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投稿日: 弁護士 内山 悠太郎

スタートアップ成功のカギとなるチームビルディングの方法とは

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スタートアップ企業では、チームビルディングが企業の成長において大きな重要性を持つといわれます。しかし、「チームをどのようにまとめたらいいかわからない」「チーム内で積極的な意見交換ができていない」などというお悩みをお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

今回は、チームビルディングに取り組むメリット、チームビルディングの5つの段階、スタートアップ企業がチームビルディングを行う際の注意点などについて解説します。

チームビルディングとは何か

「チームビルディングと言われても、抽象的でよくわからない」という方もいらっしゃるかと思いますので、まずは基本的な言葉の意味について簡単に説明します。

1.チームとは

チームとは、共通の目的達成のために、一人一人が役割を持ちながら、相互に依存・補完しあう2名以上の集団のことをいいます。

似たような言葉として「グループ」がありますが、グループは必ずしも共通の目標を持たないメンバーの集合体のことを指す点で、チームと異なります。

2.チームビルディングとは

チームビルディングとは、それぞれのメンバーが自身の持つ能力や経験を発揮して共通の目標を達成できるチームを構築することをいいます。優れたチームは、優れた人材を集めればできるわけではありません。また、メンバー同士が協力するチームワークも大切ですが、チームワークが良ければ目標が達成できるというわけでもありません。

目標達成のために、チームのメンバー各人のスキルを融合し、チームが最大の力を発揮できるようにすることが大切です。

経営学者のホーレンベック氏は、チームが最大の効果を発揮するためには、以下の3つの点が重要だと提唱しています。

  • チームに合わせたメンバーの選考
  • メンバーに応じてタスクを調整する
  • タスクの水準に合わせてメンバーのスキルやモチベーションをあげる

チームビルディングに取り組むメリット

チームビルディングに取り組むことで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。

具体的なメリットについて説明します。

1.活発なコミュニケーションが生まれる

積極的にチームビルディングに取り組むことで、チーム内で目標達成に向けて会話を交わす機会が必然的に増えるため、活発なコミュニケーションが生まれる土壌ができます。

また、目標達成のためには、各人のスキルを活用することが不可欠なので、知識やノウハウを共有する体制が自然に生まれます。

2.アイデアが活性化する

チームのメンバーが、目標達成のためのベストなアイデアを練り上げていくために、ブレインストーミングなどを行う機会も増えるでしょう。ブレインストーミングや意見交換を重ねる中で、アイデアや想像力を生み出す発想力が培われ、チームがイノベーションを起こす可能性も期待できます。

3.メンバーのモチベーションが向上する

チーム内のコミュニケーションが増えることで、自分のアイデアが評価される、意見が取り入れられるという経験を重ねることになります。そのような経験により、承認欲求が満たされることで、さらにモチベーションが高まります。

チームビルディングの5つの段階

心理学者であるタックマン氏が提唱する効果的にチームビルディングを行うための5段階を紹介します。

1.形成期

形成期は、チームが作られ、メンバーが決まったばかりの初期段階をいいます。

形成期は、メンバー同士がお互いをまだ理解できておらず、チームの目標も揺らぎがちです。そこで、形成期には、リーダーがリーダーシップを発揮して課題を見つけること、メンバーがお互いを知ることが、次のステップに進むために重要なポイントとなります。

2.混乱期

混乱期は、プロジェクトが進み始め、チームの目標が具体的に定められた段階をいいます。

メンバー同士の考え方の相違などで意見が衝突しやすく、目標に向かって一丸となることが難しい時期です。この段階を乗り越えるためには、議論や意見交換を活発に行うことで相互理解を深め、チームの課題を解決する方法を探ることが重要です。

3.統一期

統一期は、活発な議論や意見交換を経てメンバーの相互理解が深まり、チームが安定し、統一されていく段階をいいます。

チームの目標達成のために求められるメンバー各人の役割が明確になり、チーム内で共有される時期でもあります。メンバーのスキルや特徴を生かした役割分担を行い、チームの目標を再確認することで、次の段階に進むことができます。

4.機能期

機能期は、チームとしての機能が十分に発揮されている段階をいいます。

メンバー各人の活動に加え、相互のサポート体制が発揮され、成果も上がり始める時期です。リーダーがメンバーのサポートを行い、チームワークを高めるための活動を行うことで、機能期を維持し、チームを発展させることができます。

5.散会期

散会期は、チームとしての活動が終了する段階をいいます。

散会期は、チームビルディングの失敗ではなく、プロジェクトの終了や、メンバーの脱退・異動などの事情により生じます。

散会期のメンバーの反応が、チームビルディングの成功・不成功の判断基準になると言えます。メンバーが相互に認めあい、称えあい、解散を惜しんでいるような状況であればチームビルディングは成功したと言えます。

スタートアップ企業がチームビルディングを行う際の注意点

チームビルディングに取り組む際、無理をすると逆に企業の成長を阻害してしまう恐れがあります。特にスタートアップ企業は、人的・経済的余裕に乏しいことが多いので、成長した企業がスタートアップを行う以上に、以下のような点に注意が必要です。

1.無理な目標やあいまいな目標を設定しない

チームビルディングにおいて、目標設定をすることは、メンバーが同じ方向に向かって仕事に取り組むために不可欠です。しかし、その目標が達成不可能なもの、あるいは曖昧なものであると、メンバーは方向性を失い、モチベーションが低下し、一体感がなくなり、十分な成果が期待できません。

目標設定する際は、リーダーが主導して明確なチームの目標を設定し、メンバーに共有します。その際、メンバーに目標を達成したいと思わせるマインドセットをすることも必要となります。更に各メンバーがチームが目標を達成するためにすべきことを明確にする必要があります。この際にチームが目標を達成するためにどのようなことに取り組みたいかを、メンバーに聞いてみるのも有効です。

2.対人関係の構築・チーム編成

チームにおいては、コミュニケーションによってメンバー同士の信頼関関係を構築することが重要です。

単に人数を集めただけでは、チームとして機能しません。チームが有効に機能するためには、メンバー各人のスキルや相互の対人関係を踏まえたチーム編成をすることが求められます。

チーム編成の初期段階では、全員が気軽に取り組めるゲームや、スポーツなどのアクティビティを行うことが有効とされています。こうした取り組みによってチーム内の対人関係は向上することが多いですが、それでもメンバー同士が頻繁に対立するような場合は、スタート時点の編成に問題があったことも考えられるので、チームの再編成を検討してもよいでしょう。

3.リーダーシップを発揮する

メンバー各人の役割を明らかにしてメンバー同士の相互理解を図る際に重要なのが、リーダーシップの発揮です。チームビルディングでは、メンバー一人一人のスキルや個性が重視されるとはいえ、各メンバーが自由に行動すると、単なる個の集団になってしまいます。

リーダーやプロジェクトマネージャーは、チームの目標とメンバー個人の目標の双方を把握し、チームの方向性を舵取りしていくことが求められます。具体的な手法としては、メンバー各人に役割を一部共有させるなど、仕事を介した相互理解を深める取り組みも効果的ですが、旅行や食事会といったイベントを通して、メンバーの仕事以外の側面を知ることが関係性の強化につながることもあります。

4.問題解決のプロセスの発見

チームが目標を達成するには、メンバー自らが課題に取組む過程で発生する問題を発見し、解決していくための行動や意思決定のプロセスを見出していくことが重要です。この点をリーダーのみが担っていると、チームはもちろん、メンバー個人の成長も見込めません。

メンバーの主体的な行動を促したいときには、ワークショップを実施して、自主的な共同作業を促すことが効果的です。試行錯誤をし、議論を重ねて成果を出していくという経験をメンバー同士が共有することで、チームとしての結束力が高まります。このような時間を別途設けることが難しい場合は、通常の業務の中で、メンバーの意見や人格を尊重し、相互に協力し合うようサポートすることを日常的に行うことも、チームビルディングの成功につながります。

スタートアップ企業におけるチームビルディングの成功事例

経済産業省が大学発のベンチャー企業を対象に実施した調査の中から、チームビルディングが企業の成長につながった事例をご紹介します。

1.職種を超えた連携の必要性からチームビルディングに取り組んだ事例

最初にご紹介するのは、カーナビゲーションの開発を行う会社が、機能性とデザイン性を向上させるために、職種を超えた連携の必要性からチームビルディングに取り組んだ事例です。

この企業では、自身の担当領域に線を引く「技術や機械の壁」や、仲間意識や役割意識といった心理状態が、プロジェクトの成否に大きく影響することを踏まえ、「チーム単位で物事を考える」「全員がリーダーという意識を持つ」ことを中心とした「スクラム開発」を行いました。

具体的な取り組みの内容はこちらです。

 ①技術的側面からのアプローチ

技術者はデザイナーの、デザイナーはソフトウェア開発の技術を相互に習得して知識の共有を図ることで、成功や失敗の体験を共有して相互理解を深めた。

 ②人的側面からのアプローチ

チームの活動状況に応じて、チームを形成する「チーム立上げ期」、チームが機能する「チーム活動期」に分け、タスク看板の利用や、共通認識を紙に書き出すなどする「見える化」を行い、それぞれの時期に応じた目的、役割、モチベーションの共有を図った。

上記のようなチームビルディングの成果を、他チームとの生産性や納期をもとに実施の前後で比較検証した結果、開発現場での意識共有が促進され、問題点の補正や開発効率の向上という成果が得られたそうです。

2.大学ベンチャーにおけるチームビルディング

次にご紹介するのは、コワーキングスペースの運営から、空間デザインプロデュースを経て、リノベーション物件の販売に関するプラットフォームを運営している東京工業大学発のベンチャー企業の事例です。

この企業は、建築・デザインを専攻した学生が中心となって創業し、コワーキングスペースの運営やオフィスなどの空間デザイン事業を展開していましたが、エンジニア人材を集めてリノベーションや中古物件に関心がある人のプラットフォームの運営・物件販売に移行しました。

チームビルディングの過程においては、デザインとエンジニアという職種の相違から採用に苦労し、知人の紹介でエンジニアを2~3人雇用する段階から始めたそうです。少人数でもエンジニア部門を独立した部署とすることで、メンバーのモチベーションの向上と新しい人材の採用のしやすさにつなげる工夫をしています。

さらに、会社が成長する過程で、組織を拡大するために、経営幹部の経験を持つ人材を知人に紹介してもらい、社外取締役に就任してもらったそうです。

この事例では、従業員の人脈を活用した採用活動を積極的に行うことで、チームビルディングの基盤となる優秀で信頼できる人材を確保し、企業の成長につなげています。

まとめ

今回は、チームビルディングに取り組むメリット、チームビルディングの5つの段階、スタートアップ企業がチームビルディングを行う際の注意点などについて解説しました。

スタートアップ企業が順調に成長するために、チームビルディングは非常に重要な要素となります。しかし、経営者や創業メンバーは、複数の業務を兼務して多忙なことも多く、社内のチームビルディングに注力できないというケースも少なくないのではないでしょうか。

東京スタートアップ法律事務所は、数多くのスタートアップ企業をサポートしてきました。限られた人材で最大限の効果を発揮できるチームを構築したい、目標を達成するために強固なチームを作りたい等のご相談にも対応しております。

また、チームビルディング以外でも、資金調達、新規事業のリーガルチェック、問題のある従業員への対応など全般的なサポートが可能ですので、お気軽にご相談いただければと思います。

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執筆者 弁護士内山 悠太郎 宮崎県弁護士会 登録番号59271
私は、学生時代はアルペンスキーとサーフィンに明け暮れておりました。そんな中で、弁護士を目指すにいたったのは、社会に役に立つための知識を身につけたいという単純な思いからでした。人や企業が困っている場面で手助けできるスキルを身につけて社会に貢献したいと考え、弁護士を志すに至りました。
得意分野
ガバナンス関連、各種業法対応、社内セミナーなど企業法務
プロフィール
埼玉県出身 明治大学法学部 卒業 早稲田大学大学院法務研究科 修了 弁護士登録 都内法律事務所 入所 東京スタートアップ法律事務所 入所
書籍・論文
『スタートアップの法務ガイド』中央経済社
『スタートアップの人事労務ガイド』中央経済社