
中川 浩秀
拠点
銀座本店
経歴
東京スタートアップ法律事務所 代表弁護士。2018年9月に東京スタートアップ法律事務所を設立。「Update Japan」という目標を掲げ、弁護士業界の既成概念にとらわれない組織づくりやサービス開発を進めている。趣味は旅行、読書、バスケットボール、テニス。
中川 浩秀

拠点
銀座本店
経歴
東京スタートアップ法律事務所 代表弁護士。2018年9月に東京スタートアップ法律事務所を設立。「Update Japan」という目標を掲げ、弁護士業界の既成概念にとらわれない組織づくりやサービス開発を進めている。趣味は旅行、読書、バスケットボール、テニス。
TSLの経営を考えるとき、起点になっているのは一貫して“For Client”です。これは単なるスローガンではなく、経営判断の基準そのものです。地方展開もAI活用も、別々の施策として考えているわけではありません。すべて、どうすればクライアントにより大きな価値を返せるか、という問いから逆算しています。
たとえば地方展開について言えば、需給バランスを見ればかなり合理的です。日本の弁護士数4.6万人に対し、そのうち2.4万人もが東京に集中していて、人口比で見れば明らかに偏りがある。東京は競争が激しく、顧客獲得も価格競争も厳しい。
一方で地方に行けば、弁護士一人あたりが対応する人口が東京の10倍という地域もザラにあり、まだ十分にリーガルサービスが行き届いているとは言えない。そこに弁護士が入っていくことは、社会的なニーズに応えることでもあるし、事務所としては顧客獲得の難易度が比較的低い中で勝負できる。価格設定についても然りです。だから地方展開は、経営戦略として自然なことだと思っています。
AI活用も同じです。AIを使うこと自体が目的ではなくて、あくまで手段です。弁護士業務でも、周辺業務でも、書面作成、メモ、リサーチ、問い合わせ対応など、AIが得意な領域はたくさんあります。そこにAIを使って生産性を上げることで、弁護士の可処分時間を増やしたい。その時間をクライアントとの対話や、より本質的な判断に振り向けたいんです。
結局、人が使える時間には限界があります。案件が増えれば増えるほど、放っておけばクライアントとのコミュニケーションは薄くなっていく。だからこそ、事務作業を軽くして、お客さんに向き合う時間を確保する必要がある。その結果、満足度が上がり、紹介や再依頼が増え、競争力にもつながっていく。そうやって生産性が向上し、利益率が上がれば、従業員に対してもより多くのリターンを担保できる。TSLにとって“For Client”は理念であると同時に、経営そのものなんです。
TSLの人事評価制度も、根っこにあるのはやはり“For Client”です。僕は、組織としてFor Clientを実現したいと思っています。独立すると、多くの弁護士は自然とFor Clientになります。自分の事務所の評判が気になるし、もう一度依頼してもらいたいと思うからです。でも組織に所属している段階だと、どうしてもその感覚は弱くなりやすい。だからこそ、制度の中に埋め込む必要があると考えました。
TSLでは、顧客満足度を評価の重要な柱のひとつに置いています。どれだけ目の前のクライアントに向き合えたか、どれだけ満足してもらえたかを、ちゃんと評価に反映させる。理念を言葉だけで終わらせず、組織のDNAにしたかったんです。弁護士と事務所の利害を一致させる、という言い方もできるかもしれません。For Clientをやることが、そのまま本人の成長や評価につながる構造にしたいと思っています。
そもそもこの業界は、小規模事務所が多いので、人事評価制度そのものが存在しないケースも少なくありません。1人、2人の事務所なら、毎日様子を見ているわけですから、それでも成り立つ部分はあると思います。ただ、組織が一定規模を超えると、それでは難しくなる。10人規模にもなれば、何をしたら評価されるのか、どう成長していくのか、何を大事にすべきなのかを明確に示す必要があります。そうでないと、メンバーは羅針盤を持てない。
制度は管理のためだけにあるものではありません。むしろ、成長の方向を示すものだと思っています。TSLの評価指標に沿って伸ばしたスキルは、例えば独立した後にもそのまま役に立つはずです。クライアントが何を求めているか、どうすれば信頼されるか、どうすればまた依頼したいと思ってもらえるか。そういうことを、組織に所属している段階から意識して働けるのは、大きな意味があると思っています。

もし今の自分が新人弁護士としてTSLに入るなら、たぶん長く東京にはいないと思います。もちろん、最初は興味があるから東京に出てくるかもしれない。でも、ある程度やって「こんなものか」と分かったら、1年くらいで次に行きたくなる気がします(笑)。僕は昔から、人と同じことをやり続けるのがあまり好きじゃないんです。
たぶん地方に出ます。地方のほうが、自分で案件を取ってくる難易度が圧倒的に低いからです。事務所に所属しながらでも、自分で顧客を獲得する感覚を持ちやすいし、東京みたいな過酷な競争の中で消耗するより、ずっと早く実戦の手触りを得られる。まずはTSLの中でしっかり業績を出しながら、個人でも案件を取り、地方で稼ぐ。生活コストも低いし、自由度も高い。稼いで、遊んで、旅行にもいっぱい行く。
ただ、僕はたぶんそこで終わらないんですよね。ある程度うまくいくと、今度はそれにまた飽きてくる。地方で勝てるようになったら、次はもっと大きくやりたくなるだろうし、人に雇われるより自分でやったほうがいいと思い始めるはずです。そうなったら独立を考えるし、もし事業を大きくしたいなら、また東京に戻ってくるかもしれない。人を採用して、ガーンと組織を大きくするなら、東京の方が有利ですからね。
結局、僕にとってTSLの面白さって、決まった正解のルートがないことなんです。東京に残るのも一つだし、地方に出るのも一つだし、その先で独立を目指すのもいい。与えられたレールをなぞるというより、自分で選んで、自分で動いて、その結果を取りにいける。もし自分が今TSLに入る側なら、与えられた自由を最大限使って、自分なりの勝ち筋を一番おもしろい形で試しにいくと思います。
来てほしいのは、自分で考えて、自分の心に従って動ける人です。言い換えると、自分の人生を自分で引き受けられる人ですね。
「TSLだから何かができる」という発想は、あまり持たないでほしいと思っています。どこにいたって、やりたいことがある人はやる。逆に、環境のせいにしている限り、やれない人はどこへ行ってもやれないままです。自分の人生の主導権を相手に委ねてしまうと、結局は不自由になる。だから、事務所選びをするときも、「ここなら何ができますか」という問いだけではなく、自分は何をやりたいのか、自分はどんな弁護士になりたいのかを、まず持っていてほしいです。
その意味で、TSLは比較的自由度の高い事務所だと思います。でも、自由度が高いというのは、楽だということではありません。与えられた自由をどう使うかが問われるということです。自分から案件を取りにいくのか、地方で勝負するのか、専門性をどう磨くのか、どんなクライアントにどう向き合うのか。選択肢がある分、自分の意思が必要になる。
受け身で「教えてもらうこと」を待つ人よりも、自分なりの仮説や欲望を持っている人のほうが、TSLには合うと思います。実際、活躍している人もそういう人が多い。整いすぎていない人、ちゃんと自分の輪郭がある人のほうが面白いし、強いと思っています。
“金太郎飴”みたいに、どこを切っても同じような人ばかりの組織は、あまり面白くないと思っています(笑)。
僕がそういう人に違和感を覚えるのは、その人が何をしたいのかが見えないからです。 たとえば、「東京で働きたいです」「先輩に教えてもらいたいです」「一通りやってから専門性を身につけたいです」というのはよく聞くことばです。もちろん、それ自体が間違っているわけではない。でも、それだけを聞くと、正直、何も言っていないのに近いと感じてしまうんです。その背景に何があるのか。そのことばだけで終わってしまうと、そこにその人自身の欲望や偏りが見えない。自分の中の複雑性をきれいにコーティングして世の中に迎合しているように聞こえてしまうんです。
人と同じことをしていても、人はそんなに幸せにはなれないと僕は思っています。「君は何がしたいんだ」と聞かれたときに、「みんなと同じでいたいです」と答えているように見える人には、やっぱり違和感がある。自分の人生なのに、なぜそんなに他人の正解に寄せるんだろうと。
だから僕は、自分を持っている人に惹かれます。自分で考えて、自分の感覚に従って行動できる人。もちろん、それはきれいごとではなくて、しんどいことでもあります。でも、そういう人のほうが実際活躍しているし、仕事も面白くなる。少し動物園っぽいぐらいでいいんです(笑)。同じような価値観や考え方の人ばかりが並んでいる組織よりも、一人ひとりに違う個性がある組織のほうが、おもしろい。TSLは、弁護士資格を使って自分の人生を広げたい人のための場所だと考えています。

僕にとって弁護士資格は、人生を楽しむためのツールです。安全や安定を保証してもらうためにこの資格を取ったわけではありません。もともとの動機は、もっと好奇心に近いものでした。弁護士という資格を取れば、人と違う経験ができそうだし、いろんな人に会える。自分の人生に新しい展開が生まれそうだと思ったんです。
実際、弁護士になってしばらくは、それだけで十分面白かった。困っている人の助けになって価値提供ができるのも、自分にとっては新しい体験でした。その後、事務所を立ち上げて、組織をつくって、事業をスケールさせていく中でも、弁護士資格は大きな武器になったと思います。他の業界だったら同じようにできた自信はそこまでない。そういう意味で、この資格を使っていろんな景色を見ることができました。
ただ、弁護士である以上こうあるべきだ、というドグマに支配されると、人生は矮小化されてしまいます。父親だから、経営者だから、弁護士だから、こうあるべきだ――そういう枠に自分を閉じ込めると、人生は一気に窮屈になる。もちろん、プロとしての責任や他者への配慮は前提です。そのうえで、自分を必要以上に枠に閉じ込める必要はない。弁護士資格に限らず、何かを自分の足枷にすることなく、人生を楽しんでいきたいですね。
原動力は、たぶんずっと変わっていなくて、自分がエキサイトできるものを探したい、ということなんだと思います。知らないものに触れたいし、自分がまだ見たことのない景色を見たい。その感覚は子どものころからありました。小学生のとき、自転車で知らない方向にどこまでも行ってしまったり、帰り道にわざと遠回りしたり、2駅分走って帰ってみたり(笑)。今思えば、ずっと探検していたんですよね。
大人になってからも、根っこは同じです。旅行もそうだし、事業もそうだし、次はインターナショナルに生きたいと思っているのも同じです。自分の知らない土地で、見た目も宗教もバックグラウンドも違う人たちと関わって、自分がどれくらい通用するのかを試してみたい。新しい環境に身を置いたとき、自分がどう変わるのかを見てみたいんです。
日常の中でも、退屈な時間をそのままにしておくのがあまり好きじゃない。だから、どうやったらこの瞬間を最大限面白くできるかを考えてしまう。結局僕は、人生をちゃんと面白がりたいんだと思います。どうせ生きるなら、どうせ最後は死ぬなら、その途中の時間をできるだけ濃くしたい。その感覚が、ずっと自分を動かしているんだと思います。