ベンチャー・スタートアップ企業の資金調達法7選・特徴や注意点も解説
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ベンチャー・スタートアップ企業にとって、資金調達は事業を軌道に乗せるために非常に大切です。なぜなら、どんなにすばらしいビジネスを考え出したとしても、それを実現するためのシステム構築のための費用や、世間に知ってもらうための広告費のための資金がなければ、事業として成立しないからです。
ベンチャー・スタートアップが利用できる資金調達方法や、それぞれの方法のメリット・デメリットを知りたい、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は、ベンチャー・スタートアップが利用できる資金調達方法の種類、それぞれの方法のメリット・デメリット、ベンチャー・スタートアップが資金調達を成功させるためのポイント、資金調達時の注意点などについて解説します。
【解説動画】TSL代表弁護士、中川がベンチャー・スタートアップ企業のための資金調達方法7つを解説
ベンチャー・スタートアップが利用できる資金調達方法の種類
一般的に、創業間もないベンチャー・スタートアップ企業は実績も担保もないことが多く、信用力が低いと考えられ、民間の大手金融機関から融資を受けることは難しい場合が多いです。しかし、ベンチャー・スタートアップ企業だからこそ活用できる資金調達の方法も存在します。
1. 主な資金調達方法
ベンチャー・スタートアップ企業が活用できる主な資金調達方法は以下のとおりです。
- 助成金・補助金を利用する
- エンジェル投資家から出資を受ける
- ベンチャーキャピタル(VC)から出資を受ける
- 日本政策金融公庫から融資を受ける
- 信用保証協会を利用する
- クラウドファンディングを利用する
- ファクタリングを利用する
2. エクイティ・ファイナンスとデット・ファイナンス
ベンチャーキャピタルからの出資のように新株等の発行による資金調達方法は「エクイティ・ファイナンス」と呼ばれています。エクイティ・ファイナンスは基本的に返済不要の資金調達ですが、株式などを投資家に発行するため、株主総会などの議決権を投資家に与えてしまうことになります。
一方、金融機関などから借入れを行う資金調達方法は「デット・ファイナンス」と呼ばれています。「デット」(Debt)は英語で負債や借金を意味する言葉で、要は返済が必要な借金ということです。「デット」という言葉にネガティブなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、必ずしも「デット・ファイナンス」が「エクイティ・ファイナンス」より劣るというわけではなく、それぞれの方法にメリットとデメリットがあります。
また、エクイティ・ファイナンス、デッド・ファイナンスの他に、助成金や補助金のように、株式の発行も不要であり、かつ返済も不要という、いわば「お金をもらえる」ファイナンスも存在します。
ベンチャー・スタートアップ企業が活用できる主な資金調達方法の概要やメリット・デメリットなどについて解説していきたいと思います。
① 助成金・補助金を利用する
公的機関が提供する助成金や補助金は、原則として返済不要であるため、資金的な余裕がないベンチャー・スタートアップ企業が新しい事業に取り組む際のリスク軽減に大きく貢献する制度です。また、創業間もない企業のみ利用できる助成金や補助金も多いので、ベンチャー・スタートアップ企業としては積極的に活用したいところです。しかし、助成金や補助金についての情報収集を十分に行わず、助成金や補助金の制度を活用できている企業は少ないのが現状です。助成金や補助金の概要や、利用するメリット・デメリットについて説明します。
1.政府が提供する助成金・補助金の概要
助成金・補助金は政府が中小企業を支援するために資金を提供する制度です。助成金と補助金という言葉の使い分けについては厳密な定義はありませんが、一般的には経済産業省によるものを補助金、厚生労働省によるものを助成金と呼ぶことが多いです。
補助金と助成金の目的、募集時期、主な審査対象などを比較表にまとめてみました。もちろん、下記の比較はあくまで目安であり、実際には多種多数の補助金・助成金があるため、一概に区分できるものではありません。
補助金 | 助成金 | |
---|---|---|
主な提供元 | 経済産業省 | 厚生労働省 |
主な目的 | 産業の振興 | 雇用の安定と増加、能力開発 |
募集時期 | 年1回1ヶ月程度 | 通年 |
主な審査基準 | 事業計画の内容や実現可能性 | 基準となる要件を満たすか否か |
2. 最大のメリットは返済が不要なこと
助成金や補助金の最大のメリットは返済が不要なことです。
受給金額は助成金・補助金の種類によって異なりますが、中には数億円という高額の資金を受給できる制度も存在します。高額の資金を受給することで、自社のシステムやサービスに対しての投資を大きく促進させることができます。実際、複数回に渡り補助金を受給して、事業を加速度的に成長させているベンチャー企業も存在します。
また、金融機関の融資とは違い、そもそも原則として返済が不要であるため、保証人が不要というメリットもあります。
3.デメリットは受給までの難易度が高いこと
助成金・補助金の最大のデメリットは、受給に至る難易度が高く、簡単には受給できないという点です。
特に経済産業省が提供する補助金は、審査が厳しく、倍率も高いため、労力をかけて書類を作成したにも関わらず、審査に落ちて受給できないケースも多いです。
また、助成金・補助金の種類は非常に多いため、これらの情報を把握して自社が受けられる助成金・補助金を探すのは非常に手間がかかります。自社に適した助成金・補助金に関する最新情報を得たい事業者や、受給が成功確率を高めたい事業者は、社会保険労務士、中小企業診断士などの専門家によるコンサルティングを受けられるサービスを利用するという方法もあります。ネット上で「補助金 コンサルティング」などのキーワードで検索するとたくさん見つかるかと思いますので、補助金・助成金の受給を検討される事業者の方は、ぜひ検索してみてください。
② エンジェル投資家から出資を受ける
ベンチャー・スタートアップ企業が、後述するベンチャーキャピタル以外から受けるエクイティ・ファイナンスとして、エンジェル投資家から出資を受けるという方法があります。エンジェル投資家の特徴と、エンジェル投資家から出資を受けるメリットと注意点について説明します。
1.エンジェル投資家の特徴
エンジェル投資家とは、創業して間もない企業に資金を提供する個人投資家のことです。実績も資金力もない企業にとっては、まさにエンジェル(天使)のような存在といえます。エンジェル投資家の特徴は、個人的に応援したいと思う起業家に対して、個人投資家自らの資金で出資することです。そのため、実績のないスタートアップ企業でも、自社の事業に対する熱意や真剣な想いを伝えることができれば、エンジェル投資家から出資を受けられる可能性が高まります。
2.資金以外のサポートも受けられる
エンジェル投資家から提供された資金は、新株発行によるエクイティ・ファイナンスですので、負債によるデッド・ファイナンスと異なり返済不要です。また、エンジェル投資家の多くは経営者や引退後の元経営者で、自ら起業して成功した実績の持ち主です。そのため、スタートアップ企業は、エンジェル投資家から資金提供だけではなく、投資家が持つ経営のノウハウや人脈を駆使した手厚いサポートを受けることができるという大きなメリットがあります。
「次代を担う経営者の育成をしたい!」という思いを持つ良心的なエンジェル投資家と出会うことができれば、ビジネスの成功に大いに貢献してもらえるかもしれません。
3.エンジェル投資家から出資を受ける際の注意点
エンジェル投資家と出会うために、起業家とエンジェル投資家を繋ぐマッチングサイトを利用する方も増えていますが、中にはダークエンジェルと呼ばれる悪質な人物も存在するため注意が必要です。起業したいという若手事業家を騙そうとする投資家や、反社会的勢力と繋がりのある投資家も存在しています。したがって、その人物の経歴を確認したり、実際に会って話をしたりしながら、本当にその投資家からの投資を受けてよいかどうかを慎重に見極めなければいけません。
また、エンジェル投資家が、創業間もない起業を支援した個人投資家に対する税制優遇措置である「エンジェル税制」の適用を希望している場合もあります。エンジェル税制を利用するためには、まず、ベンチャー企業自身が都道府県へ、エンジェル税制適用対象企業であることの申請を行う必要があります。自社がエンジェル税制の要件を満たしているかどうかを判断するためには、関東経済産業局が作成したエンジェル税制要件判定シートが役立つでしょう。
③ ベンチャーキャピタルから出資を受ける
エンジェル投資家よりも出資を受けることができるハードルは上がりますが、ベンチャー・スタートアップ企業が事業を大きく拡大させるためには、ベンチャーキャピタルから資金を調達することも選択肢の一つです。ベンチャーキャピタルの特徴、ベンチャーキャピタルから出資を受けるメリットと注意点について説明します。
1. ベンチャーキャピタルの特徴
ベンチャーキャピタル(VC)は、高い成長性が見込まれる未上場企業に対して投資を行う投資ファンド(投資会社)の一種です。未上場の時点で投資を行って株式を取得し、上場後に当該株式を売却することにより利益を得ることを目的としています。ベンチャーキャピタルの主な特徴としては、出資額が高額な分、審査が厳格という点が挙げられます。
2. 最大のメリットは出資額が大きいこと
ベンチャーキャピタルから出資を受ける最大のメリットは、数千万円から1億円以上の高額な資金も得られることです。エンジェル投資家はあくまで個人投資家であるため、出資を受ける場合は一般的には多くても数千万円ほどになることが多いですが、ベンチャーキャピタルの場合は会社のフェーズにもよりますが2~3億円の出資を行うケースも多く、ビジネスを大きく拡大させるための資金需要を満たすことができます。
3.デメリットは難易度が高いこと
ベンチャーキャピタルから出資を受けるデメリットとして、審査が厳しく、投資の実行までの難易度が高いという点があります。審査に通るためには、将来性のある成長戦略と実現性の高い事業計画が必要です。
また、投資した後についても、投資を成功させて資金を回収するために、投資先企業に対して、経営支援や経営の助言を行う「ハンズオン型」のベンチャーキャピタルもあります。ただし、場合によっては、コンサルティングの範囲を超えて、実質的に会社の経営権を握られてしまうこともあるため注意が必要です。特に、ベンチャーキャピタルに過半数に近い株式を発行した場合、経営権を握られるリスクがかなり高くなります。
また、ベンチャーキャピタルは、概ね10年以内に投資先企業の株式を売却して利益を上げることが必須であるため、ベンチャーキャピタルから投資を受けた企業は、これまで以上に経営におけるプレッシャーが高まることになります。もっとも、会社としてはその分、成長スピードが高まるため、早期にIPOなどを目指す起業家にとっては、ベンチャーキャピタルからの投資を積極的に受け入れることは大きなメリットになるでしょう。
④ 日本政策金融公庫から融資を受ける
日本政策金融公庫の創業融資制度は、ベンチャー・スタートアップ企業が資金調達する際の手段として広く用いられている制度です。日本政策金融公庫の創業融資制度の概要や、利用するメリット・デメリットについて説明します。
1.政府が提供する助成金・補助金の概要
日本政策金融公庫は、財務省が管轄する100%政府出資の政策金融機関で、株式会社日本政策金融公庫法という法律に基づいて2008年10月1日に設立されました。日本政策金融公庫は、日本経済の発展をサポートする役割を担っており、創業時の融資にも対応しています。
2. 低金利で返済期限も長い
日本政策金融公庫の創業融資制度の主なメリットは以下の3点です。
- 銀行と比較して審査が通りやすい
- 金利が民間の銀行と比べて低め
- 返済期限が比較的長め
また、担保や保証人が不要で、創業間もないベンチャー・スタートアップ企業でも利用しやすい融資制度として知られています。
3.デメリットはあくまで借金であること、及び融資に時間がかかること
返済不要な助成金・補助金や、新株発行によるエクイティ・ファイナンスと違い、日本政策金融公庫からの資金調達はあくまでデッド・ファイナンスとしての融資なので、当然返済が必要となります。たしかに金利が一般的に2%程度と低めで、返済期間も長期間ではありますが、あくまで借金であり、返済義務を負うことには変わりはありません。
また、銀行からの融資と比較して、日本政策金融公庫からの融資は、その実行までに時間がかかるというデメリットもあります。融資にあたり2、3回の面談があり、実行までに期間が2か月程度かかる場合も多いため、すぐに資金が必要な場合には注意が必要です。
⑤ 信用保証協会を利用する
信用保証協会を利用するという方法も、ベンチャー・スタートアップ企業が資金調達する際によく使われる手段です。信用保証協会の概要やメリット、利用する際の注意点について説明します。
1. 信用保証協会の概要
信用保証協会は、中小企業が金融機関から融資を受けやすくなるようサポートする公的機関です。創業間もないベンチャー・スタートアップ企業が金融機関から事業資金を借入れする際に、信用保証協会が公的な保証人となってくれます。信用保証協会は都道府県ごとに設置されていて、申込先の信用保証協会が管轄する都道府県において企業の事業実態があることが申し込みの条件となります。東京信用保証協会のように創業計画の策定サポートなどを行い、金融の面だけではなく総合的に企業の育成を支援している協会もありますので、積極的に活用すると良いでしょう。
2. 金融機関からの資金調達が実現しやすくなる
信用保証協会を利用するメリットは、金融機関からの資金調達が実現しやすくなることです。会社の基盤も売上も担保もない段階の企業は、本来であれば銀行などから融資を受けることは難しいです。金融機関側から見ると、そのような段階の企業への融資は貸し倒れのリスクが大きすぎて、高い利率で貸し付けたとしても採算が合わないと判断されるからです。しかし、信用保証協会が公的な保証人となった場合、仮に企業が当該融資を返済できない時でも信用保証協会が肩代わりしてくれるため、銀行は安心して融資できるようになります。また、信用保証協会が保証人となることで、金利面などで優遇措置のある制度融資の利用も可能となるため、比較的低金利で長期間の資金調達が実現する可能性が高まります。
3. 保証割合及び信用保証料を確認しておくこと
信用保証協会を利用する際に注意しておきたいのが保証割合です。保証割合とは、融資先企業が融資の返済が不能となった場合、その返済不能となった融資額のうち、融資元である金融機関に対し信用保証協会がどれくらいの割合を肩代わりするかの割合です。保証割合は融資制度によって異なり、100%保証の場合もありますが、80%の部分保証の場合も多いです。部分保証の場合、貸し倒れとなった際に残りの部分を金融機関が負担することになるため、金融機関の融資の審査が厳しくなる傾向があるということを認識しておきましょう。
また、利用する際は、金融機関に支払う利子とは別に、信用保証料と呼ばれる手数料が取られるという点にも注意が必要です。
⑥ クラウドファンディングを利用する
最近はクラウドファンディングと呼ばれるシステムを利用して事業資金を集めるケースも増えています。クラウドファンディングの概要や、利用するメリット・デメリットについて説明します。
1. クラウドファンディングの概要
クラウドファンディングとは新しい製品やサービスのアイデアを、インターネット上のプラットフォーム業者のサイトを通して公開し、不特定多数の方々から資金を集めるシステムです。「寄付型」、「購入型」、「融資型」、「ファンド型」、「株式投資型」など、様々なタイプが存在します。
2. 不特定多数の者から資金を調達できるメリット
クラウドファンディングのメリットは、何よりもインターネットを通じ、不特定多数の者から資金を調達できることにあります。一人一人からの調達額は少額でも、インターネット上の多数の人から資金を調達できるため、うまくいけば全体として多額の資金調達を図ることが可能です。例えば、知名度も担保もないスタートアップ企業が資金調達をしたい場合でも、その企業が制作したプロダクトやコンテンツ作品がインターネット上の多数の人から支持を得られるものであれば、多額の資金を調達することができるのです。
また、クラウドファンディングならではのもう一つのメリットは、資金調達をしながら新しいビジネスの宣伝ができることです。「革新的なビジネスだ」などと評価されて注目を浴びると想像以上のマーケティング効果が期待できる場合もあります。さらに、インターネット上で比較的手軽に募集することができるため、手間や時間をかけずに挑戦しやすいという点もメリットの一つです。
3.アイデアを真似されるリスクがある
クラウドファンディングのデメリットは、アイデアを真似されるリスクがあることです。事業計画を公開する必要があるため、ライバルがアイデアを盗んで真似する可能性があるということを念頭に置いておきましょう。
また、クラウドファンディングのプラットフォーム業者から、集めた資金の10~20%程度は手数料として取られることもデメリットと言えるでしょう。
加えて、クラウドファンディングにもいくつか種類があり、寄付型、購入型、融資型、ファンド型、株式投資型などのタイプにより、返済不要か否か、金利がかかるのか否かが異なるため、注意が必要です。
⑦ ファクタリングを利用する
入金日までまだ期間がある売掛債権があるが、「今すぐ資金が必要」という場合、ファクタリングという方法を利用して資金調達するという方法があります。ファクタリングはスタートアップ企業にとってはあまり一般的な資金調達ではありませんが、参考までに、ファクタリングの概要や、利用するメリット・デメリットについて説明します。
1. ファクタリングの概要
ファクタリングは、ファクタリング業社が、企業や事業者が持つ売掛金などの売掛債権を購入して、その代金を企業や事業者に支払うという仕組みです。売掛金は入金されるまでに一定期間を要しますが、ファクタリングを利用することで売掛金をすぐに現金化することが可能となります。
2.最大のメリットは資金調達のスピードが早いこと
ファクタリングの最大のメリットは、資金調達までのスピードが速いことです。金融機関の場合は審査に数週間~数ヶ月程度かかるのが通常ですが、ファクタリングの審査はスピード重視で行われます。そのため、早い場合は即日に現金化することも可能です。
また、保証人や担保が不要な点もメリットの一つです。
3.デメリットは手数料を取られること
ファクタリングのデメリットは手数料が取られることです。手数料はファクタリング業社や契約内容によって異なりますが、多い場合は25%程度の手数料がかかることもあります。
また、ファクタリング業社の中には法外な手数料を取る悪質な業社も存在し、過去にはファクタリング業者を名乗る闇金業者が、貸金業法第11条の無登録営業等の禁止に違反している疑いで逮捕された事例もあります。ファクタリングを利用する際は優良な業社を慎重に選ぶようにしましょう。
創業時の資金調達の実態
2022年4月に東京商工会議所が発表した「創業・スタートアップ実態調査」によると、創業準備期における課題として最も多く挙げられたのが、「資金調達」(53.3%)で、「経営に必要な知識・ノウハウの習得」(45.7%)、「販路開拓」(43.1%)を上回っていました。また、創業後・事業拡大期における課題としても、「資金調達」(47.8%)は、「販路開拓」(54.4%)の次に多い回答でした。やはり、資金調達は創業前後における重要課題であるといえるでしょう。
実際に創業を経験された方は、創業時にどの程度の資金を必要としていて、どのような方法で資金調達をしたのでしょうか。
1. 創業時・創業後に必要な資金
創業の際に必要だった資金としては、「100万円超~500万円以下」(36.8%)という回答が最も多く、次いで、「500万円超~1,000万円以下」(18.8%)、「50万超~100万円以下」(13.0%)でした。
創業当初3年間に新製品・新サービス開発など研究開発、事業展開に投資した金額についても、創業時の資金と同様に「100万円超~500万円以下」(30.0%%)という回答が最も多く、次いで、「50万超~100万円以下」(14.1%)、「500万円超~1,000万円以下」(12.9%)でした。
この調査結果から、創業時に100万円~500万円程度、創業当初3年間にさらに100万円~500万円程度の資金を必要としている企業が多いことがわかります。
2.創業時に利用した資金調達方法
創業時に利用した資金調達方法としては、「経営者本人の自己資金」(71.1%)が最も多く、次いで「融資(政府系金融機関)」(31.3%)、「融資(信金、信組)」(17.1%)でした。
この記事で紹介した、個人投資家、クラウドファンディング、VCなどを利用したと回答された方は少数派で、それぞれ以下のような割合でした。
- 個人投資家(8%)
- クラウドファンディング(6%)
- VC(ベンチャーキャピタル)(5%)
日本では、上記のようなスタートアップ支援を積極的に利用しようと考える人が少ないのが現状で、海外と比較すると普及が進んでいない状態だといえるかもしれません。
参考URL: 創業・スタートアップ実態調査(東京商工会議所公式サイト)
ベンチャー・スタートアップが資金調達を成功させるためのポイント
ベンチャー・スタートアップ企業が資金調達を成功させるためにはいくつかポイントがあります。重要なポイントについて説明します。
1.資金調達成功の鍵は事業計画書
資金調達を成功させるために不可欠なのが事業計画書です。事業計画書は出資の判断や融資の審査の際の判断材料として、重要な位置づけを占めるものです。
具体的かつ実現可能性が高い事業計画書をしっかり作成しつつ、資金繰りの計画についても説明できるように準備しておきましょう。事業計画書を丁寧に作成することにより、第三者から企業の将来性が評価されて、出資や融資を受けられる可能性が大きく高まります。
2.積極的にトライすること
助成金や補助金は審査の難易度が高そうだからといって、申請をせずにあきらめる事業者が多いです。しかし、これは非常にもったいないです。申請自体はコストがかからないので、自社が受領できそうな助成金や補助金があったら、積極的に申請してみるべきです。特に、助成金は一定の要件を満たすことができれば受給できる可能性が高いです。助成金は多種の事業を対象にしており、その種類もたくさんあるので、自社が助成金の対象の事業を行っている場合は、ぜひ検討してみることをおすすめします。
また、エンジェル投資家やクラウドファンディングも、創業間もない企業だからこそ活用できるので、積極的に活用を検討してみましょう。
3.専門家のサポートで成功率は高まる
「助成金や補助金を活用したいとは思うけれど、自社に適した補助金や助成金を探すのに手間がかかりすぎる」という方は、専門家のサポートを受けることを検討してもよいでしょう。
特に補助金の場合、審査基準をクリアするためには補助金の目的に沿った実現可能性の高い事業計画が必要となります。専門家のサポートを受けることにより、自社に適した補助金や助成金を教えてもらえるだけではなく、採用されるための申請書の書き方のポイントなども教えてもらえます。
ベンチャー・スタートアップ企業は、新規事業や新サービスを始めるために資金調達をする場合も多いでしょう。新規事業や新サービスを開始する場合は、リーガルチェックをしっかりと行うことが重要です。リーガルチェックを怠ると、行政指導によるペナルティを受けて、会社の信用度が低下するなど、資金調達に悪影響を及ぼすおそれもあります。一方、有効な新規事業として認められれば、新事業特例制度を利用して競争力を強化し、投資家からの出資や銀行融資を受けやすくなる等のメリットもあります。企業法務に精通した弁護士に相談して、関連する法規制に関するアドバイスを受けると、スムーズに進めることができるでしょう。
専門家のサポートを受ける場合、当然費用はかかりますが、助成金や補助金を獲得できる可能性は高まります。ネット上で「補助金 コンサルティング」などのキーワードで検索すると専門家によるコンサルティングサービスが見つかるので、自分に合うサービスを探してみるとよいでしょう。
資金調達時の注意点
最後に資金調達の際に注意しておきたいポイントについて説明します。
1.調達金額や入金時期を確認すること
資金調達する際は、いつまでにいくらの資金が得られるのかを必ず確認しましょう。
特にスタートアップ企業は資金が十分でない企業が多いため、調達した資金がいつ入金されるかは、資金繰りの観点からとても重要です。例えば、入居しているビルの家賃の支払、従業員への給料の支払、税金の納付などの資金の流出のタイミングで資金を確保しておかないと、「利益が上がっているけど資金がショートして倒産する」という黒字倒産の危険が生じることになります。
例えば、ベンチャーキャピタルやエンジェルから投資を受ける合意ができていたとしても、その実行のための株主総会決議や、投資契約書の作成・締結などに時間がかかり、出資の実行が遅れてしまうことがあります。
また、融資の場合は審査に期間を要しますし、クラウドファンディングやファクタリングは手数料がかかります。調達までに必要な期間や手数料も全て確認し、いつまでにいくらの資金が得られるのかを明記した資金調達計画表を作成することが大切です。
補助金の場合には、交付されるタイミングは基本的に後払いである点に注意が必要です。交付のタイミングは、企業が補助金の要件である設備投資等を完了した後となるため、設備投資等の支出を完了させるまで、資金を自分で用意しなければいけないという点は認識しておきましょう。また、補助金には補助率という概念があり、100%全額補助ではなく三分の二または二分の一の割合しか補助金が支給されないケースが多いので、実際にいくら支給されるのか計算して把握しておく必要があります。
2.融資を受ける場合は条件を確認すること
融資を受ける場合、借入額に応じた割合の自己資金を用意する必要がある等、条件が設けられていることが多いので、条件の内容をしっかり確認しましょう。
例えば、日本政府金融公庫の新創業融資制度の場合、原則として創業資金総額の10分の1以上の自己資金が必要という条件が設けられています。つまり、1,000万円の融資を希望する場合は、100万円以上の自己資金が必要ということになります。
自己資金が足りない場合、親などからお金を借りて必要な金額を用意する方もいらっしゃいますが、一時的に用意したいわゆる見せ金は自己資金として認められません。
日本政策金融公庫の審査では、半年程度の入出金が記帳された通帳原本を確認され、見せ金を用意しても、審査担当者に見抜かれてしまいます。見せ金を用意したことを見抜かれた場合、信用できない人物だとみなされて審査に落ちる可能性が高くなるため、このような行為は控えてください。
自己資金の要件は、返済能力や信用性を確認するためのものなので、自己資金を用意できなくても、他の要件を充たせば融資を受けられる可能性はあります。例えば、日本政府金融公庫の新創業融資制度の場合、以下のいずれかに該当すれば、自己資金の要件を満たすものとされています。
- 現在勤務している企業と同じ業種の事業を始める場合
- 産業競争力強化法に定める認定特定創業支援等事業を受けて事業を始める場合
自己資金が足りない場合は、他の要件を満たすことで融資を受けられる可能性がないか、しっかり確認してみましょう。
参考URL:新創業融資制度(日本政策金融公庫公式サイト)
3. 投資契約書を締結する場合は内容の確認が不可欠
エンジェル投資家やベンチャーキャピタルから出資を受ける場合には、投資契約を締結することになります。投資契約を締結する際は、投資家が用意した投資契約書を経営者が確認するということがほとんどですが、経営者側に知識がないと自分にとって不利な契約を締結してしまうリスクがあります。例えば、投資契約により、投資の実行により経営者が気づかないうちに会社の支配権を投資家に奪われてしまうことや、経営者側に過剰な責任や義務が課されるような条項が含まれていることがあります。また、返済が不要なはずなのに、投資契約書の中に返済義務が記載されている場合もあります。
さらに、投資家の提案により種類株式を用いた資金調達をした場合、その投資契約の内容はとても複雑になるため、法的知識が不十分だと、経営者側が予期しないような義務が発生している場合もあります。投資契約書を締結する際は、不利な内容の条項が含まれていないかしっかり確認し、可能であれば弁護士などの法律の専門家にチェックしてもらいましょう。
ベンチャー企業が投資契約を締結する際に最低限知っておきたい注意点
まとめ
今回は、ベンチャー・スタートアップが利用できる資金調達方法の種類、それぞれの方法のメリット・デメリット、ベンチャー・スタートアップが資金調達を成功させるためのポイント、資金調達時の注意点について解説しました。
ベンチャー・スタートアップ企業だからこそ活用できる資金調達方法を積極的に活用して、事業の基盤を構築し、さらなる成長を目指しましょう。
我々東京スタートアップ法律事務所は、これまで数多くのベンチャー・スタートアップ企業の資金調達のサポートを行ってきました。また、事務所自身が創業時から複数回に渡る資金調達を成功させ、開業から短期間で事務所を成長させてきました。
このような経験を活かし、法務面はもちろん、経営面からもベンチャー・スタートアップ企業をサポートしています。また、財務・会計の専門家も在籍しておりますので、事業計画書の作成などの相談にも乗ることができます。各企業の成長ステージやご要望に合わせたきめ細かいサポートを提供しておりますので、ぜひお気軽にご相談下さい。
- 得意分野
- 企業法務、会計・内部統制コンサルティングなど
- プロフィール
- 青森県出身 早稲田大学商学部 卒業 公認会計士試験 合格 有限責任監査法人トーマツ 入所 早稲田大学大学院法務研究科 修了 司法試験 合格(租税法選択) 都内法律事務所 入所 東京スタートアップ法律事務所 入所