労働審判とは?申し立てが必要なケースと手続きの流れを徹底解説!
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記事目次
労働審判は、労働トラブルを迅速かつ適切に解決することを目的とした手続きです。
不当解雇や給料の未払いなど、労働問題は労働者の生活基盤に与える影響が大きいことから、問題をできるだけスムーズに解決することが求められます。
この記事では、労働審判とはどういう制度なのか、申し立ての流れや労働審判を起こす際のポイントや注意点について、わかりやすく解説していきます。
労働審判とは?
労働審判とは、労働者と会社(事業主)の間で起きた労働に関するトラブルを、迅速かつ適切に解決するための手続きです。
通常の裁判のように時間をかけることなく、スムーズに問題を解決するのに適した制度になっています。
労働審判の特徴は、次の5つです。
- 訴訟よりも早期解決が見込める
- 会社と個人の争いが対象
- 労働現場の実情を適切に反映できる
- 口頭主義が採用されている
- 審判には、判決と同様に強制力がある
以下、それぞれの特徴について詳しく解説していきます。
訴訟よりも早期解決が見込める
労働審判は、解決までに時間がかかると労働者の日常生活に大きな影響を及ぼしてしまうことから、事件の早期解決を目的とする制度です。そのため、通常の訴訟よりも早期解決が見込めます。
通常の訴訟では、お互いに主張と反論を繰り返し、真理が尽くされたと判断できるまで裁判が続くため、判決が出るまでに1年以上かかってしまうことも珍しくありません。
一方、労働審判では原則3回以内の期日で真理が終結するため、スムーズに問題の解決を図ることができます。
会社と個人の争いが対象
労働トラブルの中でも、次にあたるような紛争は、労働審判の制度上問題解決に適しているとはいえず、労働審判を利用することができません。
【労働審判の対象とはならない紛争】 ・会社と労働組合における紛争 ・上司(個人)のパワハラやセクハラに関するトラブル ・会社と労働者個人のお金の貸し借りに関するトラブル ・経営難からくる整理解雇や就業規則の不利益変更など争点が複雑なもの |
労働審判で解決するのに適したトラブルには、たとえば不当解雇や給与・退職金の未払いなどのトラブルが挙げられます。
労働現場の実情を適切に反映できる
労働審判では、裁判官のほかに、労働問題の専門家である労働審判員が問題解決にあたって審理します。
労働問題に詳しい専門家が審理に加わることで、実際の労働現場の実情を適切に把握することができ、事案に即した実効的な解決策を提案することが可能になります。
口頭主義が採用されている
通常の訴訟では、お互いに主張書面を取り交わし、その書面に基づいて審理を進めていくことになります。
一方、労働審判では、書面ではなく口頭でのやり取りで審理を進めていく「口頭主義」が採用されており、労働審判委員会からの直接の質問に対して、口頭で主張・反論をしながら手続きを進めていきます。
当事者がお互いの主張をその場で言い合うことになるため、問題点の把握や無駄な陳述を省くことができ、事件を早期に解決することができるような制度になっています。
審判には判決と同様に強制力がある
労働審判は、裁判と同様に当事者を拘束する効力があります。
労働トラブルを解決する制度には、労働審判のほかにも、労働基準監督署や労働局、労働委員会のあっせんなどがあります。
しかし、これらの手続きには強制力がなく、たとえ決められた内容に従わなかったとしても、とくに不利益はありません。
これに対し、労働審判には当事者を拘束する力があり、たとえば審判期日に欠席すると過料の制裁を受けたり、審判の内容を基にして強制執行等の手続きをとることも可能です。
そのため、たとえば未払いの残業代を支払うように命じられたにもかかわらず、会社が期限までに残業代を支払わない場合には、会社の財産を差し押さえることができます。
労働審判を利用すべきケース
労働審判の性質を考えると、次のような場合には労働審判を利用して問題を早期に解決すべきだといえるでしょう。
- 不当解雇や給与や残業代の未払いなどの日常生活に直接関わるトラブル
- 会社と交渉を進めていたが、一向に話し合いが前に進まないケース
- 録音や動画、複数の証言など会社側が違法であることを客観的に証明する証拠がある場合
- 会社に対して金銭的な解決を求めるケース
- 労働トラブルをいち早く解決したい場合
平成18年から令和4年までの労働審判の約67%が、3ヵ月以内に審理を終結させていることからわかるように、労働審判は迅速に問題解決を図ることができる制度です。
そのため、会社が話し合いに応じる気がないと判断したら、なるべく早い段階で労働審判を検討することをおすすめします。
労働審判申し立ての流れ
会社の不法行為に関する証拠を集める
労働審判を検討している場合、まずは会社が不当な行為をしていることの証拠を集めましょう。
証拠にはさまざまなものがありますが、たとえば次のような証拠があれば、労働審判を優位に進めることができるでしょう。
- 雇用契約書
- 就業規則
- 賃金規定
- 退職金規定
- タイムカードや出退勤記録
- 給与明細書
- 解雇通知書
- 解雇理由証明書
- 会社の不当行為に関する動画や音声の録音
些細なものでも証拠になる可能性があるため、自己判断で証拠を処分することがないよう気をつけてください。
労働審判を申立てる
証拠が揃ったら、裁判所に労働審判の申立てをおこないます。
申立ては、裁判所に「労働審判申立書」や証拠書類を提出することでおこないます。
申立てをする裁判所は次の通りです。
【労働審判を申立てる裁判所】 ・相手方の住所や居所、営業所などを管轄している地方裁判所 ・現在の就業場所か、最後に就業した場所を管轄している地方裁判所 ・当事者間の合意で決めた地方裁判所参照:労働審判手続|裁判所HP |
なお、申立書のひな型はこちらのページをご参照ください。
裁判所から期日呼出状が届く
裁判所に申立てをおこなうと、原則40日以内に、当事者双方に対して「第1回期日呼出状」が届きます。
労働審判をおこされた会社側は、第1回期日前の指定された期日までに、会社側の主張・意見をまとめた答弁書を提出します。
労働審判期日に参加する
第1回労働審判期日では、労働問題の専門家である労働審判委員会が、あらかじめ提出された書類を基に、会社と労働者双方の主張を聞きながら審理を進めていきます。
当事者の主張を聞く際は、お互いに気を遣うことなく主張できるよう、もう一方の当事者を一旦退席させて話を聞くケースもあります。
労働審判では、原則3回の期日内で審理を終結させることになりますが、トラブルの内容によっては1回目の期日で審理が終結するケースも少なくありません。
ただし、争っている内容が複雑で、当事者の主張が噛み合わないような場合には、次回期日が指定されることになるでしょう。
調停・審判がおこなわれる
当事者同士で話し合った結果、当事者間で妥協点を探して話し合いがまとまった場合には、調停成立として労働審判の手続きが終結します。
労働審判委員会は、早期解決を実現するために、当事者に対して和解を促すこともあるでしょう。
期日内に調停が成立しない場合には、これまでに提出された証拠や当事者の主張を基にして、労働審判委員会が「審判」を下します。
この審判に対して不服がある場合には、審判の告知を受けた日から2週間以内に異議申立てをおこなうことで、通常の裁判手続きにおいて再審理を求めることができます。
なお、事件の内容によっては、労働審判の手続きで迅速に審判を下すべきではなく、通常の裁判手続きでじっくり問題点について審理を重ねた方が良いケースもあります。
労働審判委員会が、通常の裁判に移行して審理を尽くすべきだと判断した場合には、例外的に審判が下されることなく、通常の裁判手続きに移行することになります。
労働審判の終わり方は3つ
調停成立
調停とは、労働審判委員会を間に入れて、話し合いで問題を解決する方法です。
当事者だけでは話し合いがまとまらなくても、労働問題に精通した専門家を間に挟むことで、妥協点を探しやすくなり、話し合いで問題を解決できる可能性が高まります。
調停が成立した場合、その内容は「調停調書」に記載され、通常の裁判で和解をした場合と同様の効果を持つことになります。
労働審判
話し合いがまとまらない場合、調停は不成立となり、労働審判委員会が当事者の主張や証拠を基にして「労働審判」を下します。
労働審判は、通常の裁判手続きでいう「判決」にあたり、当事者に対して拘束力を持ちます。
労働審判委員会から事前に示談案が提示されていた場合には、その内容通りの審判が下されるケースも少なくありません。
労働審判に対して、2週間以内に異議申立てがされなかった場合には、その審判が確定します。
起訴
労働審判が告知されたから2週間以内に異議申立てがあった場合には、その労働審判は効力を失い、通常の訴訟手続きへと移行します。
その他
審判期日外で、当事者同士で話し合いがまとまった場合には、労働審判が取り下げられ、当事者同士で合意書を取り交わすことになります。
また、トラブルが複雑なため、迅速に手続きを集結させるのではなく、通常の裁判手続きに移行して当事者の主張・反論を尽くすべきだと判断された場合にも、通常の裁判手続きに移行します。
労働審判におけるポイントと注意点
労働審判と「あっせん」の違い
労働問題を解決するための方法の一つに、労働局の「紛争調整委員会」がおこなっている「あっせん」という手続きがあります。
あっせん手続きは、労働問題に精通しているあっせん委員が当事者の間に立ち、話し合いで問題を解決できるよう、アドバイスや和解案の提案等をおこなう手続きのことを指します。
労働審判とあっせんには、次のような違いがあります。
あっせん | 労働審判 | |
費用 | 無料 | 申立手数料がかかる |
---|---|---|
期日の回数 | 原則1回 | 原則3回まで |
参加は強制か | 相手方が話し合いを拒める | 出席を拒んだ場合、5万円以下の過料を科されたり、自己に不利な審判が下されるおそれがある |
話し合いがまとまらなかった場合 | 労働審判や訴訟など、強制力のある別の手続きを検討する | 強制力のある審判が出る |
決定した内容を遵守する必要があるか | 話し合いで決定した内容について、強制力なし | 相手が決決定した内容に従わない場合、強制執行の手続きを取ることができる |
あっせんは、労働審判よりも手軽に利用できることが大きなメリットとなります。
その反面、あくまでも第三者を介した話し合いとしての側面が強いため、決定した内容に強制力がなく、実効性のある解決とはいえないことが、大きなデメリットといえるでしょう。
労働審判は自分でできる?
労働審判は、必ずしも代理人を立てないと手続きを進められない訳ではなく、自分1人で申立てをすることも可能です。
ただし、労働審判でこちらに優位に話し合いを進めたいのであれば、労働問題に精通した弁護士に対応を依頼することをおすすめします。
【労働審判を弁護士に依頼するメリット】 ・労働審判を優位に進めることができる ・専門的な手続きや会社との交渉を全て任せることができる ・事案に合わせて適切な解決方法を提示してもらえる |
労働問題の実績が豊富な弁護士であれば、問題を解決するためのノウハウや、相手との交渉をスムーズに進めるための方法を心得ています。
法律や過去の裁判例に関する知識を駆使して交渉を優位に進めるだけでなく、複雑な労働審判に関する手続きをスムーズに進めることができるのも、弁護士に依頼する大きなメリットであるといえます。
また、ストレスのかかる会社との交渉を全て任せることができるのも、弁護士に依頼する大きなメリットのひとつであるといえるでしょう。
まとめ
労働審判は、労働問題を迅速に解決するために設けられた手続きであり、通常の裁判よりも早く問題を解決できる可能性があります。
また、労働審判で決まった内容は、裁判でいう判決と同じ効力を持っており、当事者が審判内容に従わない場合には、強制執行等の手続きをとることが可能です。
もし、会社と労働関係で揉めてしまい、労働審判を考えているのであれば、労働問題の解決実績が豊富な弁護士が多数在籍している、東京スタートアップ法律事務所に、ぜひ一度ご相談ください。
- 得意分野
- 企業法務・コンプライアンス関連、クレジットやリース取引、特定商取引に関するトラブルなど
- プロフィール
- 岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務