商取引・契約法務CATEGORY
商取引・契約法務
更新日: 投稿日: 代表弁護士 中川 浩秀

古物商とは?必要なケースと不要なケースを解説

古物商とは?必要なケースと不要なケースを解説
東京スタートアップ法律事務所は
全国20拠点以上!安心の全国対応

「中古品を売買するときに古物商の許可が必要。」という認識までは持っている方は多いかと思いますが、近年はメルカリなどのフリマアプリの台頭で、個人間で中古品の売買を行うことが容易になりました。しかし、実際には個人で中古品の販売を行っている方の多くが古物商の許可を持っていないのが現実です。
この記事では古物商の許可が必要なケースと必要でないケースを紹介し、必要だった場合にはどのように古物商の許可を申請するのか、申請に関しての注意点などのポイントを解説していきます。
これから事業として中古品の販売を行いたいと考えている、もしくはすでに中古品の販売を行っている方は必読です。

古物商とは

まずは古物商とはどのような資格なのか、古物商の概要をご紹介していきます。
「中古品を扱う事業をするときに必要な資格」というぼんやりとした認識から、正しい知識に頭を切り替えましょう。

1. 古物商は古物を売買する商いのこと

まず古物商というのは「中古品を取り扱って売買、交換等の事業(商い)を行っている者」を指す言葉です。
古物商は資格ではなく、事業の形態ということを覚えておきましょう。

では、なぜ古物商が資格のように扱われているかという点についてですが、古物商として事業を行うには古物商の許可を行政に申請する必要があります。
ですので、古物商=資格という風に広く認識されていますが、実際には「古物商になるために必要な資格」が古物商と一般的には呼ばれています。

2. 古物の定義について

ではどこからどこまでが古物になるのか、という疑問を解決していきます。
古物については「古物営業法」(昭和24年5月28日法律第108号)という法律で明確に定義されています。
その条文の冒頭を引用してご紹介します。

“この法律において「古物」とは、一度使用された物品、若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたものをいう。”

法律の条文なので非常にわかりにくいですが、一言でまとめるとやはり「中古品」です。
一度使用されたもの、つまりは中古品。
ただし、ここで間違えていただきたくないのが「新品でも消費者が購入したものであれば古物扱い」になるということです。
仮に新品のiPhoneを購入して未開封のまま保管していても、不要になったとして転売すれば古物としての扱いになります。

これに対して、業者間での取引(流通)であれば何度販売を繰り返しても古物として扱われることはありません。
これもiPhoneを例にすると、製造元のメーカーであるAppleがSoftBankにiPhoneを販売しても、SoftBankは新品としてiPhoneを販売します。

なので、商品は「消費者」の手に1度でも渡った時点で古物としての扱いになります。

3. 古物の種類について

古物商の中には13種類の取扱品目が分けられており、自分の行う事業で取り扱う項目のみ申請することができます。

その13種類の項目は以下のように分類されています。

美術品類 書画、彫刻、工芸品等
衣類 和服類、洋服類、その他の衣料品
時計・宝飾品類 時計、眼鏡、宝石類、装身具類、貴金属類等
自動車 その部分品を含む。
自動二輪車・原動機付自転車 これらの部分品を含む。
自転車類 その部分品を含む。
写真機類 写真機、光学器等
事務機器類 レジスター、タイプライター、計算機、謄写機、ワードプロセッサー、ファクシミリ装置、事務用電子計算機等
機械工具類 電機類、工作機械、土木機械、化学機械、工具等
道具類 家具、じゅう器、運動用具、楽器、磁気記録媒体、蓄音機用レコード、磁気的方法又は光学的方法により音、影像又はプログラムを記録した物等
皮革・ゴム製品類 カバン、靴等
書籍
金券類 商品券、乗車券及び郵便切手並びに古物営業法施行令(平成7年政令第326)第1条各号に規定する証票その他の物をいう。

この13項目の中から自分の事業で取り扱う古物はどれなのかを選択して申請をすることになります。

しかし上記の13種類のどこにも該当せず、古物としての扱いから除外されているものも一部あります。
鉄道車両、航空機、総トン数20t以上の船舶、5tを超える機械などが古物として除外されているのですが、私たちが取り扱うことは現実的にあまりないであろうものばかりなので、基本的には「すべてのものが古物になる」と考えていて間違いありません。

古物商の許可が必要なケース

ではここからは少し目線を変えて、どのような事業を行う場合に古物商の許可が必要となるのかをご紹介していきます。
ここに該当する場合は必ず古物商の許可が必要となりますので、ぜひこの記事を最後までお読みいただいて、申請方法や注意点などもご覧いただければと思います。
古物商の許可が必要となるケースは以下の通りです。

  • 古物を買い取って売る。
  • 古物を買い取って修理等して売る。
  • 古物を買い取って使える部品等を売る。
  • 古物を買い取らないで、売った後に手数料を貰う(委託売買)。
  • 古物を別のものと交換する。
  • 古物を買い取ってレンタルする。
  • 国内で買った古物を国外に輸出して売る。

(警視庁ホームページより引用)
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/tetsuzuki/kobutsu/kaisetsu/kakunin.html

以上のようなケースで古物商の許可が必要になり、これらをインターネット上で行う際にも同様に古物商の許可が必要になります。
まとめると「買い取りした古物で事業を行うには古物商の許可が必要」ということになります。

古物商の許可が必要ないケース

続いて古物商の許可が必要のないケースも見ていきましょう。
ここで紹介する場合には古物商の許可は必要ありませんが、条件次第では許可が必要になることもありますので自分はどこに属しているのかしっかりと確認しておきましょう。

  • 自分の物を売る。
  • 自分の物をオークションサイトに出品する。
  • 無償でもらった物を売る。
  • 相手から手数料等を取って回収した物を売る。
  • 自分が売った相手から売った物を買い戻す。
  • 自分が海外で買ってきたものを売る。

(警視庁ホームページより引用)

「自分の物」という定義については「自分で使っていた物、使うために買ったが未使用の物」のこと。最初から転売目的で購入した物は含まれません。(警視庁ホームページより引用)」とされていますので、やはり事業目的での古物の販売になると許可が必要になります。
この他にもオークションサイトの運営、古物商間で古物を売買等する市場を主催する際には古物商の許可は必要ありませんが、それぞれ違う種類の許可や届け出が必要になります。

古物商の申請で必要な準備物とは

ここからは自分の行なっている、もしくは行おうとしている事業で古物商の許可が必要だった場合の申請方法や必ず知っておきたい知識・注意点などをご紹介していきます。
まずは古物商の許可を申請する際に提出の求められるものからご紹介します。
個人での申請と法人での申請だと必要書類が異なりますのでよくご確認いただき、必要な書類を準備しましょう。

1. 手数料

まずは古物商許可の申請にかかる手数料ですが、個人・法人、地域に関係なく一律19,000円となっています。
この19,000円の手数料ですが、もし古物商の申請が不許可になった場合や申請を取り下げた場合でも払戻しされることはありません。
申請の代行を行う業者に任せると5万円ほど費用が掛かるうえに、住民票などの準備も自分で行う必要があるため、利用を考えている方は慎重に検討してください。

2. 必要書類

続いて手数料と同時に提出する書類を紹介していきます。
ここが個人と法人で異なる箇所ですので、間違えないように書類をそろえましょう。

個人の場合

  • 許可申請書(個人許可申請用)
  • 住民票
  • 身分証明書
  • 登記されていないことの証明書
  • 略歴書
  • 誓約書

登記されていないことの証明書や略歴書、誓約書については聞いたことがない、作ったことがないという方がほとんどかと思いますので、簡単に説明しておきます。

登記されていないことの証明書は法務局の戸籍課で取り扱われている書類のことで、ぼんやりした名前ですが「登記されていないことの証明書」が正式名称なので、窓口で「登記されていないことの証明書が欲しいのですが」と相談すれば10分~20分程度で取得できます。

略歴書は公的に取扱いのある書類ではなく、自身で作成しなければなりません。
略歴書には氏名や住所などの個人情報から、過去5年間の経歴や賞罰を過去に受けたかどうかなども記載しなければなりません。
古物商の許可は安全に古物を取り扱い出来るかを審査されるので、就活の履歴書のように自分をアピールする認識に近いかもしれません。

誓約書は1~8までの誓約がかかれている書類がありますので、そこに日付・住所・氏名を記入し、捺印して提出します。

住民票や登記されていないことの証明書など役所で交付される書類以外は、警察署のホームページからひな形をダウンロードすることができますので、自宅やコンビニで印刷すると手間が少なくておすすめです。
もし自宅にプリンターがなく、近くに警察署がある場合は警察署にも書類が準備されていますので取りに行くのもいいでしょう。

法人の場合

  • 許可申請書(法人許可申請用)
  • 登記事項証明書
  • 法人の定款

以下、監査役以上の役員全員と営業所の管理者全員分をそろえる必要があります。

  • 住民票
  • 身分証明書
  • 登記されていないことの証明書
  • 略歴書
  • 誓約書

一部営業形態の場合

営業所が賃貸物件、自動車の買取り事業、URLを届け出る場合には以下の書類が必要になります。

  • 営業所の賃貸借契約書のコピー(賃貸物件の場合)
  • 駐車場等保管場所の賃貸借契約書のコピー(自動車等の買取り事業の場合)
  • プロバイダ等からの資料のコピー(URLを届け出る場合)

古物商の申請方法を解説

では実際に古物商の許可を申請する方法を解説していきます。
古物商の申請は営業所の管轄の警察署・防犯係が窓口となっています。

1. 必要書類をそろえる

まずは先ほど紹介した必要な書類を揃えましょう。
個人での申請だと自分で役所に書類を取りに行くだけでいいのですが、法人での申請の場合は複数種類の書類が必要となることもありますので、漏れのないよう注意して必要な書類を集めましょう。
提出する書類は申請日から3か月以内に発行されたものを準備しなければなりません。

2. 管轄の警察署で申請手続

書類が揃うとあとは警察署の防犯係へ必要書類と手数料を持って申請に行くだけです。
申請時間は8:30~17:15までなので、時間に余裕をもって警察署へ向かいましょう。

警察署へ出向くということに抵抗があるかたもいらっしゃるかと思いますが、特別悪いことをしていなくても警察署にはたくさんの人がいますのでまったく気にしなくて大丈夫です(警察署では免許証の再発行や住所変更などの手続きなども警察署で行っています。)。
所要時間は30分ほどです。

3. 古物商申請の審査期間

古物商の申請には最大40日間の審査期間があります。
この40日間というのは土日祝日や年末年始の6日間を除いての40日間なので、実際の日付だと最大2か月ほど審査にかかる場合もあります。
この審査期間については書類の不備や差し替えなどがあった場合は40日間を越えてさらに時間がかかる場合もありますので、書類はよく確認して提出しましょう。

許可が出たという連絡が警察から来ましたら、再び警察署へ向かって「古物商許可証」の交付を受けます。
古物商許可証のほかには防犯に関するハンドブックなども一緒に渡されます。

古物商に関する注意点

古物商の申請や許可証交付後にも様々な注意点があります。
すべてを挙げると膨大な数になりますので、特に重要な事項についてご紹介していきます。

1. 古物営業の三大義務

古物商許可証を受け取る際に渡されるハンドブックにも含まれている内容なのですが、古物商として営業を行う際には「本人確認義務」「取引記録義務」「不正品申告義務」という3つの義務が発生します。

本人確認義務

中古品を買取業者に売ったことのある方なら覚えがあると思うのですが、買取りをお願いした時に名前や住所などを用紙に記載して、身分証を確認されたと思います。これは、古物営業法では確認すべき事項が定められており、住所、氏名、職業及び年齢の確認は必須だからです。
これが本人確認義務にあたる行為です。

取引記録義務

古物を買取りした際には取引の情報を古物台帳に記録し、その記録を最終の記載をした日から3年間は保存しなければなりません。
ですが、現在では古物台帳に必ず記録しなければならないというわけではなく、エクセルのシートなどに以下の内容を記録して保管していれば問題ないという内容に変更されています。

  • 取引の年月日
  • 古物の品目
  • 古物の数量
  • 古物の特徴
  • 本人確認情報
  • 本人確認の方法

この6点を必ず記載しなければならないというのが取引記録義務です。

不正品申告義務

最後に不正品申告義務ですが、こちらは盗難など不正に入手したと思われる商品の買取りを依頼された際には「直ちに」警察官にその疑いがあることを申告しなければならない義務です。
古物商は不正な取引を防止するための許可制度なので、不正な取引が少しでも疑われる場合にはその取引を行うことはできません。

2. 個人が法人化した場合の注意点

個人で古物商として事業を行い、ある程度の売り上げが確保できると税金の対策などで法人化することもあるかと思います。
ですが、古物商で法人化する際には個人用の古物商許可から法人用の古物商許可へと変更する必要がありますので、もう一度古物商の申請をしなければなりません。
このこと知らずに法人化して、改めて法人用の古物商許可へ変更していなかったことを理由に、後から警察に指摘されるということも少なくありません。

3. 営業所を移転した場合の注意点

今までの営業所から違う営業所に移転した際にも、管轄の警察署で許可を受ける必要があります。
都道府県を越えた際にはもちろん新規で申請、同じ都道府県内での移転の際にも営業所変更の届出をしなければなりません。

4. 出張買取りの注意点

出張買取りや露店などを開いて買取りを行う際には注意が必要です。
古物商の許可申請書に「行商をする・しない」という欄があるのですが、「しない」に丸を付けて提出している場合には出張買取りや露店を開いての買取営業はできません。
詳しくはこの後紹介いたします。

古物商と行商について

では、先ほどの出張買取りの注意点の続きで古物商と行商とでは、何が違うのかという点について解説していきます。
行商とは先ほどの注意点からもわかるように「登録された営業所の住所以外で古物営業を行うこと」です。
登録された営業所以外の住所ということで、古物市場やフリーマーケットでの営業や、お客さまの自宅まで買取りに伺う出張買取りなどは行商に該当します。

行商を行えないとなると大きくビジネスチャンスが減ることになるので、迷った際には行商をするに丸を付けて提出しましょう。

古物商許可番号の記載方法

最後に古物商許可番号の記載方法についてご紹介します。

古物商の営業所には「古物商プレート」というものを掲示しなければなりません
この古物商プレートは警察署で申し込みをする他、古物商防犯協会やインターネットなどでも製作することができるので、作成のハードルは低いと言えるでしょう。

ですが、古物商を始めたばかりの多くの人が迷うのがホームページへの古物商許可番号の記載方法です。
現代では自社(自身)のホームページを使って集客するのは必須ともいえるほど重要です。
ホームページに関するルールも古物商には決められており、以下の内容を遵守する必要があります。

  • 古物商の許可証の番号
  • 古物商の許可をした公安委員会の名称
  • 古物営業者の氏名又は名称

この3点を「ホームページのトップページ」に表示させ、「トップページ以外のページには古物営業法の規定に基づく表示をしているページへのリンクを設置」する必要があります。
複数の公安委員会で許可を受けている場合はすべての許可番号と公安委員会の名称を記載しなければなりません。

まとめ

古物商についてまとめると

  • 古物商とは資格の名前ではなく古物を扱う商い(事業)のこと
  • 古物を取り扱っての事業では古物商としての許可が必要
  • 古物商として事業をするには義務や注意点が複数ある

ということは最低限理解しておきましょう。
古物商については警察署で勉強会が行われており、担当者に質問できる機会もありますので、不明点がある場合は見切り発車せずにしっかりと確認したうえで事業を進めるようにしましょう。

画像準備中
執筆者 代表弁護士中川 浩秀 東京弁護士会 登録番号45484
2010年司法試験合格。2011年弁護士登録。東京スタートアップ法律事務所の代表弁護士。同事務所の理念である「Update Japan」を実現するため、日々ベンチャー・スタートアップ法務に取り組んでいる。
得意分野
ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
プロフィール
京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社