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投稿日: 代表弁護士 中川 浩秀

弁護士によるベンチャー・スタートアップ支援の内容・選び方のポイントも解説

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ベンチャー・スタートアップ企業が、会社の経営を軌道に乗せるためには、経営陣が本来の業務に集中できる環境を整えることが非常に重要です。そのためにも、法務や会計などの専門的な知識を必要とする業務は、信頼できる社外の専門家に任せることが賢い選択といえます。

今回は、弁護士によるスタートアップ支援の内容、会社を設立した直後の顧問弁護士の必要性や顧問弁護士の選び方などについて解説します。

弁護士によるベンチャー・スタートアップ支援の内容

弁護士によるスタートアップ支援とは、具体的にどのような支援なのでしょうか。
会社設立の流れに沿って、具体的に説明します。

1.会社設立手続きのサポート

会社設立の際は、商号や資本金の決定、取締役会の設置、株式に譲渡制限を付すかどうかなど、決定すべき事項がたくさんあります。これらの決定を後回しにしてしまうと、その後、会社の意思決定の際に経営陣間でもめるなどのトラブルに発展するおそれがあります。

弁護士に法的な観点から会社設立時に必要な決定事項を洗い出してもらい、アドバイスを受けながら決定することは、将来起こり得るトラブルを未然に防ぐことにつながります。また、会社設立時に必要な事項を決めたら、定款を作成し、公証人の認証を受け、設立登記の申請を行うなどの手続が必要になります。このような手続を弁護士に代行してもらうことも可能です。

2.創業者株主間契約のサポート

複数人で会社を設立する場合、株式を持ち合って設立することが多いです。しかし、会社設立後、共同創業者の一人または複数人が辞めて会社を去るというケースは少なくありません。その場合、人間関係がこじれていることも多いため、株式の買い取り等でトラブルになりがちです。そこで、会社を設立する際に、「創業者株主間契約」として、創業者の離職に備えて株式の取り扱いを決めておくことが、トラブル防止に役立ちます。内容はケースバイケースで異なるので、弁護士に相談して、自社に適した内容を定めておくことをおすすめします。

3.資金調達・出資者との契約に関するサポート

資金調達や資本の政策はスタートアップ企業にとって最も重要な課題の一つです。
ベンチャーキャピタル(通称「VC」)などから出資を受ける際は、出資者との契約関係についてしっかり理解しておかないと、後々不本意な内容で自社の株式を売却するなどのリスクを負うおそれがあります。事前にリスクを回避するためには、弁護士に相談し、必要に応じたアドバイスを受けることが大切です。

4.ビジネス適法性チェック・関係省庁への許可申請

会社が行うビジネスは、当然ですが適法なものでなければなりません。そうすると、事業を行う前にその事業が適正なものであるかのリサーチをしなければなりません。これは、既存の事業の枠組みに捉われない新規性の高い事業を行うベンチャー・スタートアップ企業であればなおさらです。しかしながら、経営者が自ら適法性を判断しようとすると、リサーチに膨大な時間がかかりますし、その正確性に関してはやはり法律の専門家に劣ります。また昨今は、ビジネスに関する法規制の改正が多いため、法律の専門家でなければ把握し切れないこともあります。

起業の際は、ビジネスの適法性を正確に判断し、必要に応じて関係省庁が事業ごとに設けている許認可の手続を行わなければいけません。素人判断で進めると、判断を誤り、事業からの撤退を余儀なくされるおそれもあります。そのため、事前に自社が行うビジネス分野に精通した法律の専門家のアドバイスを受け、慎重に検討を重ねることが大切です。

5.特許権・商標権の出願登録

自社が提供する商品やサービスを他社と差別化し、模倣される等のトラブルを防ぐためには、商品名などを商標登録することが有効です。そのためには、既に同じ名称で登録されている商標がないかを調査し、特許庁に出願を行う必要があります。事前に調査をせずに、他社が既に登録している商品名を利用していると、後々差し止めや損害賠償を求められるおそれがあります。そのようなリスクを回避し、他社に権利を侵害されないようにするためにも、法律の専門家に相談しながら必要に応じた商標登録等を検討することが大切です。

6.約款・プライバシーポリシー等の作成サポート

ビジネスの適法性を確認し、関係省庁の許可申請も通り、いよいよ事業活動をスタートさせるという段階では、会社の公式サイトやSNSなどで自社のサービスや商品を紹介することになります。
その際は、約款や個人情報の取り扱いに関する規約などの制定が不可欠です。特に昨今は個人情報保護の要請の高まりから、規約の整備は重視されています。法改正も多い分野なので、会社の信頼性を確保するためにも、弁護士のアドバイスを受けながら整備しておくことが重要です。

7.ビジネスプラン別・契約書の作成サポート

会社間の取引には、それを裏付ける契約行為があります。ビジネスを円滑に進めるためには、想定されるリスクを回避するための条項を盛り込んだ契約書を作成することが求められます。
ネット上には契約書のテンプレートやひな形が数多く公開されていますが、昨今は法改正も多いですし、その事業にぴったりと当てはまる契約書が存在しないケースも多く、ネット上のテンプレートやひな形を流用した契約書では不十分な場合も多いです。また、契約書には、両当事者が合意した内容を明確に記載しなければなりません。
契約内容に応じて想定されるリスクを回避し、自社が不利な立場に立たされることがないようにするためにも、弁護士のリーガルチェックを受けることが大切です。

会社設立直後の顧問弁護士の必要性

会社を設立した直後は、弁護士のサポートが必要な場面は多いですが、必要な時にスポットで依頼をすべきか、顧問契約を結ぶべきか迷われる方もいらっしゃるかと思います。
会社設立時に顧問弁護士は必要なのでしょうか。会社設立時に必要なサポートの特徴や顧問弁護士の必要性について説明します。

1.会社設立時に必要なサポートの特徴

会社設立時には、複数の専門家からのサポートやアドバイスが必要となります。
例えば、以下のようなものが挙げられます。

  • 税理士や会計士が得意とする資金調達のアドバイス
  • 税理士や会計士が得意とする会計処理に関するアドバイス
  • 社労士や弁護士が得意とする就業規則や雇用に関するアドバイス
  • 弁理士が得意とする商標登録や特許などに関するアドバイス
  • 弁護士が得意とする事業の適法性に関するアドバイス
  • 起業経験者やハンズオン型のVCなどが得意とするビジネスモデルの有効性に関するアドバイス

それぞれの専門家が得意とする分野が異なりますので、どの専門家に何の業務を依頼するかという見極めは、起業家にとって極めて重要な能力です。中には、公認会計士資格や社労士資格を有した弁護士もいますし、他士業と提携した法律事務所も存在しますので、どこまで対応可能かを確認してみると良いかもしれません。

2.会社設立時に顧問弁護士は必要か

弁護士と顧問契約を結んだ場合、通常、スポットでの依頼ではなく、その企業が抱える法律問題につき継続して対応してもらう契約のことをいいます。具体的には、日常的に法律業務が可能な内容や月当たりに対応できる上限時間などを決め、それを超える対応を要するときは追加のタイムチャージを請求したり、別途契約を締結したりするという形式が一般的です。

顧問料として月額の定額料金を支払い、必要に応じて締結するスポット契約では、一定の割引を受けることができる場合が多いです。

会社を設立した直後は、法務、会計、税務、労務など、様々な分野の問題に直面します。問題に直面する度に、自力で解決策を調べる、各分野の専門家に相談してアドバイスを受けるなどにより解決することも可能な場合もありますが、時間と労力を要します。

弁護士と顧問契約を結んでおけば、会社設立直後に直面する多くの問題を迅速かつ適切に解決に導いてもらえる可能性が高くなります。また、自社のビジネスや方針を理解してもらった上で、日常的に発生する法律に関するトラブルについても迅速に対応してもらえるので、安心してビジネスに取り組めるというメリットもあります。

ベンチャー・スタートアップ企業の顧問弁護士の選び方

ベンチャー・スタートアップ企業が顧問契約をする弁護士や法律事務所を選ぶ際、どのような点に注意すればよいのでしょうか。弁護士や法律事務所を選ぶ際のポイントについて説明します。

1.法律事務所の実績や得意分野を確認

弁護士は法律事務全般を行うことができますが、全ての弁護士が法律に関する業務を完璧にこなせるというわけではなく、それぞれの弁護士に得手不得手があります。そのため、顧問弁護士を選ぶ際は、企業法務に精通した弁護士や法律事務所を選ぶことが大切です。

また、企業法務を得意としている弁護士や法律事務所は、公式サイトで企業法務に関する実績やコラム記事などを公開しているケースも多いので、公式サイトを確認してみるとよいでしょう。

2.ベンチャー・スタートアップ支援に積極的に取り組んでいるか確認

企業法務を得意としていても、大企業を主な対象としている法律事務所も存在します。そのような法律事務所は、多額のフィーを支払ってくれる顧客を複数抱えており、さらにはその顧客と対立する可能性のある企業の弁護はできないという、利益相反の問題も抱えているためベンチャー・スタートアップ企業には向かない場合もあります。

そのため、ベンチャー・スタートアップ支援に積極的に取り組んでいる弁護士や法律事務所を選ぶことが望ましいといえます。「スタートアップ 弁護士」、「スタートアップ 法律事務所」などのキーワードで検索して上位表示されているページから選んでもよいでしょう。スタートアップ支援に力を入れている弁護士や法律事務所は、スタートアップに必要なビジネス感覚や考え方などを理解してもらえる可能性も高いです。

3.コーポレートガバナンスについても確認

昨今、コーポレートガバナンス(企業統治)として、会社の所有者である株主など関係者の利益を最大化し、不適切な会社経営で関係者に不利益をもたらさないように、社外取締役や社外監査役など、外部から経営を監視する仕組みが重視されています。

法律事務所の中には、契約書のリーガルチェックや、労務対応などの一般的な企業法務のほかに、コーポレートガバナンスに強みをもつところもあります。

スタートアップ時には遠い話と思われるかもしれませんが、今後ビジネスの成長に伴い、コーポレートガバナンスが必要になる場合もあります。会社設立直後からコーポレートガバナンスに精通した弁護士のサポートを受けておくと、将来、企業が成長した際に必要となるサポートをスムーズに受けられるというメリットがあります。

4.弁護士費用の目安

弁護士や法律事務所と顧問契約を結ぶ場合、毎月顧問料を支払う必要があります。顧問料は各法律事務所によって異なりますが、中小企業を顧客とする法律事務所における顧問料相場は月額5万円~10万円程度です。

月額の顧問料は気になるところですが、その顧問料の範囲内でどの程度のサポートを受けることができるかという点も重要です。顧問弁護士を選ぶ際は、顧問料だけではなくサポートの範囲をしっかり確認するようにしましょう。

顧問弁護士の料金相場や料金体系などについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

まとめ

今回は、弁護士によるベンチャー・スタートアップ支援の内容、会社を設立した直後の顧問弁護士の必要性や顧問弁護士の選び方などについて解説しました。

創業直後は、検討すべき課題や求められる専門知識が膨大にあります。それだけに、専門家に任せることが可能な分野は社外の専門家にまかせて、経営陣はビジネスを軌道に乗せることに専念することが大切です。ベンチャー・スタートアップ支援に力を入れている法律事務所と顧問契約を締結すれば、必要な分野の多くをカバーしてもらうことができるため、相談窓口を一本化してコストを抑えられるというメリットもあるのではないでしょうか。

東京スタートアップ法律事務所では、豊富なベンチャー・スタートアップ支援の経験に基づいて、お客様の会社の状況や方針に合わせたサポートを提供しています。契約書のリーガルチェック、新規事業やサービスの適法性チェック、人事労務に関する問題等の対応、資金調達に関するアドバイス、株式に関する手続など、全面的なサポートが可能です。ベンチャー・スタートアップ支援をはじめとする相談等がございましたら、お気軽にご連絡いただければと思います。

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執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
2010年司法試験合格。2011年弁護士登録。東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。同事務所の理念である「Update Japan」を実現するため、日々ベンチャー・スタートアップ法務に取り組んでいる。
得意分野
ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社