消費者安全法とは・誇大広告や重大事故等の違反例を解説
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記事目次
「アフィリエイト広告の誇大表示が消費者安全法に基づく措置の対象となったと聞いたけれど、具体的にどのような表現が法律に抵触するのか知りたい」
「消費者安全法の重大事故とは、具体的にどのような事故を指すのか知りたい」
「消費者安全法に違反すると、どのような処罰を受けることになるのか知りたい」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、消費者安全法の概要と目的、重大事故等と消費者事故等の定義、消費者安全法に違反した場合の措置と罰則、消費者安全法の違反事例、消費者安全法違反の回避策などについて解説します。
消費者安全法とは
まずは、消費者安全法の趣旨、役割、制定された背景など、基本的な内容について簡単に説明します。
1.消費者安全法の趣旨と役割
消費者安全法は2009年に消費者庁が発足したのと同時に制定された法律です。消費者の消費生活における被害を防止し、消費者が安心して安全な消費生活を営むことができる社会の実現に寄与することを目的としています。
また、景品表示法や特定商取引法等、他の法律の規制対象とならない、いわゆる“すきま事案”を規制するという役割も担っています。
2.消費者安全法制定の背景
消費者安全法が制定された背景には、2000年代半ば以降、耐震偽装、エレベーターでの死亡事故、食品偽装、こんにゃくゼリー窒息事故など、消費者の安全を脅かす事件が多発し、社会問題となっていたことがあります。
こんにゃくゼリー窒息事故では、行政による対応の遅れが問題視されました。こんにゃくゼリー窒息事故とは、一口サイズのプラスチック容器に入ったこんにゃくゼリーを食べた幼児・児童が、のどに詰まらせて死亡するという事故のことです。このような重大な事故が10年以上という長期間に渡り継続的に発生したにも関わらず、現行の法規制では規制対象とならないという理由から、放置されていました。そこで、現行の法規制で規制できないような“すきま事案”を規制する必要性への認識が高まり、消費者安全法が制定されたのです。
重大事故等と消費者事故等
消費者安全法では、消費者事故等と重大事故等に関する規定が定められていますが、消費者事故等と重大事故等とは、具体的にどのような事故を指すのでしょうか。消費者事故等と重大事故等について説明します。
1.消費者事故等
消費者事故等とは、事業者が事業として供給する商品等、事業者がその事業のために提供し若しくは利用に供する物品、施設等又は事業者がその事業として若しくはその事業のために提供する役務の消費者による使用等に伴い生じた事故であって、消費者の生命又は身体について政令で定める程度の被害が発生したものをいい、消費者庁に対する情報通知義務等の対象となる範囲を示す概念とされています。生命・身体に直接被害を与える事案だけではなく、財産を騙し取られる等の財産事案も含まれます。
消費者事故等が発生して被害が拡大している場合、または類似の消費者事故等が発生するおそれがある場合は、関係機関の長は、内閣総理大臣に対し、当該消費者事故等が発生した旨及び当該消費者事故等の概要を通知するものとされています。
2.重大事故等
重大事故等は、消費者事故等の生命・身体に直接被害を与える事案のうち、被害が重大なものを示す概念とされています。例えば、以下のような被害が発生した事案が該当します。
- 死亡
- 30日以上の傷病
- 一酸化炭素中毒
- 火災
関係機関の長は、重大事故等が発生した旨の情報を得たときは、直ちに内閣総理大臣に、その旨及び事故の概要を通知しなければならないとされています。
消費者安全法に違反した場合の措置と罰則
消費者安全法違反が発覚した場合、どのような措置が取られるのでしょうか。違反した場合の措置と罰則について、一部を説明します。
1.注意喚起
消費者安全法違反が発覚し、消費者庁が消費者の注意を喚起する必要があると認めた場合、同法第38条1項の規定に基づき、消費者被害の発生及び拡大の防止に資する情報を公表し、消費者に対して注意を呼びかけます。
2.勧告
消費者の財産被害事態を多数発生させた事業者に対して、消費者庁は、消費者の財産上の利益を侵害することとなる不当な取引の取りやめ、必要な措置をとるべき旨を勧告することができます(同法第40条4項)。
3.命令
正当な理由なく、上記の勧告に従わず、必要な措置をとらなかった場合、被害の発生または拡大の防止を図るため特に必要があると認めるときは、当該事業者に対し、その勧告に係る措置をとるべきことを命じることができます(同法第40条5項)。
4.罰則
上記の命令に違反した場合、1年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金、または併科されます(同法第52条)。
消費者安全法は、消費者被害を防止することを目的とした法律であり、違反した事業者を処罰するための法律ではありません。違反発覚後、直ちに罰則対象となるわけではなく、勧告、命令と、必要に応じて段階的な措置がとられます。そのため、消費者庁の勧告や命令を受けた場合は、直ちに内容を確認し、従うことが大切です。
消費者安全法の違反事例
実際に消費者安全法に違反した事例として、具体的にどのような事例があるのでしょうか。いくつかの事例を紹介します。
1.アフィリエイト広告の誇大表現・虚偽に対する注意喚起
消費者庁は2021年3月1日、化粧品通販会社2社が広告代理店に委託したアフィリエイト広告が消費者の合理的な選択を阻害するおそれのある誇大広告であるとして、消費者安全法に基づき、消費者に注意喚起を行いました。
この化粧品については、各地の消費生活センターに対し、「広告のような効果がない」などという苦情が多数寄せられたため、長野県と消費者庁が合同で調査をしたところ、以下のような誇大表示と虚偽が発覚しました。
- 肌のシミがわずか数日で消えるかのような誇大表示(SNSの投稿画像や体験談)
- 通常9,800円が特定日に2,980円で買えるという虚偽の内容(実際は2,980円で恒常的に販売されていた)
調査の結果、広告に表示された体験談などもすべて架空のもので、2社が販売する化粧品は全く別の会社の別な商品であるにもかかわらず、写真や体験談、文章などはほぼ同じ内容でした。
両者とも、これらの広告は直ちに取り下げるとともに公式サイトに謝罪文を掲載し、いずれも販売店の不適切な広告運用によるものであり、このような広告をするよう指示したものではないことを強調しましたが、信用の失墜は免れないでしょう。
インターネット上の化粧品や健康食品のアフィリエイト広告に対して、消費者安全法に基づく注意喚起が行われたのは今回が初めてであり、今後、業界に大きな波紋を呼ぶことになりそうです。
2.簡単にお金を稼げると謳う虚偽・誇大広告
消費者庁が公表した『平成30年度における消費者安全法(財産事案)の運用状況について』 という資料によると、簡単にお金を稼ぐことができると謳い、いわゆる情報商材を売りつけたり、参加料と称して高額な費用の支払を要求したりする等の事案が増えているとのことです。
平成30年度に消費者安全法に基づく注意喚起、勧告等を受けた事案を2つご紹介します。
- 「月収 50 万円なんてコピペするだけで簡単に稼げます!」などと謳い、消費者を勧誘し、ツールを用いて編集した動画をインターネット上の動画サイトに掲載するだけでお金を稼げるとして高額なツールの利用料等を消費者に支払わせていたが、実際は、誰もが簡単に稼げる仕組みにはなっていないことが判明した。
- 「金と銀のプロジェクトに参加するだけで、毎日1万円収入の最低保証」などとうたい、投資・運用コースの参加料として消費者に高額な費用を支払わせていたが、このような宣伝文句に根拠や裏付けは無いことが判明した。
3.重大事故等の事例
消費者庁が2021年06月10日に公表した『消費者安全法の重大事故等に係る公表について』という資料によると、消費者安全法に基づき、関係行政機関等から生命・身体被害に関する消費者事故等として通知された事案は70件、うち重大事故等として通知された事案は46件だったそうです。
軽自動車や普通乗用車の火災事故が目立ちましたが、中には、日常生活の中で使用される生活用品の事故もありました。消費生活用製品の重大製品事故として公表された事故をいくつかご紹介します。
- 食器洗い乾燥機の火災:ビルトイン式の食器洗い乾燥機を使用中、製品及び周辺を焼損する火災が発生
- 電動アシスト自転車のバッテリーの火災:電動アシスト自転車のバッテリーを充電中、製品及び周辺を焼損する火災が発生
- 蛍光ランプ:異臭がしたため確認すると、当該蛍光ランプを焼損する火災が発生
消費者安全法違反の回避策
消費者安全法に違反しないためには、企業としてどのような対策を講じればよいのでしょうか。具体的な対策について説明します。
1.法令順守のためのガイドラインの策定
消費者安全法に違反する誇大表示等を回避するためには、広告に関するガイドラインやルールを策定し、広告の委託先に対してもルールの遵守を徹底させることが大切です。誇大広告を規制する法律は、消費者安全法の他に景品表示法があります。また、商品によっては、薬機法、健康増進法などの規制対象となる場合もあります。ガイドラインやルールを策定する際は、事前に、自社商品がどの法律の規制対象となるか理解し、具体的なリスクを想定することが求められます。
2.消費者事故・重大事故等の対策
生活用品等を製造・販売している企業の場合、消費者事故・重大事故等への対策も必要です。どれほど、品質管理を徹底していても、事故が発生することを完全に防ぐことは難しいです。事故が発生した際に、被害が拡大しないよう、迅速に適切な対処を行うためには、社内のルールや体制を整備して関係者間で共有しておくことが大切です。
まとめ
今回は、消費者安全法の概要と目的、重大事故等と消費者事故等の定義、消費者安全法に違反した場合の措置と罰則、消費者安全法の違反事例、消費者安全法違反の回避策などについて解説しました。
消費者からの信用を確保し、ビジネスを発展させるためには、消費者安全法の規定を理解した上で確実に遵守することが不可欠です。消費者安全法に抵触するか判断が難しい場合は、企業法務に精通した弁護士に相談することをおすすめします。
東京スタートアップ法律事務所では、豊富な企業法務の経験に基づいて、各企業の状況や方針に応じたサポートを提供しております。広告表現に関する相談や社内のガイドライン策定などのサポートなどにも対応しておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。