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投稿日: 弁護士 宮地 政和

不実証広告規制とは|違反事例・措置命令等の回避策も解説

「不実証広告規制で規制されるのはどのような広告なのか、具体的な事例を知りたい」
「不実証広告規制による措置命令などを回避するためには、どのような対策を行えばよいのか知りたい」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、不実証広告規制の対象となる優良誤認表示の内容、消費者庁から提出を求められる資料の要件、措置命令が出された具体的な事例、違反回避のための対策などについて解説します。

不実証広告規制に関する基礎知識

不実証広告規制は、不当景品類及び不当表示防止法(以下、「景品表示法」という。)で禁止されている優良誤認表示に該当するかを判断するために定められている規制ですが、優良誤認表示とはそもそもどのような表示のことをいうのでしょうか。まずは、優良誤認表示の対象となる表示、不実証広告規制の内容など、基本的な事項について説明します。

1.優良誤認表示とは

景品表示法では、一般消費者保護の観点から、消費者による自主的な選択を阻害するような不当な表示を禁止しています。
優良誤認表示はこうした不当な表示の一つです。具体的には、商品やサービスの品質や規格等の内容について、実際よりも著しく優良であると一般消費者に誤認される表示のことをいいます。

優良誤認表示の対象となる品質や規格等の内容には、商品に関する性能や効果などの属性、原材料や純度などの成分などが含まれます。
また、優良誤認表示の対象となる表示には、商品のパッケージ、容器、ラベル、パンフレットやカタログ等の販促物、チラシやポスター等の広告などの他、ラジオCMやセールストークなどの口頭による広告も含まれます。

優良誤認表示に該当するか否かは、商品の性質、一般消費者の知識水準、取引の実態、表示の方法、表示の対象となる内容等を総合的に考慮して判断されます

2.不実証広告規制とは

不実証広告規制とは、消費者庁から表示の内容を裏付ける根拠となる資料の提出を求められた際、資料の提出を求める文書が交付されてから15日以内に提出できいような場合には、その表示は、措置命令との関係では不当表示とみなされ(景品表示法第7条第2項)、課徴金納付命令との関係では不当表示と推定される(同法第8条第3項)という規制のことをいいます。

この15日の期間については、正当な理由があると認められる場合は延長が認められるとされていますが、新たな実証試験を実施したい等の理由は認められず、実際のところ、ほとんど認められることはありません。なぜなら、商品を販売する事業者は、商品の品質や規格に関する表示の裏付けとなる客観的な根拠を示す資料をあらかじめ所持しているべきであり、資料が手元にあれば15日以内には提出できるはずだからです。

消費者庁から提出を求められる資料の要件

資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものであると認められるためには、以下の2つの要件を充たす必要があります。

  • 客観的に実証された内容のものであること
  • 該当する表示と提出資料により実証された内容が合致していること

また、客観的に実証された内容のものといえるのは次のような場合です。

1.試験・調査により得られた結果

試験や調査の結果を資料として提出する場合、原則として、商品に関する学術界や産業界において一般的に認められた方法で実施した試験や調査により得られた結果であることが求められます。例えば、JIS(日本工業規格)に規定された試験などです。
商品に関する学術界や産業界において一般的に認められた方法が存在しない場合は、社会通念上妥当と認められる方法で実施することが求められます。当然のことですが、調査結果を捏造した資料などは認められません。

2.専門家、専門家団体、専門機関の見解や学術文献

専門家等による見解や学術文献を資料として提出する場合、客観的に評価した見解または学術文献であり、当該専門分野において一般的に認められている必要があります。
専門分野において一般的に認められていない専門家等の見解は、客観的に実証されたものとは認められません

不実証広告規制が適用される場合

不実証広告規制が適用される場合、消費者庁の措置命令や課徴金納付命令の対象となる他、その旨を消費者庁に公表されることになります。措置命令や課徴金納付命令などの具体的な内容について説明します。

1.措置命令

消費者庁が、景品表示法第7条2項の規定に基づき、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めた際、以下のような場合、当該表示は優良誤認表示に該当するとみなされます。

  • 15日以内にその表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料を提出しなかった場合
  • 提出した資料が合理的な根拠を示す資料であると認められなかった場合

上記に該当する場合、消費者庁は、公正取引委員会・都道府県と連携して関連資料の収集、事業者への事情聴取等の調査を実施します。
調査の結果、違反行為が認められると、消費者庁は事業者に弁明の機会を付与した上で、事業者に対して主に以下のような措置を講じることを命じる措置命令を発令します。

  • 景品表示法違反の表示を行ったことを一般消費者に周知徹底すること
  • 再発防止策を講ずること
  • その違反行為を将来繰り返さないこと

2.課徴金納付命令

当該表示が景品表示法で禁止されている優良誤認表示に該当すると判断された場合、措置命令とともに課徴金納付命令が発令されるおそれがあります。課徴金の額は、優良誤認表示により得た商品やサービスの売上額に3%を乗じることにより算出され、最長で3年分の売上額が対象となるため、高額になる場合も少なくありません。
ただし、以下の要件を充たす場合は、課徴金納付を命じられません。

  • 事業者が表示の根拠となる情報を確認する等、正常な商慣習に照らして必要とされる注意をしていたため「相当の注意を怠った者でない」と認められる場合
  • 算出した課徴金額が150万円未満である場合(課徴金対象行為をした商品・サービスの売上額が5000万円未満である場合)

また、以下の場合は減額の対象となります。

  • 課徴金対象行為に該当する事実を消費者庁長官に自主申告した場合(所定の要件を満たす場合は、課徴金額の2分の1が減額)
  • 返金措置の実施に関する計画を作成して消費者庁長官の認定を受ける等、所定の手続に従って消費者に対して返金措置を行った場合

措置命令が出された事例

不実証広告規制違反に該当する事例には、ダイエット食品や空間除菌グッズなど、商品の品質の一要素である効能に関して過大な表示が行われやすい商品が多くを占めます。
前述した通り、消費者庁から資料の提出を求められてから15日以内に資料を提出しても、提出された資料が問題となっている表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、措置命令等の対象となります。実際に、提出された資料が合理的な根拠を示すものと認められないと判断され、措置命令が出された実例をいくつかご紹介します。

1.ダイエットサプリメント

最初にご紹介するのは、2015年2月17日に消費者庁から措置命令が出されたダイエットサプリメントの事例です。
この事例では、ラジオ放送のCMで、「余分なカロリーが余分な脂肪になる前にすっきりほとんどなかったことにして、1か月でマイナス10kg以上を達成した方もいらっしゃるダイエットサプリを御紹介致します。大注目のダイエット成分がご飯やパン等に含まれる炭水化物を何と4粒で1,000カロリーもカット」などと、あたかもこの商品を摂取するだけで特段の運動や食事制限をすることなく容易に著しい痩身効果が得られるかと誤認されるような謳い文句で当該商品の宣伝を行っていました。

2.家庭用電位治療器

次にご紹介するのは、2013年10月17日に消費者庁から措置命令が出された家庭用電位治療器の事例です。
この事例では、「高血圧は対象商品の生体電子で必ず治ります。」「腰の痛みは絶対に治りますから。」「対象商品にかかりますと、全身の血液がきれいになるんです。」等、この商品を継続して使用することで頭痛、肩こり、不眠症及び慢性便秘が緩解するだけでなく治癒するかのような説明や、高血圧、糖尿病、腰痛等の他の特定の疾病若しくは症状も緩解または治癒すると誤認されるような説明を口頭で行っていました。

3.ウイルス除去等除菌グッズ

最後にご紹介するのは、2014年3月27日に消費者庁から措置命令が出されたウイルス除去等除菌グッズの事例です。
この事例では、商品のカタログや新聞広告等に「私、ただ今空間除菌中」「二酸化塩素がしっかりバリア!ウイルス、細菌、カビ等を元から除去」などと記載するとともに、対象商品の使用に係るイメージ図を掲載することにより、この商品から放出される二酸化塩素が身の回りにおけるウイルス、菌、カビなどを除去するかのよう誤認される可能性のある表示を行っていました。

不実証広告規制違反を回避するための対策

不実証広告規制違反を回避するためには、どのような対策を講じればよいのでしょうか。
消費者庁が公開している「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の指針」を参考に、具体的な対策について説明します。

1.不実証広告規制や関連法規を理解する

不実証広告規制違反を回避するためには、表示に関連する業務に関わる従業員が、景品表示法の趣旨や不実証広告規制の内容、関連する法規制について正しく理解することが大切です。表示には、パンフレットやカタログなどの販促資料だけではなく、セールストークなども含まれるため、マーケティング部門だけではなく営業部門の従業員も、法規制について理解する必要があります。

消費者団体や業界団体等が主催する社外講習会などに社内の代表者が参加し、その内容を元に社内研修を行う、社内の規定やガイドラインを策定するなど、法令遵守に向けた活動を積極的に行うことが、法令違反の回避につながります。

2.根拠を示す資料やデータを保管・管理する

消費者庁から、表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めた場合、15日以内に資料を提出しなければなりません。提出を求められた時に、「調査結果が示された資料があったはずなのに、見つからない」「具体的な根拠を示すデータがどこに保存されているかわからない」などという事態にならないよう、商品やサービスの品質・規格に関連する資料やデータは、関係者全員が共有できる形で製品分類ごとに整理し、保管しておきましょう。

3.表示に関する管理責任者を置く

法令違反を回避するためには、社内に、製品の表示に関する管理責任者を置き、新製品の発売前、新しい広告の公開前など、必要なタイミングで表示の内容と根拠となる資料やデータを照合して法規制に抵触しないか確認できる体制を構築することも有効です。
管理責任者は、社内で作成する販促物だけではなく、広告代理店など社外の専門業者に依頼して作成したパンフレットや広告についても、法規制に抵触しないか入念に確認することが大切です。

まとめ

今回は、不実証広告規制の対象となる優良誤認表示の内容、消費者庁から提出を求められる資料の要件、措置命令が出された具体的な事例、法令違反回避のための対策などについて解説しました。

不実証広告規制の適用を回避するためには、自社が販売する商品に関する表示が優良誤認表示と疑われることのないよう、社内全体でリスク管理体制を構築することが大切です。消費者庁から表示の根拠となる資料を求められた場合や、社内でリスク管理体制を構築する際に具体的にどのように進めればよいかわからない場合は、企業法務に精通した弁護士に相談するとよいでしょう。

東京スタートアップ法律事務所では、豊富な企業法務の経験に基づいて、各企業の状況や方針に応じたサポートを提供しております。景品表示法をはじめとした広告に関する法令違反を回避するための社内の体制構築やガイドライン策定などのサポートなどにも積極的に対応しておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。

弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会
弁護士登録後、都内の法律事務所に所属し、主にマレーシアやインドネシアにおける日系企業をサポート。その後、大手信販会社や金融機関に所属し、信販・クレジットカード・リース等の業務に関する法務や国内外の子会社を含む組織全体のコンプライアンス関連の業務、発電事業のプロジェクトファイナンスに関する業務を経験している。