スタートアップ企業における1on1ミーティングの有用性と活用法
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スタートアップ企業にとって、組織の結束力を高めて成長のスピードを向上させることは重要な課題です。そのために、1on1ミーティングを実施する企業が増えています。
1on1ミーティングとは、従業員と直属の上司が1対1で行うミーティングのことです。定期的に従業員と直属の上司が話し合う場を設けることで、信頼関係を構築しながら従業員の成長を促すことが主な目的です。賢く活用すれば、全従業員の業務の質が向上し、組織全体の成長につながるといわれています。
今回は、スタートアップ企業における1on1ミーティングの有用性、1on1ミーティングを導入する前の準備、1on1ミーティングの基本の進め方と注意点などについて解説します。
スタートアップ企業における1on1ミーティングの有用性
まずは、スタートアップ企業における1on1ミーティングの有用性について説明します。
1.トップの意思を従業員に理解してもらえる
創業者と従業員との距離が近いように思えるスタートアップ企業であっても、全ての従業員にトップの理念や思いが浸透していることはあまり多くありません。その原因は、ビジネスモデルが定まっていない、急速に変化するというスタートアップ企業の性質にあります。情報伝達の仕組みが確立されていないため、従業員がトップの判断についていけず、振り回されているように感じてしまうことが多いのです。その結果、経営陣にとっては青天の霹靂とも思えるような離職劇が起きることも珍しくありません。
スタートアップ企業にとって、1on1の実施により、一人ひとりの従業員に対して丁寧に会社の方針を伝えることは非常に有意義なことです。トップの下した判断の背景を全従業員が正しく理解することができれば、自分が担当している仕事の意義、次に取り組むべき課題を見失うことがなくなります。
2.激しい変化に対応してもらえる可能性が高まる
1on1ミーティングでは、直属の上司が部下の一人ひとりとしっかり向き合うため、全従業員の精神的なケアもできます。
スタートアップ企業では、急な方向転換により、従業員が昨日まで取り組んでいた仕事の方向性を180度変えなければならないこともあるでしょう。そのような時に、フォローがなにもなければ、不満やわだかまりを抱える従業員は少なくないはずです。
1on1を実施すれば、そのような不満やわだかまりを吐き出す場を設けられます。だからといって、愚痴を言うだけの場にするのではありません。従業員の正直な気持ちと、トップの思いを丁寧につなぎ合わせる場とするようなコミュニケーションを図ることが大切です。
3.高い目標に対するメンタルケアができる
スタートアップ企業では、従業員一人ひとりに求められる役割は大きいです。達成すべき目標も当然大きくなりますが、その分従業員の負荷も大きくなるでしょう。
そのため、1on1ミーティングを実施して、従業員の仕事に関する不安を定期的に解消することは非常に重要です。直属の上司が部下の不安や心配の原因を共に探り、考えを整理すれば、部下は不安を解消することができ、再び高い目標に対して前向きに取り組む気持ちを持てるはずです。
スタートアップ企業で1on1ミーティングを導入する前の準備
スタートアップ企業で1on1ミーティングを導入する際は、以下のような準備をして臨むとよいでしょう。
1.目的を明確にしておく
初めて1on1ミーティングを導入する企業では、1on1ミーティングがどのようなもので、どのような意味があるのか理解していない従業員が多いはずです。「毎日顔を合わせているのに、わざわざ1対1でミーティングする必要はあるのだろうか?」「日々の業務をこなすだけでも忙しいのに、時間の無駄では?」などという疑問を従業員が持ったまま1on1ミーティングを実施しても、あまり効果は期待できません。
十分な成果をあげるためにも、まずは、1on1ミーティングを導入する理由を従業員に対して明確に提示することが大切です。
1on1を実施する主な目標としては、以下のようなことが挙げられます。
- 上司と部下との信頼関係の構築
- 全従業員のパフォーマンスとモチベーションの向上
- 組織の方針や動向に関する情報の共有
1on1の実施によって上司は部下の成長を促すことができ、部下は着実に成長を遂げ、さらに自分の成長を実感できるはずです。その結果、チームの成長、組織全体の成長へとつながるでしょう。
2.適切な頻度、時間を設定する
1on1ミーティングは定期的な実施によって大きな成果が期待できるものです。確実に実行するためにも、あらかじめ頻度や時間を設定しておきましょう。
頻度は全員が同じである必要はありません。状況や業務内容、社歴などに応じて設定しましょう。ただし、最低でも隔週に一度は実施したいところです。
1回あたりの時間は短くても30分、長くても1時間が目安です。開催頻度や役職などを考慮して決めるとよいでしょう。
1on1ミーティングの基本の進め方
1on1ミーティングは、一般的な面談とは異なります。適切な進め方を理解した上で臨まなければ、期待する効果は得られないでしょう。1on1ミーティングの基本の進め方について解説します。
1.事前にアジェンダを作成する
ミーティング時間を有意義なものにするためにも、話す内容は事前にアジェンダを作成し、まとめておきましょう。その内容は、以下の3つのカテゴリーに分けてまとめます。
- 至急話し合う必要があること
- 近いうちに話し合うべきこと
- 長期的な目標や検討事項
アジェンダはできれば部下に準備してもらった方がよいでしょう。その方が、1on1ミーティングが部下のための時間であることが明確になるからです。
2.時間配分は10-10-10がおすすめ
時間配分は、30分の1on1ミーティングであれば以下のような構成が理想的です。
- 部下が自由に話す時間:10分
- 上司が話したいことを話す時間:10分
- 今後のことを話す時間:10分
まずは部下に自由に話してもらいましょう。この際注意すべき点は、「あの件の進捗はどうなりましたか?」など、上司から部下が話す内容を限定するような質問をしないことです。
次の10分では上司が、部下への労いや、本人が気づいていない良かったことを伝えたうえで改善ポイントも伝えます。
そして最後は中長期的なキャリアプランや直近の目標、チーム全体の課題などについて話し合うとよいでしょう。
3.感謝で始まり感謝で終わる
1on1ミーティングの時間を有意義なものにするには、始まりと終わりを感謝の言葉で始めることが大切です。開始時は「時間を取ってくれてありがとう」「先週のプレゼン、ありがとう」などという声掛けから始めましょう。最後も「今日は忙しいところありがとう」「良い話が聞けてよかった」などといった感謝を伝えます。さらに「応援しているよ」というメッセージを伝えることができれば、部下のモチベーションはさらに上がるでしょう。
1on1ミーティングの注意点
1on1ミーティングで効果を得るためには、以下に挙げる注意点を知っておくことも大切です。
1.忙しくても必ず行う
スタートアップ企業では、一人一人が抱えている業務が多く、常にみんなが忙しいものです。ミーティングをしている暇があるなら、自分が抱えている仕事を少しでも進めたいと考える人も多いかもしれません。
しかし、どんなに忙しくても定期的に1on1ミーティングを実施することが大切です。なぜなら、変化の激しいスタートアップ企業では、トップの方針に従業員がついていけなくなることも起こり得るからです。しばらく従業員と話せなかった結果、離職につながるという事態も起こりかねません。こまめに従業員の心情をフォローするためにも、1on1ミーティングは定期的に行いましょう。どうしても都合がつかなくなってしまった場合は、キャンセルではなくリスケジュールをすべきです。
2.進捗確認のための時間ではない
1on1ミーティングは従業員のパフォーマンスの向上やキャリア開発を目的としたミーティングです。マネージャーが部下の業務の進捗を確認するための時間ではありません。業務の確認はメールや別のミーティングなどで行い、1on1ミーティングとはしっかり切り分けるようにしましょう。
また、上司と部下との信頼関係を築くための場ではありますが、個人的に仲良くなるために行うものではありません。業務時間内に組織の成長のために実施していることを忘れず、雑談だけで終わらないように注意しましょう。
3.1on1ミーティングと面談との違い
1on1ミーティングは従来の面談とは異なるものです。具体的には以下の点が違います。
1on1ミーティング | 面談 | |
---|---|---|
目的 | ・従業員のキャリア開発 ・従業員のモチベーションやパフォーマンスの向上 ・情報の共有 |
・進捗確認 ・評価通達 ・従業員の教育 |
関係性 | フラットな信頼関係 | 上下関係 |
形式 | 対話 | 一方的な通達 |
頻度 | 最低でも隔週 | 短いサイクル 半期、または四半期に一度 |
1on1ミーティングにおけるマネージャー側の心得
1on1ミーティングを有益な時間として、組織全体の成長に貢献するためにも、上司は以下のことを徹底しましょう。
1.相手の話は否定しない
1on1ミーティングでは、上司が部下の話に耳を傾けることが大切です。部下の話を聴く中で、「いや、その考え方は間違っている」「そうではなくて、こうすればいい」など、つい部下の考えを否定したくなることもあるかもしれません。
しかし、1on1ミーティングで上司として部下の話を聴く時は、部下の話を否定せずに受け止めましょう。そうすることにより、部下は「何を話しても否定されない」と安心して、本音を話しやすくなります。
2.必ず記録を取る
各回の1on1ミーティングの質を高めるためにも、話した内容は必ず毎回記録するようにしましょう。開始前に前回の記録を確認すれば、振り返りができます。また、将来、人事異動があった際に後任者に引き継ぎやすくなるでしょう。
3.部下との信頼関係の構築が何より大切
1on1をより充実した時間にするためには、信頼関係の構築が大切です。部下が安心して忌憚のない意見を言える場にするためにも、相手に対して温かい関心があることを示しましょう。具体的には、意識的に相づちを打ったり、うなずいたりして、真剣に聞いているという姿勢を示すことです。
また、話しやすい空気を醸すためにも、自分から進んで自己開示をすることも有効でしょう。過去の失敗談やプライベートな話など、自分から心を開いていると示せば、部下は上司を信頼するようになり、話しづらいことも正直に話してくれるようになるはずです。
1on1ミーティングにおける部下側の心得
1on1ミーティングを有意義な時間にするには、部下側の心得も大切です。
1.ある程度テーマを決めて臨む
1on1ミーティングは部下の成長のための時間なので、話すテーマは部下側が決めましょう。例としては以下のようなものが考えられます。
- 至急話し合う必要があること:業務でサポートしてほしいこと、苦手なこと、普段感じていることなど
- 近いうちに話し合うべきこと:残業やチームの体制など職場環境についてなど
- 長期的な目標や検討事項:自分の今後のキャリアについて、将来的に挑戦したいことなど
事前にアジェンダを作成するのが望ましいですが、難しい場合はテーマだけでも決めておくとよいでしょう。
2.無理のない範囲で話す
1on1ミーティングでは自己開示をして信頼関係を築くことが大切ですが、無理に話す必要はありません。苦痛な時間にならないよう、自分の話せる範囲で話しましょう。
3.思っていることを素直に伝える
1on1ミーティングをより有益な時間にするためには、部下が主体的に取り組む姿勢でいることが大切です。仕事を進める上で疑問に思っていることや不安に感じていることは、積極的に相談しましょう。上司からタイムリーにアドバイスを受けることにより、抱えている問題や課題をすぐに解決できるかもしれません。今すぐ解決することが難しい問題でも、解決策を見つけるためのヒントを得られる可能性があります。また、上司に聞いてもらうだけで精神的に楽になることもあるでしょう。自分が抱えている課題や問題を解決し、自身の成長につなげるための機会と捉えて、最大限活用するとよいでしょう。
まとめ
今回は、スタートアップ企業における1on1ミーティングの有用性、1on1ミーティングを導入する前の準備、1on1ミーティングの基本の進め方と注意点などについて解説しました。
1on1ミーティングは、変化が目まぐるしいスタートアップ企業では積極的に取り入れるべきメソッドといえます。定期的に実施することで、組織の成長のスピードアップを図れるでしょう。
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- ガバナンス関連、各種業法対応、社内セミナーなど企業法務
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- 埼玉県出身 明治大学法学部 卒業 早稲田大学大学院法務研究科 修了 弁護士登録 都内法律事務所 入所 東京スタートアップ法律事務所 入所