身元引受人とは何?条件や必要となるケース、提出書類を徹底解説
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記事目次
家族が突然警察に逮捕されたり、あるいは病院や高齢者施設への入所を検討したりする際、突然「身元引受人」を用意するよう求められることがあります。
「連帯保証人とは違うのか?」「どんな責任を負うのか?」と不安に感じる方も多いでしょう。
刑事弁護の現場において、しっかりとした身元引受人の存在は、早期釈放や執行猶予の獲得を左右する「命綱」とも言える極めて重要な要素です。
この記事では、数多くの刑事事件を解決に導いてきた弁護士法人の視点から、主に刑事事件における身元引受人の役割を中心に解説します。
「誰にお願いすべきか」「リスクをどう説明して頼めばよいか」といった実務的なポイントや、提出書類について、法律知識がない方にも分かりやすく徹底解説します。
身元引受人とは?
身元引受人(みもとひきうけにん)とは、対象となる人物の素性や身元を保証し、その後の生活や行動を監督・支援する人のことを指します。
一般的に「身元引受人」という言葉が使われる場面は、大きく分けて「刑事事件」と「福祉・医療(入院や施設入所)」の2つのケースがあります。
刑事事件における身元引受人は、被疑者や被告人が釈放された後、逃亡や証拠隠滅を行わないよう監督し、日常生活を支える役割を担います。
警察や裁判所に対し、「私が責任を持って監督しますので、社会内で生活させてください」と約束する重要な存在です。
一方、福祉・医療の分野では、緊急時の連絡先や、万が一の際の遺体や荷物の引き取り手としての役割が主となります。
本記事では、主に「刑事事件における身元引受人」について詳しく解説していきます。
身元引受人が必要になるのはいつ?
刑事手続において、身元引受人が必要となる(またはいると有利になる)主なタイミングは以下の通りです。
- 逮捕後、釈放される時(在宅捜査への切り替え)
警察に逮捕された後でも、検察官に送致される前のタイミングや、勾留請求が却下されたり取り消された場合など、逃亡の恐れがないと判断されれば釈放されることがあります。この際、警察官や検察官から「監督できる家族などの身元引受人が迎えに来ること」を要請とされることがあります。 - 勾留中に「保釈」を請求する時
起訴された後、裁判が終わるまでの間、一時的に身柄を解放してもらう「保釈」を請求する際には、身元引受人の存在が極めて重要です。裁判所は、被告人が逃亡したり証拠を隠滅したりしないかを審査しますが、身元引受人がいることで信用を得やすくなります。 - 執行猶予付き判決を求める時
裁判において、刑務所への収容(実刑)を避け、執行猶予付きの判決を求める情状証人として、身元引受人が出廷することがあります。今後の更生を支える環境があるかどうかが、量刑判断に影響を与えるためです。 - 仮釈放の申請時
刑務所に収容されている受刑者が、刑期満了前に仮釈放される際にも、帰住先と身元引受人の存在が必要不可欠と考えられています。
身元引受人の責任範囲
「身元引受人になったら、借金の連帯保証人のように、本人が犯した罪の賠償金まで肩代わりしなければならないの?」と心配される方がいらっしゃいます。
結論から申し上げますと、刑事事件における身元引受人の責任は、原則として法的な賠償責任ではありません。
つまり、本人の代わりに罰金を支払ったり、被害者への慰謝料を支払ったりする法的な義務は発生しません。
弁護士のワンポイントアドバイス:親族にお願いする際のコツ
身元引受人をお願いしても、「借金の連帯保証人のようなもの」と誤解され、断られてしまうケースが少なくありません。
親族の方に依頼する際は、「金銭的な賠償責任を負うものではない」という点を明確に伝えてください。
また、「監督といっても、24時間監視するわけではなく、本人の所在や生活状況を把握し、問題が生じていないかを確認することが主である」と具体的に説明することで、心理的なハードルを下げられる場合があります。
説明が難しい場合は、弁護士から直接ご家族へ説明することも可能です。
しかし、「監督する」という役割には、捜査段階や裁判の進行状況に応じて、具体的に求められる行動があります。
それぞれの段階での責任範囲を見ていきましょう。
任意捜査の段階
逮捕されずに捜査が進む「在宅事件」となった場合、あるいは逮捕後に釈放されて捜査が継続する場合、身元引受人には以下の役割が求められます。
- 出頭の確保と同行
警察や検察からの呼び出し(事情聴取など)があった際、本人が正当な理由なく拒否したり、無視したりしないよう促す必要があります。場合によっては、取調べの日時に合わせて警察署まで送り迎えをしたり、確実に家を出たことを確認したりするサポートが求められます。 - 生活状況の監督
本人が規則正しい生活を送っているか、再び罪を犯すような環境に身を置いていないかを監督します。例えば、共犯者と思われる人物との接触を抑止したり、被害者がいる場所に近づかないよう注意喚起したりすることが含まれます。 - 住居の定住性の確保
「逃亡のおそれ」がないことを示すため、本人が定まった住所(基本的には身元引受人の自宅など)で生活している実態が必要です。本人が無断で引っ越しや長期旅行をしないよう管理し、もし住居を変更する必要が生じた場合は、速やかに捜査機関へ報告することが求められます。
裁判官はここを見ている!具体的な監督プランの例
単に「監督します」と口で言うだけでなく、客観的に実行可能なプランを示すことが重要です。
私たちが弁護等を行う際は、以下のような具体策を提案することがあります。
- スマホのGPS共有: 常に居場所を家族が把握できるようにする。
- 金銭管理の徹底: キャッシュカードや通帳を身元引受人が預かり、必要最低限の現金のみを渡す(横領や薬物事犯などの場合)。
- 同居の再開: 実家に戻り、家族の目の届く範囲で生活させる。
こうした具体的な体制が整っていることは、裁判官の心証を良くし、釈放の判断を後押しする大きな材料となります。
逮捕・勾留された場合
本人が警察署の留置施設などに勾留されている場合、弁護士を通じて「保釈」を請求することがあります。
この際、身元引受人は「釈放後の監督者」として裁判所に届け出を行います。
ここでの最大の役割は、「裁判への出廷を確実にさせること」です。
もし身元引受人が監督を怠り、被告人が裁判に現れずに逃亡してしまった場合、身元引受人自身が罪に問われることはありませんが、保釈の条件として納めた「保釈保証金」が没収される可能性が高くなります。
拘禁刑を受けている場合
実刑判決を受け、刑務所に服役している場合、仮釈放(刑期満了前に条件付きで釈放されること)の審査において身元引受人が重要になります。
この場合の主な役割は、出所後の生活環境の調整と更生支援です。具体的には、住居の提供、就職活動の支援、保護観察官との連絡調整などが求められます。
更生保護委員会は、本人の更生の程度や再犯可能性等と併せて、身元引受人が「本人の更生を助ける意欲と能力があるか」を面接等で調査し、総合的に評価します。
身元引受人になるための条件
誰でも身元引受人になれるわけではありません。
法律で明確な資格が定義されているわけではありませんが、実務上、捜査機関や裁判所が「適格」と認めるためには、以下の条件を満たしていることが望ましいとされています。
- 本人と親密な関係にあり、監督できる立場にあること
一般的には、配偶者、親(両親)、成人した子ども、兄弟姉妹などの同居親族が最も有力な候補です。親族がいない、あるいは疎遠である場合は、雇用主(会社の上司・社長)などが認められるケースもあります。単なる友人や知人の場合、監督能力が不十分とみなされ、認められないことが多いです。
※頼れる家族がいない場合でも諦めないでください
家族や会社に頼めない場合でも、更生保護施設や民間の支援団体、あるいは弁護士会の制度などを利用して身元引受人を確保できるケースがあります。「誰もいないから」と諦めてしまう前に、必ず弁護士にご相談ください。状況に応じた代替案を一緒に検討いたします。 - 身元がしっかりしており、連絡が確実につくこと
引受人自身に定まった住所・職業があり、警察や裁判所からの連絡に常に対応できることが求められます。引受人自身が反社会的勢力の関係者であったり、住所不定であったりする場合は認められません。 - 経済的な基盤があること
必須ではありませんが、本人を同居させて養う必要がある場合、引受人に一定の収入や資産があることが望ましいです。 - 日本国内に居住していること
本人が逃亡しないよう国内で監督する必要があるため、原則として日本国内に居住している必要があります。
身元引受人になる際の必要書類
身元引受人として認められるために提出する書類は、手続の段階によって異なりますが、主に以下のものが挙げられます。
- 身元引受書(誓約書)
「私が責任を持って監督します」という内容を記した書類です。警察署や弁護士が用意した定型フォーマットに署名・捺印する形式が一般的です。 - 身分証明書・印鑑
運転免許証や保険証などのコピー、および認印(場合によっては実印)が必要です。 - 印鑑登録証明書
裁判所への保釈請求時など、より厳格な手続の際には、実印の押印とともに印鑑登録証明書の添付を求められることがあります。 - 所得証明書・課税証明書など
引受人の経済力(監督能力)を証明するために提出を求められる場合があります。
書類の不備は釈放の遅れにつながりますので、担当の弁護士の指示に従って速やかに準備しましょう。
身元引受人になる際の注意点
愛する家族のためとはいえ、身元引受人になることには一定の負担が伴います。
引き受ける前に以下の点を理解しておくことが大切です。
1:精神的・時間的な負担
本人の生活を監督し、警察や裁判所、弁護士とのやり取りに対応するため、時間と労力がかかります。特に同居して監督する場合、本人の動向に気を配る必要があり、精神的なストレスを感じることも少なくありません。
2:保釈金没収のリスク
前述の通り、保釈中に本人が逃亡した場合、身元引受人自身が法的処罰を受けることはありませんが、もし引受人が保釈金を立て替えていた場合、そのお金は戻ってきません。
3:会社や近隣への影響
警察が身元引受人の自宅や職場に連絡を入れて確認(裏付け捜査)をすることがあります。
これにより、家族が事件に関与していることが周囲に知られる場合があります。
身元引受人を降りることができる?
一度引き受けたものの、「本人が言うことを聞かない」「暴力を振るう」などの理由で監督しきれない場合、途中で身元引受人を辞退することは可能です。
ただし、勝手に辞めるのではなく、捜査機関や裁判所、担当弁護士に口頭や書面で報告する必要があります。
注意点として、身元引受人がいなくなることで「逃亡や証拠隠滅の恐れがある」と判断され、本人が再逮捕されたり、保釈が取り消されて再収容されたりする可能性が極めて高くなります。
辞退を考える際は、必ず事前に弁護士へ相談してください。
まとめ
身元引受人は、逮捕された方が早期に社会復帰し、更生するための重要な存在です。
法的な賠償責任(借金の肩代わり等)はありませんが、本人が逃亡したり罪を重ねたりしないよう監督する役割を担います。
身元引受人がしっかりとした監督体制を整えることは、検察官や裁判官に対して「逃亡の恐れがない」という強いアピールになり、早期釈放、保釈の許可、あるいは執行猶予判決の獲得につながる可能性を高めます。
もし、ご家族が逮捕され、「身元引受人になってほしい」と頼まれたり、誰に頼めばいいか悩んだりしている場合は、刑事事件に強い弁護士に相談することをお勧めします。
適切なアドバイスとサポートを受けることで、不安を解消し、最善の結果を目指すことができます。
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- 不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
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