傷害罪とは?構成要件や罰則、暴行罪との違いなどを解説
全国20拠点以上!安心の全国対応
初回相談0円
記事目次
傷害罪とは一体何?
傷害罪という言葉を耳にしたことがある方は多いと思いますが、一体どんな行為が傷害罪にあたるのでしょうか。
刑法第204条では、次のように定められています。
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
このように、傷害罪は、他人の身体を傷害する場合に成立する犯罪です。
それでは、どのような場合に「傷害」したといえるか、以下にて詳しく解説します。
そもそも「傷害」とは?
「傷害」の意義に関し、まず、身体の生理的機能の障害や、健康状態の不良な変更を意味すると考える見解があります。
判例もこの見解立つと考えられています。
この見解よりも広く、身体の完全性の侵害を意味すると考える見解もあります。
2つの考え方の違いとしては、たとえば、毛髪を切ることといった、外見に対する重大な変更を傷害に含めるか否かという点にあります。
前者の見解では、生理的機能が壊されているわけでもなく、健康状態が不良となっていないのであれば、傷害に当たらないことになりますが、後者の見解では、身体の完全性を侵害しているといえるので、傷害に当たることになるでしょう。
「傷害」という言葉の通常の理解にも合致するとして、前者の生理的機能の障害と考える見解が通説といえます。
同時傷害の特例とは?
刑法第207条は、同時傷害の特例として、「二人以上で暴行を加えて人を傷害した場合において、それぞれの暴行による傷害の軽重を知ることができず、又はその傷害を生じさせた者を知ることができないときは、共同して実行した者でなくても、共犯の例による。」と定めています。
これは、共犯の場合には、たとえば甲と乙が共謀して、丙に暴行を加え、丙に傷害を負わせた場合には、共犯であることから、丙の傷害が甲乙のどちらの暴行から生じたのか明らかではなくとも、甲乙は傷害の結果について刑事責任を負うことになります。
これが共犯の一部実行全部責任の原則と言われるものであり、刑法60条は「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。」と定めております。
これに対し、甲乙に意思の連絡がない場合は、どちらの暴行から丙の傷害が生じたのか因果関係が明らかでない場合は、「疑わしきは被告人の利益に」の原則から、本来、甲乙ともに暴行罪の限度で責任を負うことになるはずです。
この点について、刑法第207条は、同時傷害の場合の特例を定め、個々の暴行と傷害の因果関係を推定したものと考えられます。
傷害罪の法定刑は?
傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役又は50万円以下の罰金」(刑法204条)であり、傷害の程度によっては、重い懲役刑が科されることもあります。
傷害にも様々な例が考えられますが、外部からの衝撃により発生した擦過傷(擦り傷)や、創傷、打撲傷ばかりでなく、病気に罹患することやPTSD(外傷後ストレス障害)等も傷害にあたり得ます。
傷害罪に関連した犯罪との違い
それでは、傷害罪に関係するその他の犯罪については、どのようなものがあるでしょうか。
1. 暴行罪
暴行罪は、刑法第208条で次のように規定されています。
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
「暴行」とは、他人の身体に対する有形力の行使をいうものと考えられています。
殴ったり蹴ったりすることが暴行にあたることはイメージ通りですが、このほか、音や光などの物理的な力を用いる場合も含まれますので、拡声器で大声を発する行為も暴行にあたります。
暴行罪は、刑法第208条の条文のとおり、暴行を加えたものの、結果として傷害は発生しなかった場合に成立する犯罪となります。
2. 傷害現場助勢罪
刑法第206条は、「前2条の犯罪(注:傷害罪(204条)・傷害致死罪(205条))が行われるに当たり、現場において勢いを助けた者は、自ら人を傷害しなくても、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。」と規定しています。
典型的には、喧嘩の現場において双方の喧嘩を煽り立てるような行為がこれにあたるものと考えられます。
3. 過失傷害罪
刑法第209条は、第1項で「過失により人を傷害した者は、30万円以下の罰金又は科料に処する。」と定めており、また、第2項で「前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」と定めています。
傷害罪(刑法第204条)は、故意による傷害行為を犯罪として規定したものとなりますが、過失であっても傷害を発生させた場合には過失傷害罪が適用されるものとなりますが、親告罪であり、告訴すなわち被害者等による処罰を求める意思表示がない場合には検察官は起訴できないこととなります。
4. 傷害致死罪
傷害致死罪は、刑法第205条で次のように規定されています。
身体を傷害し、よって人を死亡させた者は、三年以上の有期懲役に処する。
本罪は、暴行又は傷害行為と相当因果関係のある被害者の死亡結果について、3年以上の有期懲役という重い刑罰が科されることを規定した犯罪となります。
5. 殺人罪
殺人罪は、人を殺した場合に、「死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する」犯罪です(刑法第199条)。
また、殺人罪の未遂も罰せられます(刑法第203条)。
殺人罪は、人の生命を侵害する現実的な危険性のある行為を、殺人の故意をもって行った場合に成立する犯罪であり、行為の危険性や死亡結果に対する故意の点で、傷害や暴行に比して重い法定刑が規定されております。
傷害が構成要件とされている犯罪一覧
その他、以下の犯罪のように、傷害の罪と比較して重い刑により処断するものと規定されている罪もあります。
不同意堕胎致死傷罪
刑法第216条 「前条の罪を犯し、よって女子を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。」
遺棄等致死傷罪
刑法第219条 「前2条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。」
逮捕等致死傷罪
刑法第221条 「前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。」
建造物等損壊及び同致死傷罪
刑法第260条 「他人の建造物又は艦船を損壊した者は、5年以下の懲役に処する。よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処断する。」
傷害罪の時効は何年?
それでは、傷害罪を犯した場合に、時効というものがあるのでしょうか。
一般に時効というと、時間の経過とともに責任が無くなるようなイメージを思い浮かべる方も多いと思います。
刑事事件の場合は、公訴時効と呼ばれるものがこれにあたります。
公訴時効とは、犯罪が終わった時から一定期間を過ぎると、検察官が起訴をしても犯人を処罰することができなくなる定めのことをいいます。
傷害罪の公訴時効…10年
傷害罪の公訴時効は「10年」となります。
公訴時効の期間については、法定刑の上限などを基準に定められており、「傷害罪」の法定刑は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」ですので、刑事訴訟法第250条2項3号の定めにより、傷害罪の公訴時効は「10年」となります。
民事事件における損害賠償請求権の消滅時効…5年 or 20年
他方、民事事件における損害賠償請求権、すなわち、傷害を負わせた加害者に対して、不法行為(民法709条等)による損害の金銭的な賠償を民事裁判等で請求する権利については、民法において消滅時効の期間が定められています。
すなわち、傷害罪のように人の身体を害する不法行為の場合には、被害者が損害および加害者を知ったときから5年(民法724条の2)か、不法行為の時から20年(民法724条2号)が消滅時効の期間となります。
傷害罪で逮捕された場合の流れ・手続
次に、傷害罪で逮捕された場合の手続の流れについて、以下で概観していきます。
1. 逮捕~勾留請求
逮捕は、捜査機関等が罪を犯した疑いのある人(被疑者といいます。)の逃亡等を防ぐために、強制的に被疑者の身柄を拘束する処分です。
逮捕の後、捜査機関が被疑者の身柄をさらに留置する必要があると考える場合は、逮捕後48時間以内に検察官へ送致する送検の手続を行います(刑事訴訟法203条1項)。
送検後、検察官は、被疑者を勾留しようとする場合は24時間以内に裁判官に対し勾留の請求を行います(刑事訴訟法205条1項)。
2. 起訴前勾留~起訴または不起訴
勾留請求後、裁判官による勾留質問が行われます。勾留質問は、裁判官が勾留を認めるべきかどうか判断するために、被疑者に被疑事件を告げて被疑者の陳述を聴く手続です(刑事訴訟法207条1項、61条)。
裁判官が勾留を決定した場合は、勾留請求の日から10日間、留置場で身柄が拘束されることとなりますし、勾留が満期となってもさらに延長することについて「やむを得ない事由」がある場合は、検察官の請求により、最大10日の範囲で勾留期間が延長されることがあります。
そして、勾留の最終満期前に、検察官が傷害罪で起訴するか、起訴しないか(不起訴)を決定することとなります。
3. 起訴後勾留
起訴後も、起訴前の勾留が継続されます。起訴後の勾留期間は原則として2ヶ月間であり、その後1ヶ月毎に更新されることとなります。
もっとも、起訴後は、起訴前と異なり、身柄拘束の解放のために、保釈制度を利用することが考えられます。
保釈とは、保釈保証金を裁判所に納付することで、被告人の身柄拘束を一時的に解放してもらう制度です。
起訴された被告人やその弁護人等が、裁判所に対し保釈の請求を行います。裁判所は、事件の重大性や、被告人が逃亡したり証拠を隠滅したりするおそれの有無や大小、被告人の生活環境等の事情を基に、保釈を認めるべきか否かを決定し、また、保釈保証金の額を決定します。
保釈された場合であっても、保釈の条件を守りつつ、裁判(公判)の日には必ず出頭する必要があります。
4. 公判手続き~判決
起訴後、刑事裁判(公判)が公開の法定で開かれます。裁判では、検察官が起訴状を朗読し、犯罪を構成する事実と罪名・罰条を読み上げ、審理が開始します。
検察官が証拠に基づき犯罪事実を立証し、被告人・弁護人は、犯罪の成否について争ったり、量刑事情に関する証拠提出等を行います。
裁判所は、検察官と弁護人の双方から提出された証拠や、証人や被告人の証言に基づき、判決を下すこととなります。
5. 上訴~判決の確定・刑の執行
第一審の判決に不服がある場合は、控訴期間中に高等裁判所へ控訴することができます。
第一審判決言い渡し日の翌日から14日の控訴期間が経過し、その間に控訴等の不服申立が無い場合は刑が確定し、実刑の場合は刑が執行されることとなります。
傷害罪の刑罰を少しでも軽くする方法はある?
傷害の罪を犯してしまった過去の過ち自体を消し去ることはできませんが、少しでも刑を軽くするためには、どのようなことが考えられるでしょうか。
きちんと反省し再犯を防ぐ
当然のことながら、自らが傷害事件を起こすに至った経緯や原因について、再び同じ過ちを犯さないためにも、しっかりと反省し、見つめ直すことが重要です。
事件には必ず原因があります。たとえば相手の悪口についカっとなって手を出してしまったケースでは、自分自身の怒りやすい気質や、自制心の足りない点に原因がある場合もあります。
一人では反省が難しい場合は、協力してくれる家族と話し合うことも有益です。
そのような反省の気持ちを、反省文や被害者への謝罪文として文章に表現してみましょう。
弁護人にも内容を確認してもらい、何度も反省文を書き直すことで、犯行の原因とより深く向き合うことが可能となると考えられます。
被害者と示談を行う
真摯な反省、被害者への謝罪と処罰感情や被害結果の回復を図るために、弁護人を通じて被害弁償や示談を試みることも重要です。
示談の結果、被害者が幸運にも許してくれた場合は、被害回復の努力を行わなかった場合と比較すると被疑者・被告人にとって有利な一般情状となり、被害結果や被害者の処罰感情次第では、不起訴も見込める事情といえます。
弁護士へ相談し適切なアドバイスを受ける
傷害事件を起こしてしまったばかりの方は、誰にどのような相談をしてよいかわからず、ご不安を抱えていらっしゃる方もいることでしょう。
弁護士への相談費用は個々の事務所のホームページ等を参照頂くことになりますが、初回相談は無料で行っている事務所もあります。
また、刑事の私選弁護を依頼した場合の着手金等も、事件の内容や手続の段階によって様々ですので(私選刑事弁護の着手金相場としては、事件の難易度等に応じて20万円~50万円の幅があるのが通常と考えられます。)、まずは相談し、事件の見通しなどに関するアドバイスを受けた上で、信頼できる弁護士への依頼を検討されるべきでしょう。
傷害罪で逮捕された方のために弁護士ができることは何?
逮捕された方は、突然の出来事のため、多くのご不安を抱えていらっしゃることと存じます。
お仕事や学校に行けなくなり、家族や同僚と連絡を取ることも困難な状況の中、自分がこの後どうなってしまうのか、様々な思いが心の中を去来しているものと推察されます。
弁護士は、まずはしっかりとお話をお聞きし、ご不安な点の解消に向けて適切な助言をさせて頂きます。
ご依頼を受けた場合は私選弁護人として、上記の反省を深めるお手伝いや、早期の身柄解放や刑の減軽に向けた示談活動その他の弁護活動を実施させて頂きます。
まとめ
本記事では、傷害罪の構成要件や関連するその他の犯罪、逮捕等された場合の手続の流れ等について解説をしました。
傷害罪で捜査機関から取調べを受け、逮捕されてしまった場合、ご本人やご家族は大きなご不安を抱えていらっしゃることと存じます。
私達、東京スタートアップ法律事務所は、刑事事件でお悩みのご本人やご家族の気持ちに寄り添い、ご本人の大切な未来を守るために全力でサポートさせていただきたいと考えております。
当事務所がこれまで解決してきた刑事事件の実績に照らし、ご相談者様の状況やご意向を丁寧にお伺いした上で的確な弁護戦略を立て、迅速に対応致します。
ご相談頂いた方のご不安を最大限取り除くためにも、相談を受けた弁護士は精一杯尽力させて頂く所存です。まずはお気軽にご相談下さい。
- 得意分野
- 企業法務・コンプライアンス関連、クレジットやリース取引、特定商取引に関するトラブルなど
- プロフィール
- 岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務