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更新日: 弁護士 宮地 政和

示談金の相場はどれくらい?事件別の目安、決め方を徹底解説

示談金の相場はどれくらい?事件別の目安、決め方を徹底解説
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刑事事件は、一旦起訴されてしまうと99%有罪になってしまいます。他方で、令和4年における起訴率は、32.2%となっていますhttps://hakusyo1.moj.go.jp/jp/70/nfm/n70_2_2_2_4_0.html)。

つまり、約7割の犯罪については、不起訴処分がなされていることになります。約7割の不起訴率を支えている要因の一つが示談の存在です。本記事では、示談の重要性や示談金の相場について解説します。

そもそも刑事事件における示談とは?

刑事事件における示談とは、被害者と加害者との間で結ぶ和解契約のことをいいます。示談が成立すると、加害者は、犯罪行為によって被害者に生じた損害を賠償したという民事上の責任を果たしていること、場合によっては被害者の許しを得たことの証明となります。これによって、刑事処分に影響を与えるため、刑事事件においては非常に重要といえます。示談は、全ての事件で行えるわけではなく、被害者のいる事件に限られます。

刑事事件において示談が重要な理由とは?

刑事事件において示談が重要な理由は、①不起訴を獲得できる可能性が高くなる点、②被害者による告訴を取り下げてもらえる点、そして③起訴されたとしても減刑につながる可能性がある点があげられます。

理由①

示談が成立すると、不起訴処分になる可能性が高くなります。

示談が早期に成立すると、それだけ早く逮捕・勾留から解放される可能性が高くなります。早く逮捕・勾留から解放されれば、職場復帰の可能性が高くなり、周囲に発覚するリスクも低減できます。最終的に不起訴処分になれば、前科が付くこともありません。このようなメリットがあるため、刑事事件においては、なるべく早く示談を成立させることが重要といえます。

理由②

被害者による告訴がなければ、検察官は刑事事件を起訴できない犯罪があります。このような犯罪は親告罪と呼ばれています。示談が成立することで被害者が告訴しない、あるいは告訴を取り下げてくれる場合、不起訴となります。そのため、親告罪の場合には、他の犯罪の場合と比べて示談の重要性が特に高くなります。

親告罪の具体例としては、名誉棄損罪、侮辱罪、未成年者略取・誘拐罪、器物損壊罪、親族間の窃盗罪、親族間の詐欺罪・恐喝罪・横領罪などがあげられます。

理由③

起訴するかどうかは検察官が判断しますので、示談が成立したとしても残念ながら起訴されてしまうことがあります。ただ、起訴されたとしても、示談が成立していれば、本来であれば刑務所に入らなければならないようなケースであっても、執行猶予付き判決を得られたり、執行猶予付き判決が得られないとしても刑務所に入る期間が短くなったり、拘禁刑が罰金刑に変わったりする可能性があります。

【犯罪の種類別】示談金の相場

犯罪の類型ごとの示談金の相場、刑の重さ(法定刑)、事案ごとに注意すべき点などについて解説します。あくまでも目安にすぎないという点にご注意ください。

どの犯罪にも共通するポイントについては、後で解説します。

性的姿態等撮影罪(主に盗撮)

盗撮の示談金相場は、10万円から50万円となります。

かつては迷惑防止条例違反が適用されていましたが、令和5年7月13日以降は、性的姿態等撮影罪が基本的に適用されることになりました。

例えば、東京都の迷惑防止条例では、1年以下の懲役または100万円以下の罰金と定められているのに対し、性的姿態等撮影罪(盗撮)の法定刑は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金と定められているため、今後、盗撮の示談金相場が高くなる可能性があります。

もっとも、当事務所で取り扱った事例をふまえますと、現状における性的姿態等撮影罪における示談金相場は、10万円から50万円というのが一応の基準になります。

迷惑防止条例違反(痴漢) 

痴漢の示談金相場は、10万円から100万円となります。

迷惑防止条例は、各都道府県が定めています。多くの条例では、6か月以上の懲役または50万円以下の罰金が定められています。

痴漢は、どの部位に、どのくらいの時間、どのように触れたかによって金額が変動します。また、性犯罪の場合、被害者の意向が特に強く反映される傾向があります。以上から、示談金の相場としては幅広く設定せざるを得えません。

不同意わいせつ罪

不同意わいせつ罪の示談金相場は、30万円から100万円となります。

不同意わいせつ罪の法定刑は、6か月以上から10年以下の懲役と定められており、罰金刑が定められていないため、重い罪に分類されます。

不同意わいせつ罪では、しばしば「同意があったか否か」が問題になるケースがあります。このような場合に示談に向けて活動することは可能ですが、加害者と被害者との間に事実関係の認識に違いがある状況となりますので、示談交渉が難しくなったり、示談金額が高くなる可能性があります。

不同意性交等罪

不同意性交等罪の示談金相場は、100万円から300万円となります。

不同意性交等罪の法定刑は、5年以上20年以下の拘禁刑と定められており、罰金刑も定められていないため、重い犯罪に分類されます。そのため、示談金の相場も高額になりやすいです。

不同意性交等罪においても「同意があったか否か」が問題になるケースがあります。

暴行罪

暴行罪の示談金相場は、10万円から30万円となります。

暴行罪の法定刑は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料と定められています。

暴行罪は、被害者の肩を押すといった行為から殴る・蹴るといった行為まで、幅広く処罰されますので、事案によって金額が変動しやすい類型といえます。

傷害罪

傷害罪の示談金相場は、30万円から100万円となります。

傷害罪の法定刑は、15年以下の懲役または50万円以下の罰金と定められています。

暴行によって被害者が負った傷害の程度が特に示談金に影響します。具体的には、傷害等級、入院日数、通院日数などが考慮されます。

窃盗罪

窃盗罪の示談金相場は、被害金額に10万円から50万円を足した金額となります。

窃盗罪の法定刑は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金となります。

窃盗罪の場合、盗んだ物品の金額を算出できる点に特徴があります。そのため、実際の被害金額を弁償することを考慮して示談金を算出することになります。

ただ、例えば盗んだ財布にカード類が入っており、後ほどカード類の再発行手続を行う必要がある場合等には、手続の手間なども考慮して示談金を決定することになる可能性があります。

詐欺罪

詐欺罪の示談金相場は、被害金額と10万円から100万円を足した金額が示談金になります。

詐欺罪の法定刑は、10年以下の懲役となります。罰金刑が定められていないため、窃盗罪と比べると重い罪といえます。

近年、詐欺の種類が多様化しており、いわゆる振り込め詐欺やオレオレ詐欺といった組織的な犯罪も増加しています。そのため、詐欺の種類によって示談金相場が変動しやすい犯罪といえます。

脅迫罪

脅迫罪の示談金は、10万円から30万円となります。

脅迫罪の法定刑は、2年以下の懲役または30万円以下の罰金と定められています。

脅迫罪の場合、脅迫の具体的な態様、脅迫によって被害者にどの程度の精神的苦痛を与えたかによって示談金相場が変動しやすい犯罪といえます。

業務上横領罪

業務上横領罪の示談金は、被害金額+αとなります。

業務上横領罪の法定刑は、10年以下の懲役と定められており、重い罪といえます。

業務上横領罪の場合、自らの勤め先との間で示談交渉をすることが少なくないので、これまでの勤め先との関係性が示談に影響を与えることがあります。

加害者が示談金を用意するまで、被害者が被害届の提出を待ってくれることもありますし、被害者と加害者との間に被害額の認識が異なり、多額の示談金を請求されることもあります。

示談金の相場を変動させる5つの要因

示談金の相場は、事件の類型ごとの目安はあるものの、実際には個別の事情に応じて大きく変動します。以下では、示談金の金額に影響を与える主な5つの要因について解説します。

要因1:被害者の意向

示談交渉において、被害者の態度や示談に対する意向も大きな影響を与えます。被害者が加害者を強く非難している場合や、社会的制裁を強く望んでいる場合には、示談金が高額になる傾向があります。他方で、一定の事情に理解を示してくれている場合には、相場よりも低額で示談が成立することもあります。

要因2:被害の程度

被害者が受けた損害の内容や程度は、示談金額を大きく左右します。例えば、傷害事件であれば怪我の有無やその程度、窃盗事件であれば被害金額の多寡が金額に直結します。また、精神的苦痛が強い場合には、慰謝料として加算されます。

要因3:事件の悪質性や態様

犯罪行為の手口や継続性、組織性なども示談金に影響します。例えば、同種行為が繰り返されている場合や、計画性・執拗性が認められる場合には、通常よりも重く評価され、高額な示談金が必要になる傾向にあります。反対に、突発的・衝動的な事件である場合には、一定程度考慮されることもあります。

要因4:加害者の対応・反省の態度

加害者が誠意をもって謝罪し、迅速に示談金を用意しているかどうかも重要な要素です。反省の態度が認められる場合、被害者が示談に応じやすくなり、金額も抑えられることがあります。他方、反省が見られない、あるいは交渉に時間がかかっている場合には、被害者の心証が悪化し、金額が上がるケースもあります。

要因5:加害者・被害者間の関係性

当事者間に過去の関係があるか否かも、示談交渉に影響を与えます。たとえば、職場や学校など日常的に接点がある場合、被害者が今後の関係性を考慮して高額の示談金を求めることがあります。

他方で、全く面識のない相手との事件であれば、被害者の意向にもよりますが、今後の関係性が示談に与える影響は比較的少ない傾向にあります。

示談金交渉を行う際に注意したいポイント

示談交渉を行う際に注意すべきポイントは、①被害の程度、②被害者の処罰感情、③被害者の精神的苦痛の程度、④加害者の社会的立場や経済状況、⑤加害者の犯罪歴があげられます。

ポイント①

例えば、窃盗罪や詐欺罪といったケースでは、被害額が1万円の場合と100万円の場合で示談金が変動しえます。また、傷害罪であっても、打撲の場合と失明の場合では示談金が変動しえます。このように、被害者に生じた被害の程度に応じて示談金が変動する点に注意して示談交渉を行うことになります。

ポイント②

被害者がどのように考えているかは、検察官が起訴するかどうか判断するにあたって、重要な要素の一つとなります。ですので、被害者が加害者の刑事処罰を望まないのであれば、検察官が不起訴処分の判断をしてくれる可能性が高まります。ただし、犯罪の性質やその具体的な内容によっては、被害者が刑事処罰を望んでないとしても、検察官が起訴すると判断する可能性がある点には注意が必要です。

ポイント③

示談金には、慰謝料の要素も含まれているので、被害者の精神的苦痛の程度が示談金額に影響を与えます。全く同じ事実関係であっても、被害者が異なれば、被害者に生じる精神的苦痛の程度が異なります。被害者と加害者の関係性、加害者の反省の程度等によっても精神的苦痛の程度に違いが生じます。

このように、示談交渉を行う際には、被害者の考え方等の不確定要素が影響するので、注意が必要です。

ポイント④

例えば、高校の教師が高校生に対してわいせつ行為をした事案と会社員が高校生にわいせつ行為をした事案を比較すると、教師の事案の方が示談金が高くなる傾向にあります。

また、会社経営者が30万円で示談した場合と学生が30万円で示談した場合を比較すると、学生の場合の方が反省していると考えられます。学生の方が会社経営者よりも経済的に苦しい状況であるのが通常といえるからです。

このように、加害者の社会的な立場や経済状況は示談金額に影響を与えます。

ポイント⑤

加害者が犯罪歴を有している場合、示談金額が上がる可能性があります。示談金をいくら支払ったかは、加害者本人の反省の程度を示す一つの要素になりますので、示談金を低く抑えることが常に良い結果をもたらすわけではありません。また、「すでに前科が付いているから、示談できないと実刑になる可能性が高い」状況などもあります。このような状況の場合、示談の成立が最優先となりますので、示談金額が高くなる可能性があります。

示談金交渉が難しいケースとは?

示談交渉が難しいケースとしては、①弁護士を付けられないケース、②被害額が大きいケース、③被害者が複数いるケースが考えられます。

ケース①

弁護士を付けずに示談する場合には、被害者が問題ないといえば、加害者と被害者で直接示談することになります。ただ、そもそも「加害者とは直接接触したくない」と示談を断られる可能性がそれなりにありますし、法律知識や交渉経験がない者同士ですと、感情が先行するなどして交渉が難航し、示談の成立が難しくなることがあります。「弁護士を立ててくれれば示談したのに」などという結果にならないように注意が必要です。

ケース② 

示談をしようとしても、被害額が多額であるため示談金を支払うことができないケースがあります。

例えば、詐欺罪で被害金額が1000万円の場合、示談金相場に照らすと、1000万円+αの示談金を支払うことになるのが通常です。この場合において、所持金が100万円しかないときには、被害者がよいと言わない限り、示談が成立する可能性は基本的に低いです。

ケース③

示談交渉は、被害者が一人の場合であっても難しいです。被害者が複数いる場合、それだけ示談交渉も難しくなります。刑事事件は時間に限りがあるところ、複数の被害者と並行して交渉を進めていくことになり、多大な労力や時間を要するからです。

示談交渉を進めていく以上、弁護士に依頼した方が良いことは間違いないですが、以上3つのケースにおいて示談交渉を進めていくのであれば、より弁護士にご相談いただいたうえで対応を検討すべきです。

示談交渉以外で有効に刑事弁護を進める方法

示談交渉以外で有効に刑事弁護を進める方法としては、主に自らの反省文を作成する、加害者を監督していく者の監督方法をまとめた書類を作成する、再犯防止策を立てる、贖罪寄付をするなどが考えられます。

贖罪寄付は、弁護士会等を通じて、示談金相場に相当する金額を寄付し、自らの反省の程度を伝えるものとなります。

示談交渉が重要なのは間違いないですが、示談交渉が決裂したからといって、諦めずに対応を続けていくことも重要です。

まとめ

いかがでしょうか。

刑事事件における示談金には相場という一定の基準があることは事実です。しかし、事案の内容や被害者の意向等によって金額が変動します。自らの反省の程度を示すことにもなりますので、相場よりもかなり低い金額で示談が成立したとしても、必ず良い結果になるわけでもありません。

このように示談金は、様々な要素を考慮して決定する必要がありますので、示談を進めたいと考えている方は、弁護士に相談することを推奨します。

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執筆者 弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会 登録番号48945
弁護士登録後、都内の法律事務所に所属し、主にマレーシアやインドネシアの日系企業をサポート。その後、大手信販会社や金融機関で信販・クレジットカード・リース業務に関する法務やコンプライアンス、プロジェクトファイナンスなどの経験を積む。これらの経験を活かし、個人の法的問題に対し、専門的かつ丁寧に対応しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
プロフィール
岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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