窃盗罪に時効は何年?公訴時効や民事上の期間などを徹底解説
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記事目次
そもそも窃盗罪とは
窃盗罪とは、どのような犯罪なのでしょうか。
窃盗罪は、他人の占有する財物を、占有者の意思に反して取得する犯罪です。
刑法235条は、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」と定めています。
窃盗罪が成立するための主観面の要件としては、故意(他人の占有する財物を奪うことの認識)とは別に、行為者に不法領得の意思があることが必要です。
不法領得の意思とは、判例によると「①権利者を排除し他人の物を自己の所有物として、②その経済的用法に従いこれを利用又は処分する意思」とされており、窃盗罪が成立するためには、①他人の財物を自分のものにする権利者排除意思と、②(毀棄・隠匿目的とは区別される)利用処分意思が必要です。
窃盗罪の時効は何年?
窃盗罪に時効はあるのでしょうか。
刑事訴訟法上、公訴時効という制度が定められています。
公訴時効とは、犯罪が行われたとしても、法律の定める期間が経過すれば、犯人を処罰することができなくなる制度です。
公訴時効の期間については、法律で定められた刑(法定刑)の上限や内容を基準に定められており、窃盗罪の法定刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」ですので、刑事訴訟法第250条2項4号の定めにより、窃盗罪の公訴時効は「7年」となります。
ただし、例外的に公訴時効の停止事由がある場合には、その期間は時効が進行しません。
公訴時効の停止について、刑事訴訟法255条1項は、「犯人が国外にいる場合又は犯人が逃げ隠れているため有効に起訴状の謄本の送達若しくは略式命令の告知ができなかつた場合には、時効は、その国外にいる期間又は逃げ隠れている期間その進行を停止する。」と定めています。
窃盗罪の民事上の時効期間(消滅時効)
公訴時効は、犯人に刑罰を科する刑事手続上で定められた制度です。
次に、窃盗罪や時効に関連する民事上の制度について概観していきたいと思います。
盗品の時効取得は可能か
民法上、取得時効という制度が定められています。
取得時効とは、他人の物を一定期間継続して占有した場合に、その物の所有権を取得できる制度のことで、この取得時効により権利を取得することを時効取得といいます。
取得時効について民法162では以下のように定められています。
20年間、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、その所有権を取得する。
それでは、窃盗により他人の所有物を取得した場合でも、その盗品について民法上の取得時効が成立するのでしょうか。
取得時効が成立するための要件として、上のとおり民法162条1項は「平穏に」他人の物を占有することを定めています。
盗品であっても、占有者の占有態様が平穏であることは推定されます(民法186条1項)。
しかし、「平穏に」という要件について、判例は「平穏の占有とは、その占有の取得又はその保持につき、暴行、強迫などの違法強暴の行為を用いていないものをいい」と考えます(最高裁昭和41年4月15日判決)。
そのため、窃盗のように、違法強暴の方法で占有を開始した場合は、「平穏に」という要件を満たさないことから、盗品を何年占有しても、時効取得することはできない可能性が高いものと考えられます。
損害賠償請求権の消滅時効…3年 or 20年
他人の財物を窃取する窃盗罪は、民法上、その他人(被害者)に対する不法行為に該当します(民法709条)。
そのため、窃盗犯人は、被害者から不法行為に基づく損害賠償(金銭賠償)を民事裁判等で請求される可能性があります。
不法行為に基づく損害賠償請求権の消滅時効の期間は、「被害者が損害および加害者を知った時から3年」か「不法行為の時から20年」です(民法724条)。
それでは、被害者が「損害および加害者を知った時」とは、どのような場合を意味するのでしょうか。
判例によれば、「同条にいう『加害者を知った時』とは、加害者に対する損害賠償請求が事実上可能な程度な状況のもとに、その可能な程度にこれを知ったときを意味する」とされており、加害者の住所氏名を知ることができる状況にあればこれにあたると考えられます。
このように、被害者が「損害および加害者を知った時」から3年の消滅時効期間が開始するため、反対にいうと、被害者が加害者を知らなければ3年の消滅時効期間は開始しないことになります。
被害者が加害者を知らない場合には、窃盗という不法行為の時から20年が経過するまでは、損害賠償請求権の消滅時効は完成しないことになります。
不当利得返還請求権の消滅時効期間…5年 or 10年
窃盗犯人が盗んだ盗品について、盗まれた人が犯人に対し、民法上、不当利得に基づく返還請求をすることが考えられます(民法703条)。
不当利得とは、法律上の原因なく利得を得た受益者が、公平の観点から、その利得によって損失を被った損失者に対し、利得を返さなければならない制度です。
そこで、窃盗犯人(受益者)は、被害者(損失者)に対し、不当利得である盗品を返還する義務を負います。
不当利得返還請求権の消滅時効については、民法166条1項によると「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」又は「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」に完成します。
具体的には、被害者が、窃盗犯人を知ってから5年または窃盗被害の発生後10年を経過すると不当利得返還請求権の消滅時効が完成するものと考えられます。
民事上の時効期間はリセットされることも
消滅時効の更新事由の発生によって、それまでの時効期間の経過にかかわらず、新たに最初から消滅時効の期間が開始することがあります。
消滅時効の主な更新事由としての典型例は、「裁判上の請求等」です。
「裁判上の請求等」とは、裁判上の請求、支払督促、裁判上の和解・調停等の事由があると、まず、時効の完成が猶予され、それらの事由が終了するまでは時効は完成しないことになります(民法147条1項)。
その後、裁判等で「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したとき」は、裁判等が終了したときから新たに消滅時効の期間が開始するため、消滅時効が更新されることになります(同条2項)。
そのため、窃盗の場合も、上で述べたような民事上の権利について裁判上の請求がなされ、判決により権利が確定した場合には、消滅時効が更新されます。
なお、判決で確定した権利の消滅時効については、時効期間は10年となります。
民法第169条が「確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、10年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、10年とする。」と定めているためです。
未成年が窃盗をした場合の時効は何年?
未成年者が窃盗をした場合も、時効の期間については上で述べた成人の場合と同様です。
そのため、犯行時には未成年であったが、その後成人となり、未だ公訴時効期間を経過していない場合には、成人と同様の刑事手続で処罰を受けることになります。
なお、公訴時効完成後に少年事件として家庭裁判所へ送致された事件について、少年審判開始の要件を欠くものとして審判不開始決定をされた例もあります。
窃盗罪での示談はある?
窃盗罪を犯してしまったことを真摯に反省しているのであれば、時効が完成する可能性に懸けて、時効を待って逃亡したりすることは得策とはいえず、反省とは相反する行動となります。
真に反省し、窃盗事件の解決を望むのであれば、被害者に対し、真摯な謝罪の意思を伝えるべきです。
被害を回復するための示談の話をすることは、刑事・民事の両方の解決にとって重要です。
仮に被害者が示談に応じてくれた場合は、検察官は、示談内容を踏まえて起訴するかしないかを決定する終局処分をすることが予想されますので、示談が成立していれば、検察官が起訴猶予と判断し不起訴処分となる可能性があります。
起訴された場合であっても、裁判所が刑の重さを決める量刑の際に、示談の成立の有無やその内容を考慮することがあります。
示談によって窃盗の被害の回復が十分にされており、被害者の処罰感情が相当和らいでいる場合は、検察官の求刑よりも減刑され、執行猶予付き等の比較的軽い判決が見込める場合もあるでしょう。
また、示談書において、示談金の支払以外に債権債務がないことを相互に確認する内容の清算条項を定めることができた場合は、民事事件としても解決されたこととなり、以降、原則として被害者からの損害賠償請求を受けることはありません。
窃盗をしてしまった・窃盗罪を疑われた場合は、早めに弁護士に相談を
ご本人やご家族が窃盗罪という過ちを犯してしまい、現在大変お困りの方もいらっしゃることと存じます。
そのようなお悩みについては早期に弁護士にご相談されることが重要と考えます。
弁護士は、お話をしっかりお聞きし、手続の流れや予想される刑罰などの事件の見通しについて助言させて頂くことができます。
また、場合によっては、早期に被害者に対する示談等の弁護活動を行う必要がある事案もございますので、お一人では悩まず、専門家の助言を得るべきです。
まとめ
本記事では、窃盗罪の公訴時効や関連する民事上の制度などについて解説をしました。
窃盗罪で捜査機関から取調べを受けたり、逮捕されてしまった場合、ご本人やご家族は大きなご不安を抱えていらっしゃることと存じます。
私達、東京スタートアップ法律事務所は、刑事事件でお悩みのご本人やご家族の気持ちに寄り添い、ご本人の大切な未来を守るために全力でサポートさせていただきたいと考えております。
事務所がこれまで解決してきた刑事事件の実績に照らし、ご相談者様の状況やご意向を丁寧にお伺いした上で的確な弁護戦略を立て、迅速に対応致します。
ご相談頂いた方のご不安を最大限取り除くためにも、相談を受けた弁護士は精一杯尽力させて頂く所存です。まずはお気軽にご相談下さい。
東京スタートアップ法律事務所は、2018年9月に設立された法律事務所です。
全国に拠点を有し、所属メンバーは20代〜40代と比較的若い年齢層によって構成されています。
従来の法律事務所の枠に収まらない自由な気風で、優秀なメンバーが責任感を持って仕事に取り組んでいます。
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