痴漢は何罪にあたる?逮捕の可能性や流れ、冤罪の対処法などを徹底解説!
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記事目次
痴漢は何罪に当たるの?
「電車やバスの公共交通機関での痴漢で逮捕された」といったニュース等を度々目にする方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、痴漢行為がどのような犯罪にあたるのか、仮に逮捕された場合の刑事事件の手続等について解説していきたいと思います。
1:迷惑行為防止条例違反(痴漢)
まず、痴漢がどのような犯罪に当たるのかについてですが、都道府県が定める「迷惑行為防止条例」に違反するとして検挙されるケースが多いものといえます。
東京都の場合、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」という名称です。
条例の第5条1項において、「何人も、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であつて、次に掲げるものをしてはならない。」と定めており、その第1号で「公共の場所又は公共の乗物において、衣服その他の身に着ける物の上から又は直接に人の身体に触れること。」規定し、痴漢行為はこれにあたります。
痴漢行為の罰則としては、第8条1項は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金(第8条1項2号)か、常習として行った者は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」(第8条8項)となります。
具体的にどのような行為が痴漢行為に該当するかについては、着衣の上から身体を触る行為がこれにあたるものと考えられます。
ただし、以下で説明するとおり、触る行為の態様が相手方の反抗を著しく困難にする程度である場合は、不同意わいせつ罪が成立する可能性があります。
2:不同意わいせつ罪
令和5年6月16日、「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律」(令和5年法律第66号)が成立し同年7月13日から施行され、これに伴い、従来の強制わいせつ罪は、「不同意わいせつ罪」へ含まれる形になりました。
不同意わいせつ罪は、刑法第176条に規定されており、第1項で「次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、6月以上10年以下の拘禁刑に処する。」と規定した上で、第1号で「暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。」と定められています。
この「暴行」「脅迫」については、従来の強制わいせつ罪(改正前刑法176条)では、解釈上『相手方の反抗を著しく困難にする程度』であることを要すると考えられておりました。
今回の改正に関する法務省ホームページのQ&Aでは、「不同意わいせつ罪・不同意性交等罪に関する「暴行」・「脅迫」、「心神喪失」・「抗拒不能」要件の改正は、改正前の強制わいせつ罪・強制性交等罪や準強制わいせつ罪・準強制性交等罪が本来予定していた処罰範囲を拡大して、改正前のそれらの罪では処罰できなかった行為を新たに処罰対象に含めるものではありません」とされておりますので、暴行の程度としては、改正前と同様の解釈が成立するものと考えられます。
以上からすると、不同意わいせつ罪が成立し得る痴漢行為としては、乳房や陰部等の性的な部位を直接触ったりする行為であったり、衣服の上からであっても被害者の抵抗を著しく困難にする程度の執拗な態様で陰部等をもてあそぶ行為等がこれにあたると考えられます。
参考URL:性犯罪関係の法改正等Q&A|法務省HP
痴漢事件は逮捕・勾留されるの?
それでは、万が一痴漢行為に及んでしまった場合、逮捕や勾留をされる可能性はどのくらいあるといえるのでしょうか。
たとえば、大都市の通勤ラッシュの時間帯における電車内での痴漢で検挙されたケースを考えてみます。
この場合、通常、痴漢行為を行った被疑者と被害者とは面識がないのと思われます。
そのため、被疑者が被害者に接触し、たとえば痴漢の被害届を取下げさせよう等と働きかけようと思っても、常識的には困難といえます。
そのため、このような面識のない被害者への痴漢行為の場合は、逮捕されることはあっても(そもそも逮捕されず、在宅の事件として捜査が開始する場合もあります。)、長期の身柄拘束である勾留をすることについては、裁判所はやや慎重に判断するのが近時の傾向と考えられます。
ただし、多数の同種前科があったり、現場から逃走するために線路に降りたり、痴漢行為の態様が悪質(不同意わいせつ罪に該当する行為態様)であったりした場合には、逮捕・勾留の可能性が高まるものと思われます。
痴漢事件で逮捕された場合の流れ1:逮捕
痴漢事件で逮捕される流れとしては、電車内で被害者に「痴漢しましたよね?」等と問い詰められながら手首を掴まれ電車を降り(目撃者も一緒に降りるケースもあります。)、痴漢を否定して立ち去ろうとしつつも止められて、駅員室に連行されて逮捕されるのが典型的なケースといえます。
逮捕にも種類がありますが、痴漢行為の直後に逮捕されるのは、通常逮捕(裁判官のあらかじめ発布する逮捕令状による逮捕)ではなく現行犯人として逮捕される場合が多いといえます。現行犯人は、何人でも、逮捕状なくしてこれを逮捕することができます(刑事訴訟法213条)。
逮捕後は管轄の警察署に連行され、弁解録取書等を作成のうえ警察からの取調べを受けます。
そして、警察が弁解聴取の内容等も考慮して、留置の必要がないと考えるときは直ちに被疑者を釈放し、留置の必要があると考えるときは、被疑者が身体を拘束された時から48時間以内に書類・証拠物件とともに検察官に送致する手続を執ります(刑事訴訟法203条1項)。
駅員室に連れて行かれると逮捕確定?
なお、駅員室に連行されたからといって逮捕されることが確定したわけではありません。
上で述べたように、たとえば現場から逃走するために線路に降りたり、痴漢行為の態様が悪質であったり、実は痴漢の被害者が面識のある人物であった等、逮捕の必要性(逃亡・証拠隠滅のおそれ)が高い事案であれば逮捕される可能性も高まりますが、逮捕の必要性が低い事案では、逮捕されずに在宅事件として捜査が進むこともあり得ます。
在宅事件の場合は、警察に身元等の情報を確認され、後日警察署に取調べに来ることを約束した上で一旦帰宅することができます。
痴漢事件で逮捕された場合の流れ2:送致
逮捕後、警察から被疑者の身柄の送致を受けた検察官は、弁解の機会を与えた上、留置の必要があると考えるときは直ちに釈放しますが、留置の必要があると考えるときは、被疑者を受け取った時から24時間以内に、裁判官に勾留の請求をします。
痴漢事件で逮捕された場合の流れ3:勾留
勾留は、逮捕された被疑者について、さらに身体拘束を継続する必要があるときに、検察官の請求により、裁判官が令状(勾留状)を発する処分です。
検察官による勾留請求がされると、裁判官による勾留質問が実施されます(刑事訴訟法207条1項、61条)。
勾留質問では、裁判官が被疑者に対し、疑いを受けている事件を告げてこれに関する被疑者の陳述を聴くことになります。
この勾留質問を経て、裁判官が検察官の勾留請求を却下するか、勾留を決定することになります。
勾留が決定されると、勾留請求日から10日間、引き続き身柄が拘束されます。
さらに、「やむをえない事由」(事件の複雑困難、証拠収集の遅延もしくは困難な事情)があると認めるときは、裁判官は、検察官からの請求により、勾留の期間を延長することができます。
延長は、勾留満期日の翌日から最大で10日間で、10日未満の日数での延長や、複数回の延長も可能ですが、通算して10日を超えることはできません。
以上の勾留期間中において検察官は、事件を起訴するか不起訴するかを判断することになり、勾留期間または勾留延長期間の満期までに、処分保留(釈放)又は公訴の提起(起訴)のいずれかの処分を行います。
痴漢事件で逮捕された場合の流れ4:起訴
勾留中に起訴された場合は、一般的には引き続き勾留が継続されます。
起訴状の謄本は、裁判所から起訴された被告人(起訴後は、「被疑者」から「被告人」に名称が変わります。)に送達されます。
起訴前に選任された弁護人は起訴後も引き続き弁護人となります。
起訴後、弁護人は、被告人を身体拘束から解放するために保釈請求することができます(刑事訴訟法89条、90条)。
そして、第1回の公判期日が検察官と弁護人の準備期間を考慮して、通常起訴されてから約1か月~1か月半あとの日時に決定されます。
痴漢事件で逮捕された場合の流れ5:裁判(公判)
第1回公判の1~2週間前くらいに、検察官から請求予定の証拠が弁護人へ開示されます。
公判では、検察官から犯罪の成立等に関する証拠や意見が提出され、被告人(弁護人)も防御のために自己の主張を提示して反証を行い、裁判所は審理の結果を踏まえて、最終的に犯罪事実の成否を認定し、具体的にいかなる刑とするかを判断します。
犯罪の成立について被告人側に争いのない自白事件の場合、通常は第1回公判期日で審理は終結して、その約2週間後に判決の言い渡しとなります。
他方、争いのある否認事件の場合には、事件の内容や手続の進行によって、判決言い渡しまでの期間が長期化するのが通常です。
痴漢で起訴されたら実刑になるの?
執行猶予がつくことはあるの?
迷惑行為防止条例違反の場合、起訴されたとしても初犯であれば実刑となる可能性は低く、執行猶予判決となる可能性が高いものといえます。
また、起訴される前の段階で、被害者との間で示談が成立すれば原則として不起訴となる可能性が高い事件類型といえます。
示談できなくても、初犯であれば、悪質な事情が無い限りは、約20~30万円程度の罰金刑となることが見込まれます。
初犯・再犯で処分の違いはある?
痴漢事件は、一般的に再犯が非常に多い類型の犯罪と考えられています。
再犯の場合は、起訴不起訴の判断や、起訴後の刑の重さについて、初犯に比べると厳しい判断がされる傾向が強いといえるでしょう。
初犯であっても、再発防止を本人のみの意思に委ねるのではなく、性犯罪の依存症専門のクリニックに通院する等、再犯防止の方策を具体的・現実的に行っている事実を積み重ね、捜査機関や裁判官に伝達することが重要と考えます。
痴漢事件の中で大きな問題となっている”痴漢冤罪”
痴漢冤罪とは、満員電車等で発生した痴漢事件で、被害者とされる女性が、犯人を間違えて申告したり、または、痴漢する故意がない接触を痴漢行為と間違えたりしてしまうケースのことと言われております。
満員電車では、痴漢行為を行うことのできる人物が近くに複数名いることが通常ですが、視界の状況も悪いため、犯人を誤認しやすい状況にあるといえます。
また、混雑する車内では、バック等の持ち物が女性の体に触れたのを直接手で触られたと勘違いするケースも多発しやすいといえます。
痴漢冤罪に巻き込まれないためのポイントは?
周囲の女性に自分の手や持ち物が接触しないように、普段の乗車時にできるだけ気を付けておくべきでしょう。
具体的には、リュックサックを背中ではなく前面にかける、両手はなるべくつり革や柱を掴むようにする等、常識的ではありますが、自分の手や荷物を周囲の女性に勘違いされないような位置に置くことが大切といえるでしょう。
痴漢冤罪の疑いをかけられてしまった場合の対処法
痴漢冤罪で逮捕されてしまった場合、捜査機関からの取調べを受けることになりますが、取調べで供述した内容の細かな矛盾や変遷を、後の裁判で指摘され有罪とされてしまうリスクも想定されるところです。
そのため、冤罪であり、痴漢を否認する事件では、基本的に事件の詳細については黙秘する方針が妥当と考えられています。
なるべく早急に弁護士に相談し、黙秘を含めた今後の対応についてアドバイスを受けることが重要です。
痴漢事件で逮捕された場合は早めに弁護士に相談を
以上のとおり、痴漢事件で逮捕された場合は、外界から遮断され今後の社会生活に大変な不安を感じるばかりでなく、場合によっては長期間身柄が拘束する可能性もあるため、なるべく早期に弁護士に相談し適切な対処法について話し合うべきでしょう。
弁護士を通さずに示談交渉をすることももちろん可能ですが、相手が自分の連絡先を教えることを不安に思い、コンタクトが取れずに交渉が進まないといったケースも多くあります。
自白事件では、早期に示談が成立すれば不起訴を見込むことも可能ですので、示談交渉や身柄解放に向けた活動をしてもらうことも重要といえます。
まとめ
本記事では、痴漢行為がどのような犯罪にあたるのか、痴漢事件で逮捕された場合の手続の流れ等について解説をしました。
痴漢事件で捜査機関から取調べを受け、逮捕されてしまった場合、ご本人やご家族は大きなご不安を抱えていらっしゃることと存じます。
私達、東京スタートアップ法律事務所は、刑事事件でお悩みのご本人やご家族の気持ちに寄り添い、ご本人の大切な未来を守るために全力でサポートさせていただきたいと考えております。
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