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投稿日: 弁護士 宮地 政和

問題社員の特徴とトラブル事例・対処法と注意点も解説

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平気で遅刻を繰り返す、セクハラやパワハラなどのハラスメント行為をするなど、問題のある従業員はどこの会社にもいるものです。職場の秩序を乱す問題社員に対して、どのような対処をすればよいかお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、問題社員の典型的なタイプ、問題社員を放置するリスク、問題社員に対する適切な対処法などについて解説します。

問題社員の典型的なタイプ

問題社員に関する問題は多種多様ですが、いくつかのタイプに分類することができるかと思います。問題社員の典型的なタイプについて説明します。

1.勤怠不良タイプ

問題社員の代表例ともいえるのが、勤怠に問題がある従業員です。例えば、以下のような従業員が該当します。

  • 何度注意しても遅刻を繰り返す
  • 平気で無断欠勤する
  • 勤務時間中に喫煙所に入り浸るなどして仕事をしない

勤怠不良型の従業員が仕事をしない分、同じ部門で働く従業員に負荷がかかることになります。

2.メンタルヘルス不調タイプ

近年、増加しているのが、メンタルヘルスに問題を抱えている従業員です。例えば、以下のようなケースがあります。

  • 気分の浮き沈みが激しく、コミュニケーションが取りづらい
  • 仕事のミスを指摘しただけなのに「もう死にたい」と泣き出してしまう
  • うつ病を発症し、休職と復職を繰り返している

職場にメンタルヘルスに問題を抱えている従業員がいると、周囲が余計な気を遣わなければいけない場面も多く、周囲の従業員が精神的に疲弊することも少なくありません。

3.ハラスメントタイプ

職務上の優位性を利用して嫌がらせ等をするパワハラや性的な発言や行為をするセクハラなどのハラスメント行為を行う従業員も問題社員の典型例といえるでしょう。具体的には以下のようなケースがあります。

  • 部下に対して「お前はなんでこんな仕事もできないんだ」と頭ごなしに怒鳴りつける
  • 女性従業員に対して「いつ結婚するの?」等の発言を平気でする

このタイプの問題社員は、管理職など社内での地位が高い従業員に多くみられる傾向があります。
また、新型コロナウイルス感染拡大の影響で在宅勤務制度を導入する企業が増える中、慣れない在宅勤務で、部下をどのように管理すればよいかわからず、部下の行動を必要以上に監視しようとするなどのリモートハラスメントも増加しているといわれています。

4.能力欠如タイプ

仕事に必要な能力が欠如している従業員も問題社員の典型例の一つです。具体的には以下のようなケースがあります。

  • ケアレスミスが多く、注意してもミスを繰り返す
  • 仕事のスピードが遅く、平均的な従業員の半分以下の量の仕事しかこなせない

能力欠如型の従業員は、仕事への意欲が欠如しているタイプと、意欲は十分にあるタイプに分かれます。仕事への意欲は十分あるのに、ケアレスミスが減らない場合、発達障害の可能性も考えられます。発達障害の中でも、不注意、多動性、衝動性などの特性を持つ注意欠陥多動性障害の場合、職場内では、ケアレスミスが多い、忘れ物が多いなどの問題が目立つケースも多いです。

問題社員を放置するリスク

問題社員の存在を認識しつつも、どのように対処すべきかわからず放置しているという企業もあるかもしれません。しかし、問題社員を放置することは以下のようなリスクを伴います。

1.他の従業員のモチベーションが低下

問題社員を放置すると、周囲の従業員から、「遅刻を繰り返していても特に注意されることはないんだ」「この会社では部下に八つ当たりしてもいいんだ」などと思われるおそれがあります。このように思われると、問題社員がさらに増加する可能性もあります。また、問題社員ができない分の仕事を一生懸命フォローしている従業員からは、「真面目に働いている自分がバカみたいに思えてきた」などと思われてしまう可能性もあります。このように、問題社員を放置することは、職場の秩序の乱れにつながり、周囲の従業員に対して悪影響を及ぼすことが懸念されます

2.他の従業員が次々退職する

ハラスメントタイプの問題社員を放置している場合は、ハラスメント被害によるストレスや精神的なダメージを受けた従業員が転職を考える可能性が高いでしょう。また、能力欠如タイプの問題社員を放置している場合も、周囲の従業員が仕事をフォローするのに疲弊して、転職を考えるようになる可能性があります。
つまり、問題社員を放置することは、優秀な人材の流出につながる可能性もあるのです。また、問題社員がいる部署の優秀な従業員が次々と退職することにより、業務に支障をきたすおそれもあります。

3.顧客や取引先に迷惑をかける可能性

問題社員を放置したために優秀な従業員が次々と退職した場合、業務の引き継ぎがうまくいかなくなり、顧客や取引先に迷惑をかける可能性もあります。顧客や取引先に迷惑をかけることにより、会社の信用が低下し、業績悪化につながる可能性も否定できません。

問題社員に対する適切な対処法

問題社員を放置するリスクについて説明しましたが、リスクを回避するためには、問題社員に対して、どのような対応をすべきなのでしょうか。問題社員に対する適切な対処法について説明します。

1.本人と話し合う

問題社員とされているのは、その従業員本人にのみ原因があるのではなく、職場の環境や担当業務が本人の適性に合わないなど、会社側に原因がある場合も少なくありません。そのため、まずは本人と話し合い、問題社員とされている根本的な原因をできる限り正確に把握することが大切です。
本人と話し合う際は、「あなたのせいで周りの従業員が困っている」などと一方的に責めるような言い方をすることは控えて下さい。まずは、会議室や応接室など落ち着いて話せる部屋で、本人がリラックスして話せる雰囲気を作り、「今、なにか仕事や私生活で困っていることなどはありませんか」などと切り出すとよいでしょう。問題社員とされている従業員自身がどのような問題を抱えているのかを理解することが大切です。

2.配置転換を検討すべきケース

能力欠如タイプの問題社員の場合、本人の適性と担当業務がマッチしていない可能性も考えられます。そのため、適切な配置転換を行うことにより、本人が能力を発揮できるようになる可能性も十分あります。配置転換を検討する場合は、本人とよく話し合い、本人の適性や希望にあう部門への配置転換を行うようにしましょう。
配置転換を行う場合は、本人の希望を尊重することが不可欠です。本人の希望を無視して配置転換を行った場合、後から法的紛争に発展した場合、退職を促すことを目的として配置転換を行ったとみなされ、配置転換命令は無効と判断されるおそれがあるため、注意が必要です。
配置転換命令が違法と判断される基準や配置命令を拒否された場合の注意点について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしていただければと思います。

3.休職等の措置が必要なケース

メンタルヘルス不調タイプや勤怠不良タイプの中には、うつ病などの精神疾患を患い、治療や療養が必要なケースもあります。問題社員が精神疾患を発症した原因が職場にある場合、会社が適切な対応を怠ると、安全配慮義務違反に問われ、損害賠償責任を負う可能性すらあります。安全配慮義務とは、会社が従業員に業務を行わせるにあたり、労働者の健康を守るために配慮すべき義務のことをいいます(労働契約法第5条)。
精神疾患の可能性がある従業員に対しては、話し合いの際に精神科の受診を促しましょう。うつ病は、適切な治療を受け、安心して療養できる環境下で一定期間療養することにより、心身の安定を取り戻すことができるケースも少なくありません。精神科を受診することに対する抵抗や、療養のために休職することに対する経済的な不安を感じる方も多いので、そのような心理面にも十分な配慮が必要です。
うつ病の従業員に対する適切な対処法については、こちらの記事にまとめましたので、参考にしていただければと思います。

4.注意や指導が必要なケース

問題社員と話し合いをした結果、注意や指導が必要だと判断した場合は、適切な注意や指導を行いましょう。
例えば、ハラスメントタイプの場合、自分がハラスメント行為を行っていること自体に気付いていないケースや、自分の行為の問題点を認識していないケースも珍しくありません。この場合、ハラスメント行為により被害を受けている従業員がいることや、ハラスメント行為の問題点を具体的に説明し、ハラスメント行為を繰り返さないよう指導する必要があります。

5.退職勧奨等を検討すべきケース

問題社員に対して、注意や指導を行った場合、経過観察をしっかり行うことが大切です。注意や指導を行ったけれど改善されないという場合、他の従業員にこれ以上悪影響を及ぼすことを避けるためにも、退職を促すことを検討すべきでしょう。
日本の労働関連法では解雇が厳しく制限されているため、解雇ではなく、従業員本人が自ら退職を選択するよう促す退職勧奨を行うことが法的リスクを回避するという観点からは適切であることも多いです。
退職勧奨の進め方や注意点について知りたい方は、こちらの記事を参考にしていただければと思います。

まとめ

今回は、問題社員の典型的なタイプ、問題社員を放置するリスク、問題社員に対する適切な対処法などについて解説しました。

問題社員を放置した場合、他の従業員へ悪影響を及ぼす可能性があるため、できる限り早めに適切な対処を行うことが大切です。自社内で対処することが難しい場合は、労務問題に精通した弁護士のアドバイスを受けるとよいでしょう。

東京スタートアップ法律事務所では、労務問題に関するスペシャリストが、様々な企業のニーズに合わせたサポートを提供しております。問題社員への対応に関するご相談にも応じておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。

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執筆者 弁護士宮地 政和 第二東京弁護士会 登録番号48945
弁護士登録後、都内の法律事務所に所属し、主にマレーシアやインドネシアにおける日系企業をサポート。その後、大手信販会社や金融機関に所属し、信販・クレジットカード・リース等の業務に関する法務や国内外の子会社を含む組織全体のコンプライアンス関連の業務、発電事業のプロジェクトファイナンスに関する業務を経験している。
得意分野
企業法務・コンプライアンス関連、クレジットやリース取引、特定商取引に関するトラブルなど
プロフィール
岡山大学法学部 卒業 明治大学法科大学院 修了 弁護士登録 都内の法律事務所に所属 大手信販会社にて社内弁護士として執務 大手金融機関にて社内弁護士として執務
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社