪意の遺棄」とは、正当な理由なく上記のような夫婦間の義務を履行しないことをいいます。

例えば、相手に何ら落ち度はないのに自身の身勝手な理由から別居した場合、話合いができる状況にもかかわらず、一方的に別居を開始し、別居中に修復に向けた話合いを持ち掛けられても拒絶し続けた場合、別居については同意を得たものの、その後相手に対し婚姻費用を全く支払わなかった場合などには、「悪意の遺棄」と判断されてしまう可能性があります。このように、「悪意の遺棄」に該当するかどうかは、別居に至った経緯や理由だけでなく、別居後の言動も考慮して判断されます。

子どもとの関係性が希薄化する可能性

別居する夫婦に子どもがいる場合、当然ながらどちらか一方の親とは別で暮らすこととなります。物理的に距離ができてしまうため、子どもと離れて暮らすこととなった親は、これまでどおり子どもと接することは難しくなるでしょう。

そこで、子どもとの関係を希薄化させないために、自身で監護することは現実的に難しい場合は、子どもと会わせて欲しい(面会交流)と相手に求めましょう。同居時に子どもを虐待していた、などの理由がなく、子どもを連れて行った配偶者の気持ちだけで面会交流を拒否することはできません。それでも、相手が拒否してきた場合には、裁判所に子の監護に関する処分(面会交流)調停を申立てましょう。

相手方の浮気や財産隠しが発生しやすくなる

別居してしまうと、配偶者の行動を把握することが難しくなってしまいます。そのため、仮に配偶者が浮気をしているようなそぶりがあった場合は、別居する前に証拠を収集しておくべきです。証拠を掴む前にいきなり別居の話を切り出した場合、相手も警戒して、証拠を隠滅してしまうかもしれません。DVやモラハラを受けている場合も、距離を取ってしまえば証拠を取ることは難しく、相手も証拠をないことをいいことにDVなどを否認する可能性もあります。したがって、身に危険が及ばない、できる範囲で同居中に証拠を収集しておいた方が良いでしょう。

また、別居後は夫婦の共有財産の資料となる預金通帳や相手の給与明細、源泉徴収票、確定申告書などの収入に関する資料を確認することも難しくなります。離婚時に財産分与の対象となる共有財産の確認もしておきましょう。

別居中の生活費はどうなる?

夫婦には扶助義務がありますので、別居中であっても夫婦である以上、生活費(婚姻費用)を分担し合う必要があります。したがって、別居したときは、基本的に収入の低い方の配偶者が相手に婚姻費用の分担を請求することとなります。

具体的には、

・夫婦間で生活費の分担について話し合う

・話合いがまとまらない場合は、裁判所に婚姻費用分担請求調停を申立てる

・調停がまとまらない場合は、自動的に審判へ移行する

といった流れで請求していくこととなります。

婚姻費用分担請求の方法と手続き

まずは夫婦で話合いをしましょう。夫婦間で合意ができれば、後から「支払うなんて言っていない」などと言われトラブルにならないよう、書面に残した方が安全です。更に念の入れるのであれば、強制執行認諾文言付の公正証書にしておくと、相手が途中で婚姻費用を支払わなくなった場合、公正証書を債務名義として、相手の給与等を差し押さえることが可能となります。また、婚姻費用は基本的に“請求したときから”しか支払ってもらえないため、いつ請求したかわかる形(内容証明郵便など)で早目に請求の意思表示をした方がよいでしょう。

話合いで合意できなかった場合は、裁判所に婚姻費用分担請求調停を申立てましょう。調停では、夫婦双方の収入、子の年齢、人数等を考慮しながら、婚姻費用算定表を参考に話合いをすることとなりますので、収入の分かる給与明細等が必要です。また、調停申立ての際には戸籍謄本も必要となりますので、事前に取得しておくとよいでしょう。申立書や必要書類などについては、裁判所のHPに書式や記載例などが載っていますので、申立の際には参考にしてみてください。調停がまとまらなければ、自動的に審判に移行し、裁判所が金額を決めてくれます。

収入や子どもの有無による婚姻費用の相場

婚姻費用を決める際、裁判所でも利用されているのが、裁判所が公表している婚姻費用算定表です。夫婦双方の収入や子どもの年齢、人数によって妥当な金額を簡易迅速に計算できるように作成されたものです。

算定表によると、例えば、

義務者年収:400万円

権利者年収:0円

子ども:1歳

8万円~10万円
義務者年収:800万円

権利者年収:600万円

子ども:なし

2万円~4万円
義務者年収:500万円

権利者年収:100万円

子ども:6歳、10歳、15歳

12万円~14万円

算定表は、あくまでも標準的な養育費を算定するためのものとなりますので、特別の事情(子どもに高額な医療費がかかる、私立の学校に通っているなど)があれば、増減することがあります。

また、婚姻費用を請求する側に別居原因(不貞行為など)がある場合など、婚姻費用の請求が認められないこともあります。(その場合でも、子どもに落ち度はないため、子どもの分は請求できると考えられます。)

婚姻費用が支払われない場合の対処法

婚姻費用が調停等の裁判手続きで決まったものの支払いがされない場合、履行勧告の申し出をすることができます。履行勧告の申し出の方式に決まりはなく、手数料も不要です。もっとも、調査の結果、裁判所から履行勧告がなされたとしても強制力はないため、限界があります。

上記同様の場合、履行命令の申立てをすることもできます。履行命令の申立ては申立書を裁判所に提出する必要があり、手数料もかかります。仮に、履行命令がなされたにもかかわらず義務者が義務を履行しない場合、10万円以下の過料に処せられることがありますので、制裁があることによって義務の履行が促される可能性があります。

直接的に回収する方法としては、強制執行があります。調停調書や審判書、強制執行認諾文言付公正証書などの債務名義がなければ申立てることはできませんが、強制執行の申立てによって、相手の財産(給与、預金債権、不動産など)を差し押さえることができます。

子供を連れて別居する場合の注意点

子どもを連れて別居をする場合、

・配偶者に何も説明せずに子どもを別居先に連れて行く(特に、一旦自分だけ別居を開始し、配偶者が監護していた子どもを別居先に連れて行く)場合、違法な連れ去りだと主張されてしまうおそれがある

・別居先によっては、転園・転校が必要になるなど子どもの環境を大きく変えてしまう可能性がある

・急に両親の片方と引き離されてしまうため、精神的に不安定になるおそれがある

などといったリスクがありますので、別居先の選定や子どもに対する別居の説明などには、慎重に配慮する必要があります。また、DVや虐待などの事情がない場合は、離れて暮らすもう一方の親と子どもの関係が良好でいられるよう、最大限努力すべきです

 

連れ去り・誘拐と判断されないための条件

別居する際に、子どもを連れて行きたい場合、まずは夫婦でどちらが子どもを監護するか話合いをすべきです。

監護すべき親が決まらないまま子どもを連れて別居を開始した場合、速やかに相手に子どもが元気であることを伝えた方がよいでしょう。また、同居中にDVや虐待があったような場合を除き、今後の夫婦関係のことや子どものことを話し合う機会を設けるためにも連絡は取れるようにしておくべきです。別居を決断するほどの配偶者とは顔も合わせたくないという方も多いかもしれませんが、子どもにとって親であることは変わらないため、子どものためにも、面会交流も積極的に行うよう努力すべきでしょう。

他方、別居後、相手が監護し、平穏に生活している子どもを勝手に別居先に連れて行く場合は、違法な連れ去りであると判断される可能性が高まります。したがって、別居後に子ども連れて行きたい場合には、裁判所に子の引渡しを求める審判、監護者指定の審判を申立て、同時に子の引渡しを求める審判前の保全処分、監護者指定の審判前の保全処分を申立てることを検討すべきです。

子どもの心理的負担を軽減する方法

別居することによって、否でも応でも子どもを取り巻く環境は変わってしまいます。片方の親と引っ越すこととなった場合には、住居そのものだけでなく、転居先によっては、転校を強いられる可能性もあります。このように、子どもの生活環境(学校や習い事など)をできる限り変えないよう、転居先は慎重に検討しましょう。

また、別居をきっかけに働き出す方も多いでしょう。そうなると、一緒に暮らす親が働く間、子どもが一人になる時間が増えてしまう可能性があります。学童を利用したり、実家の両親の手を借りるなど、出来る限り一人にしない方策を考えてみましょう。

そして、離れて暮らすこととなった親とも良好な関係を持ち続けられるよう、子どもの前で配偶者を悪く言ったりすることは控え、配偶者と子どもがスムーズに面会交流できるよう、配偶者にも協力しましょう。

面会交流をスムーズに進めるための工夫

別居中、面会交流スムーズに進めることができるよう、出来る限り別居前に面会交流のルールもある程度決め、書面に残しておきましょう。具体的には、①交流の頻度、②交流の方法(相手も立ち会うのかなども含め)、③1回の交流の時間、④連絡方法、⑤学校行事への参加の可否などは少なくとも事前に決めておいた方が良いでしょう。順調に面会交流をすることができることが分かれば、宿泊を伴う面会交流や、面会交流への祖父母の立ち会いについても協議して決めても良いでしょう。

何よりも、面会交流で子ども自身に無理をさせることがないよう、子どもの気持ちや体調等を第一に考え実施することを、夫婦で認識しておくことが重要です。

別居前にしておくべき準備

・住居の確保

・職探し

・子どもの養育環境を整える

・婚姻費用の請求

・相手に有責行為(不貞行為など)などがある場合は、その証拠を収集しておく

・共有財産、相手の収入の把握

・場合によっては、離婚届不受理申出書の提出

必要書類や貴重品のリストアップ

・現金

・スマートフォン

・預貯金通帳、キャッシュカード、銀行印

・印鑑(実印)

・身分証

・健康保険証

・年金手帳

・保険証券

・貴金属などの貴重品

・生活必需品(衣類や洗面道具、化粧品)

・常備薬

・共有財産や相手の収入の分かる資料の控え

・その他、相手に勝手に処分されたくない思い出の品

子どもを連れて行く場合には、上記に加え、

・母子手帳

・子どものお気に入りのおもちゃや本

・育児の必需品

・通園・通学に必要なもの

・勉強道具

など、子どもに必要なものも忘れないようにしましょう。

なお、相手名義のものや共有財産の持ち出しは紛争の元となりますので注意しましょう。

新生活のための資金計画の立て方

別居後の生活にどのくらいの生活費がかかるのか、試算してみましょう。まずは、転居を考えている地域の家賃相場等を調べるべきです。生活費の中でも大部分を占めることとなる住居費がどの程度になるのかは非常に重要です。そして、自分の年収と相手の年収、子どもの年齢・人数から、婚姻費用算定表でどの程度の婚姻費用を請求できるかを確認しましょう。婚姻費用だけでは生活費全てを賄うことは実際には難しいでしょうから、専業主婦(夫)だった場合などは、安定した収入を得られるよう、職探しも重要になってきます。

また、婚姻費用は基本的に“請求したときから”しか支払ってもらえないため、別居後すぐに請求できるよう、準備しておいた方がよいでしょう。

その他、同居中、相手が児童手当を受け取っていた場合でも、離婚を前提とした別居であれば、別居後は子どもと実際に同居している親が受給できますので、忘れずに手続きするようにしましょう。

別居を伝える際の適切なタイミングと方法

別居の準備ができてから相手に切り出すことで、気持ちに余裕をもって冷静に伝えられることに繋がるでしょう。

また、相手にも時間があるときに伝えるようにしましょう。朝、出勤前など時間のないときに一方的に伝えるだけだと、相手も混乱し感情的になってしまう可能性があります。落ち着いて別居したい理由などについてもきちんと説明し、相手の意見にも耳を傾け、穏便に別居できるよう努めましょう。

もっとも、DVやモラハラを受けている場合などは、事前に伝えると自宅から出してもらえなくなるおそれもありますので、自宅を出て安全を確保してから連絡するようにしましょう。自分で連絡するのは怖い場合などは、代理人を就けることも検討しましょう。

別居後の連絡方法を決めておくべき理由

別居をした場合であっても、子どもを連れて出て行った場合には、相手が安心して子どもの監護を任せてくれるよう、定期的に連絡を取れるようにしておくべきでしょう。スムーズな面会交流の実施にも繋がり、子どもの心の安定にも資することになるでしょう。

また、別居後、相手から修復のための協議を持ち掛けられた場合などに拒絶し続けてしまうと、「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)に該当しかねませんので、そういった意味でも、別居後の連絡方法を決めておくべきです。仮に、直接連絡を取ることがどうしてもできないのであれば、弁護士に相談して代理人になってもらうことも検討しましょう。

まとめ

以上のとおり、離婚前に別居することのメリットやデメリット、注意すべき点などを説明しました。

別居するために準備することや気を付けるべきことも多く、また、それぞれ家庭の事情が異なるため、対応に迷ったら、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。別居したい理由や配偶者との関係を伝え、少しでもリスクを減らしながら別居できるようアドバイスを受けられることと思います。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士として、男女問題などの一般民事事件や刑事事件を解決してきました。「ForClient」の理念を基に、個人の依頼者に対して、親身かつ迅速な法的サポートを提供しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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