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更新日: 弁護士 宮地 政和

内定取り消しは違法になる?認められるケースや連絡を受けた場合の対応を解説

内定取り消しは違法になる?認められるケースや連絡を受けた場合の対応を解説
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「内定取り消し」とは?

「内定取り消し」とは、企業が求職者に対して採用内定の約束をしたにもかかわらず、一定の事由が生じた場合に企業が留保した解約権を行使し、採用内定の約束を破棄することをいいます。

解約の事由には、主に企業側の事情によるものと、求職者側の事情によるものがあります。

内定取消しは違法なのか?

採用内定は、一般的に始期付解約権留保付労働契約といわれます。すなわち、採用内定の時点から採用内定者と採用者との間で労働契約は結ばれており、労働契約の始期が実際の入社日以降になっています。

そのため、採用側が採用内定者の内定を取り消すことは、解雇と同視されることになります。

労働法16条は、解雇は濫用してはならないという解雇権濫用法理の規制が規定されていますが、同条の類推適用によって、内定取り消しも厳しく判断されます。

最高裁判所は、採用内定通知によって始期付・解約権留保付の労働契約が成立したと判断し、留保解約権の行使は客観的に合理的で社会通念上相当として是認することができる場合に限り認められると判断しました(大日本印刷事件・最二小判昭和54・7・20民集33巻5号582号)。

したがって、内定取り消しをすることが客観的に合理的で社会通念上相当と認められない限り、内定取り消しは違法となります。

なお、ここで判断要素となる事実は、採用内定当時知ることができず、知ることが期待できないような事実に限られます。

内定取り消しを受けた場合どうしたらいい?

内定取消しの通知を受けた場合、まずは、会社に対して内定取り消しの理由を記載した書面を取り寄せてください。

内定取り消しが口頭で告げられただけの場合には、取消理由の書面を求め、書面を拒否された場合には、内定取り消しに至るまでのやり取りをメールや電話で記録・録音することで証拠を残すようにしてください。

内定取り消しが認められるケース

内定の取り消しをすることが客観的に合理的で社会通念上相当と認められる場合、内定の取り消しが認められます。

求職者に原因がある場合

内定取り消しが認められる最も典型的なケースは、留年してしまった場合です。内定通知書や誓約書の記載されることも多い内定取り消し事由です。

次に、病気で就労できない場合も比較的認められやすい内定取り消し事由となります。もっとも、身体的なケガや病気で数日から数ヶ月で就労できる見込みがあると、内定取り消しが違法となることがあります。

また、経歴詐称等虚偽の申告をしていた場合も内定の取り消し事由となります。ここで内定の取り消し事由となるのは、今後の労務提供・企業との信頼関係維持に問題があるような虚偽の内容・程度が重大であるものに限られます。

さらに、内定者側に非違行為、例えば刑事処分を受ける等があった場合も、内定の取り消し事由となります。

企業側に原因がある場合

採用内定後に経営悪化や定員超過など企業側の理由による内定取り消しがあります。

このような内定取り消しは、整理解雇と同視され、適法性が厳しく判断されます。

そのため、企業側において内定取り消し回避に向けて相当な努力が必要となります。

また、内定取り消しせざるを得ない場合であっても、内定者との和解・示談協議を行い、内定取り消しに向けた努力が必要となります。

人選の合理性については、正社員より先に採用内定者の内定を取り消すことに合理性が認められますが、採用内定者が正社員として就労する予定である場合は、非正規社員を採用内定者より優先的に雇用解消することが認められます。

内定取り消しの撤回を求めるには?

内定取り消しの撤回を求めるには、専門家の力を借りるのが一番です。

具体的な相談先について解説します。

弁護士に依頼する

内定取り消しの撤回を求めるためには、採用側の内定取り消しの理由を精査し、法律的な専門知識を用いて企業と交渉する必要があります。

企業と交渉する上で法的な主張を組み立てる必要があり、労働法の深い知見が必要となるため、法律の専門家である弁護士に依頼するのがおすすめです。

弁護士に相談する際は、内定取り消しの理由を記載した書面やメールなど会社とのやりとりをした記録を持参していただき、ご相談いただけるとスムーズに対応できると思います。

都道府県労働局に相談する

都道府県の労働局では相談窓口を設けています。

相談窓口では、専門の相談員が対応するため、今後どのように対応すべきかアドバイスを聞くことができます。

また、相談を通じて労働局が企業への指導を行なったり、紛争調整委員会によるあっせん制度により、お話し合いでの早期解決を支援するといった制度があるため、労働局にご相談いただき、解決を図るのも一案です。

別の転職先を探すのも一つの手段

内定取り消しの撤回を求め、専門家や専門機関を通して話し合い、解決を図ったとしても、内定の取り消しをするような企業と今後信頼関係を構築できるのか、内定取り消しをするような企業が経営的に大丈夫なのかはまた別の話です。

内定取り消しの撤回を受けたとしても、解決金や示談金で解決し、別の職場を探すのも一つの手段です。

内定取り消しに関する相談は東京スタートアップ法律事務所

ここまで説明してきた通り、内定取り消しについての対応は当事者だけでは難しいものです。

専門家の視点からのアドバイスを受けたり、交渉を行うことが解決の近道になるでしょう。

東京スタートアップ法律事務所では、内定取り消しに関する労務問題の相談も受け付けております。

ぜひお気軽にご相談ください。

まとめ

今回は、内定取り消しに関して解説しました。

内定先の企業から内定取り消しの通知を受けた場合、内定取り消しの理由を記載された書面を交付されることで、専門機関への相談や対応もスムーズに行うことができるので、内定先の企業から内定取り消しの理由が記載された書面の交付を受けることが大切です。

内定取り消しについてご相談があれば、お気軽にご相談ください。

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執筆者 弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会 登録番号48945
弁護士登録後、都内の法律事務所に所属し、主にマレーシアやインドネシアにおける日系企業をサポート。その後、大手信販会社や金融機関に所属し、信販・クレジットカード・リース等の業務に関する法務や国内外の子会社を含む組織全体のコンプライアンス関連の業務、発電事業のプロジェクトファイナンスに関する業務を経験している。
得意分野
企業法務・コンプライアンス関連、クレジットやリース取引、特定商取引に関するトラブルなど
プロフィール
岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社