刑事事件CATEGORY
刑事事件
更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

迷惑防止条例違反は逮捕される?該当行為や刑罰を徹底解説

迷惑防止条例違反は逮捕される?該当行為や刑罰を徹底解説
東京スタートアップ法律事務所は
全国20拠点以上!安心の全国対応
東京スタートアップ法律事務所は
初回相談0

「魔が差して盗撮をしてしまった」

「家族が痴漢容疑で警察に連れて行かれたと連絡があった」

今、このページをご覧になっている方は、突然の出来事に頭が真っ白になり、「会社や学校にバレたらどうしよう」「このまま刑務所に入ることになるのか」という、押しつぶされそうな不安の中にいらっしゃるかもしれません。

刑事事件、特に迷惑防止条例違反の事案は、「初動の72時間」が勝負です。

対応を一歩間違えれば逮捕・勾留が長期化する一方で、正しい初動をとれば、日常生活への影響を最小限に抑えることも十分に可能です。

この記事では、数多くの刑事弁護を担当してきた弁護士の視点から、逮捕のリスクや具体的な解決への道筋を、包み隠さず解説します。

まずは深呼吸をして、現状を把握することから始めましょう。

迷惑防止条例とは何か

迷惑防止条例とは、各都道府県が公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為などを防止し、市民生活の平穏を保持するために定めている条例の総称です。

正式名称は自治体によって異なりますが、例えば東京都では「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(略称:迷惑防止条例)」として定められています。

刑法(不同意わいせつ罪や暴行罪など)で規定されている犯罪とは異なり、地域ごとの実情に合わせて、より軽微だが迷惑性の高い行為を規制するために設けられています。

しかし、「条例だから罪が軽い」と考えるのは間違いです。

違反すれば刑事事件として扱われ、逮捕や勾留、起訴されて有罪判決(前科)を受ける可能性があります。

規制対象は主に「痴漢」「盗撮」「つきまとい」「ダフ屋行為」「客引き」など多岐にわたります。

特に痴漢や盗撮などは、刑法の要件を満たさない場合でも、この条例によって処罰されるケースが非常に多く見受けられます。

出典:e-Gov法令検索「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(東京都)

迷惑防止条例で規制される行為

迷惑防止条例で禁止されている行為は多岐にわたりますが、ここでは特に逮捕事例が多く、一般の方にも関係が深い「痴漢」「盗撮」「その他の行為」について、東京都の条例を例に解説します。

①痴漢

迷惑防止条例における「痴漢」は、主に公共の場所や乗り物内での卑わいな行為を指します。

東京都迷惑防止条例 第5条第1項では、以下のような行為が禁止されています。

  • 場所: 公共の場所(道路、公園、広場、駅など)や公共の乗り物(電車、バス、旅客船など)。
  • 行為: 人を著しく羞恥させ、または人に不安を覚えさせるような方法で、衣服の上から、または直接人の身体に触れること。あるいは、衣服をめくったりする行為。
  • 目的: 性的意図がある場合だけでなく、相手を困らせたり怖がらせたりする目的も含みます。

具体的には、満員電車で故意に女性の体を触る行為や、路上ですれ違いざまに体を触る行為などが該当します。

刑法の「不同意わいせつ罪(旧:強制わいせつ罪)」は、暴行や脅迫を用いてわいせつな行為をした場合に適用されますが、迷惑防止条例違反の痴漢は、そこまでの暴行・脅迫がなくても成立するのが特徴です。

ただし、条例上の「痴漢」か、刑法上の不同意わいせつとかという区別は必ずしも明確ではないので、注意が必要です。

罰則(東京都の場合)

  • 初犯: 6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
  • 常習(前科がある場合など): 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金

近年では取り締まりが非常に強化されています。痴漢事件の難しい点は、「触った・触っていない」の水掛け論になりやすいことや、満員電車での接触が「不可抗力(わざとではない)」だったのか「故意(わざと)」だったのかの判断が難しい点にあります。

弁護士のワンポイントアドバイス

実務の現場では、被害者の証言の信用性が非常に重視されますが、それだけで有罪が決まるわけではありません。

私たち弁護士は、防犯カメラの映像解析や、繊維鑑定、あるいは当時の混雑状況の再現などを行い、客観的な事実に基づいて主張を組み立てます。

「やっていない」場合や「わざとではない」場合は、当初の取調べで安易に認めないことが極めて重要です。

②盗撮

近年、スマートフォンの普及とともに増加しているのが盗撮です。

東京都迷惑防止条例 第5条第1項第2号では、以下の行為を禁止しています。

  • 場所: 住居、浴場、更衣室、便所など、人が通常衣服をつけないでいるような場所(または、わいせつな姿態を隠して行動するような場所)。および、公共の場所や乗り物。
  • 行為:人の下着や身体(通常衣服で隠されている部分)を撮影すること。撮影する目的で、カメラ等の機器を差し向けたり、設置したりすること。

重要なポイントは、「実際に撮影できたかどうか」に関わらず、「撮影しようとしてカメラを向けた」時点で条例違反が成立する点です。

たとえシャッターを押す前に取り押さえられたとしても、未遂ではなく既遂(または予備行為)として処罰の対象となり得ます。

削除しても復元されるリスクについて

現場で警察官に声をかけられた際、慌てて画像を削除してしまう方がいらっしゃいますが、これは絶対にお勧めできません。

警察の捜査能力は高く、「デジタルフォレンジック」という技術を使えば、削除した画像でも高い確率で復元されてしまいます。

逆に、証拠隠滅を図ったとして逮捕の必要性が高いと判断され、身柄拘束が長引く原因にもなりかねません。

捜査には誠実に対応しつつ、法的な防御は弁護士に任せるのが賢明です。

罰則(東京都の場合)

  • 初犯: 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
  • 常習: 2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金

なお、2023年7月より「性的姿態撮影等処罰法(撮影罪)」が施行されました。

これにより、これまで条例で裁かれていた盗撮行為の一部が、より重い国法(撮影罪)で処罰される可能性があります。

被害者が着衣している下着を撮影した、などという事案では撮影罪で処罰されることになる可能性が高いといえるでしょう。

③その他違反行為

痴漢や盗撮以外にも、迷惑防止条例で規制されている代表的な行為があります。

  • つきまとい行為(ストーカー行為の手前)
    特定の相手に対し、執拗につきまとう、待ち伏せする、進路に立ちふさがるなどの行為です。「ストーカー規制法」が適用される前の段階や、恋愛感情に基づかない嫌がらせ目的(怨恨など)の場合に、この条例が適用されることがあります。
  • 覗き(のぞき)
    正当な理由なく、住居、浴場、更衣室、便所などの内部を覗き見る行為です。実際に中が見えなくても、覗こうとした事実があれば処罰対象となります。
  • ダフ屋行為
    公共の場所で、チケットなどを転売する目的で購入したり、実際に転売したりする行為です。
  • 客引き(キャッチ)・スカウト
    繁華街などで、通行人の進路に立ちふさがって飲食店へ勧誘したり、風俗店へのスカウトを行ったりする行為も規制対象です。

迷惑防止条例で逮捕される?

「たかが条例違反」と甘く見ていると、逮捕という重大な事態を招くことになります。

実際に、迷惑防止条例違反で逮捕されるケースは決して珍しくありません。

逮捕される可能性

迷惑防止条例違反で逮捕される可能性は十分にあります。

特に「痴漢」や「盗撮」は、被害者や目撃者に取り押さえられ、そのまま警察に引き渡される「現行犯逮捕」(私人逮捕を含む)となるケースが典型的です。

また、現場から逃走した場合や、後日防犯カメラの映像などで犯人が特定された場合には、裁判所の発付する逮捕状をもって警察が自宅などにやってくる「通常逮捕(後日逮捕)」となることもあります。

逮捕後の流れ

逮捕されると、以下のような非常にタイトなスケジュールで刑事手続が進んでいきます。

  1. 逮捕~送検(48時間以内)
    警察署に連行され、取調べを受けます。この間は家族であっても面会(接見)することはできません。
  2. 送検~勾留請求(24時間以内)
    検察官は、被疑者の身柄を受け取ってから24時間以内に、裁判官に対して「勾留(こうりゅう)」を請求するかどうかを判断します。
  3. 勾留(最大20日間)
    裁判官が勾留を認めると、原則10日間、延長されれば最大20日間、留置施設に身柄を拘束されます。この長期間の拘束は、会社なら無断欠勤による解雇、学校なら退学のリスクに直結します。
  4. 起訴・不起訴の決定
    捜査の結果、検察官が裁判にかけるべきと判断すれば「起訴」、裁判の必要がない(嫌疑不十分ないし起訴猶予)と判断すれば「不起訴」となります。

当事務所の弁護活動

検察官が勾留を請求し、裁判官がそれを決定するまでの時間はごくわずかです。

私たちはこのタイミングに間に合えば、裁判官に対して「意見書(勾留の必要がないことを主張する書面)」を提出します。

「家族の監督がある」「定職についている」「証拠隠滅の恐れがない」といった事情を法的に構成し、「在宅捜査(釈放された状態で捜査を受けること)」への切り替えを強く求めます。

また、勾留の決定がなされた後は準抗告という異議申立てを行います。

迷惑防止条例の違反した際の刑罰

迷惑防止条例違反で有罪となった場合、科される主な刑罰は「拘禁刑」または「罰金刑」です。

  • 拘禁刑: 刑務所に収監され、刑務作業を行う刑罰です。執行猶予がつかなければ「実刑」となり、刑期を終えるまで社会には戻れません。条例違反の場合、6ヶ月〜1年以下(常習の場合は2年以下)の拘禁刑が一般的です。
  • 罰金刑: 一定の金額を国に納める刑罰です。50万円以下(常習の場合は100万円以下)の罰金が相場です。

初犯で、かつ被害者との示談が成立している場合や、行為が悪質でないと判断された場合は、「不起訴処分」で終わることもあります。

しかし、常習性がある場合や、盗撮画像を拡散させた場合などは、初犯でも実刑判決が出るリスクがあります。

迷惑防止条例違反による逮捕の回避・早期解決なら弁護士への相談がおすすめ

もし迷惑防止条例違反の疑いをかけられた場合、何もせずに事態が好転することはまずありません。

逮捕の回避や早期釈放、そして前科をつけないためには、一刻も早く弁護士に相談することが重要です。

弁護士による迅速な接見と身体拘束の回避

逮捕直後の72時間は、家族ですら面会できない孤独な時間です。

しかし、弁護士であれば時間制限なく、立会人なしで本人と面会(接見)することができます。

弁護士は、取調べに対するアドバイス(黙秘権の使い方や供述調書の確認方法など)を行い、不利な供述調書が作成されるのを防ぎます。

また、前述の通り、検察官や裁判官に対し「意見書」を提出するなどして、勾留を阻止して早期釈放を実現できる可能性があります。

早期に釈放されれば、会社や学校に知られずに社会生活に戻れる可能性が高まります。

被害者との示談交渉による不起訴の獲得

迷惑防止条例違反のような被害者がいる犯罪において、最も処分に影響を与えるのが「示談」の有無です。

検察官が起訴・不起訴を判断するまでに被害者との示談が成立し、被害届や告訴を取り下げてもらえれば、「不起訴処分」となる可能性が飛躍的に高まります。

しかし、加害者が直接被害者に連絡を取ることは、警察から禁止されることがほとんどですし、そもそも連絡先を知らないケースが大半です。

弁護士であれば、捜査機関を通じて被害者の承諾を得て連絡を取り、冷静かつ適切な条件で示談交渉を進めることができます。

前科を回避し社会復帰をスムーズにする

「前科」がつくと、特定の職業に就けなくなったり、海外渡航に制限が出たりするなど、将来にわたって大きな不利益を被る可能性があります。

また、インターネット上に実名報道が残ることで、就職や結婚に影響が出る「デジタルタトゥー」の問題もあります。

弁護士に依頼することで、不起訴処分による前科回避を目指せるだけでなく、万日起訴された場合でも、執行猶予の獲得や罰金の減額など、刑を少しでも軽くするための弁護活動(情状弁護)を受けることができます。

事件を早期に、かつ穏便に解決することは、あなた自身の未来を守ることに直結します。

よくある質問

ピンポンダッシュは迷惑防止条例違反に該当する?

一般的に、単発のピンポンダッシュは「軽犯罪法違反(業務妨害)」等に問われる可能性がありますが、特定の家に対して執拗に繰り返す場合は、迷惑防止条例の「つきまとい行為」や「嫌がらせ行為」に該当する可能性があります。

いたずら目的であっても、警察に通報されれば捜査対象となりますので、決して軽視してはいけません。

スマホを見ていただけなのに盗撮を疑われたら?

満員電車などでスマホを操作していただけなのに、盗撮を疑われるケース(痴漢冤罪の一種)があります。

この場合、絶対にやってはいけないのは「その場から逃げること」です。逃げると「やましいことがある」とみなされ、逮捕や勾留のリスクが高まります。

毅然とした態度で「やっていない」と主張し、可能であればその場で弁護士に連絡を入れるか、警察署への任意同行を求められた際に弁護士を呼ぶようにしてください。

迷惑防止条例違反の時効は何年ですか?

迷惑防止条例違反の公訴時効(検察官が起訴できなくなる期間)は、行為の内容や法定刑の上限によって異なりますが、一般的に3年です。

ただし、時効ギリギリまで逃げ切ることは精神的にも負担が大きく、その間に証拠が固められて逮捕状が出ることもあります。

時効を待つのではなく、自首や示談によって解決を図る方が、結果的に処分が軽くなるケースが多いです。

弁護士なしで被害者と示談することはできますか?

理論上は可能ですが、現実的には極めて困難です。

まず、性犯罪の被害者は加害者に強い恐怖心や嫌悪感を抱いており、直接の連絡を拒否することがほとんどです。

また、警察や検察も、加害者に被害者の連絡先を教えることはまずありません。

弁護士という第三者、かつ法律の専門家が間に入ることで初めて、「弁護士限り」という条件で連絡先が開示され、交渉のテーブルについてもらえるケースが大多数です。

逮捕されたことは会社や学校にバレますか?

警察から会社や学校に連絡がいくことは、原則としてありません。しかし、捜査の過程で必要があると判断される場合には、連絡が行くこともあります。また、勾留されて無断欠勤・欠席が数日続くと、不審に思われて発覚するケースが大半です。

ここがポイント

ご家族や弁護士を通じて「体調不良」などの理由で連絡を入れることで、一時的に時間を稼ぐことは可能です。

その間に、弁護士が早期釈放に向けて動き、数日中に社会復帰できれば、逮捕の事実を知られずに済むケースも多々あります。

「会社に知られないこと」を最優先事項として弁護方針を立てることも可能ですので、一刻も早くご相談ください。

まとめ

迷惑防止条例違反は、痴漢、盗撮、つきまといなど、身近な場所で起こりうる犯罪ですが、その代償は決して小さくありません。逮捕されれば長期間の身体拘束を受け、起訴されれば前科がつく可能性が高い重大な事件です。

しかし、過ちを犯してしまったとしても、適切な対応をとることで、社会復帰への道は残されています。

最も重要なのは、「初動の早さ」です。

逮捕直後から弁護士が介入し、被害者との示談交渉や捜査機関への働きかけを行うことで、不起訴処分や早期釈放を獲得できる可能性は十分にあります。

ひとりで悩み、不安な時間を過ごすよりも、まずは法律のプロである弁護士に相談してください。

あなたとご家族の平穏な生活を取り戻すために、私たちが全力でサポートします。

あわせて読みたい記事

画像準備中
執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士として、男女問題などの一般民事事件や刑事事件を解決してきました。「ForClient」の理念を基に、個人の依頼者に対して、親身かつ迅速な法的サポートを提供しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

\ 初回相談0円!お気軽にお問い合わせください /