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更新日: 投稿日: TSL

ODM契約とは|契約書の記載事項とひな型、OEM、ライセンス契約との違いも解説

ODM契約とは|契約書の記載事項とひな型、OEM、ライセンス契約との違いも解説
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昨今、様々な分野で、「ODM契約」、「OEM企業」などの言葉を耳にします。ODMやOEMは、高度な技術力や製造力を持つ企業が多い日本では活用される機会が多い契約類型です。しかし、ODM、OEM、EMSなど類似の契約も多く、どの契約が適しているのか判断が難しいと感じられる場面も多いのではないでしょうか。

今回は、ODM契約と類似の契約との比較、ODM契約書の記載事項やひな型、契約締結時の注意点、海外企業とODM契約を締結する場合の注意点などについて解説します。

ODM契約とは

ODM(Original Design Manufacturing)契約は、受託会社が、委託会社の製品の開発・設計から製造まで行い、製品を委託会社に供給する契約のことをいいます。自社ブランドの商品を販売したい委託会社が、製造能力がある受託会社に商品の開発・製造を委託して商品の供給を受けるOEM契約の進化版とも言われています。

ODM会社(ここではODM契約における受託会社をいいます。)の中には、マーケティング、物流、販売までを担当する会社や、さらに進んで、製品の企画、設計、技術等の情報を自ら提案して、オファーを受ける会社もあります。

ODM契約の具体的な活用事例

ODM契約は、様々な業種で利用されています。代表的なODM契約の活用事例をご紹介します。

1.食品業界のODM活用事例

食品業界は、ODM契約が頻繁に活用されている業界の一つです。有名な事例として知られているのは、肉まん、あんまんの製造で有名な井村屋の関連会社である井村屋フーズが、自社のレトルト技術や食材の粉末技術を生かして、有効成分を含んだ美容メーカーの飲料ゼリーを製造した事例です。

2.開発・製造業界のODM活用事例

スマートフォンやパソコン業界もODM契約が頻繁に活用されている業界の一つとして知られています。日本のスマートフォンの業界の場合、NTTドコモが販売するスマートフォンの多くは、富士通やソニーなどのメーカーが開発、設計から製造まで行っています。

3.化粧品業界のODM活用事例

化粧品業界ではOEMが利用されるケースが多いですが、特定の分野に強みをもつ企業が、ODM契約を締結して製品の企画製造を行う事例もあります。最近では、大手化学メーカーが、敏感肌向けのクレンジングクリームやリップクリームの製造に強みを持ち、ODM事業が売上の8割を占める製薬会社関係の企業に出資し、海外展開を見据えてODMに参画しました。また、日本でも若者を中心に人気の3CEというブランドのコスメは、COSMAXという韓国企業がODMで製造した商品です。

4.アパレル業界のODM活用事例

アパレル業界では、バラエティ豊富で商品の回転の速いファストファッションにおいてODMが利用されるケースが多いようです。アメリカのアパレルチェーンであるFOREVER21はいち早くODMを取り入れ、バラエティに富んだ商品展開で業績を伸ばしました。

ODM契約と類似契約の違い

ODM契約には、OEM契約以外にも類似する契約があります。類似する契約との違いについて説明します。

1.OEM契約との違いと共通点

OEM(Original Equipment Manufacturer)契約とは、委託会社が、製造能力がある受託会社に商品の製造を委託する契約です。OEM契約では、委託会社が、商品の企画・設計までを行い、受託者がそれに基づいて開発・製造を行います。

これに対し、ODM契約では、製品の企画を委託会社が行い、設計・製造を受託会社が行うことが多いですが、企画から受託会社が行う場合も多いです。

このようにOEM契約では、主導権を持つ委託者が製品を企画・設計し、受託会社は製造を担当するのにとどまるのに対し、ODM契約では、受託者が製品の企画・設計から製造まで行う点で異なります。いずれの場合でも、完成した製品は受託会社から委託会社に供給され、委託会社が自社ブランドとして販売する点で共通します。

2.ライセンス契約との違い

ライセンス契約とは、自社の知的財産権(商標権や特許など)の使用を認める契約です。知的財産の利用を許されたライセンシー会社は、知的財産を有するライセンサー会社にライセンス料を支払い、自社で製品を製造して販売まで行います。

ODM契約では、受託会社が開発・製造した製品の所有権は委託会社に帰属し、販売も委託会社が行うのに対して、ライセンス契約では、ライセンシー会社がライセンサー会社の知的財産を利用して製品を製造して所有権も有し、販売も行う点が異なります。

3.EMS契約との違い

EMS (electronics manufacturing service)契約とは、電子機器の製造等を委託・受託する契約や、サービスのことをいいます。アメリカのシリコンバレーで生まれたビジネスモデルで、製造過程におけるアウトソーシングの一つです。委託する電子機器メーカー1社に対して、複数のEMS会社が受託することもあれば、受託するEMS会社1社が複数の委託会社の製造を担当することもあります。

他社のブランド製品の製造を受託して行う点でODMやOEMと似ていますが、技術の進化が激しい電子機器分野に特化して、特定のEMS会社に製造を委託してコスト削減を図る委託会社が多い点で異なります。

ODMかOEMのどちらにするか検討する際のポイント

類似の契約の中でも、ODMとOEMのどちらが適しているか迷われる場面は多いかと思います。どちらを選ぶべきか迷われた場合は、以下の3つの観点から検討するとよいでしょう。

1.費用対効果

ODM契約もOEM契約も、製造コストや設備投資は受託会社に任せられるのでかかりません。ただし、ODM契約の場合、企画開発段階から受託会社に任せられる分、人件費は節約できますが、受託会社に払う費用の負担は大きくなります。自社の人材のスキル、将来的な採用を含めた人材戦略等を踏まえて、費用対効果をしっかり検討しましょう。

2.受託会社のスキル

ODM契約では、受託会社の知識や技術、企画開発力により、製品の品質が大きく左右されます。そのため、希望する製品の製造開発を実現できるODM会社を選べるかという点が重要なポイントとなります。難しい場合は自社内に必要なスキルを持つ人材を確保してOEMを利用する方が、希望通りの製品開発を実現できる可能性が高まります。

3.長期的な視野も大切

ODM契約により受託会社に製造開発を任せると、自社にノウハウや技術力を蓄積することができない場合も多いです。長期的に見て、受託会社のオリジナルブランドに自社製品のノウハウが反映される、シェアを奪われる等のリスクがないかという点も考慮する必要があります。

ODM契約の契約書に記載すべき内容とフォーマット

ODM契約書に必要な記載事項は事案によって大きく異なりますが、参考までに主な記載事項と契約書のひな型をご紹介します。

1.ODM契約書に記載すべき14の内容

①製造の委託

製品の製造を委託する会社、受託する会社と、委託の内容を記載します。ODM契約では、受託会社が製品の設計・開発・製造を行うので、その旨も記載します。

②製品の仕様変更

ODM契約では、受託会社が製品の企画開発を行うため、委託会社の意向を受けて仕様を変更する場合があります。その際の協議について定めておきます。

③報酬と支払時期

報酬の支払い方法について、どの段階でいくら、どのように支払うのかを決めて記載します。

④業務の報告

ODM契約の性質は、委託会社がODM会社に仕事の遂行を依頼する委任契約として締結されることが多いです。そこで、ODM会社は業務を行う際に善管注意義務(善良なる管理者として注意を払う義務)を負うので、その一環として委託会社に対する業務報告を行うことを定めるケースが多いです。

⑤知的財産の帰属

ODM契約では、委託会社のブランド力と、受託するODM会社のノウハウが要になります。そこで、製品の特許、意匠、商標などの知的財産が委託者とODM会社のどちらに帰属するかを明確に定めておくことが重要です。

⑥再委託・権利譲渡

ODM契約では、委託者はODM会社の開発力や技術力を信頼して契約を締結するため、再委託や権利の譲渡は禁止されるのが通常です。

⑦最低発注保証

製品の発注数が少ないと、企画製造を行うODM会社に損失が生じる可能性があります。これを防ぐために、ODM会社が製品の企画開発製造に投じた資金が回収できる程度の発注数を保証することが求められます。

⑧納入・検品義務

製品の納入や、海外企業との取引の場合は輸出入の方法について定めておきます。また、製品を受領した委託者が遅滞なく検査を行うべき旨も記載します。

⑨危険負担

委託会社、ODM会社双方に帰責事由がなく製品の棄損・滅失等が生じた場合に、どの段階まで受託者が損害を負担し、どの段階から委託者が損害を負担するかを定めます。

⑩アフターフォロー、瑕疵担保責任

委託者が製品を受領した後に製品に不具合が発生した場合に、修理の負担をどちらが負うかを決めておきます。また、検品で発見できなかった不具合があった場合の責任の所在についても明記します。

⑪製造物責任

製品トラブルによって、委託者が製品を販売した先に損害が発生した場合の責任について明確に決めて記載します。

⑫秘密保持

企業機密について、情報漏洩やノウハウの目的外利用を禁止します。

⑬損害賠償、契約解除

当事者の倒産や不正行為など、契約を解除する理由やその方法を記載し、契約解除した場合の債務の弁済や、損害が発生した場合の賠償について決めて記載します。

⑭準拠法・合意管轄

契約書の内容をどこの国の法律に基づいて解釈するのか、また当事者間で紛争になった場合、どこの裁判所で争うかを決めて記載します。

2.ODM契約書のひな型

ODM契約の契約書は事案に応じて内容を精査して作成する必要がありますが、参考までに契約書のひな型をご紹介します。

ODM契約書
株式会社●●(以下「甲」という。)と株式会社▲▲(以下「乙」という。)は、××(以下「本製品」という。)のODM取引につき以下のとおり合意する。
第1条(製造の委託)
甲は、別紙仕様書による製品(以下「本製品」という。)の企画・開発・製造(以下「製造等」という。)を乙に委託する。
第2条(製品の仕様変更)
本製品の仕様について変更する場合は、甲乙協議のうえ別途定めるものとする。
第3条(報酬と支払時期)
甲は乙に対し、毎月●日までに所有権が移転した本製品の代金を、翌月●日までに乙指定の下記口座に振り込む方法で支払う。振込手数料は甲の負担とする。
【銀行名】××銀行 ××支店 【口座種類】××預金 【口座番号】×××××
【口座名義人】株式会社A
第4条(業務の報告)
乙は、本製品の企画、開発、製造を行うにあたり、毎月●日までに甲に対して業務の内容を報告する。
第5条(知的財産の帰属)
本製品の製造に際して乙が取得した特許権、意匠権は、乙に帰属する。
第6条(再委託)
乙は、原則として、本製品の製造等を第三者に再委託することができない。乙が、本製品の製造等に際して補助する者(以下「下請者」という。)を使用する場合、乙は、甲に対し、下請者の名称、住所および下請者が実施する業務の内容を書面で通知をし、事前に甲の承諾を得なければならない。
第7条(仕様書および最低発注数)
1 本契約の発注は、甲が納入を希望する日の●日前までに乙に仕様書を送付して行う。
2 前項の仕様書には、納入期日、数量、発注金額、納入方法等を記載する。
3 甲は、乙に対し、本製品につき、毎月最低●単位の注文をすることを保証する。
第8条(納入・検品義務)
1 甲は、本製品納入後、ただちに別途定める品質基準に従い検査を行い、納入日から●日内に結果を書面で乙に通知する。
2 前項の期間内に甲が乙に何らの通知もしないときは、検査に合格したものとする。
3 検査の結果、不合格となった製品は、乙は、甲乙協議のうえ別途定める期間内に代替品を納入するか、または甲の品質基準を満たすように改善して再納入する。
4 検査の結果、不合格となった製品は、乙は自己の費用と責任で製品を引き取る。
第9条(危険負担)
1 本製品の所有権は、第8条の検査合格により、乙から甲に移転する。
2 本製品の所有権が甲に移転する前に本製品の全部または一部が滅失、毀損、変質したときは、甲の責に帰すべき事由による場合を除いて、乙の負担とする。
第10条(アフターフォロー、瑕疵担保責任)
乙は、本製品の検査合格日から起算して●日間、本製品の品質を保証し、当該期間内に隠れた瑕疵が発見された場合は、甲の修補請求および代金減額請求に応じるものとする。ただし、納入後の甲の重大な過失により本製品の故障が生じた場合はこの限りでない。
第11条(製造物責任)
1 本製品の欠陥により第三者の生命、身体または財産に損害が生じ、甲がかかる第三者より損害賠償等の請求を受けまたは受けるおそれが生じた場合には、甲は乙に対しその旨を通知し、甲乙協力して問題の解決に努めるものとする。
2 前項の場合、甲が第三者に損害賠償責任を負担した場合は、甲は乙に対し、被った自己の損害を求償することができる。
第12条(秘密保持)
甲および乙は、相互に、本契約の有効期間中または本契約終了後においても、本契約において知りえた相手方の業務上または技術上の秘密を漏洩してはならない。甲および乙は、必要に応じて別途秘密保持契約書を締結する。
第13条(損害賠償、契約解除)
1 甲または乙は、相手方に次の各号の事由の一が生じたときは何等の催告なしに、本契約をただちに解除することができる。
・本契約の遂行における重大な過失または背信行為があったとき
・銀行取引停止処分を受けたとき、手形の不渡りが生じたとき
・第三者から仮差押え、仮処分、差押え、滞納処分その他の強制執行処分を申し立てられたとき、破産、民事再生手続き、会社更生手続きまたは特別清算手続きの申立をなし、あるいは申立をなされたとき
・反社会的勢力との関係性を疑わせる事由があったとき
・その他著しく不正な行為があったとき
2 甲または乙は、相手方の債務不履行が相当期間を定めてした催告後も是正されないときは、本契約を解除することができる。
3 甲または乙に前項に該当する事由が生じたときは、甲または乙は、相手方に対し負担する一切の債務につき、期限の利益を失い、ただちに債務の全額を相手方に弁済する。
第14条(専属的合意管轄裁判所)
本契約は日本法を準拠法とし、本契約に関する紛争は、●●地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
本契約の成立を証するため本契約書を2通作成し甲乙各記名押印の上各1通を保有する。
××年×月×日
甲:●●●●印
乙:××××印

海外企業とODM契約を締結する際の注意点

海外企業とODM契約を結ぶ際は、必ず信頼できる企業を選定することが重要です。海外のODM企業に企画・開発・製造を依頼する場合、日本の基準に合う高品質な製品を製造してもらうことが難しい可能性もあるという点は認識しておきましょう。

また、発注の段階でも、最初は小さなボリュームで契約する、試験期間を設けるなど、万が一の場合に自社が被る損害を最小限に食い止める対策を講じておくことが重要です。貴社が求める品質についても、契約書にできる限り具体的に明記しておくべきです。

マネージャーや作業員を日本で教育させるなどの事前の対応も必要ですが、契約書を英文で作成する際は、検品や危険負担、瑕疵担保責任、損害賠償についての定めに特に注意すべきです。具体的には、求める品質のレベルを別途仕様書で詳しく説明する、成果物や知的財産の所在については別途契約書を作成するなど、自社で契約関係をコントロールできるようにしておきましょう。

まとめ

今回は、ODM契約と類似の契約との比較、ODM契約書の記載事項やひな型、契約締結時の注意点、海外企業とODM契約を締結する場合の注意点などについて解説しました。

ODM契約は、昨今のメーカーの技術開発力の向上から、活用される場面が増えている契約です。自社ブランドを生かして、より高度な製品を販売できるメリットがある一方、ノウハウや利益率の点ではリスクもあり、契約面でも知的財産や損害賠償について検討しておくべき内容が多い類型でもあります。特に、損害賠償については、契約段階で十分に精査しておかないと、企画から製造まで任せた受託者側の責任を委託者側が負担しなければならない可能性が生じるおそれもあります。契約を締結する前に、責任の割合が適切か、コスト面や知的財産等の点でも自社に不利益にならないか、契約の専門家である弁護士のリーガルチェックを受けておくと安心です。

東京スタートアップ法律事務所では、豊富な企業法務の経験に基づいて、各企業の状況や方針に応じたサポートを提供しております。ODM契約のリーガルチェックや契約書作成のサポート等にも対応しておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。

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執筆者 -TSL -
東京スタートアップ法律事務所