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更新日: 投稿日: 弁護士 中村 望

顧問弁護士のメリットとデメリット・企業の経営や競争力への影響は?

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「顧問弁護士の必要性は漠然と感じているけれど、顧問弁護士と契約するメリットとデメリットのバランスを判断してから顧問弁護士と契約するかどうか決めたい」
「顧問弁護士と契約することでどのような恩恵を受けられるのか、経営面でプラスになるのか知りたい」
そのような考えや疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そこで今回は、顧問弁護士と契約するメリットの具体例、経営や競争力への影響、コスト面のデメリットや費用対効果などについて解説します。

経営の安定化が最大のメリット

2016年に日本弁護士連合会が実施した「第2回中小企業の弁護士ニーズ全国調査」によると、企業の法律絡みの困りごとの第1位は「雇用問題」(37.1%)、第2位は「債権回収」(30.3%)でした。法律のプロである顧問弁護士のサポートを受けることは、企業に重大なダメージを与えかねない雇用問題と債権回収という2大トラブルを迅速に解決したり、未然に防止したりすることにつながります。

1.労使トラブルの解決と予防

最近、セクハラやパワハラなどのハラスメント被害により、うつ病などの精神疾患を発症する方が増えているようです。精神疾患を発症した社員は出社すること自体が難しくなり、自主的に退職するケースも少なくはありません。しかし、その社員が退職後しばらく経過してから突然、慰謝料請求の民事訴訟を起こしてきたり、労働審判の申立てを行ってきたりするケースもあります。企業側としては突然の出来事に慌ててしまいがちですが、顧問弁護士と契約を結んでいれば、即座に相談し、相手の主張に対して適切な反論を行い、その反論を裏付ける証拠を集めることができます

顧問弁護士は、訴訟を起こされた場合だけではなく、労使トラブルを未然に防ぐための対策を講じる際にも力を発揮します(いわゆる「予防法務」)。例えば、他の社員に悪影響を与える問題社員を解雇したい場合、方法を誤ると労働基準法違反となり、後から残業代や慰謝料の支払いを求めて訴訟を起こされるケースがあります。このような状況に陥らないために、解雇を検討する際はその適法や手続きについて顧問弁護士からアドバイスを受けておくことが肝要です。また、就業規則や雇用契約書の作成を依頼したり、これらの書面のチェックを依頼したりすることで、将来懲戒解雇処分などを行う際に起こり得るリスクを最小限度に抑えることができます。

2.債権回収率アップによる利益の保全

取引先の財務状況が悪化して売掛金が回収できなくなることは企業にとって大きなリスクの一つです。売掛金の入金が遅れて催促した後も入金されない場合、費用を掛けて法的措置をとる前に内容証明郵便を送ることが多いです。内容証明郵便を送る際、代理人弁護士として顧問弁護士の名前も記載し、「期日までに入金がない場合は法的措置をとる」旨を明記することで、請求の相手側に大きな心理的プレッシャーを与える効果が期待できます

内容証明送付後も入金がない場合、法的措置をとる必要があります。その際も顧問弁護士の力を借りることで、仮差押による保全や支払催促などの法的手続を迅速かつ適切にとることができるため、債権回収の可能性が高まります。

法的トラブル発生時に迅速かつ的確な対応が可能

ある日突然、従業員が逮捕されたり、知らない企業から内容証明郵便が送られてきたりなど、予期せぬ法的トラブルに企業が巻き込まれるケースも少なくはありません。トラブルに巻き込まれてから慌てて弁護士を探そうとしても、選ぶ基準もわからないし、すぐに引き受けてもらえるかもわからないという状況に陥ります。しかし、顧問弁護士と契約していれば、すぐに対応してもらえるというメリットがありますし、普段からコミュニケーションをとっているので信頼関係を築けているという安心感もあります
では、顧問弁護士がいることで法的トラブル発生時に具体的にどのようなメリットがあるのか、よくある事例を取り上げて説明します。

1.従業員が突然逮捕された場合

従業員が刑事事件の容疑で逮捕されるという事態に直面することはどこの企業でも起こり得ます。従業員が逮捕されると、身柄を拘束されて出社できなくなるため、会社の業務遂行に支障をきたします。会社側としては、業務上の支障や犯罪の性質などを考慮して、適切な関わり方を決める必要がありますが、その際も法律のプロである顧問弁護士のアドバイスを受けることで適切な判断を下すことができます。また、逮捕後の一定期間は家族も会社関係者も会うことはできませんが、弁護士なら接見が可能なので、弁護士に接見を依頼して情報収集を図ることも可能です。さらに、逮捕後に有罪となった従業員を解雇する場合も、顧問弁護士に相談して法律上問題にならない手続をとることにより、将来的なリスクを回避することができます。

2.知的財産権侵害で訴えられた場合

最近は、著作権、特許権、商標権等の知的財産権の侵害で企業が訴えられるケースも増えています。ある日突然、会社に警告書と記載された内容証明郵便が届き、自社で新しく立ち上げたブランドの名前が差出人の会社のブランド名と酷似していることを理由に差止めを求められるなどということも起こりえます。

この場合、必ずしも相手の主張が正当なものとは限りません。にもかかわらず、そのような事態に直面して慌てて相手の要求に応じてしまうと自社にとって不利益が生じる可能性もあります。顧問弁護士に相談することで、相手の主張内容の法的根拠を確認し、自社が受ける不利益を最小限に抑えるための適切な行動をとることが可能になります。

法的トラブルを未然に防ぐリスクマネジメント

企業の法律絡みのトラブルの多くは契約書のリーガルチェックや管理体制の整備によって未然に防ぐことが可能です。
取引先と新たな契約を結ぶ際は、契約書の内容について法的な問題がないか自社に不利な内容が含まれていないか顧問弁護士にチェックしてもらうことで、将来的なリスクを未然に防げます。取引先よりも自社の立場が弱い場合、「契約書の修正をお願いします」などと言いづらいかもしれませんが、「弊社の顧問弁護士に指摘を受けましたので」と前置きすることで、法律のプロの視点からの客観的な指摘であることを示すことができ、相手にも受け入れてもらいやすいというメリットがあります。

また、就業規則などの社内規則や自社が展開しているサービスの利用規約等に必要な条項が網羅されているかを顧問弁護士に確認してもらうことは将来の法的トラブルを回避するためのリスクマネジメントにつながります。

コンプライアンスの強化

最近は「コンプライアンス」(倫理法令遵守)という概念が社会に浸透し、社会的な信頼性を高めるためにコンプライアンス強化に取り組む企業が増えています。コンプライアンスは企業が法律やガイドラインなどを守り、健全な経営活動を行うことを意味しますが、コンプライアンスを強化するために必要な対策は、業種や自社のビジネスの内容などによって大きく異なります。

普段からコミュニケーションをとり、自社のビジネスの内容を理解している顧問弁護士に相談することで、自社にどのような法令違反のリスクがあるか、そのリスクを回避するためにどのような対策をとればコンプライアンス強化につながるのかなどについて的確なアドバイスを受けることができます。

会社の信頼性の向上

顧問弁護士の存在は、会社の信頼性の向上にもつながります。
例えば、取引先と契約を結ぶ際に、顧問弁護士のリーガルチェックを受けた契約書を提示することで、相手からの信頼を得ることができます。また、取引先や顧客から法的な問題点を指摘された際に、「顧問弁護士に確認します」と回答し、法律のプロである顧問弁護士の見解を提示することができれば、トラブルを防止できる可能性が高くなります。
加えて、顧問弁護士と契約を結んでいることを公式サイトに記載すると、対外的な信頼度向上にも役立ちます。

会社の経営・事業承継等のフォロー

企業が抱える問題は、法律面にとどまらず、会社の財務会計にも関係することが少なくありません。特に昨今は、大企業のみならず、中小企業においても、事業承継の目的等でM&Aを行うケースが増加しています。
企業の顧問弁護を得意とする法律事務所の中には、公認会計士資格を持ち、財務知識や経験を持ち合わせた弁護士が在席している事務所もあります。そのような事務所で顧問弁護士を依頼することにより、長期的な視点で、法律に関する問題だけではなく財務・会計面でのアドバイスも受けることができます。また、実際にM&AやIPOなど、専門的な法律知識に加えて会計知識も求められる場面でも、自社のビジネスや経営方針を十分理解してもらった上で、適切なアドバイスを受けることができます。

経営者と従業員の負担を軽減

顧問弁護士によるサポートには、経営者や従業員の負担を軽減するというメリットもあります。
取引先から売掛金が回収できない場合や労働審判を申し立てられた際などは迅速に法的手続をとる必要がありますが、法律の専門知識が不足していると多大な労力が必要となります。また、労使間紛争で従業員や元従業員とトラブルになった場合、法律の専門家でない従業員に会社側として対応をさせてしまうと、その従業員の精神的な負担も大きいです。

顧問弁護士が専門知識に基づいた的確な判断を下してサポートを行うことにより、従業員は冷静に適切な対応をとることができます。また、顧問弁護士のサポートは、従業員が費やす労力や精神的なダメージを最小限に抑えることにもつながります。

費用面のデメリットは?

顧問弁護士と契約を結ぶメリットについてお伝えしてきましたが、費用がかかりすぎるなどのデメリットがないか心配という方もいらっしゃるかと思います。実際に必要な費用や費用対効果などについて解説します。

1.法務部や企業内弁護士よりも低コスト

大手企業などでは、法律に関わる問題のみを扱う法務部門を設けている企業も多いです。また、企業内弁護士を雇用している企業もあります。

法務部門を設けたり企業内弁護士を雇ったりする場合、法務の担当者若しくは企業内弁護士とは雇用契約を締結することになりますから、人件費の負担が大きく、また固定費を削減する必要が生じた際にも簡単には解雇できないというデメリットもあります。
一方、顧問弁護士の場合、毎月の固定費となる顧問料は、各法律事務所によって異なりますが5万円前後です。したがって、法務部門の担当者や企業内弁護士を雇用するよりもコストを抑えることができます。ただし、顧問料の範囲内で受けられるサポートは契約内容によって異なりますので、顧問契約締結時には顧問契約の内容(顧問料の範囲でどこまで対応できるのか、その範囲を超えた際にどの程度の別途費用が発生するのか)をよく確認されると良いでしょう。
顧問弁護士の費用についてはこちらの記事にまとめていますので、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

2.長期的な費用対効果

前述のとおり、顧問弁護士のサポートを受けることで、従業員や元従業員から訴えられるなどの法的なリスクを予防したり、支払が滞った売掛金の回収率を高めたりする効果が期待できます。また、法律絡みのトラブル解決のために従業員が費やす時間や労力を削減することにもつながります。

顧問弁護士は、会社にとって大きな不利益になり得る労使トラブルの回避や不良債権問題の解決に大きく貢献してくれるため、長期的な費用対効果という意味では大きなプラスになる可能性が高いと言えるでしょう。

まとめ

今回は、顧問弁護士と契約する具体的なメリット、経営や競争力への影響、顧問弁護士をつける場合のコストなどについて解説しました。

企業として活動する中で、取引先との契約に関するトラブル、従業員との間の労使問題、顧客からのクレームなど、さまざまな問題に直面します。そんな時に自社のビジネスを熟知した顧問弁護士に気軽に相談できるのは、とても心強いことではないでしょうか。

我々東京スタートアップ法律事務所は、顧問弁護士として各企業のビジネスに適したサポートを提供しています。顧問弁護士の契約をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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執筆者 弁護士中村 望 東京弁護士会
現在弁護士数が増え続けている中で、問題解決のクオリティが非常に重要。依頼者の方からの連絡に迅速に対応したり、何でも気軽に相談できる雰囲気づくりをしたりすることで、依頼者の方との信頼関係を築き、依頼者の方の希望に沿った問題解決をできるように心がけている。