画像の著作権侵害を回避するために最低限理解しておくべきポイント
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例えば、ネット上の画像や写真を勝手にダウンロードして、自分のブログなどに掲載すると、著作権の侵害になるおそれがあるということについては、漠然と知っている方は多いと思います。もっとも、具体的にどのような行為が著作権侵害に該当するのか、正確には理解できていないという方がほとんどではないでしょうか。
最近は、スマートフォンの普及により、ネット上の画像や写真をダウンロードしたり、スクリーンショットを保存したりという行為は日常的に行われています。知らないうちに著作権を侵害しないために、著作権に関する正しい知識を習得することが大切です。
今回は、著作権に関する法律、画像の私的利用が認められる範囲、著作権フリーの画像の見分け方、引用する際のルール、画像の加工や模倣の違法性、著作権侵害を訴えるための法的手段などについて解説します。
画像の著作権を保護する法律
著作権侵害という言葉は聞いたことがあるけれど、具体的にどういうことかはわからないという方がほとんどであると思います。そこで、まずは著作権を保護する法律について簡単に説明します。
インターネット上には自由にダウンロードできる画像や写真が無数存在しますが、その中の多くは「著作物」です。
著作物は、著作権法2条1項1号で以下のように定義されています。
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
また、著作権法10条1項では、著作物の例として、以下のように挙げられています。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 舞踊又は無言劇の著作物
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 建築の著作物
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 映画の著作物
八 写真の著作物
九 プログラムの著作物
したがって、ネット上に公開されている画像や写真なども「著作物」に含まれるため、これらを創作した「著作者」の「著作物」として、著作権法により保護されています。
もっとも、「著作物」であっても、著作者以外の人が、「私的利用目的」でダウンロードすることは、著作権法上で認められています。「私的利用目的」でのダウンロードが許されているのは、個人の私的利用にとどまるのであれば、著作者の経済的な損失は小さいといえるためです。
しかし、以下のような「私的利用目的」といえないような著作物のダウンロードは、著作権侵害となります。
画像の私的利用が認められる範囲
もっとも、プライベートで利用する場合は全て「私的利用目的」だから法律上問題ない、というわけではありません。どこまでが「私的利用目的」として認められるのか、その範囲や例外について説明します。
1.個人的な利用が認められる範囲
著作権法 30 条1項では、著作物を個人または家庭内などの限られた範囲で使用する私的利用目的の場合、権利者の許諾なしで、自由にダウンロードできることが認められています。
ただし、例外として、違法にインターネット上にアップロードされた音楽や映像(動画)を、違法と認識しながらダウンロードする行為は、私的利用目的の場合でも違法です。
しかし、私的利用目的で違法にインターネット上にアップロードされた漫画や写真、イラストを、違法と認識しながらダウンロードする行為は、現行の著作権法では、違法とはならないのです。
もっとも、違法にアップロードされた漫画等のダウンロードを違法にすべきかどうかは、近年、特に議論されているところです。2018年頃から、著作権者等に無断で複製された漫画や雑誌などのコンテンツをインターネット上に掲載する海賊版サイトの横行が問題視され、違法サイトから漫画などの静止画のダウンロードを禁止する内容を盛り込んだ著作権法の改正案が国会で検討されました。しかし、この改正案は、クリエイターの創作活動や個人の自由な表現活動を萎縮させるおそれがあるなどの理由から多くの業界団体から反対を受け、2019年3月に立法化の見送りが決定しました。
なお、児童ポルノをダウンロードする行為は、私的利用目的であろうとも、児童ポルノ禁止法により、違法となります。
2.アップロードは公衆送信権侵害
前述のとおり、私的利用目的の範囲内で、適法にインターネット上にアップロードされた音楽、映像(動画)等をダウンロードして楽しむことは法律上の規制は受けず適法な行為です。ただし、アップロードとなると話は別です。個人で運営する趣味のブログやSNSなどに、ネット上で見つけた音楽や映像(動画)はもちろん、漫画、写真、イラストをアップロードして掲載すると、以下の理由から、著作権法違反となります。
すなわち、著作権法23 条1項には、著作物の公衆送信権は著作者が専有すると定められています。公衆送信権は、著作物を不特定多数の公衆が閲覧できるように送信する権利のことです。個人のブログにアップロードして公開したり、SNSなどに投稿したりする行為も公衆送信権に含まれます。つまり、著作物を創作した本人が著作権を放棄していない限り、他人が勝手にブログやSNSを通してインターネット上に公開することは、公衆送信権の侵害となるのです。
3.芸能人・有名人の写真掲載の違法性
他人を撮影した写真を自分のブログなどに掲載する行為は、撮影者たる「著作者」自身が、自らが撮影した写真である「著作物」を利用しているにすぎないため、著作権侵害はありません。しかし、無断で他人を撮影した写真を公開する行為は、肖像権侵害となるおそれがあります。また、芸能人やスポーツ選手などの著名人の写真を、営利目的で無断使用した場合は、著名人が持つ経済的な利益の保護を目的とするパブリシティ権の侵害とみなされる可能性があります。肖像権とパブリシティ権は、著作権のように法律で定められた権利ではありませんが、判例により権利が認められています。
自分が撮影した他人の写真を自分のブログやSNSに掲載してしまうことや、好きな芸能人やスポーツ選手の写真を掲載してしまうことは、何気なく行ってしまう場合も多いと思います。しかし、この行為が肖像権侵害やパブリシティ権侵害となる可能性があることをしっかり認識し、違法となってしまわないように注意しましょう。
4.社内のプレゼン資料などでの利用
例えば、他人が著作権を有する著名なキャラクターなどを利用して、自社のキャンペーンなどを行うことを計画し、プレゼンをしたいと考えたとします。
あなたが、プレゼン資料にそのキャラクターのイラストを掲載するためには、そのキャラクターは「著作物」であることから、著作権者の許可を取る必要があるのが原則です。
もっとも、著作権法30条3項では、「著作権者の許諾を得て著作物を利用すること」を検討している場合、その検討段階でプレゼン資料に当該著作物を無断利用することが、必要な限度で、かつ、著作権者の利益を不当に害さない限りにおいて認められています。
他の例としては、社内で商品のプロモーションのためのイメージキャラクターとして起用する芸能人を誰にするか検討する際に複数の候補者の写真をプレゼン資料に載せる場合や、有名なキャラクターとのコラボ商品の企画資料にキャラクターのイラストを使用したりする場合などです。これらは著作権法違反にはなりません。
ただし、無断利用が認められているのは、あくまでも必要な限度で、かつ、著作権者の利益を不当に害さない限りにおいてのみ、という点には注意が必要です。
著作権フリーの画像の見分け方
著作権侵害にならないようにネット上の画像を自分のサイトやブログに掲載したい場合は、著作権フリーの画像を使用するとよいでしょう。著作権フリーの画像の見分け方がわからないという方もいらっしゃるかと思いますので、著作権フリーの画像を見つける方法をご紹介します。
1.著作権フリーの画像を集めたサイトの見つけ方
著作権フリーの画像を見つける方法として広く知られているのは、著作権が放棄されている場合や、保護期間が終了した場合などにより、公共物となったパブリックドメインと呼ばれる状態の写真や画像のみを集めたサイトを利用することです。パブリックドメインの画像や写真を無料で提供しているサイトは、「著作権フリー画像」「ロイヤリティフリー 画像」などのキーワードで検索すると見つかります。
ただし、サイトごとに商用利用の可否などの利用条件が異なりますので、利用する際は利用規約をしっかり確認しましょう。また、中には著作権放棄の信憑性に問題があるサイトもありますので、サイトの運営元が信頼できる組織なのかという点も確認することをおすすめします。
2.クリエイティブ・コモンズが提供する画像検索
著作権フリーの画像を見つける方法として、クリエイティブ・コモンズという団体によるCCライセンスが付与された画像を利用するという方法もあります。
クリエイティブ・コモンズは、著作物をより広く自由な表現活動のために提供することを目的として、国際的な活動を行っている非営利組織です。クリエイティブ・コモンズが定めたCCライセンスという制度では、著作者が、元の作品の改変、営利目的での利用などの条件を選択し、条件さえ守れば誰でも自由に利用してかまわないという意思表示を示すことができます。CCライセンスが付与された画像や写真は、下記URLのクリエイティブ・コモンズ公式サイトから検索できます。
引用元の記載ルール
これまで述べてきたとおり、他人の著作物をサイトなどにアップロードする行為は原則として著作権侵害となります。もっとも、公表された著作物の「引用」については、例外的に、著作権法32条1項で認められています。
画像や写真を引用する際は、以下のルールを守る必要があります。
- 既に公表された著作物であること
- 引用部分が明確にわかること
- 改変されていないこと
- 出典元が明記されていること
出典元は、引用部分のすぐ下に記載しましょう。書籍であれば、著者、書籍名、出版社名を明記します。サイトの場合は、そのサイト名を記載し、サイト名の部分にURLのリンクを貼るという方法が一般的です。
画像の加工や模倣の違法性
1.著作物の改変は同一性保持権侵害
ネット上で見つけたイラストや画像を、トリミングや色調変更することで一部修正を加え、自分のサイトで利用したいと思われることもあるかもしれません。しかし、この行為は、著作物の「改変」にあたる行為です。
著作権法20条1項では、著作者の著作物の同一性を保持する権利について定められており、著作者の意思に反して著作物を「改変」する行為は禁止されています。
2.漫画のキャラクターの模倣も違法
また、漫画に登場するキャラクターを模倣した自作のイラストをネット上に公開している方もいらっしゃいますが、このような行為も違法となる可能性があります。漫画に登場するキャラクター自体は、「イメージとしてのキャラクターが漫画という具体的表現を離れて独立した著作物として保護されるものではない」として、著作物には該当しないとされています。もっとも、誰が見てもそこに漫画の登場人物(例えば「サザエさん」)が表現されていると感得されるようなものであれば、著作物の複製や改変といえ、著作権法違反となる場合があるので注意しましょう。
漫画の登場人物の著作権に関する日本初の裁判例として知られているのが1970年に起こされたサザエさんバス事件と呼ばれる事件です。この事件では、国民的アニメとして有名な漫画『サザエさん』の原作者である長谷川町子氏が、『サザエさん』の登場人物をバスの車体の絵画として無断で使用されたとして、立川バスを著作権侵害で訴えました。判決では漫画の登場人物の著作物性については言及されませんでしたが、キャラクターは、「登場する人物の容貌、姿態、性格等を表現するもの」であることが認められるとして、著作権の侵害が認められています。
3.商標権侵害にも要注意
また、ディズニーなどの有名なキャラクターを模倣したイラストをネット上に公開した場合、著作権だけではなく商標権の侵害になる可能性もあります。商標権は商標法で定められた権利で、商標登録された商品は商標社が独占排他的に使用できる権利のことです。
2015年には、日本で大人気のリラックマというキャラクターをマカオにあるカフェが商標権所有者に無断で使用したとして、リラックマの商標権を持つサンエックス社が商標権侵害の訴えを起こしています。
著作権侵害の刑事罰としての罰則規定
著作権法では119条~124条に刑事罰としての罰則規定が定められています。違反者を処罰するためには、侵害された権利者からの告訴が必要となります(親告罪)。また、著作権法違反の罪はすべてが故意犯であり、過失犯はありません。
また、著作権法違反の罪を教唆したり(そそのかしたり)、幇助すること(助けること)も、犯罪となるので、注意しましょう。
著作権侵害をした者は、私的使用目的の複製などの一定の場合を除き、10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金に処されることとなります。
著作権侵害を訴えるための法的手段
また、刑事罰による罰則以外にも、民事上の救済として、著作権等を侵害された者は、侵害者に対して著作物侵害の差し止めや、侵害者に対する損害賠償請求または不当利得返還請求をすることができます。
もっとも、自分がネット上に公開した著作物を無断で使用された場合の法的手段として広く用いられているのが、裁判所の関与を受けずに当事者同士が話し合って解決する示談という方法です。当事者間で著作物の使用差し止めや損害賠償の金額について話し合い、双方が納得すれば示談が成立となります。
また、著作権に関する紛争の迅速な解決を目的として著作権法105条以下で定められた紛争解決あっせん制度を利用するという方法もあります。この制度は、文化庁著作権課で申請を行えば誰でも利用することが可能です。紛争解決あっせん制度を利用した場合、双方の主張を確認した上で実情に即した審理が行われ、仲裁判断が下されます。仲裁判断を受け入れるかは当事者が判断できますが、受け入れた場合は裁判での判決と同じ効力があり、原則として再度訴訟などで争うことはできなくなります。その点は注意しましょう。
まとめ
今回は、著作権に関する法律、画像の私的利用が認められる範囲、著作権フリーの画像の見分け方、引用する際のルール、画像の加工や模倣の違法性、著作権侵害を訴えるための法的手段などについて解説しました。
現代のインターネット社会では、個人ブログやSNS上において、気づかないうちに著作権侵害をしてしまう可能性があります。
著作権法違反のリスクを回避するためにも、一人ひとりが著作権に関する正しい知識を身につけることが大切です。
- 得意分野
- 企業法務、会計・内部統制コンサルティングなど
- プロフィール
- 青森県出身 早稲田大学商学部 卒業 公認会計士試験 合格 有限責任監査法人トーマツ 入所 早稲田大学大学院法務研究科 修了 司法試験 合格(租税法選択) 都内法律事務所 入所 東京スタートアップ法律事務所 入所