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更新日: 弁護士 宮地 政和

離婚せずに別居する際の生活費(婚姻費用)はどうする?メリット・デメリットを解説

離婚せずに別居する際の生活費(婚姻費用)はどうする?メリット・デメリットを解説
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夫婦関係に悩みを抱えていても、すぐに離婚という決断ができない方は少なくありません。

お子さんのことや経済的な理由から、まずは「別居」を選ぶケースも増えています。
しかし、離れて暮らすことになった場合、「生活費(婚姻費用)」はどうすればいいのか、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、離婚せずに別居した場合の婚姻費用の考え方や請求方法、別居生活のメリット・デメリットについて、専門家としてわかりやすく解説します。

今後の生活設計や夫婦関係を見直すうえで、ぜひ参考にしてください。

離婚と別居の違いとは?

離婚と別居には5つの大きな違いがあります。

たとえば、夫婦関係が続いているか終わっているか、親権の扱い、生活費の支払いなどにおいて、大きな違いがみられます。

知らないと損するポイントもあるので、注意が必要です。

法律上の婚姻関係の継続

離婚は法律上の婚姻関係を解消する手続きであり、正式に夫婦ではなくなります。
これにより戸籍からも配偶者としての記載が消え、財産分与や養育費、親権の決定などが行われます。

一方、別居は単に同居をやめるだけで、婚姻関係自体は継続しています。

したがって、法律上は夫婦のままであり、戸籍の変更もありません。別居中も互いに扶養義務や生活費の支払い義務(婚姻費用)が生じるのが特徴です。

また、離婚する場合には夫婦間での相続権は消滅しますが、別居の場合には配偶者としての地位が継続するため、相続権も保持されます。

財産関係の整理

離婚時には財産分与が法的に求められ、結婚期間中に築いた共有財産を分割します。
これによりお互いの財産の清算が行われ、新たな経済的スタートを切ることになります。

対して別居はあくまで同居の中断なので、財産は共有状態のままです。
財産分与は離婚前から協議することも可能ですが、請求権として発生するのは離婚時です。

別居中の財産管理や生活費の負担は夫婦間の合意で定められることが多いですが、後々トラブルになり、調停が申し立てられることも少なくありません。

親権等子ども関連

共同親権制度が施行されていない令和7年8月1日時点においては、離婚する際に親権者を決める必要があります。

どちらが親権を持つかで子どもの生活や養育費に大きな影響が出ます。別居の場合、法律的には両親は夫婦であり親権は変わりませんが、実際の監護は子と同居している親が担うケースが多いです。

子供を養育しているか否かで、別居中の婚姻費用の金額が大きく変わってくるため、慎重な話し合いが必要となります。

子どもにとっての環境変化は大きいので配慮が重要です。

婚姻費用(生活費)

離婚後は養育費や慰謝料など特定の支払い義務が発生しますが、夫婦間の扶養義務が消滅するため、生活費の支払が不要となります。

一方、別居中は婚姻関係が続いているため、夫婦間の生活費負担義務(婚姻費用)が法的に認められています。

収入差に応じて金額が決まるため、別居中でも経済的な支援が受けられます。

ただし、支払い義務の発生や金額は裁判所で調整されることが多く、トラブルの元にもなりやすいです。

社会的変化

離婚は、社会的にも法律的にも、夫婦関係の終了として明確に区切りがつくため、戸籍の記載が変わったり、姓が変わったりといった大きな変化があります。

一方、別居は夫婦関係を継続しながら距離を置く状態であり、社会的に大きな変化が起こるものではありません。

離婚せずに別居し続けるメリット

離婚せずに別居を続けることで得られるメリットは、生活費の確保や精神的負担の軽減など多岐にわたります。

離婚を急がず冷静に判断できる余地も生まれ、将来的な選択肢の幅も広がります。

婚姻費用を受け取ることができる

法律上、婚姻関係が継続している夫婦には互いに生活を支え合う義務があり、別居していても収入差がある場合には高収入側が「婚姻費用」を分担する必要があります。これにより、別居している配偶者や子ども側が最低限の生活保障を得ることができます。

婚姻費用は話し合いで決めることもできますが、まとまらなければ家庭裁判所に調停を申し立てたり、婚姻費用算定表を参考にして請求する方法もあります。

離婚してしまうとこの支払い義務はなくなるため、経済的に不安がある場合は別居のまま婚姻費用を受け取る方が安定した生活を維持しやすくなります。

親権者を決めなくていい

離婚をする場合、未成年の子どもがいる夫婦はどちらか一方が親権者となる必要があります。
(令和7年8月1日時点)

しかし、別居の段階では婚姻関係が続いているため、両親の親権が維持されます。

これにより、子どもの進学や医療などの重要な意思決定を夫婦で協力して行うことができ、親の責任を継続して果たすことが可能です。

離婚後は片方の親しか意思決定できなくなるため、特に教育方針や居住地選びなどで葛藤が生じることもあります。別居状態であれば、親権を決める必要がない分、子どもの安定した育成環境を保ちやすく、親としての役割を続けたい人にとっては大きなメリットと言えるでしょう。

なお、共同親権が施行されますと、状況に変化がありますので、ご注意ください。

ストレスや緊張感から解放される

同居を続けることで生じる夫婦間の摩擦やストレスが、別居によって軽減されるケースは少なくありません。

家庭内での会話や態度のすれ違いが日々の精神的負担となっている場合、距離を置くことで冷静さを取り戻し、感情的な衝突を避けることができます。

また、生活環境を分けることで自分の時間や空間が確保され、精神面での安定が得られる点も大きな利点です。

離婚準備を進める余裕が生まれる

別居によって一時的に夫婦の距離を取ることで、感情的な衝突を避けながら、財産分与・親権・今後の生活設計など、離婚に向けた準備を冷静に進めることができます。

焦らず判断することで、後悔のない選択につながる可能性が高まります。

場合によっては関係修復できることもある

別居は一時的な距離を取る手段として機能し、互いの冷却期間を持つことで関係改善の糸口が見えることもあります。

対話の機会や第三者の介入によって誤解が解け、離婚を回避し再び協力し合える夫婦関係に戻る可能性もゼロではありません。

離婚せずに別居し続けるデメリット

離婚せずに別居を続けることで得られるメリットがある一方で、子どもへの影響や経済的・精神的負担など、複数のデメリットにも注意が必要です。冷静に検討しましょう。

子どもの精神面に影響が出る恐れがある

夫婦が別居を続ける場合、子どもが両親の不仲を敏感に察知して
心に不安や孤独を抱えることがあります。

特に父母の一方としか暮らせない場合、会えない親に対する喪失感や、
「なぜ一緒に住めないのか」といった疑問が精神的負担となることも。

両親の関係が曖昧なまま長期間別居状態が続くと、子ども自身が将来の家庭像に不安を抱いたり、人間関係に慎重になりすぎたりする傾向も見られます。また、別居に伴い転校や生活環境の変化が起これば、心身の安定に支障をきたす可能性もあります。

親としては、子どもの心理的ケアや環境整備に配慮した対応が求められ、定期的なコミュニケーションや、子どもが安心して過ごせる環境づくりが非常に重要です。

浮気・不倫していた場合の証拠集めが難しくなる

別居によって物理的に相手と距離ができると、不貞行為の証拠を集めることが困難になります。

例えば、相手のスマートフォンの履歴や郵便物、行動を直接確認する機会が減るため、証拠収集のための監視や記録が制限されます。

裁判において不貞の有無は慰謝料請求や離婚原因の正当性に影響する重要な要素であり、確実な証拠がなければ主張が通らない可能性もあります。そのため、別居前に証拠を確保しておくことや、探偵の活用、弁護士を通じた記録保全など、専門的な対応が求められます。

離婚する際の財産分与で不利になる

別居期間中に形成された財産について、名義や管理状況によっては共有財産と認められず、財産分与時に不利になる可能性があります。

収支の把握が難しくなることで、実際の財産形成状況を証明する負担も増します。

別居に伴う労力・金銭面の負担

新たな住居の確保や引っ越し費用、生活用品の購入など、別居開始には多くの労力と出費が伴います。

また、二重生活になることで家計負担も増加。精神的・身体的にも余裕が求められます。

配偶者を扶助する義務がある

婚姻関係が続いている限り、民法に基づく扶養義務(民法752条)が残るため、別居中でも相手の生活を一定程度支える必要があります。

相手に収入がなければ婚姻費用を請求される可能性があり、負担に感じる場合も。

再婚に進むチャンスを失う

婚姻関係を継続している限り、法的には再婚ができません。

仮に新たな交際関係が始まったとしても、社会的な評価や子どもへの影響を考えると行動を制限されがちです。

また、相手が離婚に応じない場合には、何年も関係が宙ぶらりんになり、将来的なパートナーとの生活を始めるチャンスを逃してしまうリスクも。

離婚を望む側が主体的に人生を進めたい場合には、別居のままでは不確定要素が多く、時間だけが無駄に過ぎてしまう可能性があります。再婚や人生の再スタートを見据えるのであれば、別居で様子を見る期間を必要最小限にとどめ、早期に法的整理へと移行する判断も重要です。

離婚せずに別居する際の生活費(婚姻費用)の決め方

まずは夫婦間で話し合って金額を決めるのが理想ですが、折り合いがつかない場合は家庭裁判所の調停を利用する方法もあります。

金額の目安は「婚姻費用算定表」に基づき、収入や子どもの有無・教育費などを加味して算定されます。

原則として収入が高い側が負担する形となり、必要に応じて医療費や保育料なども加算されることがあります。

支払いが滞った場合には、調停後に強制執行を行うことも可能です。生活の変化によって増減の相談もできるため、柔軟な見直しも視野に入れつつ、早めに法的な手続きを踏むことが重要です。

離婚せずに別居する際の生活費(婚姻費用)の相場

離婚せずに別居する場合、婚姻費用の相場は夫婦の収入差や子どもの有無によって異なります。

妻が子供を養育しており、妻が婚姻費用を受け取る側である場合を例にとり、具体的な金額についてご説明します。

例:
夫が年収600万円、妻が200万円で子どもが1人(14歳以下)
➤婚姻費用の相場は月額約10万円です

夫が年収700万円、妻が100万円で子どもが2人(いずれも14歳以下)
➤約15万円程度が目安となります

※共働きで夫が500万円、妻が400万円、子どもなしの場合は、月額2万円程度とされるケースもあります。

これらはあくまで目安であり、実際の金額は話し合いや調停によって調整されることがあります。

参考:令和4年 司法統計年報 家事編
https://www.courts.go.jp/app/files/toukei/671/012671.pdf

別居後に生活費(婚姻費用)を請求する場合の手続き

別居後に婚姻費用を請求するには、まず配偶者に内容証明郵便などで支払いを求めます。

話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所に「婚姻費用分担請求調停」を申し立てます。

調停が不成立なら審判に移行し、裁判所が金額を決定します。婚姻費用は、実務上請求した時点から支払義務が発生すると考えられているため、早めの請求が重要です。

離婚せずに別居・生活費をもらい続ける場合の注意点

夫婦関係を維持したまま別居し、生活費(婚姻費用)を受け取る選択には一定のメリットがありますが、長期化することで思わぬ法的・経済的リスクが生じる可能性もあります。以下の2点に注意が必要です。

別居期間が長くなると離婚請求が認められることもある

離婚せずに別居を続ける場合、別居期間が長期化すると、配偶者からの離婚請求が裁判で認められる可能性が高まります。

日本の民法では、離婚には「法定離婚事由」が必要とされており、その一つに「婚姻を継続し難い重大な事由」があります。

長期間の別居は、夫婦関係の破綻を示す有力な証拠とされ、特に5年以上の別居が続くと、裁判所が離婚を認める傾向が強くなります。
離婚原因を作った側(有責配偶者)からの離婚請求の場合には、離婚が認められないことがほとんどですが、別居期間が10年以上に及ぶ場合には、有責配偶者からの離婚請求であっても離婚が認められるケースもあります。

つまり、離婚を望まない側であっても、長期の別居が結果的に離婚を招くリスクがあるため、別居の目的や期間については慎重に検討する必要があります。

婚姻費用に頼った生活はリスクがある

婚姻費用は、夫婦が別居していても生活水準を維持するために支払われる法的義務ですが、これに依存した生活には複数のリスクがあります。

まず、支払う側の収入減少や生活状況の変化により、婚姻費用が減額される可能性があります。

調停や審判で金額が見直されることもあり、安定した収入とは言えません。

また、支払いが滞った場合には、強制執行などの法的手段が必要になることもあり、精神的・時間的負担が増します。

さらに、婚姻費用は離婚成立とともに終了するため、離婚が認められた場合には収入源を失うことになります。生活の基盤を婚姻費用のみに頼るのではなく、自立した収入や支援制度の活用を視野に入れることが、長期的な安定につながります。

離婚の前にただちに別居すべき状況

離婚を決断する前でも、身の安全や子どもの健全な成長を守るために、即時の別居が必要となるケースがあります。特にDVや虐待がある場合は、速やかな行動が重要です。

暴力やモラハラ(DV)を受けている場合

身体的暴力や精神的虐待(モラハラ)を受けている場合は、命や心の健康に深刻な影響を及ぼすため、離婚前でもただちに別居すべきです。

加害者の承諾は不要であり、身の安全を最優先に考え、実家やシェルターなど安全な場所への避難が推奨されます。証拠の確保も重要です。

 

子どもが虐待されている場合

配偶者が子どもに対して身体的・精神的・性的虐待やネグレクトを行っている場合、子どもの命や心身の発達に重大な悪影響を及ぼすため、即時の別居が必要です。

虐待は密室で行われることが多く、発覚が遅れると被害が深刻化します。別居によって加害者と物理的に距離を取り、児童相談所や警察、弁護士などの専門機関に相談することで、子どもの安全を確保できます。また、別居後は親権や面会交流の制限を求める法的手続きも視野に入れるべきです。

虐待の証拠(診断書、録音、写真など)を可能な範囲で集めておくことも、今後の離婚や保護命令の申立てに役立ちます。

離婚せず別居する場合の生活費に関するよくある質問

婚姻費用はいつまで支払われますか?

婚姻費用は、離婚が成立するまで支払われるのが原則です。ただし、支払う側の収入減少や生活状況の変化によって金額が見直されることもあります。離婚後は養育費などに切り替わります。

別居後に婚姻費用を請求する時期に制限はありますか?

婚姻費用は、離婚が成立するか、または同居が再開されるまでであれば、いつでも請求することができます。しかし、原則として請求した月以降の分しか認められないため、早めの対応が重要です。

婚姻費用の支払方法に指定はありますか?

婚姻費用は原則として毎月定額を銀行振込などで支払う形が一般的です。口頭の約束ではトラブルになりやすいため、調停調書や公正証書で支払い方法を明記しておくと安心です。

まとめ

離婚せず別居を選ぶことで、生活費の支援や精神的な余裕が得られる一方、子どもへの影響や将来の選択における不安も生じます。自分にとって最も穏やかで納得できる形が何なのか、慎重に考える必要があります。複雑な事情や法的判断が絡む場面では、専門家の助言が欠かせません。迷ったときこそ、法律のプロにご相談ください。

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執筆者 弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会 登録番号48945
弁護士登録後、都内の法律事務所に所属し、主にマレーシアやインドネシアの日系企業をサポート。その後、大手信販会社や金融機関で信販・クレジットカード・リース業務に関する法務やコンプライアンス、プロジェクトファイナンスなどの経験を積む。これらの経験を活かし、個人の法的問題に対し、専門的かつ丁寧に対応しています。
得意分野
不貞慰謝料 、 離婚 、 その他男女問題 、 刑事事件 、 遺産相続 、 交通事故
プロフィール
岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社

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