中小企業にも顧問弁護士は必要か?顧問契約時の注意点も解説
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「大企業には顧問弁護士が必要だと思うけれど、規模の小さい中小企業にも必要なのだろうか」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。昨今、企業の不祥事や労使間トラブルの情報がネットやSNSを通じて急激に拡散し、それにより企業が大きな損害を被るケースも増えています。そのような状況の中、企業規模に関わらず、リスク回避の対策ができる顧問弁護士の必要性が高まっています。
今回は、顧問弁護士と一般の弁護士の違い、中小企業が顧問弁護士と契約するメリット、中小企業のために顧問弁護士ができること、中小企業が顧問弁護士と契約する際の注意点などについて解説します。
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顧問弁護士と一般の弁護士の違い
顧問弁護士と一般の弁護士にはどのような違いがあるのでしょうか。具体的な違いについて説明します。
1.顧問弁護士とは
顧問弁護士とは、顧問契約を締結することにより、顧問契約の期間中、会社が事業を行う際に生じる法律に関する問題やリスク等について助言するなどして、会社の事業活動を継続的にサポートする弁護士のことをいいます。法律に関する相談や契約書のリーガルチェックなど、一定の範囲内の業務であれば、顧問料の範囲内で対応してもらえます。ただし、顧問契約の範囲を超えて、裁判対応等を行う場合は別途費用が発生するのが通常です。
2.一般の弁護士との違い
顧問弁護士がいない場合は、法律に関するトラブルが発生した際に、一般の弁護士に法律相談をしたり、委任契約を締結してトラブルの解決に向けた弁護活動を依頼したりすることになります。相談する度に相談料が発生し、弁護活動を依頼する場合はその都度費用が発生します。
顧問弁護士と一般の弁護士の違いは、当該弁護士と顧問契約を締結しているかどうかであり、顧問弁護士になるために特別な資格や研修が必要なわけではありません。
ただし、法律に関するトラブルが発生した際に、一般の弁護士に相談したいと考えても、どこに相談すべきか迷ってしまうのではないでしょうか。また、相談しても、すぐに引き受けてもらえるとは限りません。
顧問弁護士と契約していれば、トラブルが発生した際に迅速に対応してもらうことが可能です。また、普段から継続的にコミュニケーションをとっているため、会社の方針や業務等を理解した上で対応してもらえるという利点があります。また、顧問弁護士は、顧問契約を締結している複数の企業から継続的に多様な相談に対応しているため、企業法務に関する知見が深く、経験が豊富であることが多いです。
中小企業が顧問弁護士と契約するメリット
顧問弁護士と契約することにより、どのようなメリットを得られるのかイメージできないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。中小企業が顧問弁護士と契約することにより得られるメリットについて説明します。
1.予防法務に取り組むことができる
弁護士は法律に関するトラブルが発生した際に相談するものと思われている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、トラブルが発生した後に対応した場合、トラブルが発生する前の状態に戻すことは不可能なケースが多いです。例えば、企業にとって重要な営業秘密が漏洩した場合、営業秘密を知った者の記憶を消すことはできません。また、企業の不祥事や労使間トラブル等の問題がメディアで報道され、取引先や顧客の信頼を失った場合、不祥事やトラブルが発生する前に時間を巻き戻すことは不可能です。そのため、トラブルを未然に防ぐことは非常に重要です。
想定されるトラブルを事前に回避するための対策に積極的に取り組むことを予防法務といいます。予防法務では、想定されるリスクを洗い出して具体的な対策を講じる必要があり、企業法務に関する専門知識と豊富な経験が求められるため、企業法務に精通した顧問弁護士が重要な役割を果たします。
2.社内の法務部門の代わりになる
大企業の中には、社内に法務部を設置し、弁護士を雇用して契約書のリーガルチェックや法律に関するトラブルの回避策などに取り組んでいる企業も少なくありません。しかし、法務専門の従業員を雇用するためには、人件費だけでも月30万円以上はかかるため、中小企業にとっては大きな負担となるでしょう。
法律の専門知識と企業法務の経験を豊富に持つ顧問弁護士と契約することにより、法律に関する問題について日常的に相談できるようになるため、自社内に法務部を設置するコストを削減することができます。
3.企業の信頼の向上につながる
法務専門の従業員がいない中小企業では、総務部等に所属する従業員がネットで見つけたひな型を利用して契約書や就業規則などを作成しているケースが珍しくありません。しかし、法律の専門知識を持たない従業員がネットで見つけた契約書のひな型をそのまま利用していると、契約書の不備により、大きなトラブルに巻き込まれるおそれがあります。
取引先との契約時に顧問弁護士によるリーガルチェックを受け、法律上のリスク等に対応した契約書を提示できれば、取引先から信頼を得られることでしょう。また、顧問弁護士と契約していることを会社の公式サイトなどに掲載することは、取引先や顧客からの信頼の向上にもつながります。
中小企業が顧問弁護士を活用する主な場面
顧問弁護士と契約している中小企業は、どのような場面で顧問弁護士を活用しているのでしょうか。中小企業が顧問弁護士を活用する主な場面について説明します。
1.契約書の作成やリーガルチェック
企業間取引における法律に関するトラブルの多くは、契約書の整備やリーガルチェックによって未然に回避することが可能です。顧問弁護士に契約書の作成やリーガルチェックを依頼すれば、契約の内容を正確かつ過不足なく反映しているかという確認に加え、以下のような項目を契約書に盛り込むことが可能です。
- 将来生じる可能性のあるトラブルを未然に回避するために必要な項目
- トラブルが発生した際、早期に円満な解決を図るための項目
また、中小企業が企業規模の大きい会社と契約を結ぶ場合、不利益な条件を提示されるケースも少なくありませんが、事前に顧問弁護士のリーガルチェックを受けることにより、自社にとって不利益な条項について削除や修正を依頼するなどの対応も可能になります。
2.新規事業・サービス展開時のリスクマネジメント
中小企業がさらなる成長を図るために、新しい事業やサービスの展開を検討する機会も多いかと思います。企業法務に精通している顧問弁護士に相談することにより、検討中の新しい事業やサービスが法規制に抵触しないか等を確認した上で、専門家の観点からリスク回避策についてアドバイスを受けることができます。
また、昨今、新規事業展開時の規制緩和の一環として、グレーゾーン解消制度、新規事業特例制度、規制のサンドボックス制度などが創設されていますが、このような制度を利用する際のサポートを受けることも可能です。
3.労使間トラブルの回避と対処
企業が従業員を雇用する以上、会社と従業員との間でトラブルが発生するリスクはあります。特に、従業員数が少ない中小企業では、職場の秩序を乱す問題社員を放置しておくと、他の従業員の負担が増えるなどの悪影響が懸念されます。しかし、問題のある従業員に対して退職勧奨等を行う場合、トラブルに発展する可能性が高く、場合によっては後から多額の損害賠償を請求されるケースもあります。
問題のある従業員への対応について、顧問弁護士に相談して適切なアドバイスを受けることにより、トラブルを回避できる可能性が高くなります。また、万一、退職した元従業員から訴えられるなどのトラブルが発生した場合も、迅速な対応をしてもらうことができます。
4.クレーマー対応のアドバイス
自社の商品やサービスを購入する顧客が増えていく過程で、顧客からクレームを受けるリスクは避けられません。企業が顧客からクレームを受けた際、そのクレームが正当な内容であるか、悪質であるかを見抜き、適切な初期対応を行うことは、非常に重要です。悪質なクレームの対応を担当者だけに任せてしまうと、言質を取られて過大な要求を受けるおそれもあります。
顧問弁護士のアドバイスを受けながら、クレーム対応のマニュアルや社内の体制を整備することにより、担当者がクレームを判別して、適切な対応ができるようになります。
中小企業が顧問弁護士と契約する際の注意点
中小企業が顧問弁護士と契約する際に知っておくべき注意点について説明します。
1.顧問契約の範囲を把握する
顧問弁護士との契約に関するよくある不満の一つとして、法的トラブルについて裁判対応を依頼したら顧問料とは別料金を請求されたなど、契約範囲と顧問料に関する問題が挙げられます。
月数時間程度の相談であれば、一般的には顧問料の範囲内で対応してもらえますが、裁判対応を依頼する場合は別途費用が発生するケースが多いです。月額の顧問料で対応してもらえる範囲は、顧問契約の内容によって決まるので、顧問契約の内容をしっかり確認しておきましょう。
2.顧問契約を締結しただけでは不十分
顧問弁護士と契約を締結しただけで安心だと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、契約を締結しただけで、法律に関するリスクを完全に回避できるわけではありません。
顧問弁護士を有効に活用して、予防法務に取り組むためには、企業側が自社のビジネスの状況、業務内容、現在抱えている問題やリスクなどを積極的に顧問弁護士に伝えて、信頼関係を構築することが大切です。
顧問弁護士に自社のビジネスについて伝える際、会社の内部情報や独自に開発したノウハウ等が漏れてしまうのではと心配される方もいらっしゃいますが、弁護士は職務上、守秘義務を負っているため、業務上知り得た秘密を外部に漏らすことはありません。
まとめ
今回は、顧問弁護士と一般の弁護士の違い、中小企業が顧問弁護士をつけるメリット、中小企業のために顧問弁護士ができること、中小企業が顧問弁護士と契約する際の注意点などについて解説しました。
企業活動を行う中では、取引先との契約に関するトラブル、従業員との間の労使間トラブルなど、さまざまな問題に直面します。そんな時に自社の業務や方針を熟知した顧問弁護士に気軽に相談できるのは心強いことではないでしょうか。
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- 得意分野
- ベンチャー・スタートアップ法務、一般民事・刑事事件
- プロフィール
- 京都府出身
同志社大学法学部法律学科 卒業
同大学大学院 修了
北河内総合法律事務所 入所
弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
東京スタートアップ法律事務所 開設