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投稿日: 弁護士 宮地 政和

借金地獄に陥る人に共通する問題点や原因と解決方法

借金地獄に陥る人に共通する問題点や原因と解決方法
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浪費やギャンブルをすることなく、ごく普通に働いている会社員であっても借金地獄に陥ってしまう人は少なくありません。また、昨今はコロナ禍が原因による収入減額や、非正規雇用者の解雇・雇い止めなどにより、借金返済が苦しくなるケースも全国的に増加しているようです。
多額の借金を抱え、借金を返済するための借金をしなければならない借金地獄の状態に陥ってしまった場合、どのような対処方法があるのでしょうか。借金地獄に陥る人に共通する問題点や原因、解決方法について解説します。

借金地獄に陥る人に共通する問題点と原因

1.借金地獄に陥る人に共通する問題点

借金地獄に陥る原因は、個々人の性格や生活環境や状況など、様々な要因が考えられます。全ての人に共通するというわけではありませんが、以下のような問題点が借金地獄に陥った人に多くみられます。

①ギャンブルや浪費を止めることができず借金が増加してしまう

借金地獄に陥る人の中には、ギャンブルや浪費により借金を重ねてしまうという問題を抱えている人は大変多いです。パチンコや競馬・競艇などは気付かぬ間に夢中になり、依存症になってしまう方も多数いらっしゃいます。また、高価な車やブランド物のカバン・洋服の購入など、自身の収入で支払うことが難しい価格であるのにも関わらず、買い物の欲求を抑えられない人も珍しくありません。そして、借金返済のためにさらにカード会社から借入れをするということを繰り返した結果、借金地獄に陥り、ついには借り入れることもできなくなってしまうのです。高級車などの購入による浪費は男性に多く、ブランド物購入などによる浪費は女性に多い傾向があります。
このようにギャンブルや浪費を止められない人は、ストレスや自制心の弱さから欲求を抑えられず、感情や行動のコントロールがうまくできない方もいらっしゃいます。

依存症について
ギャンブルや買い物の欲求を抑えることができない場合、依存症の可能性も考えられます。ギャンブル依存症や買い物依存症の方は、借金地獄に陥りやすいといえるでしょう。

ギャンブル依存症は、WHO(世界保健機関)により正式に病気として認められている病的賭博という名称の依存症です。ギャンブル依存症のメカニズムは、アルコールや薬物依存症との類似点が多数あることが判明したため、アルコール依存症等と同じ疾病分類である依存症に位置付けられるようになりました。

ギャンブル依存症の主な症状として、以下のようなものが挙げられます。

  • ギャンブルにのめり込んで借金をしてしまう
  • 勝つことの興奮を止められない
  • ギャンブルで負けたものをギャンブルで取り返そうと考える

買い物依存症は、習慣及び衝動の障害に分類されている疾患とされています。
買い物依存症とよく似た行動に、衝動的な買い物行動があります。衝動的な買い物行動とは、ストレス発散のための買い物や、気持ちが落ち込んだ時・気が大きくなった時などに思わず買ってしまうなどの行動のことで、買い物依存症とは別に分類されています。このような行動をとってしまう方は依存症ではなく、うつ病や双極性障害などに関連した症状での衝動行動の可能性があります。依存症ではありませんが、このような行動をとる方も借金を重ねて買い物をしてしまう傾向にあるようです。

買い物依存症の主な症状として、以下のようなものが挙げられます。

  • 借金をしないと購入できないのに、衝動が抑えられない
  • 身の丈に合わない高価なものだと分かっていても買わないと気が済まない
  • クレジットカードの限度額が上限なのに買い物衝動が抑えられない

依存症の方は、ご自身で欲求をコントロールすることが困難である場合が多いため、周囲のサポートや、専門の医療機関へ相談し治療が必要なケースもあります。

②クレジットカードの支払方法をリボ払いにしている

クレジットカードを利用して買い物をした場合、リボ払い(リボルビング払い)という方法で支払うこともできます。クレジットカードの利用額を把握せずに買い物をしていると支払総額が高額となり、一括払いが困難なためリボ払いを利用するという状況になりかねません。
リボ払いは、毎月一定額を支払えば良く、気軽に利用できる支払方法ですが、一般的に実質年率が約15%前後と高めに設定されていることが多いです。月々返済額が一定金額のため危機感を感じにくいのですが、年利15%というのは消費者金融の借入れ利息とほぼ同じ利率です。そのため、毎月の返済金額を低く設定していると元金が減らないまま手数料と利息だけを払っている状態になり、さらに別の支払いもリボ払いを利用してしまうなど、気がついた時にはリボ残高が高額となり、支払いが困難になる「リボ地獄」に陥ってしまう危険性があるのです。
毎月の利用明細を確認せずに「毎月支払いをしているから大丈夫」などと安易に考えていると、リボ地獄に陥ってしまう可能性があります。

2.借金地獄に陥る原因

①収入減による生活費不足

借入れができるということは安定的な収入があるということです。しかし、勤務先の業績悪化による給与・ボーナスカットや倒産・解雇などにより、突然収入が減少することもあります。特に昨今のコロナ禍により、業種によっては時短営業や期間休業などに追い込まれる企業もあります。特に、非正規雇用者は、会社の業績悪化の影響を受けやすいため契約更新ができず収入が絶たれ、生活費が不足するという方も多いようです。
このように浪費ではなく生活に必要な費用が不足分の補填のために借り入れるという方は意外に多く、収入が増えないために仕方なく生活のための借金を重ねてしまう、という悪循環に陥ってしまうのです。

②住宅ローンや奨学金返済など金額の大きい借入れがある

住宅ローンや奨学金などの金利は使用目的が決まっているため、カードローンと比べて金利は低く設定されていますが、借り入れる金額が大きく、返済期間は長期に渡ります。特に、住宅ローンは、支払う利息の合計金額が多額になります。
住宅ローンを組むためには、安定的な収入があることが求められますが、その他にも、

  • 年齢(支払い完了時の年齢)
  • 健康状態
  • 勤続年数
  • 個人信用情報
  • 物件の評価額

など、様々な条件をクリアすることにより、「返済能力がある」と金融機関が判断し、住宅ローンの審査に通ります。借入額も多額になるため、住宅ローンの審査に通ることは容易ではありません。
返済能力を認められて組むことができる住宅ローンですが、病気や怪我などにより仕事ができず収入が減少する可能性や、勤務先の業績悪化によりリストラに遭いローンを支払うことができなくなる可能性は十分に考えられます。収入の減少が一時的であるケースや、新たな勤務先がすぐに決まるケースなど、数ヶ月程度の収入減少であれば蓄えでなんとかしのぐことはできるかもしれません。しかし、長期に渡る収入減少や子供の教育費や進学など削ることのできない出費のある場合など、貯蓄では賄いきれない場合もあるでしょう。そのような時に、必要な金額だけカードローンで借入れをした場合でも、収入が増えないために結果的に借金を完済することが難しくなり、さらに借金を重ねてしまう、などという借金地獄に陥る可能性は誰にでもあります。

借金地獄に陥った場合の日常生活への影響

このように借金地獄に陥る原因は様々ですが、借金地獄に陥り返済できず滞納してしまった場合、日常生活はどのように変化するのでしょうか。また、キャッシングを繰り返し、貸金業者から借り入れができず、法外な利息で融資をする闇金を利用した場合、日常生活にはどのような影響があるのでしょうか。家族や仕事への影響について具体的に説明します。

1.家族への影響

借金地獄の状態となり借金の返済が滞ると、督促の電話や通知が来るなど日常生活に支障が生じます。特に、家族に内緒で借金をしている場合は、郵送物などが届くと借金をしていることが知られてしまうため、なんとか支払い期日にまでに返済をしなければならない状況になります。借金地獄に陥り貸金業者登録をしている業者から借り入れできず、返済のためすぐに現金が必要だからという理由で、すぐに対応してもらえる金融業者から借入れをすると、後に大変なことになります。借金地獄に陥った人にすぐ融資をする金融業者は、法外な金利で融資する「闇金」と呼ばれる業者がほとんどで、少しの借り入れでも高利ゆえに雪だるま式に借金が膨らんでしまいます。
返済が滞ると、闇金業者は、貸金業者登録している金融業者と違い、厳しい取り立てを行うようになります。具体的には、自宅への直接取立てや脅迫まがいの電話が来るようになり、放置していると実家にも取り立ての電話がくるなど、違法な取り立てをされることもあります。自宅へ取り立てにきてしまうと、家族にはもちろん、近所に闇金からの借り入れがあることを知られ、家族も精神的に追い詰められてしまい、今まで通りの日常生活を送ることができなくなる可能性すらあります。

2.仕事への影響

借金の返済が滞ると、遅延損害金が発生するだけでなく、督促の電話や通知が来るようになります。滞納期間が続くと一括請求の通知が届き、強制執行による給与の差し押さえが行われる可能性があります。給与の差し押さえは、全額ではなく、手取給与の4分の1ですが、給与の4分の3が33万円を超えている場合、その超過分は差し押さえられてしまいます。給与を差し押さえられることで自身の受け取りが少なくなるということよりも、借金をしていることやその支払いを滞納していることを勤務先に知られるダメージは大きく、周囲からの信用を失うことにもなりかねません。雇い主は、借金があることや給与の差し押さえを理由に従業員を解雇できませんが、ご自身は周囲の目が気になり、退職せざるを得ない状況になるかもしれません。
また、多重債務を理由に闇金に手を出してしまった場合は、法外な金利を支払わなければならず、さらに返済が滞ると勤務先へ取り立ての電話がかかるなど周囲に知られる可能性はあります。
このような取り立てはもちろん違法ですが、借金を滞納して違法な闇金業者から借金をしていることを知られてしまうことはご自身にとって大きなダメージになるでしょう。

※闇金融
財務局または都道府県に貸金業者登録をせずに融資を行なっている業者、または登録はしているが出資法を超える金利で貸付をしている業者のことです。
複数の消費者金融などからのキャッシングを繰り返していくと貸金業者登録をしている事業者から借入れができない状態になり、仕方なく貸金業登録をしていない業者(闇金融)を利用する方がいらっしゃいます。「ブラックOK」「多重債務OK」「24時間即融資」など謳っている金融業者は、法定金利を超える利率で融資をする闇金融の可能性が高いので借入れをしないようにしましょう。闇金融は利息が高いため、一度手を出してしまうと借金は雪だるま式に増え、返済不能になる方がほとんどです。

借金地獄から抜け出すための解決方法

1.返済先をまとめると利息が下がり毎月の返済が減額する可能性がある

借金を繰り返していくと借入れ先が増えていき、返済日や残高の把握が困難になります。カードローンやキャッシング先が複数ある場合、おまとめローンを利用してローンを一本化すると、借金残高も把握しやすく、返済日を管理しやすくなります。また、複数社から借入れがあり金額も多い場合、おまとめローンを利用すると毎月の返済額が下がる可能性があります。しかし、おまとめローンを利用しても、借金自体が減額されたり免除されたりするわけではありません。利息も法定利率通り発生します。

2.専門家に依頼して債務整理手続をする

借金地獄に陥った場合、早めに弁護士や司法書士などの専門家へ相談するとよいでしょう。
ご自身の現状と今後どのようにしていきたいという希望を伝えることで、個々に合った解決方法を法律家の視点から提案してもらえます。
ただし、弁護士や司法書士であれば誰でも良い提案をしてくれるとは限りません。債務整理に関する実務経験が豊富で、ご自身の意向に沿った提案をしてくれる専門家であるかを確認した上で依頼しましょう。
弁護士や司法書士に債務整理の手続を依頼した場合、弁護士や司法書士は債権者へ受任通知を送付します。受任通知とは、債務者から依頼を受けた弁護士や司法書士が代理人として債務整理手続を行うことを債権者へ知らせる通知のことをいい、受任通知を受け取った債権者は債務者へ直接取り立てることができなくなる等の法的効力があります。
債務整理手続には、主に、任意整理、個人再生、自己破産という3種類があり、専門家は相談者の現状を踏まえ、意向に沿った解決方法を提案してくれます。

①任意整理

任意整理は、債務整理の中でも利用者数の多い手続です。将来発生する利息分をカットするなど、月々返済可能な金額と期間を決定した上で、債務者側が債権者と交渉する手続です。個人再生や自己破産と違い、裁判所を介さない手続のため、債権者側が交渉に必ず応じる必要はありませんが、自己破産などをされるよりは債権回収が見込めるため、多くの債権者は交渉に応じます。任意整理の特徴は以下の通りです。

  • 将来利息のカット
  • 月々返済額を債務者の支払い可能な金額に見直す
  • 返済期間を3〜5年という長期間に設定できる
  • 過払金が発生している場合は元金から減額する
  • 債権者を選んで任意整理できる
  • 信用情報機関に事故情報が登録される
  • 元金は減額されないので債務が減少するわけではない
  • 安定した収入があることが条件

任意整理は債務者側にメリットの多い手続ですが、将来利息は減額されたとしても元金は減額されないため、大幅に債務が減少するというわけではありません。また、任意整理を行う場合、安定した収入があり、原則として3年で完済可能であることが前提となります。マイホームを手放したくない場合、住宅ローン債権者とは任意整理交渉をせず、従来通りに返済を続けることで手放さずに済みます。
(参考記事:任意整理のデメリットとは?メリットやよくある誤解についても解説
https://tokyo-startup-law.or.jp/legalpark/category04/disadvantage-of-voluntary-liquidation/

②個人再生

個人再生は、住宅ローンの残っている自宅を処分することなく、任意整理よりも大幅に借金を減額できる債務整理手続です。任意整理とは異なり、裁判手続のため、法的な強制力があります個人再生の特徴は以下の通りです。

  • 債務を5分の1減額できる(最大10分の1)
  • 減額した債務を原則として3年間で返済する
  • 住宅ローン特例が認められるとマイホームを手放さずに済む
  • ローンがなければ車を残せる
  • 信用情報機関に事故情報が登録される
  • 官報に公告される
  • 安定した収入があることが条件

個人再生のメリットは、借金を大幅に圧縮できる上に、マイホームを手放さずに済む可能性があることです。ただし、個人再生手続の利用条件として、返済を継続できる安定した収入があること(「継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること」)が求められ、裁判所へ職業や収入などを証明する書類や源泉徴収票などを提出しなくてはいけません。裁判所に申し立てる手続のため、厳格な手順で進められます。継続的または反復した収入を得る見込みがあれば、正社員だけでなく自営業者やパートなどでも個人再生手続を利用することは可能です。
(参考記事:個人再生とは?条件や種類、自己破産や任意整理との違いも解説
https://tokyo-startup-law.or.jp/legalpark/category04/individual-debt-settlement/

③自己破産

自己破産は、債務の免責を受けられるという大きなメリットのある制度です。ただし、現在の収入や資産などの状況を踏まえて、裁判所が支払い不能であると認めなければ、手続を開始できません。例えば、借金総額が多くても収入や資産など考慮した結果、支払うことが可能と裁判所が判断すれば、自己破産は認められないのです。自己破産が認められると借金の支払い義務が免除されることと引き換えに、生活に必要とされる最低限の財産以外のものは手放さなくてはなりません。生活に必要とされる最低限の財産とは、99万円以下の現金や生活用品(家具・家電)などです。自己破産の特徴は以下の通りです。

  • 借金の支払い義務が免除される
  • 家や車などの財産は原則として処分しなくてはならない
  • 税金や罰金等は免責の対象外
  • 生活に最低限必要な一定の現金や財産は手元に残すことができる
  • 信用情報機関に事故情報が登録される
  • 官報に公告される
  • 自己破産の手続期間中、特定の職業・資格に制限がかかる(弁護士・会計士など)
  • ギャンブルによる借金など、借金の理由によっては認められない場合がある

自己破産をすると、戸籍や住民票に自己破産したことが記載されるのではないか、年金や生活保護が受給できないのではないかなどと誤解されることが多いようですが、そのようなことはありません。また、破産手続開始が決定されると一部の職業に制限がかかりますが、免責が認可されると制限は解除されます。
借金の支払いを全額免除される代わりに財産を失うため、ほかの債務整理手続と比較するとデメリットが多いように思えますが、実際は生活に支障が出るほどの大きなデメリットはないといえます。それよりも借金がなくなり、新たな生活がスタートできるという大きなメリットを得ることができます。
(参考記事:自己破産のデメリットは実は少ない?家族や仕事への影響・よくある誤解を解説
https://tokyo-startup-law.or.jp/legalpark/category04/disadvantages-of-self-bankruptcy-to-few/

まとめ

今回は、借金地獄に陥る人に共通する問題点や、その対処法について解説しました。

借金地獄に陥る人は、ギャンブルや浪費だけでなく、毎日の生活費の補填というケースも意外に多いのが現状です。特に無駄遣いをしていなくても病気や親の介護などで勤務時間が減り収入減となる場合や、企業の業績悪化に伴う給与カットや解雇など、誰もが突然借金をしなくてはならない可能性があるといえます。そして、最初は少額の借金であっても、気が付かないうちにその先にある借金地獄に陥る可能性があるのです。借金地獄に陥ってしまったと感じた場合は、できる限り早い段階で債務整理に精通した弁護士に相談することをおすすめします。

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執筆者 弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会 登録番号48945
人生で弁護士に相談するような機会は少なく、精神的にも相当な負担を抱えておられる状況だと思います。そういった方々が少しでも早期に負担を軽くできるよう、ご相談者様の立場に立って丁寧にサポートさせていただきます。
得意分野
企業法務・コンプライアンス関連、クレジットやリース取引、特定商取引に関するトラブルなど
プロフィール
岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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