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利用規約作成の注意点と民法改正の影響|弁護士が作成代行した場合の費用は?

利用規約作成の注意点と民法改正の影響|弁護士が作成代行した場合の費用は?
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利用規約は、アプリ、ウェブ、クラウドサービスなどのECサイトやウェブサービスを展開する際に、これを利用する方(以下「ユーザー」といいます。)と、提供・運営する企業や個人との間のルールを決めるという重要な役割を担います。提供するサービスの内容や料金、生じうるトラブルに関する条項を事前に規定しておくことで、ユーザーからクレームが来たりトラブルが生じたりした場合などに迅速に対応することが可能になります。
ただ、利用規約は、自社が提供するサービスの内容に合致していなければ意味をなしません。そのため、利用規約を作る際は、現行の法律を踏まえて、サービスに合致した規約を作成するよう必要があります。

そこで今回は、利用規約とは何か、作成時にどのような点に注意すべきか、弁護士に作成を依頼した場合の相場などについてご説明したいと思います。

利用規約とは何か?契約書やプライバシーポリシーとの違いとは?

1.利用規約とは

利用規約は、ウェブ等のサービスの提供者が、サービスを利用する際の決まりごとをユーザー向けにまとめた文章のことです。

利用規約は、あるサービスの利用につき、サービス提供者の側で提示した内容にユーザーが同意するもので、契約書に代わる役割を持ちます。利用規約とは何かを理解するために、利用規約は「サービスの利用契約書」のようなものと認識していただいて良いかと思います。

アプリやECサイトなど、特に個人の方がユーザーとなって利用するウェブサービスでは、利用に際して利用契約書に署名押印する代わりに、利用開始画面や登録画面に利用規約が表示され「同意する」などのボタンが表示して同意を取得するのが通常です。ユーザーが、サービスを利用するにあたって、利用規約に同意することで、サービス提供者とユーザーとの間に「利用規約に同意した」という形で合意形成が確認され、その利用規約の内容が適用されるという関係にあります。このようにして利用規約の内容について認識を持つことで予測可能性が生まれ、利用規約がサービス提供者とユーザーとの間でトラブルを未然に防ぐための手段として機能するようになります。

2.利用規約と契約書の違い

利用規約と契約書は、利用規約にユーザーが同意すると、サービス提供者とユーザーの間でその内容が両者の間で適用されることとなる点で同じです。他方、利用規約と契約書の間には、次のような違いがあります。

まず、利用規約は、サービス提供者が内容を画一的に定め、一方的に提示するだけであるため、ユーザーはその内容をそのまま受け入れるか、サービスそのものを利用しないという二者択一的な選択肢しかないのに対し、契約書は、当事者の一方が作成しても、双方の交渉によって内容を調整することが可能です。このように、利用規約と契約書は、内容を交渉によって変えられるかどうかという点で異なります

次に、利用規約はユーザーがいつでもその内容を見ることができるようネット上で公開されるため、そのサービスを利用しない第三者も見ることができるのに対し、契約書は通常第三者に公開されず、契約当事者しか見られない点で異なります。

上記のような点で利用規約と契約書は異なるものの、すでに述べたとおり、利用規約も一定の要件を満たせばその内容が契約内容になり当事者を拘束するという点で、機能としては同様です。

3.利用規約とプライバシーポリシーの違い

プライバシーポリシーとは、個人情報の取扱い方針を定めた文書のことをいいます。利用規約とプライバシーポリシーは、サービスの提供に関する条件などをまとめた文書という点で共通します。そのため、利用規約の中にプライバシーポリシーの内容を含めることも可能です。

しかし、個人情報を扱うアプリやECサイトでは、慎重な個人情報取り扱いの要請から、利用規約とは別にプライバシーポリシーを設けるのが通常です。また、「個人情報保護法」でも、ユーザーの個人情報を収集・利用する際などに、利用目的や第三者提供など一定事項を公表し、同意を得るべき義務が規定されています。

このように、「利用規約」は、事業者が提供するサービスについての内容全般を定めたものであるのに対して、「プライバシーポリシー」は、サービス提供者が特に重要度が高いユーザーのプライバシー情報や個人情報について事前に公表し、ユーザーの同意を得るために情報の取扱方針を公表するものという点で異なります。つまり、プライバシーポリシーは利用規約の中でも特に個人情報の取り扱い方針に的を絞った文書になります。そのため、利用規約の中に、「個人情報の取扱い」という条項を定める場合でも、「別途規定するプライバシーポリシーに従う」という内容にすることもよく行われます。

民法改正で利用規約作成時に注意すべき法律上の規制

2020年4月に民法が改正され、 定型約款に関する規定が導入されました。定型約款とは、同種・多量の取引を迅速に行うために作成された定型的な取引条項のことをいいます。民法の原則上、契約の当事者は契約内容を認識していること、また、契約内容を事後的に変更する場合は個別の承諾を得ることが必要です。しかし、多くの人は契約内容となるはずの約款の内容を把握せず、また、事後的に同意を得るのは難しいのが実情でした。この点を改善するために導入されたのが定型約款制度です。

1.法律上注意すべき利用規約の取り扱い

消費者契約法第3条1項では、事業者(サービス提供者)は、消費者(ユーザー)との契約内容を「明確かつ平易なもの」にするよう努力すべきという義務を定めています。これを受けて、利用規約でもユーザーにわかりやすい文言で記載することが求められています。

加えて、利用規約の画面構成や表示方法などが、ユーザーにわかりやすく、利用規約への同意をきちんと得ることが大切です。

2.民法改正が利用規約に与える影響とは

2020年4月1日から改正民法が施行されましたが、利用規約についても対応が必要です。具体的には、利用規約にも適用される「定型約款」についての規定が新設された点に注意が必要です。

「定型約款」とは、定型取引における約款をいいます。定型取引とは、

  • ある特定の者が、不特定多数の者を相手方として行う取引であること(不特定性)
  • 内容の全部または一部が画一的であることが双方に合理的な取引であること(定型性)

を満たす取引をいいます。

定型約款は、定型取引において契約内容とすることを目的に特定の者が準備した条項の総体をいいます。例えば、ウェブサービスやアプリの利用規約、ソフトウェア販売会社のソフトウェアの利用約款、保険会社の保険約款、運送会社の運送約款、宿泊施設の宿泊約款などが含まれます。

民法改正によって、 定型約款について、以下のような新しいルールが定められました。

  • 定型約款が契約内容になる条件
  • 定型約款の変更
  • 定型約款の内容の表示方法

利用規約も、通常はこの定型約款に含まれるため、これらの新ルールの対象になります。そのため、自社のサービスで利用規約を定めている会社は、定型約款に関するルールに対応した利用規約に変更が必要な場合があります。

3.利用規約を改正民法に対応させるための3つのポイント

改正民法に対応した利用規約を作成するには、次の3つがポイントになります。

①利用規約の内容が契約内容であることを明確に表示すること

利用規約が契約内容となるかについては争いがあり、従来から、利用規約が契約書の代わりになることが裁判例では認められてきたものの、利用規約が契約内容になるとしてユーザーを拘束できるとする直接的な規定はありませんでした。しかし、民法改正により、利用規約が契約の内容になることを明確に表示することが根拠として求められることになりました。

具体的には、

  • ユーザーとの間で、利用規約を契約の内容とする旨の合意をしたとき
  • サービス提供者が、利用規約を契約の内容とする旨をあらかじめ表示していたとき

のどちらかを満たせば、ユーザーが利用規約の個別の条項を確認していなかった場合でも、利用規約のすべてに合意したものとみなされます。上記の条件をクリアするためには、利用規約の内容に「利用規約に同意した場合は双方の契約内容になる」、「利用規約に同意した場合はユーザーとサービス提供者の間で、本サービスの利用契約が締結されたことになる」等の文言を記載する、ユーザーが必ず見るページ上に利用規約を掲載するなどの対応が求められます。ただし、サイトでその旨を一般的に公表しているだけでは「表示していた」とはいえません。サービス利用時に必ず見るページに利用規約を掲載した上で「利用規約に同意して契約します」などのボタンをクリックするとサービスが利用できるようなシステムにすることが望ましいでしょう。

②ユーザーにとって不利益な条項が含まれていないこと

従来は、事業者と消費者との間の契約全般について適用される消費者契約法において、一切賠償責任を負わない旨の規定や、過度な損害賠償額又違約金を定めた規定などの不当な部分について無効とする規制はありましたが、利用規約そのものについての直接的な法規制がありませんでした。しかし、民法改正によって、ユーザーの利益を一方的に害する条項は禁止され、条項に不利益な内容が含まれている場合は、その部分についてユーザーは拘束されない(合意しなかったものとみなす)ことになりました。

具体的には、以下の両方に該当するものは、不利益条項(不当・不意打ち条項)とみなされ、例外的に合意しなかったものと判断されます。

  • 相手方の権利を制限し、または相手方の義務を加重する条項であって
  • の定型取引の態様及びその実情ならびに取引上の社会通念に照らして信義則に反して相手方の利益を一方的に害すると認められるもの

例えば、ユーザーに高額な違約金を払わせる、ユーザーからの解約を全く認めない、解約の際に理由を問わず返金を認めない、サービス提供者の免責の範囲が広いなどの条項、また、サービスに関係ない商品や保守管理を販売するような条項が不利益条項に当たります。

サービス提供者側は、このような条項を削除するか、内容を見直し、過度にユーザーに不利益にならないように修正することが必要です。

③利用規約の変更を同意なくできること

基本的に、利用規約には契約書と同等の効力があるため、サービスの内容に変更があれば都度合意して対応するのが原則です。しかし、多くのユーザーを対象としたウェブサービスでは、サービス内容が変わるたびに個々のユーザーとサービス内容について合意を交わすことは実質的に不可能です。そのため、改正民法では、次の条件を満たす場合に、ユーザーの同意なく利用規約を変更できることになりました。

  • 利用規約の変更がユーザーの利益になる場合
  • ①利用規約の変更が契約の目的に反しないこと、②変更が合理的であることの2つの条件を満たす場合

②の変更の合理性判断においては、変更の必要性、変更後の内容の相当性、定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更に係る事情を考慮します。
上記の条件を満たす場合としては、法改正により禁止された行為を、ユーザーの禁止行為として利用規約に追加変更するようなケースが考えられます。手続きとしては、変更した利用規約の効力が生じる時期を決め、変更した内容と効力発生の時期をウェブサイト上で公開するなどの適切な方法で周知して、実際に変更を行うことができます。

民法改正に対応・利用規約に掲載する12の事項

1.タイトル・頭書き

同じ事業者でも複数のサービスがある場合などは、そのサービスごとに利用規約を定めることになりますので、ユーザーが理解しやすいよう、タイトルは単に「利用規約」とするのではなく、「○○(サービス名)利用規約」というようにサービスの範囲を特定するための頭書として、サービスの名称を加えるといいでしょう。

2.利用規約の用語の定義

サービスを利用する際によく出てくる用語や専門的な用語について、規約の最初にできるだけ網羅的に定義しておくいといいでしょう。例えば、利用規約の対象となっているサービスのことを「本サービス」と書くことがあるのですが、具体的に「本サービス」が何を指すかなどを記載します。

3.利用規約への同意

ユーザーが利用規約に同意するかどうかの項目を記載します。上記の民法改正を踏まえると、「利用規約に同意した場合には、本利用規約の内容をサービス利用契約の内容とします」など記載して、ユーザーに利用規約が契約内容となることを明確に表示するようにしましょう。

また、未成年者がサービスを利用する際には、法定代理人の同意が必要であること、法定代理人の同意がないのにそれをあると偽ったり、未成年者であるのに成人であると偽ったりした場合は、意思表示を取り消しできないなどの規定も必要です。この規定がないと、未成年者が親に内緒で高額の課金をした場合等に、親が同意していないことを理由に支払いを拒否したり、契約を取り消して代金の返還を求めたりするおそれがあるからです。

4.利用規約の変更

サービスの途中で提供内容が変わり、それに伴い利用規約も変わることはよくあります。上記のようにユーザーの利益になる場合は、ユーザーの同意なく利用規約を変更できますが、利用料金の値上げなど、ユーザーに不利益になる変更をする場合に備えた対処が必要です。上記のように、利用規約に、利用規約を変更することがある旨の定めをしていれば、変更が契約の目的に適い、利用規約変更の必要性、変更内容の相当性、変更可能であることの定めがあること等に照らして変更の合理性があれば、同意なく変更できるので、変更可能であることについてはぜひとも記載しておきましょう。具体的には、以下のような規定を設けておくと安心です。

第●条(利用規約の変更)

1 当社は、次の各号のいずれかに該当する場合、会員及びユーザーの承諾を得ることなく、本規約の内容を変更すること(本規約に新たな内容を追加することを含む。)ができるものとします。
(1) 利用規約の変更が、会員及びユーザーの一般の利益に適合するとき。
(2) 利用規約の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき。

2 当社は前項による利用規約を変更する場合、●か月前までに、利用規約を変更する旨及び変更後の利用規約の内容並びにその効力発生時期を、当社ウェブサイトに掲示し、またはユーザーに電子メールで通知します。

3 ユーザーが利用規約変更後もサービスを利用していることをもって利用規約変更に同意したものとみなします。

5.ユーザーのアカウント管理

ユーザーがアカウントを作るタイプのアプリやECサイトなどのサービスでは、常に第三者によるアカウント乗っ取りのリスクがあり、どんなにセキュリティ対策を行っても技術的な限界があるため、それを避けられない場合があります。このような場合に備えて、サービス提供者は、アカウントの管理はユーザーが自身できちんと行わなければならないとの注意義務をユーザーに課し、アカウントが不正利用された場合であっても原則的にユーザーの自己責任として、事業者は責任を負わない旨の免責条項を設けておくことが重要です。また、別途プライバシーポリシーも作成し、ユーザーがアカウント登録した際に事業者に提供した情報について、情報管理の方針を示しておくとよいでしょう。

6.サービス利用のルール

サービスを利用する際に、ユーザーの責任でIDやパスワードを管理することや、連絡先を変更した場合は通知することなどのルールに加え、ユーザー登録の要否・方法、有料のサービスを提供する場合には料金と支払方法についても記載しておきます。この場合には、別途、特定商取引法で求められる表示が必要になりますので注意が必要です。

また、サービス内のコンテンツに関する権利(著作権)がサービス提供者に帰属し、勝手に利用・変更できないなどの知的財産の取り扱いに関するルールも記載しておきましょう。

7.サービス利用の禁止事項

アプリやECサイトでは、迷惑行為をするユーザーが現れることが多々あります。放置しているとサイト運営そのものに支障が生じるなどの直接的な被害を受けるだけでなく、サイトの評価の低下等によるやユーザー離れを招くおそれがあります。そこで、迷惑行為として禁止する行為を具体的、網羅的に利用規約に記載し、違反した場合のペナルティも記載しておきましょう。

具体的には、サービスのコンテンツや第三者の知的財産権の侵害行為、他のユーザーや第三者の名誉・信用を毀損したり差別・誹謗中傷したりする行為などを記載し、「その他不適切と当社が判断する行為」などとして具体的に定めなかった行為についても適用できるような定めを設けて漏れが起きないようにしておきます。ペナルティとしては、利用の一時停止や強制退会などが考えられます。

8.個人情報の取扱い

上述のように、個人情報の取扱いは利用規約に盛り込むこともできるのですが、個人情報の重要性に配慮して、別途プライバシーポリシーを作成するのが一般的です。

利用規約には、「個人情報及び利用者情報については、別途定めるプライバシーポリシーに則り適正に取り扱うこととします」などと記載しておきましょう。

9.免責条項・損害賠償

サービス提供者は、天災やシステム障害などやむを得ない理由でユーザーに損害が生じた場合にもすべて責任を負うとすると、莫大な損害賠償債務を負いかねません。そこで、一定の場合に生じた損害については責任を負わない旨の免責事項や、損害賠償の範囲について記載しておきます。

ただし、サービス提供者の免責の範囲があまりに広い場合や、損害賠償責任を一切負わないなど不当な内容が含まれると、消費者契約法等の定めに違反するものとして、その部分は無効と判断され、適用されない可能性が生じるので注意しましょう。以下の内容に該当する場合、修正を検討して下さい。

  • 会社の損害賠償責任を一切認めない条項
  • ユーザーの違反行為に対して高額な違約金を定める条項

10.サービスの中止や変更に関する事項

サービス提供者の状況などによって、サービスを変更、一時中止、終了する可能性があります。そのような場合に、ユーザーに事前に通知する旨の条項を記載するとともに、サービスの変更、中止、終了によってユーザーに損害が生じても損害賠償責任を負わないことを明記しておきましょう。しかし、場合によってはサービスの中止などで一切責任を負わない規定を設けると、不利益条項にあたる可能性があります。そこで、以下のような文言を入れておくと安心です。

第●条(サービスの中止)
本サービスの一時停止によりユーザーが本サービスを全く利用することが出来ない期間が連続して●日を超えたときは、その期間に応じて日割計算により計算される利用料金を月額の利用料金から減額します。

加えて、ユーザー側から一切解約できないとい条項も不利益条項にあたります。条項自体を削除するか、解約できないケースを具体的に掲載し、ユーザーの同意を得るようにしましょう。

11.準拠法・裁判管轄

サービス提供者とユーザーの間でトラブルが生じ、裁判などの紛争に発展した場合、どこの国の法律が適用されるかを定めたのが「準拠法」の規定、どこの裁判所で争うかを定めたもの「裁判管轄」の規定といいます。アプリやECサイトなどウェブサービスのユーザーは、全国に所在することも多いので、トラブルごとに各地に出向くとなると裁判に出向くための費用も高額になります。国内限定のサービスでも、準拠法と裁判管轄の定めは重要です。

しかし、管轄を排他的な専属的合意管轄として、企業側に有利な場所での裁判しか認めないとすると不利益条項にあたる可能性があります。そこで、合意した管轄と法定管轄の性質を併せ持った付加的合意管轄にしておくことをおすすめします。ユーザー側は法定管轄で裁判を起こす可能性もありますが、企業側は合意した管轄で訴えることが可能です。具体的には、以下のような文言を入れておきましょう。

第●条(合意管轄)
本規約またはサービスに関する一切の紛争については●●●裁判所を合意管轄裁判所とします。

12.施行日・改定日

利用規約の最後には、利用規約の効果が生じる「施行日」と、規約を改定した場合の「改定日」を記載しておきます。この記載があることで、いつからどの規約が適用されるのかの基準がわかりやすくなります。また、利用規約は変更後のものだけでなく、変更前の内容についてもユーザーが閲覧できるようにしておきましょう。

スマホアプリやECサイトの利用規約のテンプレート

アプリやECサイトの利用規約は、そのサービス内容について、事業者側がコンテンツを提供するものなのか、ユーザーがコンテンツを提供する場を事業者が提供するものなのかなどによって異なります。
内容の調整・精査はもちろん必要ですが、次のようなテンプレートを参考に、自社にあった利用規約の作成にあたってみてはいかがでしょうか。

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●●サービスに関する利用規約
●●サービスに関する利用規約(以下「本規約」といいます。)は、●●(以下「当社」といいます。)が提供する●●サービス(以下「本サービス」といいます。)を登録ユーザー様が利用される際の取扱いにつき定めるものです。本サービスのご利用については、本規約の規定が適用されます。

第1条(定義)
本規約上で使用する用語の定義は、次に掲げるとおりとします。
・本サービス 当社が運営するサービスおよび関連サービス
・本コンテンツ 本サービス上で提供される文字、静止画、動画、音、プログラム等の総称
等々

第2条(本規約への同意)
1 利用者は、本利用規約に同意した上で、本サービスを利用するものとします。
2 本利用規約の内容は利用者と当社の間の契約内容とします。
3 利用者が未成年者である場合は、法定代理人の同意を得て本サービスをご利用下さい。
4 未成年者の利用者が、法定代理人の同意がないにもかかわらず同意があると偽りまたは成人と偽って本サービスを利用した場合、その他行為能力者であると信じさせるために詐術を用いた場合、本サービスに関して当該未成年者がした一切の法律行為は取り消すことができません。
5 本規約の同意時に未成年であった利用者が成人に達した後に本サービスを利用した場合、当該利用者は本サービスに関する一切の法律行為は追認したものとみなされます。

第3条(利用規約の変更)
1 当社は、次の各号のいずれかに該当する場合、会員及びユーザーの承諾を得ることなく、本規約の内容を変更すること(本規約に新たな内容を追加することを含む。)ができるものとします。
(1) 利用規約の変更が、会員及びユーザーの一般の利益に適合するとき
(2) 利用規約の変更が、契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性その他の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき
2 当社は前項による利用規約を変更する場合、●週間前までに、利用規約を変更する旨及び変更後の利用規約の内容並びにその効力発生時期を、当社ウェブサイトに掲示し、またはユーザーに電子メールで通知します。
3 ユーザーが変更後の利用規約の効力発生時点においても本サービスを利用していることをもって利用規約変更に同意したものとみなします。

第4条(アカウント管理)
1 利用者は、利用に際して登録した情報(以下「登録情報」といいます。)について、自己の責任で管理し、第三者に貸与、譲渡、名義変更、売買などをしてはならないものとします。
2 当社は、登録情報によって本サービスの利用があった場合は本人が利用したものと扱い、当該利用によって生じた結果、それに伴う一切の責任は、本人に帰属するものとします。
3 利用者は、登録情報の不正使用によって当社または第三者に損害が生じた場合、当社または第三者に対して、当該損害を賠償するものとします。
4 登録情報の管理は、利用者が自己の責任の下で行い、虚偽又は不正確な登録情報により利用者が被った一切の不利益および損害に関して、当社は責任を負わないものとします。
5 登録情報が盗用されまたは第三者に利用されていることが判明した場合、利用者は直ちにその旨を当社に通知するとともに、当社からの指示に従うものとします。

第5条(禁止行為)
1 本サービスの利用に際し、当社は、利用者に対し、次に掲げる行為を禁止します。
・当社または第三者の知的財産権を侵害する行為
・当社または第三者の名誉・信用を毀損または不当に差別もしくは誹謗中傷する行為
・当社または第三者の財産を侵害する行為、またはそのおそれのある行為
・当社または第三者に経済的損害を与える行為、または脅迫行為
・コンピューターウィルス、有害なプログラムを使用またはそれを誘発する行為
・本サービス用インフラ設備に対して過度な負担となる行為
・当サイトのサーバーやシステム、セキュリティへの攻撃や不当にアクセスする行為
・一人の利用者が、複数の利用者IDを取得する行為
・その他、当社が不適切と判断する行為
2 当社において、利用者が上記禁止事項に違反したと認めた場合、利用者資格の一時停止、退会処分その他当社が必要と判断した措置を取ることができるものとします。

第6条(権利譲渡の禁止)
1 利用者は、当社の書面による事前の承諾がない限り、本規約上の地位および本規約に基づく権利または義務の全部または一部を第三者に譲渡してはならないものとします。
2 当社は、本サービスの全部または一部を第三者に譲渡でき、譲渡された権利の範囲内で、本サービスに係る利用者の一切の権利が譲渡先に移転するものとします。

第7条(個人情報等の取り扱い)
個人情報及び利用者情報については、当社が別途定めるプライバシーポリシーに則り、適正に取り扱うこととします。

第8条(免責)
1 当社は、故意又は重大な過失がある場合を除き、本サービスの利用に関しユーザーが被った損害を賠償する責任を負いません。
2 当社が賠償責任を負う場合、その額は、損害の事由が生じた時点から遡って過去1年間にユーザーから現実に受領したサービスの利用料金の総額を上限とし、ユーザーの事業機会の損失、逸失利益、データ滅失・毀損によって生じた損害については、契約責任、不法行為責任その他請求の原因を問わず、いかなる賠償責任も負いません。。

第9条(準拠法、管轄裁判所)
1 本規約の有効性、解釈及び履行は、日本法に準拠するものとします。
2 当社と利用者等との間に生じた一切の紛争については、訴額に応じて、東京簡易裁判所又は東京地方裁判所を合意管轄裁判所とします。

●●年●月●日 制定
●●年●月●日 改定
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ただし、上記のテンプレートはあくまでも汎用性の高い大まかなものです。個別のサービスに応じた調整をしなければ、トラブルを未然に防ぐことはできません。実際に利用規約を作成する場合は、専門家である弁護士に相談しながら進めることをおすすめします。

弁護士に利用規約の作成代行を依頼した場合の費用相場

利用規約の作成を弁護士に依頼する場合、単発で作成だけを依頼する場合と、その他の相談も含めて依頼する顧問契約型の依頼の2つのパターンが考えられます。単発型の依頼で利用規約(場合によってはプライバシーポリシー及び特定商取引法の表記を含む三点セット)の作成を依頼する場合は、20~30万円ほどが相場となります。サービス内容及びその他の条件は各ウェブサービスによって異なりますので、提供するサービスに応じてオーダーメイドで利用規約に盛り込むべき内容を決めていかなければなりません。

まずは、自社のサービス内容を踏まえたうえで、法律相談などを利用し、費用の見積もりを出してもらって検討するとよいでしょう。

弁護士に依頼するメリット・デメリット

利用規約の作成を弁護士に依頼するメリットは、自社のウェブサービスの内容に応じた利用規約の内容にしてもらえること、提供するサービスに特に発生しうるトラブルを予測して、それに基づいたトラブル回避に向けた規約を作成してもらえることです。

また、利用規約は法令に適合したものでなかればなりませんし、また規約自体も変更の可能性が高いものです。作成当初はよくても、変更によって法律に合致しなくなるなどして、いざというときに効力を生じないというリスクを避けられるのも、弁護士に作成を依頼する大きなメリットと言えるでしょう。

一方、デメリットとしては、上述のような費用がかかることがあります。サービスが高度化し、利用規約が複雑になるほど弁護士費用も高額になるのは事実です。しかし、リーガルチェックを曖昧にしていたり、テンプレートをそのまま利用して自社にあわない利用規約を使用していると、いざトラブルや紛争になったり、権利が侵害されたりした場合に、弁護士費用どころではない高額な損害が発生するリスクがあります。ユーザーに高額な賠償金を支払わなければならなかったり、場合によっては、サービスの提供を継続すること自体ができなくなったりするような危機に見舞われるおそれもあります。

まとめ

今回は、利用規約の作成について、民法改正も踏まえた注意点や、弁護士に作成を依頼するメリット・デメリットについて解説しました。

東京スタートアップ法律事務所では、企業法務のプロとして豊富な実績に基づいたサポートを提供しています。ベンチャーやスタートアップ企業の法務も多数取り扱ってきましたので、利用規約の作成のみならず、各クライアントのニーズに合った様々なご相談・ご依頼に対応しています。利用規約の作成等でお悩みの方は、ぜひご相談ください。

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