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更新日: 代表弁護士 中川 浩秀

不同意わいせつが未遂だった場合の刑罰は?加害者となってしまった場合のすべきこと

不同意わいせつが未遂だった場合の刑罰は?加害者となってしまった場合のすべきこと
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不同意わいせつ罪(旧:強制わいせつ罪)という言葉は、ニュースなどで耳にすることがあっても、具体的な法律の定義や、未遂の場合にどのような罪に問われるかまで詳しく理解している方は少ないかもしれません。

「行為におよぼうとしたが、途中でやめた」「相手に抵抗されて未遂に終わった」という場合でも、法律上は厳しく処罰される可能性があります。

「ほんの出来心だった」「相手も合意していると思った」……ご相談に来られる方の中には、一時的な感情や認識のズレから事件の当事者となってしまった方々もいらっしゃいます。

しかし、性犯罪への処罰感情が高まる昨今、たとえ未遂であっても初動を誤れば取り返しのつかない事態になりかねません。

この記事では、不同意わいせつ罪(旧:強制わいせつ罪)の未遂に関する法的責任、逮捕後の流れ、そして加害者となってしまった場合に知っておくべき適切な対処法について、刑事弁護を担当してきた弁護士監修の観点からわかりやすく解説します。

不同意わいせつ行為とは

性犯罪に関する法律は、近年の刑法改正により大きく変化しています。

これまでは「強制わいせつ」罪と呼ばれていた犯罪は、2023年(令和5年)7月の改正刑法施行に伴い、「不同意わいせつ」罪としてその名称と成立要件が変更されました。

ここでは、新設された不同意わいせつ罪の定義と、旧法との違いについて解説します。

不同意わいせつ罪が成立する要件

不同意わいせつ罪(刑法176条)は、端的には、相手の同意を得ないでわいせつな行為をした場合に成立します。

具体的には、以下の8つの行為や状態のいずれかに該当し、相手が「同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態」にあることに乗じてわいせつな行為をした場合、処罰の対象となります。

  1. 暴行または脅迫を用いること
  2. 心身の障害を生じさせること
  3. アルコールや薬物を摂取させること
  4. 睡眠やその他の意識不明瞭な状態に乗じること
  5. 同意しない意思を形成・表明・全うするいとまがないこと
  6. 恐怖や驚愕(きょうがく)させること
  7. 虐待に起因する心理的反応を生じさせること
  8. 経済的・社会的関係上の地位に基づく影響力を行使すること

特に注意が必要なのが「5. 同意しない意思を形成・表明・全うするいとまがないこと」つまり不意打ちによる場合です。

例えば「拒絶されなかったから同意だと思った」という主張は、不意打ちでキスをしたり触ったりした場合には通用しないことが多いかと思われます。

実務上も、この「不意打ち」の解釈を巡って争いになるケースは少なくありません。

また、これらの行為を実行しようとしたものの、何らかの理由で遂げなかった場合は、「未遂罪」として処罰されます(刑法180条)。

出典:e-Gov法令検索「刑法」第176条

不同意わいせつ罪との違い

2023年7月の改正前は「強制わいせつ罪」という名称でしたが、この旧法では、犯罪の成立要件として主に「暴行または脅迫」が必要とされていました。

しかし、性犯罪の類型においては、暴行や脅迫がない場合であっても、恐怖で体がすくんでしまったり、自分と相手との立場の差を利用されて断れなかったりするケースが多く存在します。

こうした実態を踏まえ、改正法では「不同意わいせつ罪」として、処罰対象となる行為の範囲が明確化・拡大されました。

以前は「暴行や脅迫がないため罪に問えない」とされたようなケースでも、現在は「不同意わいせつ罪」として厳正に処罰される可能性があります。

不同意わいせつ罪は未遂でも罰則を受ける

前述のとおり何らかの理由でわいせつ行為を遂げなかった場合、例えば「わいせつな行為をしようとしたが、相手に逃げられた」「服を脱がそうとしたが、抵抗されてやめた」といった場合であっても、行為が完了していないからといって罪にならないわけではありません。

法律上、不同意わいせつ罪には未遂罪が存在し処罰の対象となります。

不同意わいせつ罪が未遂だった際の罰則

不同意わいせつ罪の法定刑は、「6ヶ月以上10年以下の拘禁刑」です(刑法176条)。

そして、未遂の場合(刑法180条)もこの法定刑の範囲内で処罰されます。

  • 既遂の場合: 6ヶ月以上10年以下の拘禁刑
  • 未遂の場合: 原則として同等の法定刑が適用される(ただし、裁判官の裁量により刑が減軽されることはある)

つまり、たとえ未遂であっても、起訴されれば公開の法廷で裁かれ、実刑判決(刑務所に収容されること)を受けるリスクがある重い罪なのです。

「実際に触っていないから大丈夫だろう」「未遂だから軽い刑で済むだろう」という安易な考えは通用しないでしょう。

なお、不同意わいせつ罪には罰金刑の規定がなく、有罪となれば拘禁刑か執行猶予付きの判決となります。

「未遂なら執行猶予がつくだろう」と楽観視するのは危険です。

たとえ未遂であっても、行為の悪質性が高い場合や、過去に同種の犯罪歴がある場合は、初犯であっても実刑判決(刑務所への収容)が下される可能性は十分にあります。

裁判官は「結果」だけでなく、「犯行の態様」や「再犯の可能性」も厳しくチェックします。

出典:e-Gov法令検索「刑法」第180条

不同意わいせつ罪が未遂だった際に刑を軽減する方法

未遂事件において、刑の重さを左右する要素はいくつかあります。

もし加害者となってしまった場合、適切な対応をとることで、刑の減軽(刑を軽くすること)や執行猶予を獲得できる可能性があります。

中止犯(刑法43条ただし書き)

自分の意思で犯罪を中止した場合、「刑を減軽または免除する」と定められています。

例えば、わいせつ行為をしようとしたが、途中で後ろめたい気持ちから、自らやめた場合などが該当する可能性があります。

ただし、「警察官が来たから逃げた」「被害者に激しく抵抗されたから諦めた」といった外部的な要因で中断した場合はこの中止犯に該当しないものと判断され、必ずしも刑が減軽されるとは限りません。

示談の成立

性犯罪において、被害者との示談が成立しているかどうかは、検察官が起訴・不起訴を判断する際や、裁判官が量刑を決める際に極めて重要な要素となります。

被害者に対して真摯に謝罪するとともに被害者からの許しを得ていることは、最大の情状酌量事由となります。

自首(刑法42条)

事件が捜査機関に発覚し犯人が誰か判明する前に、犯人が自ら警察に出頭して罪を申告することを自首といいます。

自首が成立すれば、刑が減軽される可能性があります。

いずれにせよ、未遂であってもご自身だけで判断せず、専門家の助言に基づいた行動が必要です。

不同意わいせつ罪で逮捕された場合

不同意わいせつ罪(またはその未遂)で警察に逮捕されると、日常生活から隔離され、長期間にわたって身柄を拘束される可能性があります。

ここでは逮捕後の手続の流れについて解説します。

逮捕された後の流れ

逮捕から起訴・不起訴の決定までは、法律で時間制限が設けられています。

  1. 逮捕~送検(48時間以内)
    警察で取調べが行われ、事件が検察庁へ送られます(送致)。
  2. 勾留請求の判断(24時間以内)
    検察官は、さらに身柄拘束を続ける必要があるか(勾留請求するか)を24時間以内に判断します。
  3. 勾留(原則10日間、最大20日間)
    裁判官が勾留を認めると、原則10日間、延長されれば最大20日間、警察署の留置施設などに拘束され、取調べが続きます。
  4. 起訴・不起訴の決定
    検察官は勾留期間満了までに、被疑者を裁判にかけるか(起訴)、かけないか(不起訴)を決定します。起訴されれば刑事裁判となり、不起訴となれば釈放されます。

この最大23日間の間、加害者は身体拘束を受けている以上、会社や学校に行くことはできず、社会的な信用を失うリスクが高まります。

まず弁護士に相談

もしご家族が逮捕された場合、あるいはご自身が事件を起こしてしまった場合、一刻も早く弁護士に相談することが何よりも重要です。

  • 接見(面会)の実施: 逮捕直後の72時間は、原則として弁護士以外の家族であっても面会が制限されることが一般的です。
    弁護士であれば制限なく接見でき、被疑者本人から状況を聞き取るとともに、取調べについてアドバイスや被疑者本人の精神的なサポートを行うことができます。
  • 早期釈放への活動: 逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを主張し、勾留を阻止したり、早期に釈放されるよう働きかけたりすることができます。
    他方で、単に「逃げません」と言うだけでは不十分だといえます。
    例えば被疑者のご家族に協力いただき「身元引受書」を作成していただいたり、職場への影響を考慮した上申書を提出したりと、具体的な監督体制を裁判官や検察官に提示し、説得力のある釈放交渉を試みます。
  • 示談交渉の開始: 性犯罪事件において、被害者との示談は不起訴処分獲得のために不可欠ですが、加害者側が直接被害者に連絡を取ることは禁止されるケースがほとんどです。
    弁護士が代理人となることで、スムーズに交渉を進められます。

不同意わいせつ未遂となった場合に気を付けるべきこと

未遂であっても被害者には大きな精神的ショックを与えていることでしょう。

事件発生後の対応を誤ると、被害感情を悪化させ、重い刑につながる可能性があります。

ここでは加害者側が特に注意すべきポイントを解説します。

謝罪は被害者の心の準備ができてから

事件後、反省の気持ちから「すぐに謝罪したい」と考えるのは自然なことですが、性犯罪被害者の多くは、加害者に対して強い恐怖心や嫌悪感を抱いています。

無理に連絡を取ろうとしたり、押しかけたりする行為は、被害者をさらに傷つけ、場合によっては「脅迫された」「反省していない」と受け取られかねません。

絶対NG!SNSでの特定・連絡

ご相談の中で見受けられるものとして、「謝りたい一心で、SNSで被害者のアカウントを探し出して直接メッセージを送ってしまった」というケースです。

これは被害者に恐怖を与えるだけでなく、「ストーカー規制法違反」などの新たな嫌疑をかけられる可能性のある行為です。

そのためまずは自分で被害者に対して直接的なアクションは起こさず、弁護士の指示を待ったほうがよいでしょう。

謝罪や示談の申し入れは、時間制限がある中でもなるべく被害者の心情を最優先に考え、タイミングを慎重に見極める必要があります。適切な方法で謝罪し、示談が成立すれば、被害届の取り下げや不起訴処分につながる可能性が高まりますが、それはあくまで被害の回復と被害者の許しがあった上での結果です。

示談交渉は謝罪をしてから

示談交渉において、「お金を払うから許してほしい」という態度は禁物です。

示談とは、本来「当事者同士の話し合いによる解決」を意味します。

謝罪だけではなく、被害者の言葉に耳を傾け、犯した罪の重さと向き合うことも重要だといえるでしょう。

被害の回復や金銭的な賠償の話は、被害者側と話し合いが可能となった後のステップであることを忘れてはいけません。

示談は弁護士を通してのみ行う

性犯罪事件において、加害者本人やその家族が直接被害者と示談交渉を行うことは、避けるべきです。

  1. 連絡先を知らないケースが多い: 被害者の連絡先を知らない場合、捜査機関は加害者に教えてくれません。弁護士であれば、「示談のために限り」という条件で捜査機関を介して被害者の了解を得て連絡先を教えてもらえる可能性があります。
  2. 二次被害の防止: 加害者が直接交渉すると、被害者に威圧感を与え、トラブルが悪化する恐れがあります。
  3. 適正な内容での合意: 法律のプロである弁護士が間に入ることで、双方が納得できる適正な条件での示談書を作成し、後日のトラブルを防ぐことができます。

まとめ

不同意わいせつ罪(旧:強制わいせつ罪)は、未遂であっても既遂と同様の重い刑罰が科される可能性のある重大な犯罪です。

しかし、事件後の対応次第では、被害者との示談成立などを通じて、起訴を免れたり(不起訴)、刑が軽くなったり(執行猶予など)する余地は残されています。

重要なのは、ご自身だけで判断せず、直ちに刑事事件の経験豊富な弁護士に相談することです。早期の対応が、ご自身やご家族の未来を守るための第一歩となります。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士として、男女問題などの一般民事事件や刑事事件を解決してきました。「ForClient」の理念を基に、個人の依頼者に対して、親身かつ迅速な法的サポートを提供しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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