顧問弁護士の選び方と注意点・7つのチェックポイントについて解説
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近年、企業を取り巻く法的リスクが多様化・複雑化する中、顧問弁護士と顧問契約を結び、リスクマネジメントに取り組む企業が増えています。企業にとって顧問弁護士を付けることは自社のビジネスや方針を理解した弁護士に自社の法的な問題等に関する相談を日常的・継続的にできるという点に大きなメリットがあります。
顧問弁護士との契約を検討しているけれど、どのような基準で選べばよいかわからないという疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、顧問弁護士を選ぶ際の基準やチェックポイント、顧問料の高低だけで顧問弁護士を選ぶリスクなどについて解説します。
【解説動画】TSL代表弁護士、中川が良い顧問弁護士を選ぶ7つのチェックポイントについて解説
企業法務に関する実績があるか
顧問弁護士を選ぶ際、最低限チェックしたいのは、企業法務に関する経験が十分かという点です。テレビCM等で有名な法律事務所だからといって、企業法務の経験が十分とは限らないため注意が必要です。むしろ、テレビCMは企業ではなく一般消費者をターゲットにしているため、テレビCMを頻繁に行っている法律事務所は、一般消費者に関する事件に注力しており、企業法務にはあまり精通していない、ということもあります。
弁護士は、広範囲かつ高度な法的な専門知識を持つスペシャリストとして様々な法的問題を取り扱うことができますが、企業法務に関しては、単に法的な専門知識のみでは十分な対応ができません。というのも、企業法務では、企業活動の中に潜む法的なリスクを予防することがまず重要となりますが、こうしたリスクを予防するためには、法的な専門知識だけではなく、様々な企業法務の案件に関する経験やビジネス自体への理解が不可欠となります。また、企業活動に関わる法律や規制の制定・改定は頻繁に行われているため、最新の法規制や判例に関する知識のアップデートも必要です。加えて、企業のビジネスモデルやコンプライアンスに関する理解等も極めて重要です。
したがって、顧問契約を検討する際は、企業法務に関して十分な経験と実績を持ち、ビジネスに寄り添った対応ができる法律事務所を選ぶことが大切です。
そして、こうした法律事務所か否かを判断するためには、まずホームページをチェックして実績やサービス内容等を確認すると良いでしょう。企業法務を得意とする法律事務所の公式サイトには、契約書の作成・リーガルチェック、債権回収、労働紛争・訴訟対応、株主総会運営、内部統制システムの整備等、企業法務に関する項目が記載されているはずです。また、ホームページをチェックする際は、どのような弁護士が所属しているかについてもチェックすることが有益です。
顧問料とサービス範囲は適切か
顧問弁護士の顧問料は法律事務所によって異なります。企業法務を得意とする法律事務所の多くは、会社の規模やサポート範囲に応じて、複数の顧問契約のプランを用意しています。以前は日本弁護士連合会の報酬基準規定において、事業者向けの弁護士顧問料の最低金額は月額5万円と定められていたため、今でも月額の最低料金を5万円と設定している法律事務所が多いのが実情と思われます。
他方で、月額1万円といった極めて安い顧問料を提案している法律事務所もあります。ただし、このような場合、顧問料の範囲内で受けられるサポートの範囲が非常に狭く、サポート範囲外の依頼をすると追加料金がかかるという料金システムになっている可能性が高いといえます。そのため、顧問弁護士への依頼内容によっては、かえって支払う弁護士費用の総額としては高くなることすらあり得ます。
特に、スタートアップやベンチャー企業では、法務にかけれる予算が少なく、顧問料はできる限り安く抑えたいと思われる方も多いかと思いますが、顧問料だけではなく、顧問料の範囲内で受けられるサポート範囲も必ず確認することが大切です。
自社のニーズに合うか
顧問弁護士を選ぶ際は自社のニーズに合うかという視点も大切です。具体的には、自社のビジネスを進める上で、どのような法的問題やリスクと直面する可能性があるのかを考え、その法的問題等を専門的に扱っている事務所を検討することが考えられます。
例えば、金融業界やヘルスケア業界など業界独自の法規制が多数存在する業界の場合、当該業界の状況や法規制に精通した弁護士を選ぶことが重要です。顧問弁護士が、業界の実情やビジネス内容、関連法規について十分に理解できていないと、自社のビジネスに潜むリスクを指摘したり、的確なアドバイスをしたりすることができないからです。
また、AI(人工知能)、IoT、自動運転など、革新的な新技術を活用したビジネスに取り組む場合、アイデアを実現しようと取り組んでいたら、知らない間に法規制に抵触していたというケースもあります。そのようなリスクを防ぐためにも、顧問弁護士に自社のビジネスモデルを説明し、適法性をチェックしてもらうことが非常に重要です。
適法性のチェックについては、特に、新しい分野に関する法律やガイドライン等は十分に整備されていない場合も多いため、公開されている情報のみからは適法性の判断が難しい場合もあります。そのような場合には、グレーゾーン解消制度や新事業特例制度を利用して適法性を確認するという方法もあります。
グレーゾーン解消制度や新事業特例制度は、2014年1月から施行された産業競争力強化法により、企業が計画中の事業内容に即した規制改革を進めるために創設された制度です。これらの制度を利用するためには、申請書類の作成が必要となります。この申請書の作成にあたっては、顧問弁護士に自社の事業計画等を理解してもらい、自社のビジネスが現行の法規制に抵触しないか事前に確認してもらうと共に、自社のビジネスが適法であることを説明するための法的論理を申請書に盛り込むことも効果的です。
もっとも、新しい分野に関する業界知識を持つ弁護士は少ないため、そのような弁護士を探すことは、通常の法律事務所の中からでは難しいかもしれません。この点、スタートアップ企業やベンチャー企業のサポートを得意としている法律事務所なら、新しいビジネスモデルの適法性判断の経験と実績を持つ弁護士が在籍している可能性が高いといえます。
また、海外進出を検討する場合、進出先の国の法律や国際社会を規律する国際法に照らしたリーガルチェックが必要となります。そこで、自社が海外進出を検討している場合は、国際法務に強い法律事務所を顧問とすることを検討し、さらには、進出を考えている国の法務に精通している弁護士が在籍しているかを確認しましょう。
ビジネスに対する考え方や価値観が合うか
顧問弁護士の価値は、自社のビジネスや価値観等をどれだけ理解してくれるかによって決まると思われます。一般論として、弁護士はリスクを回避することに重点を置くことが多いため、企業法務に関しても保守的な提案をする弁護士が多いと思われます。もっとも、ビジネスとリスクは往々にして表裏の関係にあり、すべてのリスクを回避してビジネスを進めることは現実的とはいえません。そこで、企業法務を扱う弁護士は、ビジネス感覚をもって柔軟に物事を考えた上で、具体的な事案に照らして問題となるリスクの軽重をジャッジし、経営判断のための適切な材料を提供するという姿勢が重要となります。
例えば、現在企画中のサービスに法的なリスクがあることが発覚したとします。前述のとおり、弁護士はリスクを回避することに重点を置く傾向があるため、「法律に抵触する可能性があるので、この企画は中止してください」と助言する弁護士も多いと思います。しかし、特に新しい分野にチャレンジする場合や、ベンチャー企業やスタートアップ企業などが新しいビジネスを行おうとする場合においては、時には敢えてリスクを取るという選択が必要な場面もあります。そこで、この例のような場合、単にサービスの法的なリスクを指摘してビジネスの中止を提案するのではなく、そうしたリスクを回避するにはどうしたら良いか、代替案はないか等を提案できる弁護士こそが企業の発展に貢献してくれる理想的なビジネスパートナーといえるでしょう。
また、顧問弁護士とは長期間に渡って信頼関係を構築していくことになるため、人としての相性も大切です。相性が良いかをすぐに判断するのは難しいかもしれませんが、ブログやSNSで情報発信をしている弁護士なら、その内容に共感できるか否かが一つの判断基準となるでしょう。
コミュニケーションがスムーズに取れるか
顧問弁護士とスムーズにコミュニケーションが取れるかという点も大切なポイントです。これを判断するためには、主に以下のような点を見ることが考えられます。
- 説明のわかりやすさ
- レスポンスの速さ
- コミュニケーション手段
各要素について順番に説明します。
1.説明のわかりやすさ
顧問弁護士とスムーズにコミュニケーションを取る上で、説明のわかりやすさは非常に重要な要素です。難解で複雑な法律の問題をわかりやすい表現で説明する能力は弁護士として当然求められる能力だと思われるかもしれませんが、実際は、難解な法律の専門用語を使って理解不能な説明をする弁護士も存在します。そのような場合、弁護士の説明が理解できないのは自分の知識不足のせいだなどと思う必要はありません。ほとんどの場合、そういうときは弁護士の説明の仕方に問題があるといえます。特に、顧問弁護士を検討する最初の段階で説明がわかりにくい場合、そうした弁護士はコミュニケーション能力に問題があるケースもあるため、慎重に判断する必要があります。
説明のわかりやすさを見極めるためには、実際に会って話をするのが一番確実ですが、弁護士がブログやSNSで情報発信している場合は、その文章がわかりやすいかを確認するのも一つの判断基準となるでしょう。
2.レスポンスの速さ
ビジネスにはある程度のスピードが求められる場面も多いので、レスポンスの速さも大切です。多くのクライアントを抱えている弁護士は、一般的に多忙なので、「今すぐ相談したい。」という要望には応えられない場合もあるかもしれません。もっとも、そのような時でもレスポンスが早めに返ってくると、その後の段取りがスムーズに進むと思います。そのような気遣いができる弁護士かどうかという点も見極めておくとよいでしょう。
3.コミュニケーション手段のバリエーション
最近は、働き方改革や新型コロナウィルスの影響もあり、テレワークを導入して、日常的にChatWorkなどのチャットツールやオンライン会議ツールを利用して、社内間や取引先とコミュニケーションを取る企業が増えています。弁護士業界でも、チャットツールやオンライン会議ツールの導入は進んでいますが、未だに電話とメールでの連絡しか受け付けていないという法律事務所も多数存在します。しかし、電話とメールのみでは、スムーズなコミュニケーションが取れない可能性も高いため、注意が必要です。
特に複数の関係者間で情報共有が必要な案件の場合、電話とメールだけでは十分なコミュニケーションが取れない可能性が高いでしょう。そこで、顧問弁護士と契約する際には、対応可能なコミュニケーションツールについても確認することが有用です。この点については、スタートアップ企業やベンチャー企業を顧問として多数抱える法律事務所であれば、事務所内のITインフラも十分に整備されていることが多いため、自社で使用しているツールでコミュニケーションを取れることが期待できます。また、チャットツールの使用は、前述のレスポンスの速さにも大きく影響するため、顧問弁護士を選ぶ際は重要なポイントです。
心理面に配慮した対応ができるか
近年、職場内での対人関係のトラブルやハラスメント等が原因で、うつ病などの精神疾患を発症する方が増えています。精神疾患を発症した従業員との間で問題が発生した際、円滑に問題を解決するためには、法律の専門知識だけではなく、そうした従業員の心理面に配慮した対応が求められます。労使間トラブルを円満解決するためには、精神的に不安定な従業員の気持ちに寄り添い、心情を汲み取ることが非常に重要なポイントとなることが多いです。そのため、顧問弁護士を選ぶ際は、従業員の心理面に配慮できる弁護士を選ぶこともが大切です。心理面に配慮できるかを見極めるのは難しいですが、ブログなどで情報発信している弁護士の場合、労務問題に関するブログ記事を読むことで、その弁護士の考え方などを垣間見ることができるかもしれません。
経営に関する相談ができるか
企業が直面する問題の中には、法律・経営・会計など幅広い専門知識が求められる問題も多いです。例えば、最近は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により業績が悪化し、人件費削減を検討する企業も増えています。そのため、法律だけではなく、経営や会計の専門知識を併せ持つ顧問弁護士に相談することにより、法的リスクを回避しながら人件費削減を実現できる可能性が高まります。また、こうした顧問弁護士には、人件費削減以外の業績改善に向けた施策を提案してもらうことも期待できます。
顧問料の安さだけで顧問弁護士を選ぶリスク
前述の通り、最近は月額1万円以下という格安の顧問料金を設定している法律事務所も存在します。月額の顧問料が安いと、月の固定費を削減できるというメリットがあり魅力的に感じますが、顧問料の範囲内で受けられるサポートの範囲が非常に狭い場合も多く、十分なサポートを受けられない可能性が高いため、注意が必要です。
法的な問題に直面して相談したら、想定外の問題が発覚したため対応に時間がかかり、高額な追加料金を請求されるという可能性もあります。そこで、顧問料金内で受けられるサポートの範囲が狭いと、法的な問題が起きた際、最終的にどの程度の費用がかかるのか事前に把握できないというリスクがあるという点は認識しておきましょう。
また、顧問弁護士の最も重要な役割は、企業が法的なトラブルに巻き込まれないよう事前に予防策を講じる予防法務です。しかし、月額1万円以下では具体的な予防法務に取り組むことは現実的に難しいと思います。企業が労使間トラブルによる損害賠償請求や売掛金の回収不能などのトラブルに巻き込まれることは決して少なくありません。それらのトラブルに対する予防策を事前に講じる予防法務に取り組むことは、トラブルにより企業が被る損害を最小限に抑えることに繋がります。そこで、顧問弁護士を選ぶ際は、顧問料の安さだけではなく、時間をかけて十分かつ具体的な予防法務に取り組むことができるかという点も確認することをおすすめします。
まとめ
今回は、顧問弁護士を選ぶ際のチェックポイントとして以下の5つの点を挙げて解説しました。
- 企業法務に関する実績があるか
- 顧問料とサービス範囲は適切か
- 自社のニーズに合うか
- ビジネスに対する考え方や価値観が合うか
- コミュニケーションがスムーズに取れるか
- 心理面に配慮した対応ができるか
- 経営に関する相談ができるか
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- 得意分野
- 企業法務・コンプライアンス関連、クレジットやリース取引、特定商取引に関するトラブルなど
- プロフィール
- 岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務