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法定休日・法定外休日とは?違いや割増賃金、就業規則の決め方について解説

法定休日・法定外休日とは?違いや割増賃金、就業規則の決め方について解説
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法定休日とは

法定休日とは、労働基準法35条1項で定められた1週間に1回、使用者が労働者に必ず与えなければならない休日のことをいいます。

労働者を雇用する会社や企業(使用者)は、どのような業種であっても、法定休日の日数よりも少ない休日を設定することはできません。

使用者には、法定休日を労働者に与えなかった場合の罰則があり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる可能性があります(労働基準法119条1号)。

労働基準法第35条の内容

労働基準法第35条は、法定休日について以下のように定めています。

労働基準法第35条
1. 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。
2. 前項の規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。

35条1項の「毎週少くとも1回の休日」が法定休日のことですが、1週間は就業規則その他に特別の定めがない限り、日曜日から土曜日までの歴週のことをいいます。

週休2日制の場合、そのうちの1日は法定休日ではなく、就業規則等で週休2日のうちどちらを法定休日にするか定まっていない場合には、歴週で後順の日(土・日が休みであれば日曜日)が法定休日とされます。

法定外休日とは

法定外休日とは、雇用契約で定められた法定休日以外の休日のことをいいます。

たとえば、週休2日制をとっている会社で法定休日を日曜日と定めた場合、別の日の休日(土曜日)や、国民の祝日などが法定外休日にあたります。

法定休日が労働基準法上の定めである一方、法定外休日については就業規則や個別の労働契約上の定めに基づくものですが、時間外労働の割増賃金の支給等については、両者はあまり区別されずに取り扱うことが一般的です。

労働基準法32条の内容

労働者の労働時間についてのルールを定めた規定が労働基準法32条です。

労働基準法第32条
1. 使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。
2. 使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。

以上のとおり、休憩時間を除いて、1週40時間、1日8時間が法定労働時間であり、これを超える法定時間外労働については、割増賃金の支払対象となります(労働基準法37条1項)。

所定休日とは

所定休日とは、法定休日以外に会社や使用者が労働者に対して与える法定外休日のことをいうのが一般的です。

所定休日は、労働基準法36条が規定する使用者と労働者との間のいわゆる36(サブロク)協定において、所定労働時間などと共に定められることが一般的です。

法定休日と法定外休日の関係性

上記のとおり、労働基準法35条によって、使用者は労働者に対して最低1週間に1日の休日を与えなければなりません。

週休1日制を採用する会社においては、週6日の労働となりますが、仮にその会社が、1日当たりの所定労働時間を8時間と定めた場合、1週間の労働時間が48時間となります。

しかし、これは、労働基準法第32条の定める労働時間のルールである週40時間を超過してしまいます。

そのため、労働基準法のルールに則り、労働時間と労働日数のバランスを図る観点から、一般的には法定休日の他に法定外休日を設定して週休2日制とする会社や使用者が多いものといえます。

時間外労働・休日労働に対する増賃金支払義務とは

上記のとおり、使用者が労働者に対し週40時間を超える時間外労働や休日労働を行わせた場合、使用者は割増賃金を支払う必要があります。

賃金の割増率は、労働基準法37条1項や政令等に定めがあります。

週40時間を超える時間外労働については2割5分以上となり、休日労働については3割5分以上となります。

労働基準法第37条の内容

労働基準法第37条1項は、割増賃金について以下のように定めております。

使用者が、第三十三条又は前条第一項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合においては、その時間又はその日の労働については、通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。ただし、当該延長して労働させた時間が一箇月について六十時間を超えた場合においては、その超えた時間の労働については、通常の労働時間の賃金の計算額の五割以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならない。

そして、上記の「それぞれ政令で定める率」について、労働基準法第37条1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令が、時間外労働については2割5分以上、休日労働については3割5分以上と定めております。

法定休日・法定外休日を区別する理由

法定休日か法定外休日かによって割増賃金の割増率が異なる場合があります。

法定外休日の労働は、労働基準法等において割増賃金の規定が定められておらず、労働者が法定外休日に労働をしたということのみでは、割増賃金の支払義務が直ちに発生するものではありません。

現在の割増賃金の割増率

上記のとおり、割増賃金の割増率は、労働基準法第37条に定められています。

ここで、例えば、週休2日制を採用する会社において、労働者が休日2日のいずれも出勤したとします。

この休日出勤分について、法定休日に出勤した分は、「休日労働」にあたり、法定外休日の出勤分のうち、労働時間に関する週40時間を超えた分は「時間外労働」にあたるものとして割増賃金を計算することになります。

また、平成22年4月に施行された労働基準法改正(労働基準法37条1項ただし書)により、時間外労働のうち、月60時間を超える部分については、割増率が2割5分以上から5割以上に引き上げられています。

この改正により引き上げられた割増率の部分は、労使協定によって割増賃金の支払に代えて有給の休暇(代替休暇)を与えることも可能です(労働基準法37条3項)。

行政当局は法定休日の特定を推奨している

たとえば週休2日制を採用する会社において、法定休日がいずれの日であるかを特定する義務まで使用者側に課されているものではありません。

もっとも、法定休日を特定しておくことは、休日労働に該当するか否かや、その際の割増賃金の計算をするにあたって労働者・使用者の双方にとって便宜であることから、行政当局としては、就業規則等によって法定休日を特定することが望ましいとされており、休日を特定するような行政指導も行われております。

法定休日の特定が問題となった事例

事例①

法定休日を土曜日とした判例として、日本マクドナルド事件をご紹介します。
本訴訟では、日本マクドナルド株式会社の直営店店長が、過去2年分の未払い賃金の支払いを求めました。

裁判所は本件の店長業務を業務内容・賃金面からも管理監督者として扱うには不十分とし、時間外労働や休日労働に対する2年分の賃金である約750万円、訴訟後の残業代約250万円をあわせた約1,000万円の支払いを命じ、週に1回も休みがない場合、暦週(日曜日が起点)の最終日の土曜日を法定休日とみなすのが妥当と判断しました。

参考: 平成17(ワ)26903賃金等請求事件|裁判所

事例②

つづいて法定休日を日曜日とした判例として、HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド賃金等請求事件があります。

外資系銀行に年俸制で中途採用された社員が未払い残業代を求めた訴訟です。

本件も、原告の業務上の裁量権の小ささや部下がいなかったこと等から、管理監督者には当たらないとして、銀行へ約325万円の支払いが命じられました。

また、法内残業以外の割増賃金は、年俸に含めないと判決されました。

契約書には「年間の俸給は、残業や休日出勤に対するあらゆる賃金を含みます。」と記載されていましたが、年俸に含まれる割増賃金の範囲が明確になっておらず、契約書の有効性が認められなかったため、割増賃金を支払うことが命じられることになりました。

さらに、銀行側は暦週の最終日の土曜日を法定休日と主張しましたが、裁判所は日本の旧来からの社会通念上、週の起点を月曜日とし、最終日の日曜日を法定休日にすべきであると判断しました。

参考:HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド(賃金等請求)事件

 

休日労働については、労働者と使用者が、労働契約において事前に法定休日と設定した日にされた労働が休日労働となると考えられます。

また、週休2日以上の休みを設定している会社で、どの日が法定休日か特定されていない場合は最後の日にされた労働が休日労働にあたるものと考えられます。

休日における労働の割増賃金の計算方法

それでは、労働者が休日労働を行った場合の割増賃金の計算について、概略を見ていきます。

なお、以下の事例では、就業規則等で、週の始まりを月曜日と設定しているものとします。

ケース①

たとえば、土日週休2日制を採用しているものの、法定休日を土曜・日曜のいずれの日か特定していない会社で、1日の所定労働時間が7時間である場合、労働者が土曜日に出勤したときを考えてみましょう。

この場合、月曜から金曜までの5日間で所定労働時間どおりに出勤した場合、金曜日までで35時間労働していることになります。

また、週休2日以上の休みを設定している会社で法定休日か特定されていない場合は最後の日が休日労働にあたるものと考えられますので、週の始まりが月曜日の本事例では、日曜日が法定休日となり、土曜日が法定外休日となります。

そのため、このケースでは、法定外休日である土曜日の7時間の労働のうち、5時間分は通常の賃金として計算することとなりますが、週40時間を超過した2時間分については法定時間外労働となるため、割増賃金として1.25倍で計算することとなります。

ケース②

土日週休2日制、1日あたりの所定労働時間7時間で、就業規則において法定休日を日曜日に設定している会社で、土・日のいずれかの日に出勤した場合はどうでしょうか。

法定外休日にあたる土曜日に出勤した場合、週40時間を超える時間外労働分について1.25倍となるのはケース①と同様です。

他方、法定休日にあたる日曜日に出勤した場合は、法定休日の労働時間は、週40時間までの法定労働時間の計算に含みませんので、出勤時間全体が1.35倍で計算されることとなります。

ケース③

土日週休2日制、1日あたりの所定労働時間7時間で、法定休日を特定していない会社において、土・日の両方出勤した場合はどうでしょうか。

上で見たように、週休2日以上の休みを設定している会社で、どの日が法定休日か特定されていない場合は最後の日が休日労働にあたるものと考えられますので、週の始まりが月曜日の本事例では、日曜日が法定休日となると考えられます。

そして、土曜日(法定外休日)の出勤分のうち週40時間を超える部分が時間外労働の計算対象となり、日曜日の出勤分が休日労働の計算対象となります。

法定休日と法定外休日の見分け方

①就業規則等で法定休日を明確にしておくべき

休日の特定について、労働基準法上は、1週間のうち何曜日を休日とすべきか等については特に規制がありません。

そのため、使用者と労働者との労働契約において1週間のうちいずれの曜日でも休日と設定することが可能であり、また、週ごとに異なる日を休日とすることも可能です。

上記のとおり、割増賃金の計算について後のトラブルを防止する意味からも、就業規則等で法定休日と法定外休日を明確に設定することが望ましいといえます。

②就業規則等で法定休日を設定していない場合

この場合、まず、1週間の開始は何曜日かが問題となります。

就業規則で1週間の開始の曜日を特定している場合は、その曜日となります。

他方、就業規則で特定していない場合は、一般に、暦の上で、日曜日から開始されるものといえるでしょう。

上で見たように、週のうち休日が複数あるものの、どの日が法定休日か特定されていない場合は最後の日の労働が休日労働にあたるものと考えられます。

そうすると、土日週休2日制で、法定休日を設定していない場合には、週の始まりの休日である日曜日が法定外休日、最後の日である土曜日が法定休日となります。

法定休日の設定方法

会社の企業活動においては、閑散期や繁忙期があるのが通常であり、繁忙期においては、仕方なく労働者に休日労働をしてもらうこともあることでしょう。

休日労働が発生する可能性自体はどのような会社・企業にとっても存在すると思われます。

そのため、休日労働が発生した場合の割増賃金等の計算をスムーズに行い、労使間のトラブルをできる限り防止するためにも、就業規則において「いずれの日・曜日が法定休日にあたるのか」を設定し、法定休日における労働については35%以上の割増賃金を支払う旨の取り決めを明確化すべきと考えられます。

労使協定書の手続き

適切な方法で締結されていない労使協定は、無効となってしまう可能性もあります。

まず使用者側で締結する労使協定の内容を作成し、労働者代表と契約締結をおこないます。

労使協定を締結した後は従業員へ周知し、速やかに労働基準監督署へ提出します。

協定が効力を発揮するのは届け出が受理されたタイミングですので注意しましょう。

就業規則の書き方と記載例

就業規則で法定休日について定める場合、「1週間は月曜日から始まり日曜日までの7日間とする」と1週間の起点となる曜日を明確化した上で、「休日については、①土曜日、②日曜日、③国民の祝日、④その他、会社と労働者が合意により定めた日とする。」と休日を定義し、「法定休日は毎週日曜日とする」と特定することが望ましいでしょう。

シフト勤務の場合の記載例

ファミリーレストラン等のシフト制勤務の場合は、「法定休日はシフト表における各週の最後の休日とする」と規定する場合も考えられます。

法定休日を特定しない場合の記載例

法定休日の特定が困難な場合も、前述の通り1週間の起点となる曜日を明確化し、就業規則内明記することでトラブルを回避できるでしょう。

労働者への通知は徹底する

上記のとおり、休日出勤日が法定外休日か法定休日かで割増賃金の計算が異なる場合もあり、無用なトラブルを防止するためにも、就業規則で明確にすることは勿論、労働者を雇い入れる際にも法定休日の定めについて予め通知することが重要といえるでしょう。

また、就業規則を後日改定することで、法定休日を変更したり、新たに設定したりする場合には、適法な就業規則の変更手続を経た上で、これを労働者に周知することが必要です。

法定外休日に関係する36協定とは

労働基準法第36条で定められた協定を36(サブロク)協定といいます。

使用者が労働者に時間外労働や休日労働を命じることができるためには、この36協定を労使間で締結し、届出等の労働基準法上の規定を満たすことが必要です。

このような36協定を締結し届け出ることで、使用者は、行政による監督(労働基準法97条以下)、刑事罰の適用(同法119条1号「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」)等を免れることができるという効力が発生します。

36協定が過半数の労働組合と使用者との間で締結され、それが労働協約の形式を備えている場合、労働基準法上の上記の効力に加えて、労働契約を定める効力も有すると考える見解もあります。

しかし、36協定を締結すれば無制限に時間外労働をさせることができるものではありませんし、時間外労働・休日労働については割増賃金の支払義務が発生します。

36協定で定める時間外労働時間の上限は、原則として1か月45時間、1年で360時間である必要があります(労働基準法36条4項)。

まとめ

本記事では、法定休日・法定外休日や割増賃金等について検討しました。

会社の企業活動において、労働者に休日労働や時間外労働をしてもらうことで繁忙期を乗り切り、ビジネスを拡大することが必要な場面もあることと思われます。

割増賃金の計算等に関する労使間の無用なトラブルを避けるためにも、就業規則等において法定休日等のルールについて明確化し、労働者に周知徹底を図ることが望ましいといえるでしょう。

就業規則の定め方等について迷われる場合は、企業問題や労働問題を取り扱う弁護士等の専門家にご相談されることもご検討下さい。

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